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初迷宮とすれ違いの解消

ワンピースって聞いたり文字で見るとどうしても先にゴムの方が出て来ません?

これって私だけでしょうか。


次は二十一時に投稿します。

 翌日。僕達は『ボルボナ大空洞』の入り口で御上りさんというか、はしゃいでいるというか、とにかく物珍しいものに目を移しながらロイ団長達の後ろを雛のように付いて行っていた。


 現在、『ボルボナ大空洞』の前にある受付でチェックをしている。受付は意外にしっかりとした造りで警備も厳重にされているようだ。チェックはプレートにある魔方陣を特殊な魔道具に記録させることで帰還者の確認を把握するらしい。時間が経っても戻らない者の救助隊を出したりすることもあるそうだ。


 迷宮には十層ごとに転移用の魔法陣が設置されていて、その魔法陣は僕達の後ろにある大広場に繋がっている。これもア―ティファクトらしく、見た感じ転移魔法陣というより転送装置のような感じの機械だ。これは逆に階層に送ることも出来るらしいが、一度到達した十層ごとの階層までしか送れないらしい。それもプレートで感知しているらしいからプレートを絶対に無くせなくなった。


 大広場には様々な露店が多くあり、帰還した者が迷宮アイテムをすぐに売却したり、治療を施したり、逆に仲間を募集したり、組んだりしている。露天はパズルのピースのようにかっちりと隙間なく建ち並び、店主達は凌ぎを削って客を集めている。ここでは買取が出来なければ売ることが出来ない。良質なものを買える店主がより稼ぐところなのだ。


 また、ここに来て知ったのだが、探索者というのは迷宮に挑む冒険者達のことを言うらしく、迷宮に挑む者は全員冒険者ギルドに登録した一員らしい。別に登録していなくてもプレートさえあれば潜れるので僕達は登録しなかった。


 迷宮に潜り始めた最初の頃に大規模な死者が出たため、冒険者ギルドと国が連携して管理をすることになったらしい。冒険者ギルドと国も露天のようなものを開いているためそうやって利益を生んでいる。また、救助隊も冒険者ギルドや国が派遣している。




 まずは、第一層から第九層を飛ばして第十層から始めることになった。九層までは低ランクの冒険者や新兵がひしめき合っているので魔物がなかなか現れず経験にならないそうだ。それに僕以外の皆はこの辺りでも十分に戦えるので安心している。ちょっとは危機感を持て、と言いたいけど僕が言っても聞く耳持たないから言わない。


 迷宮の中は横幅十メートル程、高さ二十メートルほどの名前通りの大空洞だ。十層まで潜ると外の賑やかさが嘘のように静まり、洞窟にしては明るい。いたる所がぼんやりと発光しているのだ。試しに『鑑定』してみると生えているのは光苔でクリスタルの様な固形物は光水晶や光石というらしい。色は青っぽい白で光魔法の『ライト』や松明を必要としないほどだ。


 隊列は三つに分かれている。前衛と後衛に主力となる人物を置き交替で戦闘をこなしている。二つ目に中衛となる魔法使い等の遠距離職をこれもまた二つに分けている。最後は回復職で、いつでも回復できるように(まば)らに配置されている。僕は最後尾辺りで、邪魔をしないようにしている。時折僕に視線を向けてくる人がいるが、心配してくれているのは三人だけのようだ。


 階段を下りてすぐに目の前から白色で跳ねる毛玉のようなものが多数近付いてきた。


「あ、何か来るよ」

「かわいい~」


 女子生徒がポンポンと跳ね回るその愛くるしさを見て声を上げるが、ロイ団長が注意を促す。


「見かけに惑わされるな! あいつの名前は【ポムポム】と言って体当たりを主体とした攻撃をする魔物だ! 見た通りすばしっこく体も小さいから攻撃が当たり難い! 攻撃が当たれば弱いからすぐに倒せるはずだ! しっかり見極めて攻撃をしろ!」


