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新たなる人生の始まり

 どうやら私は公爵家の長女として生まれ変わったようなのだ。

 名前をセシリア・・・セシリア・デ・ハインツと名付けられた。

 そして赤ちゃんだった私を抱いていたのが今の私のお母様でレイラ・デ・ハインツと言い、その私を笑顔で見ていたお父様がラインハルト・デ・ハインツ。さらに私の6歳離れたお兄様のロベルト・デ・ハインツであった。

 さらにこのハインツ家は王家と血縁関係があり名だたる貴族の中で一番高い地位の筆頭貴族の家であったのだ。

 そんな恵まれた家庭に生れた私は当然何不自由無い生活を送ることが出来、さらには両親やお兄様そしてハインツ家に仕える人々に溺愛されながらすくすくと育ち現在3歳にまで成長した。


(・・・私、平凡な前世の生活から一転してこんな幸せな生活送れてるなんて・・・なんてラッキーなんだろう!!)


 そう幸福過ぎる今の人生に満足しながら、とりあえず二度目の人生を謳歌する事にしたのである。

 そして今、私の為に用意された子供部屋でお母様と数人の侍女達と一緒に積み木を組み立てながら遊んでいた。

 さすがに外見は3歳の愛らしい容姿をした幼児なのだが、精神は27歳のアラサーなので子供らしく遊べるか最初の頃は不安であったのだが、意外と遊んでみると童心に戻り楽しく遊べていたのだ。


「まあセシリアちゃん上手に積み上げられるわね~!」

「本当ですね奥様!この年でこんなに上手に積み上げられるお子様初めて見ました!」

「お嬢様は手先がお上手でいらっしゃられますね!」


 そうさっきから口々に私を褒め称えながら笑顔を向けられているのだが、私としてはたかが積み木如きでそんなに褒められても・・・と内心呆れながら仕方がないと喜んでる振りをしてニコリと笑顔になったのである。


「まあぁぁぁ!セシリアちゃん可愛いわ!!」


 お母様はそう嬉しそうに言うと、頬を上気させながら私をぎゅっと抱きしめてきたのだ。

 そしてそのお母様に抱きしめられながら見えた侍女達も頬を染めながら身悶えていたのである。


(・・・この光景も何回目だよ)


 そうお母様の胸に顔を埋もれさせられている状態で私は苦笑いを浮かべていたのであった。


「おかあちゃまくるしいです・・・」

「あらセシリアちゃんごめんなさいね」


 私が舌足らずの声で訴えるとお母様はすぐに私を解放してくれたのだ。


(・・・やっぱりまだ口が成長しきってないからはっきり発音出来なくて話しにくいな~)


 そう3歳の体の不自由を感じながらもまあ子供はすぐに成長するからと今の状態を受け入れる事にしているのである。


「さあセシリアちゃん、次は何して遊びましょうか?」

「ん~と・・・おにんぎょうさん!」

「じゃあすぐ用意させるわね」


 お母様は私の言葉を聞いて嬉しそうにしすぐに侍女達に人形を用意するよう指示を出していた。


(お母様・・・人形遊びが一番好きだから人形で遊びたいと言うと喜ぶんだよね)


 そうお母様の楽しそうな顔を見つめつつ、お母様の為に子供らしく遊んであげようと笑顔を浮かべて用意されるのを大人しく待っていたのである。

 するとその時子供部屋の扉が開きそこから私のお父様とお兄様が揃って入ってきたのだ。


「あなたお帰りなさいませ」

「ただいまレイラ」


 お母様はすぐにお父様の下に向かい笑顔で出迎えると、お父様はそんなお母様に笑顔を向けそして額に軽く口づけをした。


(・・・相変わらずラブラブな二人だな~)


 お父様の口づけに嬉しそうに頬を染めたお母様は次にお父様の隣に立っているお兄様に頬笑む。


「ロベルトもお帰りなさい。お父様に付いて行ってみたお城はどうだった?」

「ただいま母様。凄く広かったです!それに色々勉強になる事が沢山ありました!父様また一緒に付いて行って良いですか?」

「ああ構わないよ。お前には将来この家と私の役職である宰相を継いで貰いたいからね」

「はい!僕頑張ります!」


 そう力強く返事するお兄様の頭をお父様が嬉しそうに撫でたのである。


(・・・さて、そろそろ頃合いかな)


