ステータスプレート
今日はあと二本投稿します。
暫く戦闘はありません
昼食を食べ終えた後、僕達はここからオーレライ王国の王城へ移動することになった。僕達がいた場所は大聖堂の中の神託の間と呼ばれる場所だったようだ。神託の間っていうのは神からの声、神託を授かる場所で、教会の中でもかなりの地位がなければ入ることが出来ないらしい。
「では、教会の外に馬車を待たせておりますので、私の後ろに付いて来てください。王城に着いた後は国王との謁見があります」
ランバルドさんはそう言って僕達に先を促す。僕達はここで反論してもどうすることも出来ないので、大人しく従ってついて行っている。一人ずつ台座に設置された階段を利用して降りていくが、僕が降りようとしたらどこかに躓いたのか後ろへこけそうになってしまった。
「……っ!?」
「っと、大丈夫? 零夜君」
「あ、うん、助かったよ白須さん」
「どういたしまして」
後ろにいた白須さんが僕の体を支えてくれたみたいでこけるのは免れたが、そのおかげで男子生徒からやっかみの視線を受けた。
あ、あれ~? しっかり足を前に出したと思ったんだけど……。体が疲れてるのかな? それとも召喚酔いみたいなものでも起きたかな?
豪華な廊下を歩いていくと十メートル級の門が見えてきてやっと外に出られると思ったらそこはまだ室内で、僕達がいたところは超巨大な大聖堂の中にある教会の一つだった。
誰もが口を開け目を見張ってその驚き具合を体現している。僕もその一人で振り返って教会を見ている。周りを見れば他にも形が多少違うがいくつも教会があった。
ランバルドさんはその光景に驚いている僕達を見て満足そうにし、自慢げにその説明をしていった。
それぞれの教会には役目があり、その役目の数と同じ数だけ教会があるそうだ。僕からすれば全部同じでもいいのではないかと思うが、この世界の住人は神を絶対だと信じてやまないみたいだから、言った瞬間に激怒するだろうな。しなくても不快に眉を細めるだろうな。
そのまま何度か角を曲がると再び大きな門が見えてきた。その門は先ほどとは違い見事な装飾と薄気味悪かった女性の絵が刻まれていた。その門の前にある魔方陣のようなものの上でランバルドさんは止まり、何やら紡ぎ始めた。
「『世界の創造、人族の繁栄、全てはセラ様の導きと共に……』」
魔方陣が金色の光を発し始めると強固でビクともしなさそうだった門が、地面を擦る鈍い音を立てながら外側へ開き始めた。先ほど紡いだ言葉は何かの鍵だったのだろう。魔法もあるというし、詠唱なのかもしれないな。
男子生徒は特に戸間達はその光景にはしゃぎ、女子生徒も例外なく目を輝かせている。最近の中高生だったら男女関係なく目の前の光景に胸が躍るだろう。それは僕も例外ではない。
陽の光が僕達の目を眩ませる。目を庇いながらランバルドさんに続いて外へ出て行くと、教会の外には足が八本生えた五メートル級の馬が二頭見えた。その体には頑丈そうな鎖と煌びやかな鎧を纏い、その後ろには屋根のない大型バスほどの車体が繋がれてあった。これが言っていた馬車なのだろう。
誰もが見たことのない馬と大型の馬車に近づいていく中、僕も近づこうとして再びこけそうになり隣にいた白須さんに支えられた。そして、男子生徒は皆振り返って舌打ちを打った。後ろに目でもあるのだろうか?
