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再臨の継承者~二度目の生―異世界での歩み~  作者: 霧矢凛
第一章 芽出
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3話 『レオンの日常(ⅱ)』

 


 翌日、レオンとクルスは家の裏手で互いに模擬剣を構えていた。

 昨日約束した訓練をするのだ。


 いつもは教えてもらった型を繰り返し、その後レオンの剣をクルスが受けていたが、今日からは模擬戦をするらしい。

 レオンも今の自分の実力を試せるとあって、内心ワクワクしている。


「レオン、準備はいいかい?」


「いつでもいいよ」


 クルスの言葉に勝気に返したレオンは剣を握り直し、いよいよ模擬戦が始まった。



――直後、



(――!?)


 レオンはとてつもないプレッシャーをクルスから感じ、全く動けずにいた。

 少しでも気を抜いたなら、今にも地面にへたり込んでしまいそうである。


 そして全く動かない敵を待っているはずもなく、気付けばレオンの喉元に剣が添えられていた。


「まっ、まいりました…」


 降参の言を聞くと、クルスは元の位置に戻り、剣を構え直した。



「さあレオン、もう一回だ」


 その言葉と同時に、再び強烈なプレッシャーが解き放たれた。



♢♢



 その後、レオンは何もできずに何度も敗北し、かなり落ち込んでいた。


 クルスも流石にやりすぎたかなと思いつつも、レオンのためだと心を鬼にする。


 暫く気落ちしていたレオンだが、このまま落ち込んでいても仕方ないと、クルスに先ほどの模擬戦について聞いてみることにした。


「クルス兄さん。さっきは一体何をしたの?」


 それに対しクルスは、落ち込んだ状況から立直った弟を嬉しく思いながら返答した。


「あれは威圧だよ。自分の魔力を相手にぶつけていたんだ。魔力操作が上手くなればああいう芸当もできるようになるよ」


 魔力が多くないと出来ないけどね、と付け加える。



 この世界の人間は皆魔力を持っている。 量に違いはあれど、そこに例外はない。

 魔法を使うときは魔力が消費されるため、魔法使いにとって魔力量はかなり重要である。


「ねぇ、あれを使えば無敵なんじゃないの?」


 レオンは身を以て体験した威圧に可能性を感じたが…、


「いや、自分より強い人にはほとんど効かなくてね、あと消費魔力がかなり多くて使い勝手が悪いんだ…実はさっきの模擬戦でもかなりの魔力を消費してしまったよ…」


 そして爽やかに笑うクルスの顔はどことなく疲れて見えて、成る程と納得する。


「まあ今日知って欲しかったのは、レオンはまだまだ弱いってことだよ。僕だって剣だけでは父さんに勝てないんだから」


 謙遜するように言ったクルス。だが、レオンは内心、


(魔法使えば勝てるんだ……)


 と、大いに驚いていた。



♢♢



 家に帰ってからも魔法のことや剣術についてクルスに聞いていたレオンだが、クルスの本職の方が気になって聞いてみた。


「クルス兄さん、父さんについて行ったあとは一体どんなことをするの?」


「んー、詳しくは聞いていないんだけどね…基本は父さんに付きっ切りで父さんの仕事を少しずつこなしていくことになると思うよ」


「どこで仕事するとかは分かんないの?」


 立て続けに質問するレオンに、少し考えて口を開いた。


「多分商業都市スカールか迷宮都市ヴィンクになると思うんだけど―― 」

「クルス、迷宮都市に行くからそのつもりでいろよ。…商業都市の方は少し前に魔人が出たとかで、あんまり人が来ねえんだ」


 クルスが村よりもかなり東にある二大都市に行くだろうと予想を口にしていると、突然背後にいた父から声が掛かった。


「魔人?」


 初めて聞く言葉に思わず聞き返してしまうレオン。


「ああ、魔人ってのは、人間がある日突然何かに取り憑かれたかのように暴れだしたやつのことさ。それまで持っていなかった力まで使うらしい。魔人の特徴は目が赤いってことぐらいだな」


 貴重な仕事場所を荒らされたトートスは、苦虫を噛み潰したような表情でさらに説明する。


「なんでも、魔人は元が普通の人間でも魔人化したらかなり強くなるらしくてな。昔この国の騎士団長が魔人になったときには王都が半壊したとか、してないとか。…まあ、魔人については正直よく分かってないな」


 お手上げだ、とばかりに両手を上げるトートス。

 

 レオンは自分には関係のないことだろうとそれを頭の隅に置き、それに代わって今まで黙っていたクルスが口を開いた。


「商業都市は大丈夫だったの?」


 魔人という脅威が現れた商業都市を心配して聞いたが、


「それがなんでも、その場にたまたま居合わせたSランク冒険者が駆除したらしい」


 特に被害を出すことなく片付いたそうだ。

 しかし、情報が命と言わんばかりの商人にしては曖昧な言い方に、クルスは事からそれほど時間が経っていないのだろうと推測する。


 因みに冒険者にはランク制度があり、F、E、D、C、B、A、Sの7段階になっている。新人冒険者はFランクで、Sランク冒険者は冒険者の頂点と言える。


「まあ、魔人なんてのは普通に生きてりゃ関わることなんてないからあんま気にすんな。あとクルス、ちょっとついて来い」


 そう言ってトートスは外へと出て行ってしまい、クルスがそれに続いた。



 聞きたいことを聞き終え、今は魔法で村の人の手伝いをしている母もいないことから、家の中で1人になったレオンは父からもらった本を読み始めた。



 そしてクルスたちが家の中に戻ったときには、本を大事そうに胸に抱えた状態で壁にもたれ掛かり、すやすやと眠っていた。




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