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一旦保留で・・・

第二部開始しました。

ただ見切り発車なので何処まで書けるか不明です。

それでも良ければどうぞお付き合いくださると嬉しいです。

 何故か友人だと思っていた人達から愛の告白を受け、さらに自分を選んで欲しいと訴えてきたこのまるでルート選択のような場面に私は頭を抱え唸っていた。


(そもそも私はライバルポジションであってヒロインポジションじゃ無いんですけど!!それにお尋ね者のラビまでやってきてるって・・・どうしてこうなった!!!)


 この目の前の光景に私はただただ困惑していると、近くでゴホンっと咳払いが聞こえたのである。

 私はその咳払いが聞こえた方にゆっくりと視線を向けると、そこには複雑そうな表情をして私を見ている国王が立っていたのだ。

 すると国王はラビの事を報告しにきた衛兵に顔を向けた。


「あ~とりあえず首領のラビはとっとと捕まえてきなさい」

「は、はい!!」


 この異様な状況に戸惑っていた衛兵は国王の言葉にハッと我に返り、慌てて謁見の間から出ていったのである。

 そして国王は再び私の方に顔を向け頭を掻いた。


「セシリア嬢・・・すまぬ。我の不用意な発言のせいでこのような事になってしまって・・・」

「あ~まあ・・・いえ、多分遅かれ早かれこんな状態になっていたと思われますので・・・」


 私は苦笑いを浮かべながらいまだに私を見つめて手を差し出している皆を伺い見たのだ。

 そんな皆の様子に私は大きなため息を吐くと両手を腰に当てて呆れた表情でキッパリと言い放った。


「皆さんの私に対する気持ちは正直言ってとても嬉しいです。でも・・・皆さんの事は大切な友人としてでしか思えないので、私の事は諦めてもっと相応しい方を選んでください!!」


 その私の言葉に皆が悲しそうな表情をしたが私は心を鬼にしてそれを無視したのである。


(だって・・・よくよく考えたらまだニーナの『天空の乙女』としての任期が後三ヶ月ぐらい残っているし、そもそもゲーム自体もニーナが任期を終えるまでと言う期間だったんだよね。そうなると・・・もしかしたらこれから皆の気持ちが変わる可能性だってまだあるはず!と言うか変わってくれ!!!)


 切実にそう思っているとふわりとカイゼルが私を抱きしめてきたのだ。


「カ、カイゼル!?」

「セシリア・・・貴女以外に相応しい方などいません!」

「いえ、もっと別に視野を・・・」

「セシリア以外目に入りません!」


 そうカイゼルは訴えてくるとじっと私を見つめてきた。

 そんなカイゼルに私は困っていると突然別の方向から腕を引かれカイゼルから引き離された私は、今度はシスランに抱きしめられたのである。


「シスラン!?」

「俺がお前以外の奴を選ぶはずがないだろう!」

「で、でも・・・」

「唯一心を許せるのはセシリア、お前だけなんだ。だから・・・他の奴を選べと言うな!!」

「うっ・・・そう言われましても・・・」


 シスランの辛そうに怒っている表情に私は胸が痛くなったが、だからと言ってここで折れるわけにはいかなかった。

 すると今度は私の腰にするりと別の手が回りシスランから引き離されると、後ろから覆い被さるようにアルフェルド皇子が抱きしめてきたのだ。


「アルフェルド皇子・・・」

「父上や母上に必ずセシリアを連れて帰ると約束してあるんだよ。それに絶対勝つようにとも言われているしね。まあ他の者に負けるつもりはさらさら無いけど」

「・・・あ~あの別れの時のお二人のお言葉ってそう言う意味でしたか・・・」

「だから諦めるつもりはないよ」

「お願いだから諦めてください・・・」


 私はそんなアルフェルド皇子の言葉に呆れていると、強い衝撃と共にレオン王子が私にぶつかりながらアルフェルド皇子から引き剥がし抱きしめてきたのである。


「ちょっ!レオン王子!!」

「ねえセシリア姉様・・・僕がセシリア姉様を諦められると本気で思ってる?」

「うっ!で、でもきっとレオン王子だって私以外の人を・・・」

「それ以上言うともう一度監禁するよ?」

「っ!言いません!!」


 黒い微笑みを私に向けてきたレオン王子に私は体を硬直させながら首を激しく横に振ったのだ。

 するとそんな私の後ろに誰かが立ち腰を掴んで持ち上げられたのである。

 その突然の事に驚いているとそのまま向きを反されお姫様抱っこの格好になってしまった。

 そして目の前には真剣な表情のビクトルの顔があったのである。


「ビクトル!?ちょっ、下ろしてください!!」

「姫・・・先程の発言を撤回して頂けるようでしたら下ろします」

「そ、それは・・・」

「私の心はもう姫一筋なのです。なのに姫以外を選べなど・・・いくら姫の頼みでも聞き入れる事は出来ません!!」

「そんなキッパリと言われましても・・・」


 さらに真剣な表情で私をじっと見つめてくるビクトルに私はどうしたものかと困り果てていたのだ。

 その時私の体に二人の手がガッシリと絡み、そのまま二人がかりでビクトルから引き剥がそうとしてきたのである。

 その予想外の状態にさすがに落ちそうになった私をビクトルが床に下ろしてくれたのだが、そんな私にニーナとレイティア様が同時に抱きついてきたのだ。


「ニーナ!?レイティア様!?」

「セシリア様!!やはり男性方にセシリア様をお任せ出来ません!」

「そうですわ!女性であるわたくし達の方がセシリア様を大切に出来ますもの!!」

「え?いや、大切にって・・・私は別に一人でも大丈夫なのですけど・・・」

「セシリア様を一人にするなんて・・・そんな事出来ません!!」

「わたくし一生をセシリア様に捧げますわ!!」

「ちょっ、何を言い出すんですか!」


 あまりにも重い発言に私は顔を引きつらせながらさすがに引いていたのである。

 そして私はこのままではまずいと思い、慌てて身をよじって二人から抜け出すと皆から距離を取って身構えたのだ。

 するとそんな私達の様子を見かねた国王が呆れた声で仲裁に入ってくれたのである。


「お前達・・・いくらセシリア嬢に認められた場合と条件を出したがいくらなんでも度が過ぎているぞ。さすがにセシリア嬢を困らせる事は我が許さぬ。とりあえず一度冷静になる為にお前達は部屋に戻りなさい」