「さっきから何度もこけそうになっているけど具合でも悪いの?」
白須さんが僕の腕を取ったまま顔を覗かせて聞いてきた。
「い、いや、大丈夫だよ。ちょっと体が疲れているだけだから。心配いらないよ」
僕は白須さんから離れてそう言った。後ろでは遊馬君が嫌そうな、怒っているような感じの顔をしていた。
今度こそしっかり足を出したと思ったんだけど……。そう言えば、妙に体が重いような思うように動かないような遅れてくる感じがするな。やっぱり疲れているのだろうか。
僕は今度こそこけないように注意して馬車に近づいていく。この馬はスレイプニルという馬で魔物らしいが、卵から孵すことによって刷り込みのようなものが起き、人族でも従わせることが出来る数少ない魔物らしい。普通の馬よりも強く賢く戦闘にも怯えないので重宝されているとのこと。馬が卵から産まれてくるのはおかしい気がするが、魔物だからという一言で納得できる。
全員が馬車に乗り込むと大聖堂前から王城に向けて出発した。大聖堂は西大陸にある随一の教会らしくオーレライ王国と密室な関係があるらしい。また、オーレライ王国は神の意志の元で建国されたものらしく、国王でも教会には頭を下げるらしい。ということは教会もとい神の意志が国を動かすということになるだろう。
今は僕達が帰還できることになっているけど、もし人族を救った後に神が危険だとか言えば即座に人族全体が牙を剥けることになるだろうな。なんて世界に召還されたんだ僕達は……。本当に生きて還ることが出来るのだろうか。
僕は震える心を押し留め、近づきつつある王城を見て生唾を飲み込んだ。
大聖堂は王都の南西に位置するところにあり、大きさは王城よりも大きいらしい。城の大きさはその国の威信や器の大きさでもある。その城が大聖堂よりも小さいということは、それだけ教会の勢力と神が豪いのだろう。
王城までの道中一目見ようと住民が押し寄せパレードのようなものが出来上がっていた。僕からするとサーカスの見世物にされているようでいい気分ではない。生徒の中には調子に乗って声を上げる者や大はしゃぎする者がいる。遊馬君は前の方に座っていて手を振ると黄色い歓声が上がるようだ。
王城に近づくと住民の身なりが良くなっていき、貴族だろうと思える人達へと変わっていった。巨大な門の前で馬車が止まり、ランバルドさんが降りていく。僕達も続いて降りて門の前に集まり、僕は今度こそこけないように慎重に降りる。
全員が降り終ると馬車が反転して離れて行き、目の前の門が開いていく。中には白銀の鎧に身を包んだ兵士が二人待ち構えていて、二人の兵士に案内されながら謁見の間まで連れて行かれる。通る途中にすれ違った兵士やメイドさん達から熱い視線と尊敬や畏敬を含んだ期待に満ちた目を向けられた。まあ、住民があんなに知っているのだから王城で働く人が知らないっていうのはおかしいよね。
金で装飾されたものが多く輝かしい光沢を放っている。幅の広い階段を上がり、進んでいくと美しい装飾と意匠の凝られた両開きの扉が見えてきた。扉の両脇には同じ鎧の兵士がいて、僕達が近づくと僕達が到着したことを大声で伝え扉を開けた。
二人の兵士は脇に避け、僕達は何事もないかのように入って行くランバルドさんについてビクつきながら恐る恐る入って行く。扉を潜ると赤いカーペットが目に入り、その奥には玉座と五十人ほどの人達が待ち構えていた。
よく見ると玉座の傍に立っている男性は頭に王冠を乗せ、その隣の女性はティアラを乗っけている。二人は王様と王妃様なのだろう。その傍にいる金髪蒼眼の女の子は王女様なのだろう。王女様は僕達と同じ年齢に見える。そして、カーペットの両端には白銀の鎧や軍服を着た人やゆったりとした服と羽帽子を被った文官が立ち並んでいる。
逆座の前まで行くと僕達は静止の声がかかり、ランバルドさんはそのまま王様の元へと行くと王様が頭を下げた。
うわぁー。王様が人に頭を下げたよー。どれだけ教会の権威がすごいんだろう? 教会の人には逆らわない方が身のためだな。
ここからは自己紹介が始まった。王様の名前はトリトス・ヴァンド・ドュク・オーレライといい、王妃様をフォルベールというらしい。王女様はエヴァリーナといいやはり僕達と同い年らしい。また、此処にはいないがキュオスティ王子がいるらしく、今は他国に留学中とのこと。
その後は宰相、騎士団長達軍人、大臣達重鎮の紹介があった。王女様はジッと遊馬君を見ているがその目は一目惚れというやつではない。ただ単に一番かっこいいから値定めしていると言ったところかな? でも、白須さんがいるからたぶん無理だろうね。
自己紹介が終わるとこれからのことを詳しく説明された。まず、地球に変えるまでの間の期間中衣食住は保証するとのこと。まあ、これも神の意志によって変わるだろうな。次に明日から座学・訓練が始まるが、教官はこの場にいる人達が行ってくれるらしい。全員国の騎士団や文官達だ。
最後に国を挙げて支援を行ってくれるらしい。これは武器の支給や救援等のこと言っている。また、部屋は一人一部屋割り振られ、専用のメイドさんが付くとのこと。それを聞いた男子生徒は歓喜に喜びそれを見た女子生徒が冷ややかな目で見たが、その後に女子生徒には執事を付けるとのことで男子生徒は白い目で見ていた。
無事謁見が済んだ後は各自の部屋に宛がわれた僕は、夕食まで一眠りすることにしメイドさんに起こしてもらえるように伝えた。こっちに来てから体が半分も動かなくなり、動作が思考より随分遅れてくるようになった。これは召喚酔いのようなものなのかな?
