空は青い 雲はでかい。
——ラガルタ城内——
「世界を喰らう物のが式当日、大平原に出現する事が判明した。 このチャンスを逃すわけにはいかんので、お前達には討伐に行ってもらう。」
目の前にいる姫様のクソ親父が回りくどく死ねと言ってきた。
世界を喰らう物。 それは何処からともなく何処にでも表れる災害の呼称。
時には戦場のど真ん中、時にはパレードの先頭に。
それが出現した瞬間そこら一体はさら地になる。
それが普段何処に生息しているか、それがどんな形をしてるかすらハッキリしていない。
なんせ会った人は殆ど死んでしまうのだから仕方がない。
生き残った人によって亀だったり鯨だったり熊、蛇、虎、龍、とまちまちだ。 共通するのはどれも異常に大きい事だけ。
長年の研究で出現する前に特異な魔力が出現地点に流れることが分かったため昔程の災害が発生する事は無くなったがそれでも国に出現し大災害を受ける事が稀にある。
「私達まだ死にたくないんですけど。」
直接的に言ってみた。クソ親父はククッと苦笑いした後。
「流石に討伐は冗談じゃよ。 大平原等と言う見渡しがいい場所に出現する機会など早々ない。 観測するだけでもいい、言ってくれんかのう。 あらぬ疑いをかけられるのも嫌じゃろ?」
全て分かっているぞと言うようにクソ親父は目を鋭くさせて。
「因みに式、1週間早まったから。」
——日本——
夏休みはもう1週間が経ったころ。 新道東は暇だった。
いつも自分はどうやって一日を過ごしていたのか全く思い出せない。
何か大切な事を忘れているような胸のモヤモヤが取れない。
そのつっかえのせいで何事に対しても気力が湧かない。
ぼーっとしながらベットに寝転がり、頭の中で天井の模様の上にチェスのナイトを置き他の模様の上にその特殊な動き方で移動させていると、頬の上に変な感触を感じ触ってみると頬が湿っていた。
そのまま目を擦ってみてようやく自分が泣いてることに気がついた。 最近急に涙が出てくる。
「まるで壊れたロボットだな 僕わ。」
気を紛らわす為に散歩でもしようと家を出た。
真夏の青い空に浮かぶでかい雲が僕は好きだ。 あの動いてるのが少し見ただけで分かるほどでかいのが。
しばらく歩くと上り坂になっていた。
それを上がろうとすると途端に強い既視感を覚えた。 いつも隣に誰かがいたような。 そんな既視感
上り坂を登り切るとそこから町が見下ろせた。
まただ、誰かと毎日見ていた景色だったような。 その誰かの顔がどうしても思い出せない。
照りつける日差しが浮かぶ快晴の空とは反対に歩を進めるほど胸中のモヤは濃くなって行く。
そのまま真っ直ぐ行くと1つの喫茶店の前で足が止まった。
1回も入ったことが無いのに何故だろう。 こんなに懐かしいのは。
目頭が熱くなる。 視界が潤んでまともに前が見えない。 分からない 分からない 分からない。 なんでこんなに胸が締め付けられるのか。 自分でも分からない。
「あの娘もなかなかどうして酷いことするのぉ。」
声の方に振り向くと手をかざされた。
途端少年は全てを思い出す。
先輩との出会い。そこから語って行くことにしようか。