迷宮攻略へ
神子と矛盾したこと言ってますがこれはこれ、あれはあれでお願いします。
あと、経験値とか適当に打ちこんでるのでおかしかったら教えてください。
「相手が攻撃を恐れてはいけない。突きや蹴りという体術は伸び切った瞬間が一番威力があるんだ。だから、下手に躱すと一番いけない」
「わかった」
「躱すときは相手の動きをよく見て最低限危なくないように躱し、相手を視界から外さないこと。そして、避けた瞬間に反撃が出来るとなおいい。そう言った時は防御が出来ないからね。あと、最低限の急所を覚えておこう」
僕とソフィーは二人で組み手をしている。ソフィーの攻撃手段は魔法主体だが、魔化すると魔闘術と呼ばれる魔力を纏って戦えるようになる、その時に体術が使えていたほうが楽になるのは当たり前だ。
また、魔法を使うのにも体を鍛えていたほうがいいということが分かった。精神力というのは魔法の安定さや威力などいろいろと影響しているらしい。精神力を鍛えるならやっぱり武術しかない。瞑想とかもあるけど、あまり精神力は増えないだろう。だって、ただ座って無心を求めるだけだよ? 精神力をどうやって鍛えるのさ。
現在のステータスはこれだ。
雲林院零夜 男 人族 レベル:142 経験値:10843953
職業:武道家
筋力:8270
魔力:15940
体力:7920
耐久:6410
魔耐:6280
精神:9730
敏捷:11830
魔法属性:無
技能:魔力操作≪制御、圧縮、放出、拡散、遠隔操作≫、雲林院無心流、気功術、気配察知、気配遮断、危険察知、魔力感知≪索敵、空間把握≫魔力遮断、威圧≪殺気≫、速読、先読み、鬼金剛力、鬼豪腕、鬼豪脚、硬質化≪全身≫、鉄爪、鬼火、水刃、水走、風刃、縮地≪瞬光≫空歩≪空停≫夜目≪心眼≫家事、全耐性、全属性耐性、物理耐性、自己回復≪体力、魔力、高速≫限界突破、模倣、ボックス、鑑定、隠蔽、言語理解
称号:異世界人、覚醒者、無職だった男、雲林院無心流継承者、武道の達人、武道の極み、無の使い手、魔人殺し、ネームド殺し、試練を受けし者、試練を合格せし者、魔物を喰いし者、指導者、ソフィーの師匠
ソフィー・ア・バラン・ラ・ドルチェ・ガドボルグラン レベル:163 経験値:1692438
職業:魔王 種別:魔王種
筋力:3970
魔力:8280
体力:3470
耐久:3390
魔耐:6930
精神:6370
敏捷:3870
魔法属性:火、水、風、土、闇
技能:魔化≪魔王化、魔闘術、能力上昇、魔力消費激減、魔方陣不要、魔力吸収≫自己再生≪体力、魔力≫並列思考、合成魔法、想像魔法、全属性耐性、魔力感知
称号:元魔王、魔族から追放されし者、魔導の極み、零夜の弟子
とんでもないことになっていた。僕のステータスは何と五桁に突入し、ソフィーは訓練を始めるとすぐにステータスが上昇し始めた。称号もいくつか手に入れることが出来たので教えておこう。
指導者というのは教えた相手のステータスが伸びやすくなる効果、ソフィーの師匠はソフィーのステータスが師匠に影響する。零夜の弟子も同じ効果だ。または慣れていてもある程度の意志の疎通ができるという何とも言えない称号だ。大体半径三キロほどだな。迷宮の端まで行くと聞こえなかったからね。魔道の極みは魔力、魔耐、精神力に400プラスする称号だ。
これは魔法を使って僕と戦ってもらうと付いた称号だ。たぶん武道の極みを持っている僕にダメージを与えたことと、その前に僕が簡単な知識を教えたからだと思う。あと、鬼火を見せたり、水刃や風刃を工夫して岩を切断したりといろいろ目の前でやったのも影響していると思う。
「よし、今日はここまでにしよう。明日はいよいよ迷宮の攻略に入る」
「うん、わかった。レイヤのご飯楽しみ」
ソフィーは汗を拭いて笑みを浮かべてそう言った。ここ第五十層から五十九層までを行動範囲として訓練をしていた。期間としては体感時間で一か月ほど。ソフィーでも簡単にこの辺りの魔物を倒すことが出来るようになった。ソフィーが言うには自分は上位魔族と遜色がない、だそうだ。それは良かった。今のソフィーナら赤鬼を単独撃破出来るからね。次の魔人はソフィーに任せてもいいかもしれない。
