最下層
次は二十一時に投稿します。
置き去りにされてから二か月が経った。零夜達は現在第七十層の足を踏み入れ、魔王が放った魔人と戦っている。魔人は何の骨かわからないが頭に鼻の骨が異様に大きく長い頭骸骨を被り、色素が抜けたような長髪が跳ねっ返りカールを作っている。顔は焦点の合っていない白黒反転の目に能面の様な白い顔、いや蒼く見える。唇は口紅を付けたかのように紫色で黒紫の豪勢なローブと首に魔方陣が組み込まれた巨大リングを付けている。また下半身がなく宙に浮き、詰めのような骨が左右に五個ずつ浮いている。手には魔方陣が描かれた巨大な漆黒の大鎌と微かに青白く光る刀を持っている。
魔人は『闇と死の霊魂タナトス』といい、個体名を『死神ラストリート』というらしい。
ラストの基本攻撃は鎌か刀を縦横無尽に振るか、即死魔法や闇魔法を使ってくるだけだ。身に纏っている黒いローブは魔法耐性もあるようでソフィーの魔法がほとんど効いていない。さらに、素手で攻撃すると僕の生気を吸い取られ活力がなくなってしまう。とても厄介な相手だ。
「くそ、どうやって倒せばいい。ソフィー、まだ魔力は持ちそう?」
「まだ大丈夫。レイヤは?」
「こっちも大丈夫だ」
『……ぉ……おぉぉぉおおぉんん』
洞窟内で声を出したかのような不気味な声が暗く物騒な部屋の中に響き渡る。この声がラストの怒りの声だ。この震え上がる声を聞いて竦み上がった者の首を手に持つ大鎌で刈り取り、刀で心臓を一突きするのだ。僕達は左右に散って攻撃していたのだが、攻撃があまり効いていないため苦労している。魔王も厄介な魔人を配置してくれたものだ。
『ぉ……ぉぉおおぉんん『闇の生誕祭』』
僕達を見つけたラストは右手の鎌を上げると黒色の魔方陣を作り出し、そこから無数の魂のような闇が飛び交い始め僕達に向かって飛んできた。あれにあたると体が風化していくだろう。壁に当たった闇は消えたがそれと同時に壁が脆く崩れ去ったからね。
「ちっ、雲林院無心流気功術……『霊気功波』」
僕は右手を左手で下から持ち、右手の指を熊の手のように第二関節から曲げて掌底を作ると、気を右手に溜めて幽霊などの実態のない者に有効な一撃遠距離攻撃技を放つ。
「邪魔、火は火を、風は風を、二つは混ざりて大いなる災いと化す! 爆風炎」
ソフィーは右手と左手に違う魔法陣を作り出し、その魔法陣を合わせると粉々に壊れ再構築されていく。構築された魔法陣は赤と緑が入り混じった特殊な魔法陣と化し、そこから爆弾が爆発するかのように爆破が起きてラストを飲み込む。これが合成魔法だ。
僕の技が闇にぶつかり消滅させラストにあたると闇のローブを消し去った。どうやらあのローブは自身の力でもあるようだ。そこへソフィーの魔法があたり先ほどとは違う叫び声を上げるダメージを与えた。
『……ひぃぃぃいいぃぃいいいいぃぃ』
劈く様な悲鳴の声が耳へ届き、ダメージが入ったことを教えてくれる。どうやら気功術であの衣を剥がせるようだ。そうなれば攻略法は決まってくる。
「ソフィー、僕が気功術であいつの闇のローブを剥がす。そこへ魔法をあてて!」
「了解」
僕達はお互いに頷くと左右に分かれて僕は気功術の準備を、ソフィーは魔法の詠唱に入る。ラストは闇のローブを力で直し再び僕達に近づいてくる。
『おおおおぉぉぉおおおんんんぉおおぉおぉぉ『…………暗黒吸』』
ラストは右腕を僕へ向けると生気を吸い取り始めた。僕はその場からすぐに立ち去りがら空きとなった体に気功術を放つ。両手を腰に溜め気を送り込んで突き出す。
「くらえッ! 『気龍双掌波』」
声に反応してこちらに振り向くラストの身体に気から作られた二対の龍が闇のローブを剥ぎ取らんと襲い掛かった。ラストは手に持つ大鎌と刀をクロスさせて防ぎにかかったが隙間から漏れていく気が体に触れ、闇のローブを削ぎ落としていった。
「ソフィー!」