僕はベルトやシャツを肌蹴させて窮屈感をなくすと、柔らかいベッドにダイブして沈むように眠った。
四時間ほど眠るとメイドさんに起こされ晩餐が開かれる会場? の様な場所へ向かった。異世界の料理は昼間に見たが、どれも見たことのないものばかりだった。青色のソースとか食欲が失せるんだけど……。まあ、失礼だと思ったから何も言わなかったけど結構美味だった。飲み物もおいしくて中には炭酸を飲みたいという生徒がいたが、この世界にはないようだ。僕はあのシュワシュワ感がダメだから飲みたいと思わない。
エヴァリーナ姫が遊馬君に話しかけられていたが、さすがはお姫様っていうのかにこやかに微笑んで躱していた。白須さんと涼風さんには大物貴族なのだろうか、鼻の下を伸ばしたような男性が話しかけていた。
晩餐会が終わると皆各自の部屋に戻り、明日に備えて休憩することとなった。部屋にはお風呂がないみたいだけど、大浴場があるみたいで今日はそこへ入りに行った。まだ、体の調子が戻らない僕はさっさと上がってぐっすり寝ることにした。
そして、翌日。今日から午前中に座学を午後から訓練が始まる。
まず、朝食を食べ終えた僕達は講堂のようなところへ呼ばれ、集まった生徒全員に兵士から金色のスマホの様なプレートと針を貰った。スマホと言っても厚さが三ミリほどしかなく、金属で作らているような感じがしない物体だ。表面は黒く、端にボタンのようなものがある。
思い思いに触ったり翳したりしていると騎士団長のロイ・ヴァンドュラフさんが入ってきて説明を始めた。
ロイ団長はこの国最強の騎士のようで僕達の訓練に付き合ってくれるそうだ。ロイ団長は結構気さくでフレンドリーな人だ。そして、考えることが苦手で副団長が騎士団の参謀として雑事や書類を捌いているらしい。僕は見たこともない副団長に同情した。
「よし、全員手元にプレートが配られたな? そのプレートはステータスプレートと言って、言葉通り自身のステータスが数値化して分かるという優れものだ。とはいっても、客観的なものだからそれが真実ではない。また、この世界で最も信頼される身分証明書にもなり、後で見せるがお金も貯めることが出来るため絶対に無くすなよ」
最後に「再発行には金貨一枚必要だ」と金貨を見せてくれながらそう言った。お金は貨幣で半銅貨(一円)、銅貨(十円)、半銀貨(百円)、銀貨(千円)、半金貨(十万円)、金貨(百万円)、大金貨(一千万円)、白金貨(一億円)となっているらしい。単位はRだ。また、お金は人族の中ではこれ一つらしい。
「次にこのプレートに登録をする。このプレートには魔方陣が隅にあるボタンに刻まれている。そのボタンに血を垂らしてくれ。そうすることでプレートに登録することが出来る。登録が終わったものは『ステータス』と言ってみてくれ。恐らく、ステータスが表示されるだろう」
僕は言われた様に針で左手の人差指を刺し、摘まんで血を出すとプレートのボタンに垂らした。すると、魔方陣が画面全体に広がり、輝きを放つと粉のように広がって消えていった。僕は失敗したのかと思いすぐに『ステータス』と言ってみるとちゃんと表示されたので一息ついた。
雲林院零夜 男 人族 レベル:1 経験値:0
職業:
筋力:50
魔力:10
体力:50
耐久:20
魔耐:20
精神:40
敏捷:20
魔法属性:無
技能:ボックス、鑑定、言語理解
称号:異世界人
と、表示されているんだけど……僕のステータスって低くない? 一般人より強いんだよね? これで強いのなら一般人は平均五以下にならないかな? それに相応の力が宿るっていうのに何も宿ってなくない?
