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前世日本の高校教師は、異世界で本物の教育者になる。  作者: 七四
第3章 ブランシュタイナー侯爵の野望
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学校開校したから、もういいよね?

獣人の襲撃もあったり、オルファンの作業も難航したりと、色々と手間を取ってしまった。


しかし、ついにこの日がやってきた。

学校の開校日が決まったのだ。


開校に先立ち、領内にお触れが出る。

開校日は来月の初日。

エルン在住の10歳が入学する。


本当は、前世小学校の様に6年間しっかりと学ばせたいが、キャパ的にもギリギリの人員だったので、今後の課題として順次拡大していくこととする。

同時に、コミュニティスクール方式で授業を開放して、勉強をしたいという人にも配慮した。


授業は三時課の鐘(前世でいう朝九時)から六時課の鐘(前世でいう正午)までの午前中のみで、一コマ1時間20分の予定だ。残りの10分は休憩時間にあてる。

授業日は週5日。

スペラント語の読み、書きや、数学、体育、化学を年単位でカリキュラムを組んだ。


そして、最大の特徴は給食を出す事。

六時課の鐘と共に、食堂を解放して、生徒限定で給食を食べてもらい、家に帰す。


この世界では子供でも仕事はある。

その労働力をわざわざ休ませて、勉強させてもらうのだ。

その負担感をなくすように、昼食はこちらで用意する。


とにかく多くの人が来てもらわないと、この事業は成功しない。

王様からの褒美が無ければできない、苦肉の策だった。


教科書は、洋介とオルファンが一生懸命作った手作りの教科書を無償で配る。

生徒には体一つで来てもらえれば、良いような体制を作った。


みっちり二か月ルールントで作業してもらったオルファンには申し訳ないが、こっちに戻ってきても開校の準備作業を手伝わせた。


「申し訳ないね。オルファン。あっちもこっちも手伝ってもらって」

洋介は印刷室で副教材を刷りながら言う。


「いえ、確かにきついですけど、王都に居るより充実しています。特にルールントの経験は面白いですね」

オルファンは笑いながら答えた。


「面白かった?」


「はい!王都でも理論段階の事が、存在しているのですから。凄い事ですよ!」

オルファンは目を輝かせて言った。


「確かにね~。前世さまさまだね」

洋介は前世の研究者全員に感謝した。


「ヨウスケさんの居た、ニホンという国はそんなに進んでるんですか?」

オルファンは目を輝かせて、洋介に聞く。


「ルールントで作った工場なんかは100年以上前に出来てたからね」

洋介は作業しながら言う。


「そんなにも前の話なんですか!!」

オルファンは固まった。


「前にも言った通り、他の星まで行ける科学力があるんだって。」

洋介は苦笑いを浮かべて言った。


「恐ろしいですね…想像がつかないです」

オルファンが苦笑いを浮かべる。


「僕らが頑張れば、そのうち日本の科学力を超える発明をしてくれる人も出てくるって」

洋介は笑いながら答えた。


洋介の言葉は、未来への希望だった。



忙しいと月日が過ぎるのは早いもので、とうとう開校日となった。


ギリギリまで教師を集めて、研修を行った。

そして、新しく作った職員室で初めての職員会議を行う。

一同が顔をそろえるのは初めてだ。

「えっと、この半年間いろいろありましたが、皆様の協力のおかげでこの日が迎えられます。しかし、今日という日は始まりの一歩。この仕事は未来の子供たちの為に、続けなければいけません。皆様の今後の努力に期待します」

洋介は全員の前で一礼した。


「では、これからの実務は、この教頭のオルファン・スミリンが行います。本日の予定は、校庭に全員集合のちに各クラス分けを行い、各教室に移動します。そして、名簿作成作業に入ります。そして、教材の配布に移ります。正午の鐘で本日は終了です。食堂に誘導してください。いいですか?」


