プロローグ
明日、自分が死ぬと分かれば、貴方は何をするだろうか。
最愛の人と甘い時間を過ごしますか?
金銭が底を突く限り娯楽に耽りますか?
今までやれなかった犯罪を行いますか?
その思い浮かんだ行為こそ、今、貴方が一番やりたいことだと僕は思う。
前文で挙げたような行為はなかなか実行できない。
それには、様々な要因が挙げられる。
周囲、世間からのどのように見られるかという客観的視点。
自分自身にある倫理観や保守的な考えなどの主観的視点。
そして、そんなことをする暇がない時間的問題。
時間的問題とは、行うことに利益が無い、他にやるべきこと、
為すべきことがあるなど、その行為に対して、
時間が勿体ない、無駄だと感じるため、問題視する。
しかし、自分に残された時間があとどのくらいなのか。
自分がいつ死ぬのか。それが分かれば、問題が解消されるのでは?
そんな疑問から、今回のレポートのテーマである「死刻」が研究され始めた。
平成と呼ばれていた時代では、自分の死刻を知ることはできなかった。
死刻とは、Life Endingを意味しており、若者が時刻を捩った言葉である。
ここでLife Ending(以下LEとする)を以下のように定義する。
LEは、人工知能により算出された自分自身の死期のことを指す。
ここでの死期は、祥月命日だけでなく、西暦、時分秒を加えたものである。
算出の要因は、自身の性別、生活習慣、人徳、職業、etc。
ありとあらゆる自分自身の情報を総合されて演算を行う。
確認方法は、生来、僕たちが着用を義務付けられているバングルで行う。
確認の際は、声や指紋などを用いて、生体認証を行う。
そのため、確認場所さえ誤らなければ他人に見られることはない。
LEは赤文字で表示され、一定時間ごとに更新されていく。
また、バングルを外すと、生命情報が無いと判定され死ぬという噂もある。
そんな噂もあるが、あくまで噂のため、今回は言及をしないとする。
さて、話は、死刻が分からなかった時の問題に戻す。
まず、時間的問題。
こちらは、明日死ぬと知った上で、同じことが果たして言えるだろうか。
恐らく、言うことはできない。まさしく、死の瀬戸際なのだ。
細かいことを気にしている時間こそ持っていないだろう。
次に、主観的視点と客観的視点。
こちらで、考えられる主観的視点の根本は、客観的視点にも絡んでくる。
どちらにせよ、こちらの視点も死という大きな要素により見えなくなる。
根本的な解決になっていない。
しかし、問題は視えなければ問題にならない。
以上により、過去にあった問題は、
LE、俗称「死刻」を知ることによって、多少なりとも問題が解消された、
このように結論づけることができる。
しかしながら、新たな問題も生まれたのも、また事実である。
国交問題や差別問題などが挙げられる。
今回、少し触れるのは、経済問題だ。
リストラや就職採用などの基準に「死刻」が組み込まれた。
そのことにより、もうすぐ死んでしまう人はリストラ。
一番、この中で早く死んでしまう人は不採用。
確かに理には適っている方法かもしれない。
この基準を導入してから、経済状況が上向きになったのは確かだ。(図1参照)
けれども、果たして、決断の際、その人物を的確に見ているのだろうか。
LEという固定された一点からしか見てないのではないだろうか。
そこに情があるとは、とても言い難いのではないだろうか。
機械的に処理することは、良いことなのかどうなのかは今後の課題だと考える。
ところで、若者たちの死刻には、2つに分けられる。
1つは、言われることは少ないが、「オープン」と呼ばれている。
これは、通常通り、自身の行動によって、LEが変動する。
もう1つは、「クローズ」と呼ばれている。
オープンと対照的に、クローズは全くLEが変動しない。
このクローズが見られたのは、約二年前である。
前述の通り、LEは、基本的に人に見られることはない。
しかし、特例として、死体からバングルを取り出し確認することがある。
全国民の記憶に新しい、「悪魔殺し」と名乗っていたテロの主犯がそうだった。
主犯を銃殺した後、バングルを確認したところ、LEの表記が青かったという。
表記されていた時間は、銃殺された時間とほぼ一致していた。
LEは正常に機能していた。けれど、変動はしない。
表記が閉鎖しているという点がクローズと呼ばれる所以である。
この言葉は、若者から流行し、今では一般的に使われるようになった。
クローズは、その人物を中心に、感染するように広がっていくと言われている。
根拠は、先に挙げた「悪魔殺し」のテロ集団がそうだった。
時期遅く、テロ集団に加入したメンバーの自供によると、
「主犯の人物と話し、暫くすると青くなっていた」(時経新聞より抜粋)。
主犯が何らかのウイルスを持っていたのか、他の要因が何かあったのか。
何が原因だったか、今も解明された訳ではない。
クローズの人口数は、限りなく少ない。
1億5000万人の国民に対して、0.0001%にも満たないと言われている。
勿論、クローズだからと言って、差別される社会ではない。
しかし、「悪魔殺し」のこともあって、敬遠されているのも事実だ。
そのため、あまり人にLEを見せることが無い。
互いに知らない方が良いこともあるということだ。
このように、LE、俗称死刻は、私たちの生活に切れるわけもない縁がある。
このLEは、我々の生活には欠かせないもので、絶対的な指標である。
さて、結論に入るが、明日自分が死ぬということが分かれば何がしたいか。
僕自身は、何をしたいか分からないが、この大学生活で模索していきたい。
以上
学籍番号 221B11510034
松山 陽葵
初めまして、森野熊三と申します。
投稿するのは、これが初めてとなります。
亀更新となると思いますが、よろしくお願いします!
感想やコメント頂けると幸いです。
@kumasan_story
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