 ポムポムが近づいてくると理屈はわからないが空中で停止すると体を回転させて体当たりしてきた。速度もロイ団長が言った通り速い。


 前衛の盾職が盾を構えて皆を護る。その隙間から遊馬君達が飛び出して息を意の止まったポムポムを仕留めていく。


 それを見た数人の女子生徒、特に涼風さんが声には出していないが悲しい顔をしている。僕も悲しい。あれ、飼うこと出来ないのかな? 餌付けとかさ。


 遊馬君は王様直々に授けられた聖剣で斬り付けている。この聖剣は国が管理しているア―ティファクトの一つで光属性を付加されていて、魔物や魔族に多大なダメージを与えることが出来る剣だ。また、身体能力を上げることも出来、光が傷付いた体を癒してもくれるチート剣でもある。


 涼風さんは剣豪らしい戦い方をしている。二か月前までは直剣を使っていたのに今は刀のようなものを使っている。多分、作ってもらったのだろう。一振りでポムポムを両断していくその姿は侍に尽きる。騎士団の人もその剣捌きに感嘆しているようだ。というか、顔が赤らんでいるからあれだね。


 他にもたまたま隣のクラスから来ていた柔道部の主将天宝(てんほう)()(ごう)()君が自慢の肉体で皆を護っていた。彼の職業は『重戦士』で、大きなバトルアックスと大盾を構えている。


 他にも『拳闘士』の衝撃波や『忍者』の暗殺、『ダンサー』の支援、『吟遊詩人』の支援歌が行われている。


 遠くにいるポムポムに様々な魔法が飛んでいく。前衛の遊馬君達が時間を稼いでいる間に後衛の白須さんやクラスのムードメーカー郷原(さとはら)朱里(あかり)さん達が詠唱と魔法陣を形成していたのだ。


「「「全ての源よ、真っ赤に燃える紅の炎よ、我が手に集いて力と成せ! 火炎球(ファイアーボール)」」」

「「「全ての源よ、吹き抜ける烈風よ、何者も切り裂く刃と化せ! 風切刃(ウィンドカッター)」」」


 詠唱が響き渡ると空洞内にいくつも魔方陣が浮かび上がり魔力が膨れ上がって魔法に変換されて飛んでいく。


 放たれた火の球がポムポムを真っ黒に焦し、風の刃がポムポムを切り刻んでいく。


「ポーーームーーーッ!」


 と、可愛い悲鳴を上げて次々に絶命していく。

 ああ、あんなにかわいいのに……。魔物だから仕方がないっていうのか……。涼風さんなんて涙目だよ。


「上手く連携が取れているようだな。次もすぐに現れるだろうから気を抜くなよ! 交替で魔石の回収をしろ! あと、余力を残せるように調整して戦え!」


 ロイ団長の言葉に白須さん達は後ろ頭を掻いて苦笑いをしている。周りの生徒も同じように深く頷いているから誰もが思ったことなのだろう。


「回収できたな? では先に進もう」


 僕は皆から少し離れてポムポムの亡骸を拾って食べられそうか確認をする。大きさは両手で器を作ったぐらいで、その半分が毛玉のようだ。とりあえず食べられそうなのでポムポムを回収することにした。後毛玉も。




 その後も戦闘を繰り返し、時に罠の講座や宝箱の発見等が起こり皆のテンションが上がっていく。

 魔物はポムポムも他にウルフ、ゴブリン、スライム、ラッター、フライバッド、スケル、フロッグ、キャット、ハイエナ、スパイダー……等で、食べようと思えたものは半分ほどだ。しっかりと鑑定して食べても大丈夫なのか確認済みでもある。


 罠はまだ即死レベルのものは出て来ないが、毒矢や麻痺矢、落とし穴、落石等状態異常や大怪我を負ってしまう罠が出てきている。


 そういった罠を回避するには盗賊や斥候の技能の『見破り』や『罠察知』等がいる。また、罠には特殊な魔力が流れているためアンチトラップと呼ばれる眼鏡型魔道具で調べることが可能だ。ほぼ調べることが出来るが中には無理なものもあり、調べられる範囲が使用者の技量に任せられる代物だ。


