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前世日本の高校教師は、異世界で本物の教育者になる。  作者: 七四
第4章 ブランシュタイナー侯爵の動乱
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軍靴の響き

「リッチは死んだし、部下は役立たず揃い。あ~、つまらん」

アレキサンドリアの城ではブランシュタイナー侯爵が玉座に座り嘆く。


「うまく、コルトを帝国領に潜り込ませたと思ったが、変な国を作りやがって。やはりリッチの弟子は油断ならんな」

アレキサンドは苦々しく呟いた。


「さて、そろそろ機は熟したか。おい!フルートを呼べ」

アレキサンドは近くの兵士に言い放った。


兵士は敬礼し、急いで呼びに行った。


しばらくして、フルートと呼ばれる、若い緑色の真っ直ぐな長髪をたなびかせるトレンチコートを着た、いかにも軍人らしき身長180㎝ぐらいの男が来た。身長の割に華奢で顔もシャープでいかにも自分に酔ってそうだった。


「御呼びですか?閣下。」

フルートは華麗にかしずき、アレキサンドに服従の意志を示す。


「ブランシュタイナー軍、筆頭参謀のお前に聞く。いつから全世界と戦が出来そうか?」

アレキサンドはニヤニヤしながら聞く。


「閣下がご所望ならば、ひと月ほど準備の時間をいただければすぐに開始できます」

フルートは涼しい顔で返答する。


「さすがは元ケーニヒス帝国の参謀。すでに作戦計画は策定積みか?」

アレキサンドは驚くように聞く。


「もちろんでございます。閣下の野心は、この地を視察した時からわかっておりました。私の作戦をご承認していただければ、先ほど言った通りの期間で作戦を開始できます」


「そうか。では、任せよう。作戦を承認する。すぐに準備に入れ」

アレキサンドは立ち上がり、言い放った。


「は!お任せください」

フルートはニヤリと笑いながら礼をする。


こうして、世界を巻き込む戦乱の火ぶたが切って落とされた。


400年続いたジェノブ王国とケーニヒス帝国の2強体制が終わりを告げ。

世界は混沌の渦に巻き込まれる。

この戦争は、のちの教科書に『ブランシュタイナー王の狂乱』と呼ばれ、記憶されることになった。




ルミナの書斎でルフトは大量の汗をかきながら、書類とにらめっこしていた。


「どうも、最近の穀物相場がおかしいですなぁ」

ルフトは収支を見ながら唸る。


「どうかしたの?」

ルミナも仕事をしていたが、ルフトの呟きの様子がおかしいので聞いてみた。


「ここ数日の売買件数が昨年と比べて桁違いなのです。値段も倍以上で取引されてますし」

ルフトは書類をルミナに見せる。


「何これー!王都への輸出が3倍に増えてるわ!!」

ルミナは数字を見て驚く。


「どうしたの?」

応接セットのソファでくつろいでいた洋介とシャドウが、ルミナの驚きの声を聴き、話の輪に加わる。


「旦那様!見てください!この数字!」

ルミナが洋介に書類を見せる。

ちなみに、旦那様の名称はつい先週の会議の席で可決され、承認された。


「どれどれ。凄い収入じゃない?良い事なんじゃないの?」

洋介は数字だけ見て判断した。


「ご主人様。これはブルト領もすぐに行動できるよう備えるべきですよ!」

シャドウは驚き、強い口調で言う。


「何に?」

洋介はピンとこなかった。

ルミナも不思議そうな顔をする。


「お分かりになりませんか?王都が急にこんなバカげた金額で食料を買い込む理由を?」


「「?」」

二人は見当がつかなかった。


「では、質問を変えましょう。現在いたるところで作物は収穫され、売りに出される。普通であれば相場は下がります。しかし、今は逆に上がっている。と、言う事は誰かが理由があって買い占めているという事です。わかりますか?」

シャドウはゆっくりと説明する。


「そうだね」

洋介とルミナはまだ気が付かない。


「しかも、倍の値段と言う事は、急いで量を集めなければいけないという焦りが見えます。わかりますね?」


「うんうん。しかし、そんなに誰が食べるんだろうね?」

洋介は不思議に思う。

そこで、ルミナは有る事に気づき、顔を青ざめた。


「ルミナさんは気付いたようですが続けましょう。ご主人様の言うとおりで、誰が食べるのでしょう?王都の中で一番生産性が無い、人が多い部署は何処ですか?」


「…常備軍」

洋介は平然と答える。まだわからないみたいだ。


「はぁ~。鈍いですねぇ。今までも、常備軍はいました。ですが、今、食糧を増やさないといけないという事はその常備軍に人を増やすという事です。もうわかりましたか?」

シャドウは呆れながら言う。


「何かあった…戦が近いの!!」

やっと洋介が気付いた。


「そうです。しかもこの買い取り価格から推測するに、かなり急いで、戦の準備をしています。まさに全軍召集と言った規模ではないでしょうか?」

シャドウはルミナとルフトに聞く。


ルミナはオロオロとしていた。

ルフトは血の気が引いていた。


「はぁ~、先が思いやられる。伯爵はシャキッとしなさい!!それでもご主人様の奥様ですか!!すぐに全家臣を緊急招集し会議を始めなさい!!」

シャドウはルミナに叫んだ。


しばらくして、会議室はブルト家家臣一同が全て集まった。


「お忙しい中、集まっていただきありがとうございます。この度、招集したのは急を要する事案が発生しました」

ルミナは会議室の中央で喋る。


「動乱が近づいています。たぶんブランシュタイナー侯爵でしょう。各員、戦の準備を至急お願いします。私も明日には領土全域にお触れをだし、兵の緊急招集を行います。合わせて、食糧の備蓄を始めます。領民には申し訳ありませんが、食糧の緊急拠出を行います」

ルミナは沈痛な顔つきで語る。


「また、戦が始まるのか…」

グルンが悲痛な面持ちになる。


「これが最後の戦になる事を願うばかりです。各員、準備をお願いします!」

ルミナは強い口調で言い切る。


「は!」

会議室にいるすべての人が立ち上がり、敬礼をした。



翌日、王都からの緊急郵便が届き、アカデミアの使節団を王都に戻すことと、鉄道建設を当面の間、凍結する事が決まったと連絡が来た。


アカデミアの使節団は、王の褒美など含めて、金貨1500枚を持参して視察の3日後に来訪し、即日ルールント工科学校で技術導入の勉強に入った。

まだ基礎段階の勉強までしか終わってなかったが、王の決定を伝え、返すことにした。


金貨の方は、手紙では、自由に使ってよいという事が書いてあったので、そのまま武器弾薬を製造する資金に転用する事にした。


アカデミア使節団が帰った後、ルールントは戦時生産体制に移行し、新兵器を含めた、様々な武器や武具を24時間体制で生産する軍需工場に生まれ変わった。


鉄道も、エルンから少し延伸し、最前線の砦の近くまで延伸することが決定した。

砲車と人員と物資を速やかに運ぶためには鉄道で輸送することが最適なのだ。


ブルト領全土が戦に染まって行った。

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