「大いなる太古の力、その焔、天を焼き地を焦がす太陽の如し、全てを焦土と化せ! 爆星」
ソフィーから放たれた光り輝く煌玉は放たれると同時にさらに光り輝き一つの星と化した。そのまま空気を焼きながらラストに当たり全てを焼き殺していく。ラストは叫び声を出しているのだろうが爆発音と焦土と化していく破滅への音が部屋の中に轟き全く聞こえない。
僕はその場から退避して近くにあった巨大な墓の上に降り立つ。すぐ横にソフィーも風魔法で体を浮かしてやってきた。どうやら自身の魔法でも暑いようだ。
ラストがいる方を見ると地面が赤く赤熱化しドロドロに溶け流れ、その流れた溶岩が周りの地面を融かしていく。その中心には白く輝く星が徐々に小さくなり始めていて、その傍には苦痛に身を歪めながら星を押し返しているラストの姿があった。
「あれでも死なないみたいだぞ」
「大、丈夫。あれは、最後に大、爆発を起こす」
隣のソフィーに訊いてみると荒い息遣いで返答してくれた。どうやらあの魔法は魔力を大分持っていってしまうらしい。今にも倒れそうなソフィーの身体を支えてボックスから取り出した魔力水を飲ませる。細い喉がコクコクと揺れ飲んでいるのがよくわかるが、魔力はすぐには回復しないのでその間は僕が守るしかない。
ボカアアアアアアアァァァァァァンッ
星が収縮したかと思ったら一気に膨らんで大爆発を起こした。ラストはその爆発に巻き込まれ、僕はソフィーを背後に庇いながら爆風をやり過ごす。
熱風をやり過ごすと爆発音もなくなり大地を焦す音と溶岩が流れ出る音がするだけとなった。背後に振り返るとラストの姿はどこにもなく、凹んだ中央にラストが所持していた刀が突き刺さっていた。大鎌はラストが死ぬと同時に消滅したみたいだ。残念だと思うけど、僕もソフィーも使わないからどうでもいいや。
二時間ほど墓の上で食事を摂ってソフィーの魔力が戻り次第、未だに燃え続けている大地を水で冷ましてもらった。大量の水が蒸発し、水蒸気爆発染みたものを起こしたので一時中断して風で冷ましていくことにする。
それからさらに一時間もすると水を掛けても大丈夫となったので水で冷ます。それから二時間もすると地面の上を歩けるようになり、中央に突き刺さっている刀を抜いて鑑定する。
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名称:死霊斬一鉄刀・神蒼雪 分類:妖刀
説明:冥界に振る雪のような蒼さと、誰もが震えあがる鋭さと怯えを含んだ刀身からは青白い冷気を放っている。斬り付けた相手の生気を吸い取り使用者の生気とする(体力・怪我回復)と同時に一時的に切れ味が増していく(上限なし)。また、実体のない敵でも斬り伏せることが出来る。神が創ったア―ティファクトで錆びることも壊れることもなくなることもない。呼びかけることで手に戻って来る。呼び名は『神蒼雪』。
使用者:雲林院零夜
技能:≪生気吸収≫≪永遠不滅≫
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なんじゃこりゃ! 遊馬が持っている聖剣よりもチート剣のような気がする。まさに妖刀っていう感じの刀だけど、見た感じは寒々とした刀身と青い紐の付いた柄、黒い鍔があるだけでそこまでではない。逆に振ってみたいと欲求があるくらいだ。
「どんな剣?」
「ああ、これは刀っていう刀剣だよ」
僕はどんなものか聞いてきたソフィーの鑑定したままの効果を教えた。やはりこういった効果の武器や防具はア―ティファクトらしく、ソフィーが知っているものでも代々魔王にのみ使用が許された『武魂』と呼ばれるア―ティファクトぐらいらしい。
武魂というのは使用者が一番扱いやすい武器になるという武器で、効果は毎回違うが大概その魔王に適した効果が付くらしい。今代は筋力長増大と吹き飛ばし、鬼人化という三つの効果で、自己修復機能が付いているらしい。