 私はそう思うとゆっくりと立ち上がり、ニッコリと笑顔を作って両手を前に出しながら三人の所に駆けていった。


「おとうちゃま!おにいちゃま!」

「ああセシリア!」


 感慨深そうにお父様は言うとすぐに膝を折り私を迎え入れるように両手を広げて私を受け入れる体勢を取ったのだ。

 そしてお兄様もそんな私を笑顔で見守っていた。

 しかしその時、まだ3歳の体に慣れきっていない私は敷かれている絨毯に足をとられそのまま前のめりに倒れてしまったのだ。


「危ない!」


 そんな声が至るところから聞こえたが、私は咄嗟に目を閉じ衝撃に備えるように体を強張らせた。

 しかしいくら待っても転倒の衝撃は来ず、私は恐る恐る目を開けると私を受け止めてくれたお兄様の顔が目の前にあったのだ。


「おにいちゃま!」

「ああ間に合って良かった。セシリア怪我はないかい?」

「うん!おにいちゃまありがとう!」


 ホッとした顔をしているお兄様に私は笑顔でお礼を言ってその体にぎゅっと抱きついた。

 するとお兄様も私を優しく抱きしめ返してくれたのである。


(いや~マジ王子様みたいだわ~!こんな人が私のお兄様なんて最高だ!!)


 そう嬉しく思いながら私は優しく頭を撫でてくれるお兄様の胸に顔を擦り寄せていたのであった。

 するとそんな私達の近くにお父様とお母様が微笑みを浮かべながら近付いてきたのだ。


「レイラ、なんて私達の子供達は天使なんだろう」

「本当にそうね」

「特にセシリアの可愛さはこの世の者じゃない!」


(いやいやそこまで言わなくても・・・)


「これならきっとセシリアが17歳になった時に行われる神託で『天空の乙女』に選ばれるはずだ!」


(・・・・・・・え?『天空の乙女』?どこかで聞いたような・・・)


「それにこの可愛さなら、セシリアと一つ年上で歳も丁度良いカイゼル王子の婚約者にもなれるかもな」

「父様!!僕の可愛い妹のセシリアに婚約者なんて必要無いよ!!」


 そうお兄様はお父様を睨み付けるとさらに私を強く抱きしめてきた。

 しかし私はそれよりもお父様の言った言葉がどうも引っ掛かっていたのである。


(・・・・・・ん?『カイゼル王子』?あれこれもどこかで・・・・・・んん!?『天空の乙女』に『カイゼル王子』!?ま、まさか・・・・・)


 私はある考えが思い浮かびゆっくりお兄様の胸から顔を上げてお父様を見つめた。


「お、おとうちゃま・・・ちょとおききちたいのですが・・・このくにのおなまえってなんでちゅか?」

「ん?国の名前?『ベイゼルム王国』だが?それがどうしたんだい?」


 そう不思議そうな顔でお父様は私を見てきたが私はそんな事気にしてる場合ではなかったのだ。


(『天空の乙女』『カイゼル王子』『ベイゼルム王国』・・・・『セシリア』・・・・もしかしなくてもこれって完全に私が前世でやっていた乙女ゲー『悠久の時を貴女と共に』の世界じゃないか!!!!そして私の名前の『セシリア』ってヒロインの邪魔をする悪役令嬢の名前だよ!!!!!!)