 ロイ団長を筆頭とする騎士団の方の注意がなければ罠に掛かりまくっていただろう。僕達は騎士団の方が避けたところは通らないようにしている。結果何度か罠に引っかかることはあったが無事二十層まで到達した。


「よし、今日はここまでとする。横に見える装置が地上と迷宮を行き来するための転移魔法陣となる。この部屋はセーフティーエリアと呼ばれ、魔物が近づいてこない特殊なエリアとなる。危ない時はここへ入るように。では、この後一人ずつ帰還し宿でゆっくり休め。明日からは魔物が複数種類の魔物が組んでくるだろうからな、動きに注意するように」


 ロイ団長はそう言って僕達を順に転移魔法陣へ向かわせていく。一人入るごとに魔方陣が輝きを放ち体を粒子化させて転送させる。ゲームのような現象が目の前で起こっていることに興奮して皆感嘆の声を上げている。僕は一番最後に入って転送された。




 その日の夜。明日からは今日以上に気を付けないといけなくなるから訓練中止だ。部屋の窓に椅子を近づけてウルフ肉を食べながら夜空に浮かぶ真ん丸お月様を眺めている。


「はぁ~。僕っている意味ないよね。完全に皆に寄生してるじゃないか。情けない……」


 僕が今日したことは一匹だけでいるはぐれ魔物や騎士団の人が飛ばしてきた魔物を倒すことと鑑定を使って熟練度を上げることだけだ。皆も騎士団の人がいなければほとんど進めていなかっただろうが、実力があるのでそこそこ倒すことが出来ていただろう。


 騎士団の人は僕の動きが二か月前と違っていたことに驚いていたなぁ。皆はほとんど気が付いていなかったみたいだけど。それでも、あの謎の力が湧き上ってこないと相当きついな。


 ウルフ肉を食べ終えたのでそろそろ寝ようかと思っていたところに来客を知らせるノック音が聞こえてきた。


 誰だ? こんな夜中に……。まさか、戸間達じゃないだろうな。


「零夜君? 起きてるかな? 白須だけど入ってもいい?」


 どうやら違ったみたいだが、こんな夜中にどうしたんだろう。僕は不思議に思いながら扉を開けると昨日よりも薄着のワンピースを着た白須さんが立っていた。


「…………」

「ん? どうしたの? 部屋の中に入ってもいいかな?」

「え、あ、うん」


 僕は硬直から解けるとすぐに白須さんを中に招いて扉を閉めるて、白須さんをベッドに座るように促した。


「で、何か用事もあるの? それとも、変更点でもあるの?」


 僕はバクバクと言っている心臓を抑え付けながら、平静とした顔で言った。よくこんな薄着で男子の目の前に出て来れるなぁ。僕じゃなかったら襲われていたかもしれないっていうのに。後で注意しておこう。それに最近の遊馬君はちょっとおかしいからこれがばれたらやばいな。


「うんん。えっとね、うーん、その、ね……」


 白須さんは魅力的で柔らかな太腿に両手を挟んで内股になってもじもじしながら言い難そうにしている。薄暗くてよくわからないが顔は朱色に染まっていそうだ。


 白須さんがいつまで経っても言わないので、僕はいつも勘違いをさせてくれる白須さんに注意を込めたお説教をすることにした。


「はぁ~。白須さんはもう少し自分が可愛いことに自覚した方がいいよ? 僕が何度ドギマギしたことか。……それに、白須さんは遊馬君の彼女なんでしょ? なら、こんな夜中に他の男子の部屋に来ちゃダメだよ」


 「めっ!」と最後に付け足してそう説教をすると、白須さんは口を半開きにしてクスクスと笑い始めた。


 あ、あれ? 僕何か面白いこと言ったかな?