筋力長増大はおよそ筋力を三倍にするそうだ。吹き飛ばしは斬り付けた瞬間に強風を発して相手を吹き飛ばすらしい。まあ、飛び上がって避けたりそう言った場合は効果があるかもしれないが普通に受け止めたり、完全に躱した場合はあまり関係ないだろう。最後の鬼人化とは耐久と魔耐、精神を減少させてその分筋力と体力を上げる技能だ。さらに意識を失い敵を殲滅することしか頭になくなるため破壊が終わるまで戻らない厄介な技能だ。また、狂人化の上位技能だ。
武器の形は柄を入れて五メートル級のバトルアックス。刃だけでも二、三メートルあるらしい。それを手足のように振うことから魔族では大戦斧の魔王と呼ばれているらしい。
「それならこの刀を持っていたほうがいいかも。いつか戦うことになるだろうし……」
「多分戦う。近いうちに人族を滅ぼす」
そうだろうな。僕達はそのために呼ばれたのだから。まあ、僕はこの世界の人を救いたいとは思っていないし、争うことこそがセラの思い通りになるのであれば阻止してやる。そのためにはこの迷宮で力を付ける。後のことは地上に戻って告白をした後に考えよう。皆にも言わないといけないことばかりだからね。
「それじゃあ、次の階層に行こうか」
「うん」
僕達は七一層に向けて足を進めた。
七九層。ここは中央に火山があり、四方を森、平原、荒野、湿地が囲んでいるエリアだ。魔物もこれまでよりも強く、ソフィーが言うには魔人になりかけているとのこと。ここはボス部屋もあるためボスから漏れだした魔力を浴びて強くなったそうだ。
ここの魔物は大体レベルは170ほどで、ステータスは2200ぐらいで特化していると3000を超える。赤鬼やグリムやラストほどではないが、大勢で来られるとソフィーは手古摺ってしまうので何度か助けに入った。
ソフィーは僕にだんだん懐いてきたのかよく頭を撫でてと言ってきたり、僕の手を握ったり、顔を赤らめたりするんだ。いまも、助けに入ったらかっこいいと顔を赤らめて言ったよ。まあ、言われて困るものじゃないし、言われると嬉しいから張り切っちゃうよ。僕の初めての愛弟子だからね。
粗方の魔物を倒し終わったところで気が付いたのだが、このままここを放置していたら魔人が地上にたくさん出てきたのではないか、と。
「多分、出てた。魔人は賢い。だから、迷宮に捉われない。だけど、生みの親に命令されれば迷宮にいる」
「それが、赤鬼やグリムやラストなんだね」
「そう」
ということらしい。僕達はどうやら知らず知らずのうちに地上の危機を救っていたようだ。
ここが最下層なわけだが、此処には迷宮ボスがいるため魔人を置いていないとのこと。下手な魔人よりも迷宮ボスの方が強いということなのだろう。聞いた話では竜種がここのボスらしい。まあ、竜種との戦いは一度経験しているからどうにかなるだろう。
「では、いよいよボスを倒して地上に戻りますか!」
「うん」
僕とソフィーは大きな門を開けてボス部屋の中へ入って行く。
ボッ、ボボッ、ボボボボボボボボボッ ボンッ
僕達が扉を開けて中に入ると円形の舞台を照らす明かりが点いた。柱の上に台座がありそこに真っ赤な炎が点き、最後にここのボスを照らし出す背後に見える台座に大きな炎が点いた。
「グギャアアアアアアアアアアァァァァッ」
赤黒い鱗に覆われた肌は硬く傷つきそうになく、腹は柔らかそうな白い鱗で覆われているがそれでも刃が通りそうにない。その中心、胸元に黄色くオレンジ色の宝玉が見える。顔を見てみると金色の瞳が僕達を貫き、大きな口からは呼吸と一緒に炎が漏れ出している。体をじっくり見ると足が六つ生えている。強靭な脚と強固な爪が特徴的で、当たれば一度で切り裂かれ踏み潰されるだろう。背中にある羽根は飛べなさそうに細く飾りのように見える。
「ソフィー、水魔法だね。僕は気を引くからよろしく」
「了解」