部屋中から賛同の声が響く。


「では、よろしくお願いします。解散!」

オルファンは大きな声で言った。



『しかし、若くて可愛い教頭だよな。前世とは大違いだ』

洋介は前世でいつもサスペンダーをパシパシ鳴らしてた、小太りの禿げかかってた教頭を思い出していた。


「どうしましたか?何かありましたか?」

オルファンは洋介の視線に気づき答える。


「…いや、ただ可愛いなって思ってね」

洋介は素直に思ってたことを口にした。


「ひゃう!そ…そんな、恥ずかしいです!でも、嬉しいです」

オルファンは驚き、変な声をだした。

そして、顔を赤らめてモジモジとしている。


『あれ?…やらかしちゃった?』

洋介は何気なし言った言葉を思い出して顔を赤くした。


「…ほらほら!生徒が集まってきてるよ!教頭が頑張らないと!」

洋介は気を紛らわすようにオルファンを追い立てた。


「ひゃい!あ…はい!わかりました!」

少し壊れ気味だったオルファンも何とか立ち直り、校庭に駆けて行った。


「危ない、危ない。ルミナさんに怒られる所だった」

洋介はルミナのジト目を思い出し冷静になった。



校庭に出ると、様々な子供が集まっていた。

近くでは親御さんも心配そうに見つめている。

校庭の外には学校という物を一目見ようと領民も集まり、さながらお祭りの様な雰囲気を感じる。


外で、色々と準備をしていると、祝辞を言うために来ていたルミナと目が合った。

洋介は、オルファンとのやり取りを思い出して、少し焦った。


そして、待望の開校行事がはじまり学校が開校した。

洋介は、ついにここまで来たかと万感の思いで開校行事を見守った。


その日は多少混乱があったものの、無事に終わり、反省会をして終わった。





洋介はルミナの屋敷に戻った。


「ご主人様。お疲れ様でした。とうとう成し遂げられましたね」

部屋に戻るとシャドウが深々と一礼した。


「何とかね。でもこれからが大変だからね」

洋介はため息をついて椅子に座る。



扉をノックする音が聞こえる。



「ヨウスケさん!ルミナです!お茶を持ってきました」

その声はルミナだった。


「ありがとう!今開けるよ」

洋介は椅子から立ち上がり、扉を開けた。



そこには、化粧をしたルミナが立っていた。

服も清楚な気合の入った服だ。

そこはかとなく、良い香りが洋介の鼻孔をくすぐる。

『香水かな?珍しい』



「???」

洋介は違和感を感じながらルミナを部屋にいれた。



「おや?これはこれは…」

シャドウは驚き、独り言のように呟いた。



「伯爵様が自ら運んで来なくてもいいのに。でも、ありがとう。ちょうど喉が渇いてたんだ」

洋介は違和感を感じながらも、ルミナの気遣いに感謝する。


「いえ…お話もあったので、ついでです!ついでなんです!」

顔を真っ赤にしたルミナは妙なテンションで語った。


「じゃあ、遠慮なく頂きます」

洋介が緑茶の様な紅茶を一口飲もうとした瞬間、ルミナは机を叩き。身を乗り出して勢いよく喋り出した。



「よ!ヨウスケしゃん!!わわ、私と!こここ、婚約してくだしゃい!!」



洋介はそのカミカミの告白に驚き、固まった。

ルミナも机を叩いた状態で固まった。



無言の時が流れる。



「ブルト伯爵。ご結婚はアレキサンドの脅威が去った後で、と言うことでよろしいですか?」

シャドウは冷静に言った。


「ももも!もちろんです!でも、もっと早くても大丈夫です!覚悟は出来てます!」

ルミナはやっと立ち直り、胸を叩いてアピールをする。


「いやいや…俺抜きで進めるのはどうなの?というか唐突だね」

洋介もやっと回復してお茶を一口すすり、答える。


「何かご不満でも?ミリム嬢の方が好みでしたか?」

シャドウはからかう。


「た!確かに胸の大きさは負けてますけど!でも!でも~!」

ルミナはいちいち反応して必死に反論する。


「いやいや、そんなのじゃ無いから!」

洋介はシャドウのからかいに強い口調で反論する。


「では、オルファン嬢ですか?確かに昨晩は遅くまで一緒におられましたからねぇ」

シャドウのからかいはまだ続いた。


「夜遅くまで何をされてたんですか!私というものが居ながら!不潔です!」

ルミナはまた反応する。


「だから!そんなのじゃないって!」


洋介は覚悟を決めた。

立ち上がり、ルミナの横に行き、肩を持って自然に立たせる。



見つめ合う二人。

ルミナの瞳は、まっすぐで綺麗だった。

あの時、この子を守れて本当に良かったと思う。


…答えはとっくの昔に決めていた。

ただ洋介の覚悟が足りなかっただけだ。

今はもう、迷わない。



洋介はルミナを強く抱きしめた。


ルミナも洋介を強く抱きしめ返した。



洋介はルミナの耳元で呟いた。

「ルミナが告白してから、散々待たせたね。我儘で、ごめん」

「ううん。嬉しい。やっぱり、私の勇者様。信じてました」

ルミナも洋介の耳元で呟いた。


長い抱擁の後、二人は唇を重ねた。

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