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第十六話「今後のために」

なんだかまだ疲労があるのか……とても眠いです。、

「はふぅ……久し振りの満腹感」

「よかったな、湊。薫子さんも」

「ええ。久し振りに湊の元気な姿を見て安心したわ」


 ここまで食べる湊は久し振りだ。

 少食ってわけじゃないけど。必要以上に食べる人間じゃない。けど、今回はまるで大食いにでも挑戦しているかのような食べっぷりだった。


 とはいえ、あまり一気に食べると拒否反応を起こすかもなので、良いところで止めた。

 後は、ゆっくりと体に馴染ませるように。


「それにしても、湊。なんかいい匂いがしたけど。やっばり風呂とかに入ってたのか?」

「えっと、これは……香水」


 香水? 湊が? 昔から湊は、香水とかそういうのをつけていたなんて一度もなかったのに。

 

「あら? ついに使ったのね。ずっと放置してたのを」

「どういうことですか?」


 大分元気になった薫子さんが、恥ずかしがってる湊の代わりに説明してくれた。

 どうやらお洒落に興味があったらしく、薫子さんにアドバイスを貰って自分で買っていたとのこと。しかし、いざ使おうとしても、自分に合うのか? 使ったら笑われちゃうんじゃないか? と、色々考えてしまい、結局使わずに放置していたらしい。


「なるほどなぁ……まあでも」


 近くで匂いを嗅ぐ。

 

「あ、あの」

「使ったってことは、自信がついたってことか?」

「そ、そうじゃなくて。ただ陽くんと久し振りに会うから……」


 あぁ……そういうことか。ずっと髪の毛とか洗ってないから、香水でってことか。

 俺もまだまだだな。


「と、ところでさっきの話だけど」

「さっき?」

「悪魔の話」

「そう! 私もびっくりしてるんだけど……本当なの? あ、悪魔がいるって。そして、その悪魔が湊を洗脳してたって」


 俺は話した。本当は隠しておくべきことだが、やっぱりこうでもしないと湊が自分だけの意思で血迷った行動をしたことになってしまう。せめて、家族には。


「はい。俺も最初は信じられなかったんですけど……本当に居たんです。悪魔が。そいつは、人の負の感情をエネルギーとして生きていて、丁度いい餌を見つけるとその人間にとりつくんです」


 俺は話した。リィリアちゃんやレーニャちゃんから聞いたことを。

 初めは物語を聞く感覚だった二人だったが。


「悪魔の……た、確かになんだかここ最近の湊は、なんていうか気が抜けた感じで、心配になるほどだったわ」

「ちなみに、これは知り合いの女の子。えっと、リィリアちゃんって子から教えてもらったんだけど。湊、リィリアちゃんと会ったんだよな?」

「リィリアちゃんって……あっ。あの時の」


 どうやら覚えているみたいだな。


「リィリアちゃんは、湊と会話をしている時に悪魔の影響を消し、その後に起こりうる負の感情の爆発を抑制するために魔力結界を張ったんだ」

「あの会話の中でそんなことを……」

「ねえ、陽樹くん。そのリィリアちゃんって子は何者なの? やっぱり悪魔とかそういう存在なのかしら?」


 リィリアちゃんは、吸血鬼だ。しかし、俺には天使に見えてしまうことが多い。いや、最近では天使を通り越して女神?

 だが、このことは伏せておこう。

 とりあえず今は、今までのことを整理しなくちゃならない。そして、これからの対策だ。

 湊が悪魔から解放されたとはいえ、全部元通りになるわけじゃない。例をあげるとしたら、学校での生活だ。


 今では、竜夜と湊が付き合ってることになっている。判断力を鈍らせられていたとはいえ、学校で腕を組み合ったりしていた。

 更に、当然の連続休み。

 それも二人同時にだ。湊のほうは体調不良ということになっているけど……学校に登校した時、周りの反応はどうか?


 考えることが、やることが山ほどある。

 けど、俺は湊を見捨てない。

 これは俺がやるべきことなんだ。リィリアちゃん……君は今、何をしているんだ?



・・・・



 半月が輝く夜。

 とある路地では、一人の少女が四人の男に取り囲まれていた。明らかに少女が危ない状況だ。

 誰かが助けなければ。

 しかし。


「また外れだね」


 次々に倒れる男達。

 まるで魂が抜けたかのように、ぴくりとも動かない。そして、月光に照らされ、明らかになった少女の正体は。

 

「この調子だと、時間がかかっちゃうかも……早く陽樹お兄ちゃんを撫で撫でしてあげなくちゃいけないのに」


 リィリアだった。白銀の髪の毛が月光に照らされ、美しく輝き、小さな子とは思えないほど、見惚れてしまう美しさだ。

  

「はい。じゃあ、この人達は各自宅まで運ぶように」

「はっ!」

「お任せくださいリィリア様」

「では、行って参ります」


 軽く指示すると屈強なスーツ姿の男達が倒れた男達を担ぎ、姿を消す。そして、それと入れ違うように一人のメイドが姿を現した。


「リィリア様。そろそろお時間です」

「もう終わりなんだ。短すぎない? ウィテル」

「仕方ありません。奥様がご自宅で待っておられます」

「大事な話があるみたいだけど……なんだろうなぁ。わたしは悪魔狩りで忙しいのに」


 現在リィリアがやっているのは、悪魔の影響がある人間を正常に戻すこと。

 だが、これは重要な任務のため。


「せっかく餌になってあげてるのになぁ……中々食いついてこないね」

「相手もそれほど慎重になっているということでしょう。ですから、少しでもこちらへ向かってくるように挑発の意味を込めた餌を潰している」

(彼の狙いは十中八九わたしのはず。けど、中々正体を現さない。自宅にも帰っていないみたいだし……)


 すぐに襲ってくるかと思えば、まるで観察しているかのように、動かない。


「そういえば、陽樹様は無事に湊様を助けられたようですね」

「うん。さすがお兄ちゃんだ。明日は思いっきり撫で撫でしてあげなくちゃ!」


 うきうき気分でリィリアは帰宅する。まるで、ステップを踏むように。軽快に、陽樹のことを考えながら。

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― 新着の感想 ―
[一言] さすが吸血鬼
[一言] 今日も投稿お疲れ様です、毎日の更新とても楽しみにしていますが作者様も無理をせずしっかりと休んで体調に気をつけてください。 これからとりあえず最初の山場が近づいて来てる展開ですね、解決したあと…
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