ボスの名前はファイアドレイク、火の竜だ。飛べる竜ではなく地を這う形の竜で、全身から燃え盛る炎を噴き出し、口からは高温のブレスを吐くとのこと。弱点は逆鱗や鱗に覆われていない目や口の中だ。後は水魔法と体の中心にある宝玉が弱点となる。ステータスはレベル250の10000ほどだ。さすがは竜種と言えるだろう。
僕はドレイクまで近づくと縮地で姿を消し、一瞬で目元まで飛び上がり魔指弾を打つ。だが、ドレイクはそれに反応し瞼を閉じることで回避し、僕にブレスを吐いてきた。
「ちっ」
僕は舌打ちと共に空歩で空を蹴り付けてその場から緊急回避する。ステータスを当てにしない方がいいな。想像以上に早く、威力の高い攻撃をしてくる。
僕は腰に差した抜身の刀を抜き放ち、ソフィーの詠唱が完了するまでこいつの足止めをする。まずはもう一度縮地で一瞬で宝玉まで行き攻撃する。ドレイクは身体を暴れさせて近づけさせないようにするが、僕は空歩で綺麗に避けて近づく。
「雲林院無心流剣術……『刺紫電』」
空を思いっ切り蹴り付け加速すると、関節を回転させて貫通力を上げた一撃を放つ。ガツンッ、という激しい音が鳴り響き、ドレイクが痛みの咆哮を上げた。
「グオオオオオオオオォォォォォ」
「……『連刀飛燕』」
僕がドレイクの身体を蹴って離脱する瞬間に二連劇を放ちさらに宝玉を掛けさせた。その直後僕に火炎ブレスを吐こうしたドレイクの顔にソフィーの魔法が直撃する。
「蒼き水の砕牙よ、大地を砕く牙となり、空も喰らう龍と化せ! 水龍激流」
ドレイクの横から水の龍が体に体当たりをし、水の身体をドレイクに巻き付けた。ドレイクは暴れるが水の龍は離れる気配がない。水が蒸発してドレイクの熱い体を冷ましていく。
僕はもう一度地を蹴り水の龍に標的を定めて僕から目を離したドレイクの体まで到達し、顔まで首を駆け上がると目と逆鱗に向けて刀を振るう。
固い衝撃が腕から伝わり刀を落しそうになるが何とか持ち堪え、ドレイクの宝玉が欠け、顎にある逆鱗数枚が剥がれ落ちた。ドレイクの身体ん美巻き付いていた水の龍が消え去り、ダメージを与え逆鱗に触れた僕に目を血走らせて向かって来る。今度は逃げずにドレイクの頭に跳躍して眉間に刀を突き刺す。
「……『魔・刺紫電』」
先ほどの刺紫電に魔力のブースターを肘から噴出させスピードと威力を上げたものだ。ドレイクは身体を回転させて突きを避け、お返しに尻尾の薙ぎ払いが来た。僕は逆に魔力を出して急停止すると薙ぎ払われる尾に向かって刀の刃を構え防御する。
「くううぅぅぅぅッ! はあああッ」
激しい衝撃が全身を襲い、脳が揺れて脳震盪を起こしかけたが何とか持ち越し、刀を無理やり上に斬り上げた。斬撃を加えてきたおかげで斬れ味の上がった刀はすんなりと尻尾を切断した。
「グギャアアアアアァァァァァァ! ボアアアアア」
「レイヤ! 水牢獄」
回避が遅れた僕にソフィーが水魔法を放つ。僕の周りを水が覆い始めたので僕は息を止め、ドレイクが火炎ブレスを吐く。激しい勢いで水が減るのが分かり、すぐに水の中を泳ぎ火炎が当たっていない後方へ出てソフィーと合流する。
水牢獄は相手を拘束するための魔法だが、こういうように使うことも出来る。実際は水に閉じ込めて水圧させたり、溺死させたりする魔法で、ソフィーみたいに使うことはほとんどない。ソフィーを後で褒めておこう。
「やっぱりドラゴンは強いな」
「うん。北大陸にもいない」
「じゃあ、もう一度向かうから今度は援護を頼むよ」
「了解」
僕は刀を構えてドレイクに肉薄する。ドレイクは僕を待ち構えているように見えるが、多分ブレスの後は体に負担がかかってすぐに動けないのだろう。その証拠に喉がひくついていたり、足腰が震えている。
刀が鱗を切り裂いたことで普通に攻撃しても傷を付けられるだろうと踏み、ドレイクに肉薄すると後ろ足まで縮地で回り込み連続切りを放つ。
「……『連続断空刃』」
