第九話「衝撃な出会い」
正直もう一話か二話ほど挟むべきか悩みました。
「おい、陽樹」
「どうかしたか? 昂。あっ、そういえばお前の小説少しずつ評価されてきたな」
「おう! って、そっちも重要だが今は違う話題だ」
リィリアちゃんとのデートから二日。
休み明けということで周囲は少しやる気がない雰囲気がある。俺も若干気の抜けた感じだ。
やっぱ、あのデートがインパクトあり過ぎたよな……。
あの後、本当により積極的になって、一緒に昼寝をしようなんて言い出すリィリアちゃん。
なんとか抵抗したものの悲しそうな顔をされて、呆気なくベッドイン。
しかし健全だ。
俺の隣で、甘い言葉を囁いて、眠りへと誘おうとするが、正直眠れませんでした。
「それで、何が遭ったんだ?」
「竜夜と湊ちゃんが学校休んでるんだってよ」
二人同時に?
竜夜はわからないけど、湊だったらわかる。昨日、リィリアちゃんの家に行く時だ。
母さんに湊が昨日から部屋から出てこないと、湊の母親から聞いたらしい。もちろん俺は知らないと言った。その後、やっぱり気になった俺は電話をしたが、電源を切っていたようで繋がらなかった。
だから一応メールを送ったんだけど……返事はこなかった。
「湊だったら多分体調が悪いから休んでるんだと思う。竜夜は、わからないけど」
「そうか……案外二人で、学校サボってどっかに出掛けてるんじゃないか?」
「さすがにそれはないんじゃないか?」
竜夜ならともかく湊は、付き合ってるとはいえサボるかな……。
「まあ、二人のことは置いておいて」
いや、そっちから振ってきたんだろ。
「昨日、俺の誘いを断ってどこで何をしていたんだ? んー?」
こいつ……ムカつく顔を。
「別に……。ちょっと外せない用事があっただけだよ」
「ほう? 友情より大事ってことは、あれか? 彼女か?」
「ノーコメント」
「隠すところがまた怪しいぞ、こら! 吐け! 隠さず吐いてしまえ!」
首に右腕を回し、左手で頭をがしがしと押すようにしてくる。
こいつ本当に馴れ馴れしいよな。出会った時から、なんだか久しぶりに出会った親友みたいな感じだったからな。
「ノーコメント」
「なら昼飯に焼きそばパンを奢ってやる!」
買収かよ!?
「ノーコメント!」
「更に牛乳をつける! お前好きだろ?」
「確かに好きだが、そのぐらいなら自分で買うって! というか、お前。人に奢れるほど金あるのか?」
その言葉に、昂は俺から離れ、自分の財布を確認する。
そして、札なし。
小銭少し。
その現実を知った昂は、一度天井を見上げ、そっと財布を閉じる。
「……奢ってくれ」
「三つまでだぞ」
「あざーす!!」
こいつ。昨日新作ライトノベルと漫画を大量に買ったって言ってたからな。だろうと思ったよ。
・・・・
学校が終わると俺はまたリィリアちゃんに家に来ないかと誘われた。なんだか最近は毎日のようにリィリアちゃんと会ってる気がする。このままではだめ人間になってしまうかもしれない。
しかし、つい足を運んでしまう! これも吸血鬼の力なのか……。
「え? 今日は友達が来る?」
「うん。お兄ちゃんに興味があるって。そこでリィリア先生からのアドバイスです」
リィリア先生……ふむ、悪くないかもしれない。
「あ、アドバイスとは?」
「これから来る子は、普通じゃありません。わたしが吸血鬼のようにです」
「は、はい」
ついにこの時がきたか。いつかはと思っていたけど、リィリアちゃんの友達!
そういえばまだリィリアちゃんの両親には会ったことないな。父親は仕事が忙しいみたいだけど、母親はあえて会わず、見守っているとか。メイドさん達は、人間だって言ってたけど……本当にここってどこなんだろうな。いまだに謎なんだよな。
「注意すべきところは」
「すべきところは?」
「来てやったぞ! さあ、噂の人間を見せるんだ!! リィリア!!」
ふぁ!? もう来たのか!? リィリア先生がせっかく説明してくれるところだったのに、それを邪魔するかのように登場。
ドアを乱暴に開いて入ってきたのは、黒髪の女の子。
髪が長く、太もものところまである。
前なんて完全に目が隠れてるんですが。
それだけでもインパクトはあるが、目がいくのは胸。
リィリアちゃんの友達ということは小学生のはず。しかし、その胸はとても豊満であり、黒いシャツの上からハッキリわかるほど。
見事な山がそこにあった。
というか格好がラフ過ぎないか? 見た限り下は履いていない。下着はどうかはわからないけど。サイズが大きいシャツを一枚だけ着ている感じだ。
「えっと……リィリアちゃん?」
明らかに外に出れない格好なんだけど。
「この子が、友達のレーニャちゃんだよ」
「レーニャだ! お前がリィリアのお気に入りだな? ほほう……」
さっそくの観察。
さあ、いったいリィリアちゃん以外の子にはどう見えるんだ!?
