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前世日本の高校教師は、異世界で本物の教育者になる。  作者: 七四
第3章 ブランシュタイナー侯爵の野望
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グルンの帰還

グルンとミリムは馬に乗り、漆黒の暗闇をブルト領に向かい駆けていた。


ミリムは先ほどのドレスから冒険者風の軽装に着替え現れた。

なかなか胸が窮屈そうで、服の上からもその存在感を主張していた。


『ミルトは目のやり場に困るだろうな。まあ、ルミナ様にちょっかいを出すよりは、ミリムに手を出して貰った方がいいだろう…あいつは年齢が近いせいか、立場を知らないからな』

グルンは馬に乗りつつそんな事を考えていた。


夜道を馬で駆けるのは危険が伴うが致し方ない。

いつ追手が来るかわからない状況で一刻も早くブルト領に入る必要があったからだ。


『あと1メモも走ればオクト草原だ。そこでいったん休憩しよう』

グルンは馬の事も考え決めた。


しばらく駆けるとミリムが口を開く。


「ねえ!なんでブランシュタイナーの軍隊を押し返せたの?」

ミリムはグルンに聞こえるように叫ぶ。


「なぜ今それを聞く?」


「だって!もうすぐオクト草原だから!あそこで勝ったんでしょ?どうやって万の軍勢に勝ったの?」

グルンは一般にはそういう情報しか流れていないのかと思った。


「勝ってはいない。ただ交渉しただけだ。停戦と不可侵条約のな!」

グルンは曖昧にはぐらかした。


オクト草原に到着した。グルンは草原唯一の水場に向かい、馬を休ませた。

ミリムも同じように馬を休ませ、満天の星空の元、草原に腰かける。


追手を警戒して暖は取れないので、グルンはアレキサンドリアで買っておいた酒を開ける。


「あーー!ずる~い!私もちょうだい!!」

ミリムは暗闇の中、それを見つけグルンにおねだりをする。


「ああ。かまわんがコップは無いので回し飲みだぞ?年頃の女性には辛かろう?」


「別に気にしないわ。アレキサンドリアではもっと酷い物飲まされたし!」

暗闇の中でよくわからなかったが、ミリムの顔が少し怒っているように見えた。


「そうか。では、先に飲め」

グルンは封を開けたばかりの酒をミリムに渡す。


「わ~い。いただきま~す」

ミリムはゴクゴクと喉を鳴らし飲む。


「ぷは~!あったまる~~!!」

一気に半分まで飲み干したミリムがオッサンみたいに叫ぶ。

その様子にグルンは呆れた。


「ミリム。いまいくつだ?」


「18!どうしたの?なんかついてる?」

ミリムは不思議そうな顔をする。


グルンはミリムから酒を貰い、できるだけ口をつけないように酒を一口飲む。

少々強めの酒を買ったはずなので、あれほどゴクゴク飲めるような酒ではないはずなのにミリムは意に反さない。


『よほどアレキサンドリアで鍛えられたか…』

グルンはミリムの今後を憂いた。


「ねえねえ!さっきの続き!!どうやって停戦できたの?」

ミリムは、なおも食い下がる。


「はぁ~。先ほども言っただろう?交渉だと」


「あのアレキサンドが下がるわけないじゃん!圧倒的に有利なんだよ?私だって鏑矢を打つわ」

グルンは困る。やはり酔っ払いでも貴族の娘。頭は確かだった。


「それは、ある御仁が助太刀をしてくれて助かったのだ。彼が居なかったら停戦など出来なかっただろう」

グルンは言葉を選びながら語る。


「ある御仁?ね~、教えてよ!『青竜』の異名を持ったあなたでさえも苦戦した軍隊を、一人でそこまで押し返した人なんてこの世に居るの?」

グルンは少し笑う。


「ふふ…そうさな、確かにこの世には居ない。いや、居なかったと言うべきかな?」

グルンも言いながら矛盾していることに気が付き、可笑しかった。少々酒を飲みすぎたかなと思った。


「??意味が分かんな~い!!」

ミリムはそんな様子のグルンをみて不思議に思う。


「まあ、来れば分かるさ。かの御仁の英知と懐の深さを。そして、前ブルト伯爵に引けを取らない優しさを感じるのだ」


「??」

グルンの言葉にミリムはますます混乱する。


グルンは思い出していた、遺品を届けた時のヨウスケの顔を。


彼は見たことも、話したことも無い人間に対して涙を流し、鎮魂を祈った。


前世日本では当たり前のように平和教育をしているが、この世界では教育自体皆無なので戦で人が死んだと言われても、関係のない人にとっては飯のタネにもならない、どうでもいい事なのだ。