僕はこれが普通なのかと不安に駆られながら、周りで自身のステータスを見ている生徒を見つめた。
「あと、このプレートの原理だが、まだ解明されていないから聞くなよ。恐らく、太古の技術か神の技術が入っていると言われている。一応この世界ではア―ティファクトと呼ばれている」
「ア―ティファクト、というのは古代技術や兵器、異物、超技術のことですか?」
眼鏡をかけた男子生徒……名前を忘れた生徒がくいっと眼鏡を上げながら自慢げに言った。言っておくけど、かっこよくないし、知っている時点で十分厨二だからね。
「なんだ? 知っていたのか。それなら話は早い。この世界でア―ティファクトというと先ほども言ったが神の技術や古代の技術のことを示し、特に現代では解明・再現することが出来ないものを言う。まあ、復元ぐらいならまだできるかもしれないな。で、このプレートもその一つで一番普及しているものだ」
へぇ~。この世界ではステータスプレートがアーティファクトなのか。これがないと自分のステータスを知ることが出来ないっていうことかになるのかな? でも、僕の技能の鑑定ってステータスみたいなことが出来ないのかな? だとしたら結構使えるものじゃないかな。
「全員表示されたか? ……では次に移る。ステータスの上に表示されている名前はいいな。レベルというのは肉体レベルのことを示す。上げるには魔物を倒すのが手っ取り早い。魔物を倒すと経験値を得ることが出来、その経験値が一定値まで溜まるとレベルが一つ上昇する。上昇することでステータスも一緒に上がるということだ。上限は分かっていないが最低でも二百はいくだろう。まあ、無理だろうが」
どうやらRPGのような世界のようだ。
「だが、ステータスはレベルに依存しているわけではない。確かにレベルを上げれば上昇するがそれは微々たるもので、日頃の鍛錬こそが一番伸びる。だから、死にたくなければ訓練を絶対に怠るな。また、魔道具や魔法でも能力は上昇する。魔力が高い者ほど能力値の上昇が大幅に上がり、必然的にステータスが高くなる。これは魔力が体に作用しているのではないかという見解だ」
どうやら完全にはRPGの世界ではないようだ。鍛えればステータスが伸びるということはレベル位置でも強い人は強くなるということだな。しかも魔力が多くなればなるほどその上昇値が多くなる。魔力様々だけど、僕の魔力が10っていうのは低いんじゃないかな?
「あと、怪我で片腕を失った、病気になった、疲労が溜まったなどでも能力値が変わることがあるから、頻繁に確認しておくこと。また、このステータス値が全てではない。いくらステータスで優っていても技量がなければ意味がない。こんな奴はいないが赤ん坊のステータスが100あっても攻撃できないのであれば、10しかない大人でも勝てるということだ。だから、お前達はしっかり武器の扱いに慣れることが大切だ」
ステータスは今の状態を表しているということだな。
「次に職業だな。この職業といのは天職や才能等といい、一番適した職業のことだ。また、その職業に適した技能が表示されているはずだ。更に、その職業の分野においては比類なき力を発揮するだろう。剣士なら剣術を、火魔法師なら火魔法を、回復師なら回復魔法を、と言った感じだ。職業には戦闘職と生産職の二つに分かれているが、戦闘職の方が圧倒的に少ない。まあ、職業がないから剣が振れないというわけではないので安心しろ。ただ扱い難いだけだ」
じゃ、じゃあ、僕のこの職業空欄って何さ……。空欄だから技能すらないってか。
僕は上位の世界の住人じゃなかったの? これじゃあ、この世界の住人よりも弱いじゃないか! これは新手のいじめか! 世界が僕のいじめてるのか! ……僕は生きて還れるのかな。
更にロイ団長が言葉を続ける。
「あと、ステータスは見たままだ。この世界の住人でレベル位置の平均は30ほどだ。お前達ならその数倍はあるだろう。技能というのはその職業にあったものがあるはずだ。剣士なら剣術の他に気配察知や速足とかな。また、新しい技能を覚えることはほとんどできないが、技能には熟練度いうものがあり、熟練度が上がり壁を越えることで新しい技能派生技能というものを覚える。後は何か切っ掛けがあったり、神或はそれに近い者から授けられる場合だな。この二つの方法で技能が増える。それ以外はないだろう」
……ぇ……え? え? えええええええぇぇぇぇぇぇッ! な、な、何だってぇぇぇ! じゃ、じゃあ僕は一般人以下っていうことじゃないか!
