彼女は使い魔
ベットに寝転がり天蓋の模様を見ながらアイリスの台詞を思い出す。
『原因があるとすればあなたよ。』
先輩がここから逃げず王子と結婚することをこの国人々は望んでいるだろう。
それが大多数の幸福に繋がる事は考えるまでもない。
ただ彼女はそれで幸せにならない。 いや、本当にそうなのか?
僕なんかと一緒に逃げるよりこのまま結婚してしまった方が彼女にとって良い選択なんじゃないのか?
僕と逃げた方が幸せに決まっているという考えはただの僕のエゴなんじゃないのか?
どんどん悪い方に考えが及んでいくので一旦思考を停止させる。
アイリスから教えてもらったユース魔法とやらを右手を高く伸ばして発動させてみる。
周りに光の輪のようなものが僕の右掌から回転しながら広がっていき弾ける。 ただそれだけ。 なんか綺麗だったので何回も発動させる。
シュンと広がりパンと弾ける動作を5回ぐらい繰り返した時だった。 窓の外で雷がなったかと思うと。
「五月蝿いぞっ! 聞こえていると言っているだろうが!」
知らない声に突如怒鳴られた。 言われた覚えはないのだが。
飛び起きてベットの上に立ち辺りを見渡す。 しかし視界には誰も映らない。
「何処だ?」
声の主に尋ねてみると返答が来た。
「後ろにいるぞ後ろにいまくってるぞ。」
恐る恐る振り返るとそこに彼女は居た。
僕より背は低いはずなのに見下ろされていると錯覚するように堂々と胸を張り、そこに手を押し当て彼女はそこにあった。
「私は全ての願望を聴くもの! 名をパールヴァル。
気軽にパールと呼んでくれ!」
「知らない人と同じベットに入るなって姫様に言われているんで今日のところはお引き取りください。」
「どんな場面を想定して忠告したんだよ君の先輩は!」
なんで姫様=先輩だと分かったんだ?
「話を聞いて欲しいんだろ? 私は君の使い魔だっ! 東、君の願望をきかせてくれ。」
「僕の願望?」
夜は更けて行く。