損得で動く人間が非常に多い中、グルンは前ブルト伯爵に助けられた。

損得を顧みずに救ってくれた神様なのだ。


前ブルト伯爵は性格がヨウスケと似ている。

特に人を思う優しさが似ていた。


グルンが怪我から癒えた時の前ブルト伯爵の顔とヨウスケの顔がダブる。


『あの時も泣いて喜んでくれていたな…イカンな、今日は酔っぱらってる』

グルンは少し感傷的になったが、すぐに気持ちを切り替える。


まだ試練は道半ば。

感傷に浸る時間は無いのだ。


いつの間にか辺りは少し明るくなっていた。

もうすぐ太陽が顔を出すだろう。


ミリムはマントを羽織り、いつの間にか寝ていた。

グルンは体を揺さぶり起こす。


「おいミリム!朝だ。出発するぞ」


「う~ん?眠い」


「そりゃそうだ。エルンに着いたらゆっくり寝かしてやるから我慢しろ」


「は~い。う~ん!」

ミリムは起き上がり、大きく背伸びをする。

自己主張する二つの果実が大きく動く。


グルンはその間に馬を準備し、颯爽と乗っていた。


「早く出発するぞ」


「は~い」

ミリムも急いで馬に跨り、二人はエルンに向け出発した。




エルンでは朝早くから洋介がヒルマンの屋敷を改装していた。それに、ルミナ、ミルト、多くの使用人が手伝っていた。


「とりあえず荷物はブルト伯の屋敷に全て持って行って!」

洋介が声を張り上げ全ての人に聞こえるように言った。


シャドウは洋介が疲れないように一体化して、身体強化スキルを使っていた。

おかげで、あり得ないような大きな物も一人で運んだり動かしたりしていた。

外では馬車が待機し、ブルト伯の屋敷までピストン輸送していた。


「しかし…物が多い!」

ミルトは汗を流しながら唸る。


「ヒルマン兄さんは多趣味でしたから…ミルト!頑張って!」

ルミナ大きな身振りでミルトを励ます。


「頑張ります!!」

ミルトは急に頑張りだした。


「青春だね~」


『まさにそうですね』

洋介とシャドウはその光景を見てニヤける。

シャドウの声は洋介の頭に直接響いているが、笑っているように感じた。


しばらく作業をしていると外が慌ただしくなった。


その異変に、洋介とルミナとミルトが険しい顔で外に出る。

そこには、グルンと、見知らぬ美女が居た。

しかし、あまりに酒臭い。

特に美女の方は酷く酔っているように見えた。


「グルン!その女性は?」

ルミナがグルンに慌てて聞く。


「訳はあとで報告します。とりあえず屋敷に保護してもよろしいですか?」


「は~い!ルミナちゃ~ん!初めまして~」

美女はルミナに陽気に手を振る。

しかし、二人とも疲れていた。たぶん寝る間も惜しんで馬で駆けていたのであろう。


「グルン!アレキサンドリアでの偵察ご苦労様です。屋敷に戻り休養してください!報告はその後で!」

ルミナは強い口調で言った。


「は!ご配慮ありがとうございます。屋敷にて待機しておきます」


「じゃあね~!また後で♪」

二人はそう言い残すと『ヒヒーン』と馬が嘶きをを上げ去って行った。


『しかし、巨乳だったな。モロに好みだ』

皆が緊張している中、洋介は別の事を考えていた。


作業は順調に終わり、予定通り荷物の運び出しが無事終わった。

後は、コツコツ改装していくだけなので一人でも大丈夫そうだった。


中央時計の鐘が鳴る。

昼食を取る時間になった。


「お疲れ様でした!無事終わりましたのでお昼を食べに帰りましょう!」

洋介は皆が聞こえるように叫ぶ。


「お疲れ様です!」

ルミナが額に汗して挨拶に来る。


「領主自ら手伝いなんかしなくていいのに」


「いえ。兄の荷物の整理もありましたから。丁度良かったんです」

ルミナは少し寂しげに言った。


「いいの?本当に使わせてもらって?」


「もちろんです!ぜひ使ってください!」

ルミナは強い口調で洋介に言った。


「そうです。ヨウスケさん。せっかくここまで頑張ったんだから、有効に使ってください」

ミルトが間に入り洋介に言った。


「はは!ありがとう。頑張ってみるよ」

洋介も気合を入れた。


そして、全員が屋敷に戻り昼食を取る。

遅れてグルンと美女も食卓を囲み昼食を取る。


『しかし、誰だろう。知り合いかな?』

洋介は昼食を取りながら横目で美女を見る。


その時、目が合って美女がにこやかに笑い手を振った。

洋介も自然と笑顔になり、手を振る。


「ヨウスケさん。はしたないですよ」

すぐにルミナがジト目で注意する。


「ああ。ごめんごめん」

子供のように洋介はシュンとなり食事をする。


「鼻の下も伸びてますよ」

ルミナの追及はさらに続いた。


「伸びてないって!」

洋介はルミナに抗議をした。


『ははあ。これが噂のヤキモチって奴か…俺もやっとラノベの主人公になってきたぜ!』

洋介は内心失礼な事を思いながら食事を終えた。


そして休憩の後、ブルト家首脳陣が会議室に集まり始めた

※11/11少し改稿

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