「うん! 普通!!」
……ですよねぇ。
そんな猫口ではっきり言わなくても。いや、事実なんだけど。
「まあ、見た目なんてどうでもいいのだ。人間!!」
「陽樹です」
「春人間!!」
うわー、なんか春を呼びそうな人間ですねー。この子、人の名前を覚える気ないんじゃないか?
「リィリアを追い込むほどの腕前だと聞いてるぞ! あたしと勝負だ!!」
「それって、リアルファイトじゃないよね? ゲームのことだよね?」
さすがにリアルファイトは無理なんだが。
などと思っていると、部屋に置いてあったゲームを起動させるレーニャちゃん。よかった……ゲームで。
「さっそくだが、賭け事をしよう!」
「普通に勝負しようよ……」
「それじゃあ面白くない! というわけで、あたしが負けた場合は」
なんだ? おそらく常識を逸脱したものを。
「あたしのパンツを見せてやろう!」
「なんで!?」
「そして、お前が負けた場合は」
まさか俺のパンツを見せろとか言うんじゃ。
「あたしの椅子になれ!」
「……えー」
これはどう返したらいいのか。この子、もしかしてサディストなのか?
「り、リィリアちゃん……!」
リィリアちゃん。どうか彼女を止めてくれ!
「乗るなら、肩車にしようね?」
「ふむ。仕方ないな」
ひゅー……椅子になるのは止めないんですか。
「そして、よく頑張ったねって頭を撫でてあげようね」
「リィリアちゃーん!!」
さすがリィリアちゃんだ。というか、よく考えてみればそれだと勝っても負けても俺にとってご褒美になるじゃないか?
しかし、ゲームの勝負となれば真剣にならざるおえない。
手は……抜かない!
こうして、とんとん拍子で進んだ俺とレーニャちゃんの勝負。対戦ゲームは格闘ゲーム。
昔から人気のあるタイトルの最新ハード版だ。
自宅にはないので、まだゲーセンとここでしか遊んでないが、負けるわけにはいかない。
「……ふっ」
強かった。リィリアちゃんと同じくらいに。正直負けると思っていたが、一瞬動きが鈍くなり、コマンドをミスったところを俺は見逃さなかった。
「あたしが……負けた?」
ごめんな、レーニャちゃん。手加減なんてできなかった。手加減なんてしたら呆気なくやられていたからな。
それほど君は強かった……。
「レーニャちゃん。いい勝負だったよ」
俺は清々しい表情で握手を求める。
が、レーニャちゃんは手を握ることなく、コントローラーを置いて立ち上がったではないか。
まさか、負けたのがショックで。
「約束だ」
「へ?」
約束って……ちょ、まさか!? 俺の脳裏にあの言葉が過る。
『あたしのパンツを見せてやろう!』
え? 本当にパンツを? 俺が見ている中、レーニャちゃんはそっと手を……シャツの中に突っ込み、パンツを脱いだ。
「これがあたしのパンツだ!!」
「なんでぇ!?」
確かにパンツを見せるとは言っていたけど、なぜ脱いだ!?
「遠慮するな。受け取れ」
困惑する俺に対して、レーニャは恥ずかしくもなく脱ぎたての白いパンツを俺の手に握り締めさせる。
……生暖かい。
「あの、リィリアちゃん。この子はいったい」
正直、これだけでも普通じゃないというのはわかった。
そんな彼女の正体は。
「レーニャちゃんはね。サキュバス、なんだよ」
「サキュバス、だって?」
「引きこもりのサキュバスだ! よろしく!」
吸血鬼と違ったやばさの存在じゃないか……! というか、引きこもりかよ! え? じゃあ、わざわざ俺に会いにくるために家を?
「あっ。あたし、ここに住んでるんで」
あっ、そういうことですか。
ついに人外新キャラの登場です!
リィリアちゃんが人気の中受け入れられるか……書いていてこれ大丈夫か? と何度も思ったり。