「しかし父上!」

「カイゼル、国王である我の言葉が聞けぬか?」

「っ!・・・分かりました。・・・セシリアも、もう一度よく考え直してくださいね」


 そうしてカイゼル達は渋々ながら謁見の間から出ていってくれたのだ。

 漸く静かになって私はホッと息を吐いた。


「セシリア大丈夫かい?」

「お父様・・・」


 ガッツリと疲れきった私の下に心配そうな表情でお父様とお兄様が近付いてきたのである。


「やはりここに可愛いセシリアを置いておけない!」

「お、お兄様!?」


 お兄様は険しい表情で叫ぶといきなり私を抱きしめてきたので、私は驚きの声を上げながら顔だけお兄様の方に向けた。

 するとお兄様は私の顔を見ながらふわりと微笑み優しく頭を撫でてくれたのだ。

 その久し振りのお兄様からの感触に私は嬉し恥ずかしい気持ちになっていたのである。


(ちょっとお兄様は度の過ぎたシスコンではあるけど・・・それでもやっぱり家族からの抱擁は落ち着く)


 そう思っているとお兄様は真剣な表情でお父様の方を見たのだ。


「父上、このままセシリアを家に連れて帰りましょう!」

「え?お兄様!?」

「セシリアもここにいるより家に帰る方が良いだろう?」

「ま、まあそうですけど・・・でも帰って良いのでしょうか?」

「良いに決まっている!そうですよね父上?」

「・・・・・出来れば私もそうしたいのは山々なんだが」

「何か問題でも?」


 渋るお父様を見てお兄様はムッとした顔で問い掛けた。

 その時別の方向からその返答が帰ってきたのである。


「ロベルトよ、その気持ちは分かるがそう簡単にはセシリア嬢を家に返せないのだ」

「国王陛下?それはどうしてでしょう?」

「そもそもセシリア嬢は暫く行方をくらませていた事もあり、あまり官僚達に良くは思われていないのはロベルトも知っていよう?」

「・・・はい。しかしそれは!!」

「まあ確かに原因は我の息子であるが、それを公表しないで欲しいとセシリア嬢本人からのたっての願いだからな。・・・セシリア嬢、やはり公表しようか?」

「いえ、それはして頂かなくて結構です」

「だ、そうだ。まあその事もありさらにカイゼルとの婚約も破棄された事でますますセシリア嬢の立場も悪くなるだろう。そんな状態でもしセシリア嬢がすぐにハインツ家に戻られると・・・王族とハインツ家の不仲を疑われる。そうなるとお互い色々まずい事になるのはそなたでも分かるであろう?」

「・・・・」

「だからセシリア嬢にはすまないが、せめて『天空の乙女』の任期が終わるまではこの城に滞在して頂きカイゼル達とは不仲でない事を示して欲しいのだ」


 国王はそう言いながらすまなそうな顔で私の方を見てきたのだ。


(・・・やっぱりゲーム期間が終わるまではここから逃げ出せないようになっているんだね)


 そう察しながらも私はお兄様の腕から抜け出し国王を見て苦笑いを浮かべながら仕方がなく頷いたのであった。


「分かりました」

「セシリア!」

「お兄様、私は大丈夫ですから。それにカイゼル達の事は大切な友人と思っているので、さすがに仲が悪いと噂されるのはとても不本意ですもの」


 そう言ってにっこりと微笑んで見せたのだ。

 さすがにそんな私の様子を見てお兄様は渋々頷き黙ってしまったのである。

 しかしそんな私に国王とお父様がすまなそうな顔で話し掛けてきたのだ。


「・・・セシリア嬢、本当はもう一つ城に残って欲しい理由があるのだ」

「城に残って欲しい理由?」

「実はセシリアがまだカイゼル王子の婚約者であった時にすでに決まっていた事なんだけどね・・・セシリアには一週間後にこの国に訪問される予定の隣国の皇帝とその妹姫のお相手をして欲しいんだ」

「・・・・・・は?」

「本当はもう少し早めにセシリアに知らせるつもりではいたんだけど・・・セシリアの行方不明事件が起こっていたから・・・」

「え?は?そ、それでしたら別の方に・・・」

「先方にはもうカイゼル王子の婚約者であり宰相の娘が滞在中のお相手をすると伝えてあるんだ。さすがにそれを急に変更する事は難しくってね。まあカイゼル王子の婚約者で無くなった事は確実に先方には耳に入ってしまうけど、宰相の娘と言う立場は変わらないからこのままセシリアにお願いする事になるよ。何故ならセシリアが令嬢の中で一番身分が高いからね」

「そ、そんな・・・」

「それに上手くいけば官僚達のセシリアへの評価が変わると思うんだ。だから頑張るんだよ」

「うう・・・はい。出来うる限り頑張ります」


 私はガックリと肩を落としハインツ家の為にも頑張るしかないと諦めながら頷いたのだった。

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