 僕が首を傾げていると白須さんはさらに笑い声を発し始め、僕は隣の部屋の男子が気付かないかハラハラし始めた。ここで気づかれたら半殺しでは済まないだろうな、と初めに考えられるのは悲しいことだ。


「いや、ごめんね。零夜君が面白いこと言うから。おかしくておかしくて、笑っちゃった」


 白須さんは笑うのをやめると両手を組んで伸びをしながらそう言った。


「面白いこと?」

「うん。だって、私、遊馬君と付き合ってなんかいないよ? それなのに零夜君は勘違いしちゃってさ。真面目に言うんだもん」


 ……へ? どういうこと? 遊馬君と付き合っていない? じゃ、じゃあ、今までの言動はどうなのさ。


「で、でも、良く遊馬君に睨まれるよ? 特に最近は白須さんが近くにいるだけで凄い形相をするんだけど……。だからてっきり付き合っているものだとばかり……。多分、皆もそう思っていると思うけど……」


 僕の手を取って擦っている白須さんに僕が思っていることを伝えたら、今度は眉を上げて驚いている。


「え、本当? なら、それは勘違いだって言わないといけないね。だって、私が好きな人はずっと昔から変わらないもん」

「そうなの? やっぱり遊馬君みたいに背が高くてかっこよくてスポーツが良くできる人だよね?」


 それぐらいじゃないと白須さんには似合わないだろうな。しかも白須さんには涼風さんというボディーガードのような女性騎士が付いている(今命名)。なら、男性は少なくとも百七十センチは欲しいね。


 僕がにこやかにそう言うと白須さんは笑っていた顔をムッとさせて、僕の頬を左右に抓りながらプルプルと震わせた。


「い、痛いよっ、白須さん。は、離して! お願い」

「もう! そんなわけないでしょ。昔から変わっていないのなら零夜君が知っていないとおかしいと思わないの?」

「いったぁ。そ、そういえばそうだね。じゃあ、誰? 僕が知っている人なの? って、訊いちゃあいけないことだね」


 僕が頬を擦りながら涙目でそう言うと、白須さんは盛大な溜め息をついてやれやれと肩を竦めて話し始めた。


「はぁ~、零夜君って本当に鈍感だね。そんな零夜君にヒントを上げるね。身長は私よりも低くて、容姿はかっこいいと言うより可愛いかな? スポーツは特定のものに限っては達人級で、その他のものも出来るんだろうけどやる気がないから普通かな?」


 へぇ~。そんな人がいたんだねぇ。身長が白須さんよりも低いということは僕ぐらいかな? 容姿は可愛いのか。一度会ってみたいなぁ。スポーツは特定のものが達人級なのか。凄いな。僕でもまだお尻に殻がくっ付いたままなのに。他にスポーツはやる気がないんだぁ。僕と似てるね。話が合いそうな気がするよ。


 でも、そんな人僕の知り合いに居たっけ? そんなわかりやすい人がいたら忘れないと思うんだけどなぁ。


「えぇっ!? 気が付かないの! それは鈍感を通り過ぎているよぉ。私に失礼だと思う」


 僕が腕を組んで悩んでいると白須さんは僕に縋るように悲しい顔を近づけてきた。再び心臓がバクバク鳴り始め、白須さんの今の姿も相まって体が硬直する。下腹部に血が溜まり興奮するのが分かるが、無理やり精神力でねじ伏せて冷静になる。


「ごめんなさい。本当にわかりません。その人って本当に僕の知っている人なの?」

「うーん、知っているのは知っているけど、離したり会うことは出来ないね。姿を見れるだけ。しかも零夜君のそっくりさんだよ。ここまで言ってもわからない?」

「えっと、僕はその人を見ることしかできないんだね。それで、僕のそっくりさんなんだ。……もしかして……」


 僕はハッと白須さんの顔を見てその答えを当てた?


