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前世日本の高校教師は、異世界で本物の教育者になる。  作者: 七四
第4章 ブランシュタイナー侯爵の動乱
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砦攻略

日の出と共に砦が慌ただしく動いているのが分かる。

窓から見える影が右往左往しているのだ。

天候は晴れ。


そして、日が昇りきって、周りが十分明るくなると、一斉に砦から煙が出た。

音は数秒してからこちらの砦まで届いた。


「旦那様!?すごい煙と音ですわ!!大丈夫ですか?」

ルミナが心配そうに洋介を見る。


「心配ないよ。向こうの砦から2カロメルト離れてるから届くわけないよ。ほら、あそこを見てごらん」

洋介が指したその先には、地面に何かぶつかり、土煙を上げていた。


「だいたい、1カロ先ぐらいが射程かな?まあ、優秀な方だ。でも、煙が凄くて砦が半分ぐらいしか見えないや」

洋介は双眼鏡で相手の動向を見る。


黒色火薬で一斉射撃している為、煙が凄く、砦の半分以上、煙に覆われてよく見えなかった。


「それでも、まだ閃光が見えるから、撃ってるんだろうね。届かないのに…はぁ~」

洋介はため息が出た。


「たぶん、夜明けとともに騎馬隊が突撃してくると思っていたんでしょう。しかし、来なかった。一向に来る気配がないから痺れを切らして撃ち始めたという感じでしょうねぇ。まるで戦略が無い。愚かな者が指揮を執っていますねぇ」