刀を高速で振とその軌跡に合わせた見えない刃が飛び太いドレイクの足を切断した。細切れになって地面へ落ちていくのをじっくりと眺めているドレイクは、ブレスの反動から治ると短くなった尻尾で振り払おうとするがソフィーの援護が来て尻尾の軌道が変わる。
僕は振り返っているドレイクの身体の下を通り左前脚を細切れにする。先ほどよりも斬れ味がまた上がった刀はすんなりと切り裂いた。
これは危ないな。人相手に使わない方がいいかもしれない。手加減できなかったら普通に切り裂いてしまうだろう。
二本の足を細切れにされたドレイクは怒りの咆哮を上げるが、動きが完全に鈍くなってしまった。やはり左右二本で体を支えるのはきついのだろう。
僕はそのままドレイクの肩に乗り顔まで到達すると目に向けて刀を刺す。ドレイクは反射的に瞼を閉じて護ったが、斬れ味の上がった刀はそんなもの飾りだと言わんほどの勢いで深々と突き刺さった。僕は刀を抜かずに上へ降り抜きドレイクが痛みで顔を上げた瞬間に頭を蹴って着地する。
またブレスを吐こうとしてくるドレイクの顎下にソフィーの水魔法がぶつかり、火炎ブレスの起動がずれて僕の目の前に宝玉を曝け出した。
「はあああああぁぁぁッ『百花繚乱』」
刀を腰だめに持ってくると連続の抜刀術もどきの突き技を放ち、宝玉を完全に破壊した。粉々になって落ちていく宝玉の欠片は周りの炎が反射してとても綺麗だ。
「ガアアァアアアアアアアアァァァァァァ」
ドレイクは仰け反って咆哮を上げると最後の攻撃とばかりに僕の上に落ちてこようとした。僕は刀を上段に構えると倒れてくるドレイクに向けて飛び上がり刀を振り下ろす。
「雲林院無心流剣術奥義……『気剣・一刀両断』」
体の底から煉り込んだ気を刀へと送り込み、刀が金色の光を発した瞬間にドレイクに向けて叩き落すかの如く斬り伏せた。
ズガアアアアアアアァァァァァァン
地面ごと斬り伏せた一振りはドレイクの身体を真っ二つにし、背後の壁も大きな亀裂を入れ迷宮内のボス部屋を揺り動かした。僕は斬れたドレイクの身体を飛び越え反対側に着地する。その後ドレイクが地に伏せる音が響き渡り勝利を知らせた。
「……ふぅー。ちょっときつかった」
「お疲れ」
「うん、ソフィーもお疲れ様」
僕はソフィーの頭を撫でて先ほどの水牢獄を褒め、ニコニコとなるソフィーを見て僕も癒される。一頻り撫でた後はドレイクの方へ振り返り、どこをボックスに収納していくか考えなくてはならない。
「とりあえず、この宝玉は欲しいな。とても綺麗だ」
「うん。何か作って」
「ん? いいよ」
という和やかなやり取りがあり、収納した物は宝玉とバラバラにした肉と体の各部、鱗千枚ほど、逆鱗など食べられる部位と素材にできそうな部位を取って収納した。他は放っておけば勝手に迷宮が吸収して新たな迷宮のボスを作り出すだろう。今回は迷宮の踏破が目的ではないので、あるであろう核を砕くことはないし、此処を無くしてしまえば恨まれるだろうからやめておく。
「それじゃあ、地上に戻ろうか。って、どこに行けばいいんだ?」
「あっちに扉ある」
ソフィーが指差したほうに普通の大きさの扉があり、そこが地上へ帰ることの出来る転移陣があるのだろう。僕はソフィーと手を繋いで地上に帰れることを喜びながら足を運んでいく。
扉開けて潜ると先ほどまでの熱さが嘘のようになくなり、僕達が拠点にしていた部屋と同じくらいの部屋に出た。そこには地上への転移陣と特殊な装置に入れられた核であるクリスタル、そして目の前には古めかしい扉があった。
妖刀出て来ました!
それにしてもドラゴン戦呆気なかったですねぇ。(こんなはずでは……)
アイデアを出してくださった方の要望を使えずに申し訳ありませんでした。
ですが、他にもいろいろと古武術に使える武器を出すので、これからもアイデアを募集します。ボックスがあるので少々大きくても大丈夫です。