「やっとわかってくれたのね。そうよ「鏡の中の僕!」なわけないでしょ! 零夜君本人よ! 何でそんなところでボケるのよ」

「いやー、僕のそっくりさんだから。つい、ね。でも、本当に僕なの? 僕はてっきり嫌われているものだとばかり思っていたんだけど……」

「そんなことないよ。初めて会った時からずっと好きだったんだよ? それなのに、それなのに零夜君は……ヒック、グスン」


 あわわわっ、白須さんが泣いちゃったよ! ど、どどどどうしよう! と、とりあえず、優しい言葉でも……何も思い浮かばないよッ!


 僕が一人であたふたしていると白須さんは「プッ」を噴き出してまた盛大に笑い始めた。やっぱり嘘泣きだったのか……。


「どうして嫌われていると思ったの? あんなに私がアプローチを掛けていたっていうのに。ちょっと酷くないかな?」

「え? だって、僕が道場で稽古をしていたら白須さん蒼い顔して逃げて行っていたじゃないか。それに、僕の汗の臭い嫌いなんでしょ? 顔も出さなくなったし。そんな時に遊馬君が白須さんと仲良くしているの見たからつい……」

「えぇー……。本当に遊馬君は関係ないよ。私は遊馬君みたいなタイプは好きじゃないもん。それに、私が逃げていたのは零夜君の稽古が怖かったからで、行かなくなったのは邪魔になると思ったからだよ。零夜君も私を遠ざけ始めちゃったし、実家が古武術道場だって言っちゃダメって言ったからだよ?」


 僕と白須さんはお互いにすれ違っていたようで此処で初めてお互いの考えていたことが噛み合い始めたようだ。


「そうだったんだ……。じゃ、じゃあ、白須さんは僕のことがずっと好きだったの?」


 僕が落ち込んでいる白須さんに聞くと、ガバッと上体を起こしてカーッと顔を真っ赤に染め上げていく。改めて言われると自分が大胆なことをして、告白をしたことに気が付いたのだろう。僕も気を抜いたら口元がにやけて顔が真っ赤になりそうだ。


「う、うん、そうだよ。あ、改めて言われると恥ずかしいね。えへへ~。で、レイ君は私のことが好き? それとも……大っ嫌い?」

「久しぶりにその名前で呼ばれたよ。いや、あの時に一度呼ばれたっけ、助けてくれた時」

「ああ、うん、確かに呼んだね。で、答えは」


 白須さん――ユッカはそう言って僕の顔をムニュっと挟んで顔を近づけてきた。


「ほ、ほちろん、ほくもユッカのことが好きだよ。はけほ、しっくりと考えさせて」

「どうして……。好きなら私と付き合ってよ」


 ユッカは僕の顔から手を離して悲しそうな顔で言うが、僕にはどうしてもそれを了承することは出来ない。少なくとも今の状態では……。


「僕も付き合いたいし、ずっと一緒に居たい。イチャイチャもしたい。だけどね、今の僕には力がないんだ。敵を倒す力も、生き延びる力も、ユッカを護る力もない。だから、僕が強くなる、せめて地球にいた頃まで力が出せるようになるまで待ってくれないかな? その時になったら改めて僕から告白しに行くからさ」


 白須さんから目を離さずに真剣な気持ちを伝えた。それに今付き合って皆にばれたら何をされるかわかったものじゃない。せめて防衛できるだけの力を得てからじゃないと。最低でも戸間達四人を同時に相手取れるくらいには、欲を出せば遊馬君と同等はあったほうがいい。


「……わかった。私はその時が来るのを楽しみに待ってる。だから、出来るだけ早く告白しに来てね。いつまでも待っているからね、レイ君」

「うん、いつまでも待っていて。出来るだけ早く強くなるからね、ユッカ」


 僕とユッカは月明かりが照らす中、目を瞑ってゆっくりとお互いに顔を近づけていく。そのまま唇が触れ合い柔らかい感触が互いの脳裏に伝わり焼き付く。そのままきっかり十秒キッスをした後抱き合って離れた。


「でも、頑張り過ぎて死なないでね。絶対に告白してきて、約束だよ」

「うん、無茶はしない。約束する」


 僕とユッカは指切りをして互いに笑い合う。その後は気まずくない互いの心が触れ合って甘く柔らかく暖かな空間が出来上がった。十数年の思いが半分成就した瞬間だ。あとは、僕が強くなるだけだ。


