表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世日本の高校教師は、異世界で本物の教育者になる。  作者: 七四
第4章 ブランシュタイナー侯爵の動乱
52/56

アレキサンド兵捕虜の口述調書

つい先日、うちのご領主様がでっかいいくさを始めたという話を聞いた。

俺はただの農民だからよく分からなかった。


毎月の年貢を出しに行ったとき、年貢の取り纏めの軍人が「戦に伴って強制的に兵隊を集める」って言い出した。


もちろん俺は嫌だった。

畑はこれから手入れしないと、来年作物が実らなくなるし、家にいるのは爺さんと嫁さんと小さい子供が3人だけだから、そんな余力は無い。


その場に居た全員が反対した。

そしたら突然、取り纏めがその中で一番声がデカかった奴の首を刎ねた。

そして、こう言ったんだ。


「今、死ぬのと、戦に行くのどっちがいいか?」


笑いながら言ったんだ。

それ以上、俺らは何も言えなくなった。


「ついでに、奥さんと子供も特別施設で預かる。村に残った者は来月より3倍の年貢を拠出するように伝えよ。お前たちは30フル後、ここに集合する様に」

取り纏めの軍人がそう言った。


ついに気でも狂ったかと、皆が顔を見合わせたよ。

俺らは急いで家に戻って、事情を説明して、爺さんと嫁と子供を隣のブルト伯爵様の所に行くように話して、逃がした。


俺も逃げたかったが、村の外には兵隊が俺たちを監視してた。

嫁たちは森に隠れながら逃げる様に言った。


嫁たちを逃がす為、しょうがなく俺は集合場所に行った。


集合場所に行くと、さっきの半分ぐらいしか集まってなかった。

別の場所では逃げ出した家族がいて、男は首を刎ねられて、女は無理やり馬車に入れられ、どこかに連れて行かれてた。


とても領主のする事じゃねぇ。


幸い俺の家族は見えなかったから、うまく逃げてくれたと思う。


そして、簡単な皮の胸当てを着させられたかと思うと、すぐに連れて行かされた。


それがこの砦だ。

すごい厚い岩をくり抜いたような、継ぎ目のない砦だった。


そこで、窓に立って、変な筒を持たされた。

聞けば、これで敵を殺すらしい。

下の引き金を引けば弾が出るみたいなこと言ってた。


その日から、日が出てる間、ずーっと筒を持って立つ日が続いた。

敵の砦は、すごい煙を出した馬車みたいなのが、日に何度も往復して人と物を運んでた。


何か、でっかい声で「投降しろ」とか言ってたが、出入り口が閉められているから無理に決まってる。

というか、足枷を付けられてて、この場から自由に動けないから無理な話だ。


唯一の楽しみが食事だったが、これがまた不味い。

水増しされたルル一杯に、水一杯。

一日これだけ。


この量は囚人より酷いと思う。


そして、数日したら攻撃しろ!って命令が来たんで、とりあえず引き金を引いたんだ。

そしたらすごい音と煙で俺は目を回した。


何とか、正気を保って周りを見渡すと、何人か死んでいた。

敵の攻撃かな?と思ったら、筒が吹っ飛んでた。


どうやら、弾を出す薬の量が多かったらしい。

俺は震えが止まらなかった。


あの筒を俺が持っていたら、俺が死んでたんだ。


ガタガタ震えてたら、兵士が来てぶん殴られた。


「早く次弾装填し、構えんか!!」


俺は震える手で弾を入れて、構えた。

そしたら、向こうの砦の奥から光が見えた。


何か、凄い速さで飛んできたんだ。

そいつが砦の壁にぶつかったら、すごい音をたてて爆発したんだ。


岩みたいな砦の壁が簡単にぶっ壊れた。


俺は腰を抜かして立てなかった。

窓の外を見ると、すごい勢いでさっきの何かがこっちに向かって飛んできてたんだ。

ブルト伯爵には竜を使役する戦士がいるって噂に聞く、たぶんその竜のブレスだと思う。

じゃなきゃ、こんなに簡単に岩が粉々になる訳がない。


一発が俺の近くに当たって、俺は気絶した。


気がついたら、青空が見えていた。


辺りを見回すと、砦がボロボロになってて、敵が占領していた。


「降伏するっすか?」


女の獣人が俺を見つけて、笑いながら言ったんだ。

俺には女神様の微笑みに見えた。


俺は何回も大きく頷いて、ついていった。


そして、窓から見えた煙が出る馬車に乗せられて、遠くに行った。

着いたらもう夕方になってたが、そこで俺は目を疑った。


そこには、俺の近所に住んでた人がいたからだ。

他の人たちも、侯爵領から逃げ出した人たちだろう。

見渡す限り人の波だった。


話を聞いたら、ブルト伯爵が可哀想な俺たちを、安全なココに連れてきたそうだ。

北の大森林の木を使って、簡単な家まで建ててくれてた。


色々聞いて回って、何とか逃げ出した家族が見つかった。


俺は感動で涙した。


そして、ブルト伯爵のご慈悲に感謝し、今も家族とここに暮らしている。

ああ、うちの領主は何でこんな事しでかしたんだろう?

俺にはよく分からなかった。


ただ、とんでもない事に巻き込まれたのは間違いないだろうと思う。

早く戦が終わって欲しい。


そう、願うばかりだ。

次回更新は11/15です。よろしくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