 私はその事実に気が付き心の中で叫ぶとあまりの事に絶望してそのままぷっつりと意識を手放してしまった。

 そしてそんな私の様子に気が付いた周囲の人々が慌てて私の名前を呼んでいたようだが私はもう聞こえていなかったのである。











 私が意識を失ってから数時間後、ふと目を覚ますと自分のベッドに寝かされておりさらに私の事を心配そうな顔で覗き見ていた両親とお兄様の顔が目に映った。


「ああ良かった。セシリア目を覚ましたんだね」

「・・・おとうちゃま」

「本当に良かった・・・ねえセシリアちゃん、気分はどう?」

「・・・うん、だいじょうぶでちゅよおかあちゃま」

「セシリア、我慢しなくて良いからな。何か欲しいものがあるなら僕に言うんだよ。すぐに持ってくるからさ」

「ありがとうございまちゅおにいちゃま。でもいまはなにもほちくないでちゅ」

「そうか・・・」

「まあ侍医の話では体に特に異常は無かったらしいが、とりあえず今日は安静にして休ませるように言われているからな。皆セシリアを休ませてあげよう」

「そうねあなた」

「・・・はい、父様。でもセシリア、何かあったら呼ぶんだよ」

「うん!じゃあおやすみなちゃい」


 そう安心させるようにニッコリと笑って就寝の挨拶を言うとすぐに目を閉じる。

 すると私の額に三人其々が順番に口づけをして就寝の言葉を掛けてくれ、そして部屋の明かりを消すと静かに私の寝室から出ていった。

 そうして暫く目を閉じたまま人の気配が完全に無くなるのを待ってから私は再び目を開けたのである。

 私はそのままじっと真っ暗になった空間を見つめ漸く暗闇に目が慣れてきたぐらいにそっとベッドから抜け出したのだ。

 そしてベッドのサイドテーブルに置いてあるランプに火を点けるとそれを持って寝室に置いてある机に向かった。

 まだ3歳の私の体には少し大きい机の上に持っていたランプを慎重に置くと、両手で椅子を引いてよじ登るように椅子に座ったのだ。

 そうしてなんとか着席した私は引き出しからお絵描き用に大量に入れられている白い紙とペンを取り出しおもむろに紙に文字を書き出したのである。




※『悠久の時を貴女と共に』の大まかなストーリー。


 ベイゼルム王国では数十年に一度『天空の乙女』と言う巫女を選ぶ神託が執り行われている。

 するとヒロインが17歳の年にその神託が行われその『天空の乙女』の役に選ばれる所から話は始まる。

 その役に選ばれたヒロインは一年間『天空の乙女』としての務めを果たすため王宮で住まう事となりそこで攻略対象である男性陣と出会い恋愛をしていくのである。

 そしてその攻略対象の中にベイゼルム王国の第一王子である『カイゼル王子』がいる。

 さらにその『カイゼル王子』には公爵令嬢と言う身分で見た目は美少女だが我儘で嫉妬深く性格が最悪な婚約者『セシリア』がいたのである。

 その『セシリア』は悪役令嬢として様々な嫌がらせや意地悪をヒロインに行いウザいほど攻略対象との恋愛を邪魔をしてきた。

 しかしそんな『セシリア』も最後ヒロインがハッピーエンドを迎えると、各ヒロインの相手役に無惨にも殺されると言う結末を迎えていたのである。




 私はそこでペンを置き、頭を抱えて心の中で唸ったのだ。


(うがぁ!!!!完全に私この『悪役令嬢のセシリア』じゃんか!!!!今ゲーム内の『セシリア』を思い出しても髪の色も瞳の色も全く同じだったよ!!!道理で最初『セシリア』と名付けられた時に何か引っ掛かるとは思ったはずだよ・・・・・せっかく転生して幸せな人生が送れると思ったのに何でこんな事に・・・・・・・あ!まさか前世で死ぬ間際ゲームをもう一回周回したいとか願ったから?でもそれなら何で『悪役令嬢』に転生させられるんだよ!このままじゃ確実にこの人生も17歳と言う若さで終了してしまう・・・)


 自分で書き出した『セシリア』の結末をじっと見つめガックリと項垂れた。

 しかしすぐに私は顔を上げ右手を握りしめて決意を込める。


(いや、まだ悲観するのは早い!!!私が17歳になるまでまだ14年はあるんだ!それまでになんとかして死亡フラグを立たせないようにすれば良いはず!!!)


 そう自分に言い聞かせると、私は再びペンを持ち思い出せる限りのゲーム内容と攻略対象の情報を書き出し、そしてこれからの対策を朝方近くまで考えて紙に書き出していたのであった。

※今回はここまでです。次回更新日は未定ですので、また書けましたら活動報告でお知らせ致します。

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