「そういえば、ユッカは僕の所に何をしにきたの? 告白しに来たわけじゃないよね?」


 うん、そうだったはずだ。ユッカがもじもじしていたから僕が話を切り出したんだよ。


「うん、それはね、えっと、言い難いんだけど、レイ君に迷宮に潜らないで街で待っていてほしかったの。今もそう思っているけど、強くなってほしいから付いて来てほしいとも思ってる」


 ユッカはベッドの端に座って足をプラーンプラーンしながら、天井を見てそう言った。


「そっかぁ。僕も明日からはちょっと辛くなると思ってる。あの力がいつでも出せればそうでもないんだけどね。でも、ない物ねだりするわけにはいかない。今日は騎士団の人が弱らせてくれた魔物を弾いて僕でも倒せるようにしてくれていたんだ。まあ、経験値がもらえないからレベルが上がらないんだけどね。でも、ステータスだけはちょっとずつ上がっているから強くなっていると思うよ。だから、今日と同じようなら大丈夫だと思う」

「そう? レイ君ならわかっていると思うけど気を抜かないようにね。あと、危ないと感じたら私か香澄ちゃん、遊馬君、騎士団の人に言うんだよ」

「あー、うん、わかってる。だけど、遊馬君には気を付けた方がいいと思う」

「どうして? ちょっとこっちに来てから思い込みや自意識過剰な面が強くなったと思うけど、そこまで言わなくてもいいんじゃない?」


 ユッカは僕の顔を覗き込んでそう言ったが、僕は遊馬君が何か企んでいるような気がしてならない。ユッカが遊馬君の彼女じゃないといった時点で僕の中でピースが合い始めていた。


「絶対とは言わないけど遊馬君は何かを企んでいる。僕に向けるあの眼は異常だ。昨日の試合の時だって凄い形相で睨んでいたんだ。さすがに殺気の込め方を知らないみたいだからロイ団長も気が付いていないようだった。僕はずっと遊馬君を見てきたから早めに察知することが出来たんだ。だから、僕に何が起きてもユッカは遊馬君、いや、涼風さんと騎士団員特にロイ団長以外は信用しないで。もちろん、僕は死ぬ気はないよ? でも、一番何かをしてくるとしたら僕に危害を加えてくると思うんだ」


 僕はユッカの手を取ってお願いする。ユッカはそんな僕を見てどういっていいのか分からない顔をしているが、僕の気持ちが伝わったようで頷いてくれた。


「わかった。常に香澄ちゃん達といるね。部屋に帰ったら香澄ちゃんに伝えておくよ。私も気を付けるけど、レイ君が一番危なさそうだから絶対に死なないでね」

「うん、どんな状況であろうと死の淵にいたとしても、這いずってでも帰還してみせる。そして、そして、告白しに戻って来るよ」


 僕とユッカはまだ付き合っていることを隠すためにまだ前の呼び方をすることにした。


 それから暫くして夜が更けてきたので、ユッカは自分の部屋へと戻っていった。僕はベッドに横になって先ほどのことを思い出す。どんな力でもいいから身に付けて再びユッカの目の前に現れる。いつまでも護ってもらうわけにはいかない。こうなったらユッカを護れるようにどこまでも強くなってやる。


 僕は決意を固めると明日に備えて深い眠りに就いた。






 隣の部屋ではユッカが僕の部屋を出て行った後姿を能面のような無表情な顔で見据えている者が複数人いたことに誰も気が付かず、これが想像よりも悲惨な事件に巻き込まれる計画の始まりだった。


罠や迷宮、魔物、魔法、技能、称号等のアイデアを募集したいと思います。戦闘系でも弱くてもどんなのでもいいです。

名前だけでもいいので何かあればよろしくお願いします。

私が詠唱や名前を考えるのが苦手なもので……あと、名前のセンスもないです。はい。

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