シャドウが砦の方を見ながら呟く。


「やっぱりそう思う?僕もそう思ってた」

洋介も同意する。


「でも、ヨウスケ。あれじゃ近づけ無いわよ」

ミリムも双眼鏡を見ながら呟く。


「とうとう始まった…って、3人ともどうしたの?なんか首のあたりに跡がいっぱいついてるよ?」

ノイアが様子を見に来たら、洋介とミリムとルミナの首元を心配そうに見る。


「あ…気にしないで、ただの虫刺されだから」

ミリムは焦ってノイアに返答する。


「そ…そうですわ!」

ルミナも焦る。


洋介はワザと無視した。


「ご主人様。そろそろ反撃に出たらいかがですか?」

シャドウが冷静に言う。


「そうだね。ルミナ。ミルトさんに連絡を」

洋介がルミナに言う。


「わかりました。旦那様。では、皆さん。これより作戦に入ります。必ず生きて帰りましょう!!」

ルミナがはっきりと皆が聞こえる様に叫んだ。


「おーー!!」

周りの家臣や兵のすべてが声を揃えて叫んだ。




後方の砲車部隊はすでに全車両目標を捕らえ、発射の合図を待っていた。

その数30台。

その先頭車両ではミルトが大きな双眼鏡で砦の方を見ていた。


「煙が少し流れてるから、微風ってとこか。まあ、誤差の範囲だろ。計算上は出入り口近辺に当たるはず」

ミルトは砦と手元の計算式を書いた紙を見ながら考えていた。


「ミルト…聞こえる?」

無線機から少し「ザー」という音が混じりながらルミナの声が聞こえた。


「聞こえてるよ。いつでもどうぞ」

ミルトは冷たく答える。


「じゃあ、攻撃開始で。今から30フルもしくは、私の連絡があるまで打ち続けて」

ルミナははっきりとした口調で言った。


「了解…全車!攻撃開始!」

ミルトは強い口調で言う。


その瞬間、一斉にカノン砲が火を噴いた。


すさまじい土煙と轟音が響く。


放たれた弾丸は十数秒間、放物線を描きアレキサンドリアの砦めがけて飛翔した。

そして、着弾する。

音は遠くて聞こえないが、遠目からでも、爆発し、壁に大きな穴が開いているのがわかった。


「ありゃ?少し上に当たったな…う~ん、修正0.1度ってとこかな。仰角修正!下、0.1度!」

ミルトは少し考えて、無線機を持ち、叫んだ。


砲を操作する人間が、復唱しながら仰角を下げる。


そして、空の薬莢が砲の後部から飛び出す。

砲の後部にいる人間が弾を装填する。


「てー!」

ミルトが叫んだ。


カノン砲が火を噴いた。




砦から見ると、カノン砲の弾がアレキサンドの砦に着弾したと同時に、すさまじい轟音と、壁に大穴があいたのが見えた。


「す…すごい」

ルミナは目の前の光景が信じられなかった。


ミリムとノイアも口を開けて驚いている。


洋介は犠牲者があまり出ないよう心の中で祈っていた。


砦の中の兵たちも唖然として、終始無言だった。

目の前の強固な砦が味方の砲撃で無残に破壊されていく。

本来は喜ばしい事だが、兵の心境は複雑だった。


それは、今まで経験したことも無いような一方的な破壊だったからだ。


味方の兵たちの心に去来する物は、ブルト軍で良かったという安堵感と、一方的に破壊されていくアレキサンド軍への憐みだった。


巨大な要塞が音を立てて崩れていく様子を、ブルト軍全員が静かに見ていた。




30フル後。アレキサンドの砦は無残にも全壊に近い状態であった。

そこに、重騎兵と獣人が突撃をかける。


さしたる抵抗もなく、あっさりとアレキサンドの砦を占領し、ブルト軍が勝利した。

ブルト軍の砦攻略部隊全軍を進める。


大変だったのがその後で、全壊に近い砦を捜索し、アレキサンド軍の残党を探した。

ついでに、投降を促し捕虜とした。


しかし、洋介達の予想通り、アレキサンド軍の大半は強制徴用兵ですぐに降伏したが、数が多かった。


砦だけでも3000人捕虜が出た。歩兵部隊を半分残し、その処理を任せ、主力の部隊は一路アレキサンドリアへ向かう事にした。


「いでよ!オロチ!」

洋介が叫ぶ。


葉書から、オロチの欄が消え、空間が大きくゆがみ、8本首が生えている多頭竜のヒドラがノシノシと出てきた。

大きさはレオパルトより、小さいがそれでも3階建てのビルぐらいの大きさがあった。

設定は「8本の首を持つ多頭竜。自由自在に首を動かし、敵を残忍に噛み砕く。稀に雷のブレスを吐き、二本足で移動する。ペナルティとして頭が悪く、移動速度が人の走るぐらいの速度しか出せない」と言った物だった。


「ゴシュジンサマ。オレ人間喰ウ。ウマソウ」

オロチの第一声がそれだった。


『こいつは危ないな』

洋介はオロチの言動に警戒心を抱いた。


「オロチ!今はそんな暇はない!俺について来い!」

洋介は強い口調で言った。


「…ワカリマシタ」

オロチは少し不服そうに返答した。


洋介が周りを見回すと、騎兵の馬はオロチの姿を見て怯え、獣人達は警戒の唸り声を上げていた。


「皆さん!!心配ありません!先を急ぎましょう!」

洋介は雰囲気を察して、大声で叫び、オロチと共に先頭を行った。

そして、全体が前に進んだ。


最後尾には砲車がゆっくりとしたスピードでついてきている。


「旦那様…レオパルトと違って、すごく怖いです」

ルミナは洋介に近づき、語る。


「オロチって言うんだ。見た目通り強いから頼りになるよ。言動はちょっと怖いけど、俺がコントロールするから」

洋介が語る。


「ご主人様。いざとなれば私がついていますのでご安心を。今は先に進みましょう」

シャドウが洋介に言う。


「ありがとう。頼りにしてるよ」

洋介はシャドウに感謝する。


「勿体無きお言葉。では、行きましょう」

シャドウが深々と礼をする。


砦攻略部隊は一路、アレキサンドリアを目指した。

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