僕は全身から嫌な汗を滝のように噴き出し、僕はプレートを穴が開くほど凝視するが変わる気配はない。
「最後に称号だが、これは何かの偉業やあだ名、二つ名などが付いたら自動的に加わる。中にも効果がある物があるから確認すること。後はお前達の職業に応じた装備品を宝物庫から承ることとなった。それと、この後ステータスを確認していく。それによって教官と訓練メニューを決めるからな」
チートもなければ、職業も技能もなし。これじゃあ、俺YOEEEEじゃないか……。これは僕が召喚される前にモブだって言ったのがいけなかったの? っていうかモブよりよえぇよ!
僕は一抹の期待を胸に皆のステータスを覗き見てみる。
「じゃあ、まずアスマから確認する。アスマは前に着てステータスを開示してくれ」
遊馬君はプレートを片手に席を立ち、少し顔が綻んでいるかという顔で前に進んでいく。
遊馬大和 男 人族 17歳 レベル:1 経験値:0
職業:勇者
筋力:300
魔力:400
体力:300
耐久:300
魔耐:250
精神:200
敏捷:300
魔法属性:火、水、風、土、光
技能:全適性、全耐性、物理耐性、合成魔法、剣術、格闘術、怪力、速足、危険察知、魔力感知、魔力回復、言語理解、スマイル
称号:光の勇者、鈍感野郎、異世界人
まさにチートの塊だ。確実に俺TUEEEEが出来るじゃないの。
「さすがは勇者だな。レベル位置で平均300か。技能も普通は三つあればいい方なのだぞ。これからは皆を引っ張って頑張ってくれ!」
「はい!」
遊馬君は少々自慢げだ。ロイ団長のレベルは78、ステータスは平均500ほどらしい。王国最強のロイ団長とほぼ遜色がないということは一か月後には遊馬君は並ぶかもしれないな。まあ、技量の差で勝てはしないと思うけど。
白須さんの職業は回復と補助のスペシャリスト天女。イメージにぴったりで、何人かの男子生徒がはしゃいでいた。涼風さんの職業は剣豪で剣術と刀術、抜刀術のスペシャリストだ。剣道を習っている涼風さんにぴったりだ。
他にも剣士、双剣士、戦士、騎士、属性魔法師、属性魔導士、回復師、祈祷師、呪術師、死霊師、退魔師、忍、狂戦士、弓師、狩人等々。技能も皆十個近くあり、ステータスも百以上は平均ある。
なのに、なぜ僕には格闘家とか拳術家という職業に就いていないんだ! 理不尽だあぁぁぁッ!
僕は谷底に落とされそのまま叩き付けられたような感じの気持ちになる。僕は戦うことが出来るのだろうか。魔物のステータス平均がどのくらいかわからないけど、一般人よりは強いよね。なら僕って片足を棺桶に突っ込んでんじゃない。いつも死と隣り合わせとかどんだけだよ! まあ、地球にいた時も地獄の稽古があったからそういうのに多少慣れてはいるけど、気が休めないっていうのはどうかと思う。
ほんっと、この世界って僕に厳しいよね。
もしかして僕の身体が思うように動かないのは地球にいた時よりも能力が下がったからか? だとしたら納得できる。半分以下になっているということは少なくともこの倍はステータスがあるっていうことだよね。それに職業もないから、職業に就けたらもっと強くなれるんじゃ……。
でも、職業に就けなければ意味がないか……。
いよいよ僕の番が回ってきた。
僕は俯いて人生すら諦めているかのように進み、ステータスを開示したプレートをロイ団長に差し出す。
ロイ団長はこれまでの生徒が軒並み強く、珍しい職業に就き、技能も十個以上ある者がいたためとても嬉しそうだ。そして僕から受け取ったプレートを見た瞬間その笑顔が固まった。プレートを擦ったり、振ったり、翳したり、電化製品を治す必殺技斜め四十五度をしたりする。そして、僕とプレートを何度も見て、無言で返してきた。
居た堪れない!
「……あー、えっとな、初めての事例だから何とも言えん。後でしっかり調べておく。ウジイが生きていけるようにこちらで精一杯支援を行うから安心してくれ。王もわかってくれるはずだ」
ロイ団長は言葉を探すのに時間が掛かり、僕の肩をポンポンと叩きながら「大丈夫だ」と何度も慰める。僕にはその気遣いが痛くて今にも死にそうになる。
そんな僕にクラスの男子が食いつかないわけがない。
「ロイさーん。そいつのステータスに何かあったんですかー?」
いやに間延びした声で戸間が言った。顔はニヤニヤとにちゃっと歪め、その周りでは口元を押さえて笑っている男子がいる。女子生徒も中にはニヤついていたりする。
「雲林院ぃ、お前のステータス見せてみろよ。もしかしたら俺達なら解決できるかもしれないぜ」
「い、いや、いいよ。この世界の人が分からないっていうんだから」
「いいから見せろって言ってるんだよ! いいからかせッ!」
僕は逃げようとしたが周りの男子に体を掴まれ、近づいてきた戸間にプレートを奪われてしまった。戸間達はロイ団長の言い方で僕がどんな状態かわかっているであろうに、さもわかりませんといった感じにする。それが憎たらしく、心の底で憎悪がくすぶるが、何とか抑え付ける。ステータス差のせいで僕は捕えられ身体を動かすことが出来ず、戸間達にステータスを見られてしまった。
「ぶっ! あっは、あっはははーっ! 何コレ? 一般人よりよえぇじゃねぇか!」
「ぶはははーっ、ステータス値ひっくっ! 俺の五分の一もねぇ。ワンパンだぜ、ワンパン」
「あひゃひゃひゃっ、わ、わかった! お、お前、俺達を笑い死にさせるつもりだろ!」
僕を捕まえていた腕が緩んだ瞬間に振り解き、戸間の手からプレートを取ろうとするが、戸間は身長が高く上に持ち上げられてしまい取り返せなくなった。
が、そこへ救世主らしき死神が二人現れた。
「それを返しなさい! あなた達は何をしているのか分かっているのですか!」
「大丈夫? 零夜君。すぐに取り返してあげるからね。――(キッ)!」
大沢先生が戸間達を怒鳴り付け、白須さんが周りの生徒を掻き分けながら僕の元に来て戸間を睨み付ける。戸間は白須さんに睨みつけられたことで動きが止まり、そこへ大沢先生が手を伸ばして僕のプレートを取り返してくれた。
大沢先生の飛び跳ねる姿にほっこりとしていた生徒は我に返り、若干名気まずそうな顔をするが、数人は僕に冷ややかな目を向けている。男子生徒は白須さんが気を掛けたことでさらに厳しい目を向けてくる。
もうやってらんないよ……。
「雲林院君、大丈夫ですか? どこか痛いところは? あ、これがあなたのプレートですよ。今度は取られないようにしっかり持ちましょうね」
大沢先生がプレートを差し出しながら慰めてくるが、それをできたら苦労しない。周りを見れば、力を得て増長している生徒達ばかりで悪いことをしたという自覚すらないようだ。
「私もそれほど強くないのでお仲間ですよ? 雲林院君」
そう言って見せてくるプレートには僕にはない職業があり、ステータスは僕の三倍はあり、技能なんて十五個以上ある。更に白須さんも何か言ってきているが僕の耳には入ってこない。
はぁ~。なぜ僕だけがこんな目に遭わないといけないんだ。これから先どれだけの苦労と苦痛と困難が待ち受けているのやら。
僕は二人を無視て立ち上がると自分がいた席へ戻って座った。二人は僕の姿を見てなんと声をかけていいのか戸惑っているようだ。
僕のことを横目で見ていた遊馬君が憎々しげに顔を歪めていたのを、落ち込んで周りに目が行かなくなった僕は気が付かず、これから待ち構えている計画の絶望を知る由もなかった。