魔人殺しの称号は魔人に対してどんな攻撃も威力が一・二倍になる効果だ。ネームド殺しも同じような称号だ。よってここに配置された魔人には一・四強にまで倍増されることになる。
次の日? 僕達は起きるとこの部屋に置いているものを片付けて部屋から外に出た。いよいよ本格的に迷宮踏破に挑む。この五十層は自然タイプらしく五十九層までいろんな地形の階層だった。
そこで採集した道具を有効利用して回復薬や丸薬、薬、ジュース、毛皮のコート等々いろいろと作り上げた。魔法で針を作って貰えれば蜘蛛タイプの魔物から採取した糸を使って裁縫が出来る。そうやって装備品を軽く揃えた。さすがに鍛冶は出来ないため地上に戻って頼むつもりだ。
「うぅーッ……あぁ~。よし! それじゃあ行こうか、ソフィー」
「うん、レイヤ」
僕達はピクニックするかのような会話をして慣れ親しんだ階段を降りていく。何度も湧き出す魔物達は相手がどれだけ強くても学習が出来ず毎回襲い掛かってくる。僕は全て拳で叩き殺し、ソフィーは水の弾丸や風の刃等で傷がなるべくないようにしてもらっている。
ソフィーから聞いたのだが、冒険者ギルドでは毛皮などの換金もしてくれるらしいのだ。なら、この下層の敵はどれくらいの値段になるか想像もできない。だって、地上には生息していない魔物が多くいるんだよ?
なら、どうやってそれを判別するのかって思うよね? それはね識別のア―ティファクトで判別するんだって。その毛皮を通すと魔物の名前、ランク、強さ、特徴などなどいろいろと出てくるらしいんだ。僕の鑑定と同じような効果がある。それで換金額を決めるらしい。ボックスもさらに容量が増えたからドンドン入れていく。
第五十五層は雪エリアだ。ここでは特に覚えられる技能がなかった。多分体の構造が全く違うからなんだろう。雪や火を吐き出すことが出来ないのと同じだ。僕は身体が基本となっているから魔法のような技能を覚えられないのだろう。
例えば鬼火でも投げて使うより手に纏って殴ったほうが威力がある。水刃や風刃も飛ばすより剣のように使ったり、投げナイフ等のように使った方が威力がある。ソフィーはその逆だ。魔法を放った方が威力がある。だから、僕が前衛でソフィーが後衛だ。
第五十六層は暴風雨エリアだ。風が止むときもあるがその時は雨の降る量が多く視界が悪いのは変わらなかった。ここで初めて竜種の魔物と遭遇した。体の大きさは四、五メートルで硬質な肌と鱗を持っている鋼の竜だった。ブレスは風のブレスでそれほどダメージはないが近づくのが困難になる。また、空からの奇襲を主としているのか倒すのに苦労した。まあ、魔法に弱いみたいだから僕が引き付けている間にソフィーが魔法で倒した。
後から聞いたのだが、魔族でもこのくらいの竜になると討伐隊を組んで戦うものらしい。それを二人で討伐ってどうよ……。
技能はやはり覚えられなかった。てか、魔物の魔法だから僕が覚えられるものが少ないんだと思う。魔物が使う魔法はその魔物にあったものだから僕は僕で作らないといけないのかもしれない、と考え始めた。
第五十七層は幻想的な森林エリアだ。どことなく薄暗く奥の方にあった泉にはフェアリーと呼ばれる妖精型の魔物が飛んでいた。攻撃しなければ襲われることがなく逆に友好的であれば妖精の羽根の鱗粉を貰える。鱗粉は魔力を増やすことの出来る特殊な薬の元となる。他にもこれから作られた杖は魔力を増大させるらしい。他にもラストウィッチやデーモンハンド等の悪魔系の魔物がたくさんいた。
採取したのは高位の薬となる材料がたくさんあり、地上だと滅多に手に入らない果物などもたくさんあった。
第五十八層は普通に草原エリアだった。ここには猛獣はいなかったがすばしっこい魔物が多く倒すのに苦労した。大樹には蜂の巣が付いていたり、砂場からは大量の蟻が出てきたりした。全てソフィーの火魔法で倒すことになった。
採取したのは蜂蜜の中でも最高級品の鬼蜂蜜という癖のない甘味と蜂蜜独特の質感が口の中に広がるものだ。他にもハーブや野菜がちらほら生えていた。
第五十九層は古代遺跡エリアだった。ここの魔物はアンデット系が多く僕は気功術を使ってスピリット系を倒すことが出来た。気功術を使うと体全体が光り、自身の気を相手に流したりぶつけたりすることで倒す技だ。まあ、魔力の攻撃でも倒せるけど気の方がダメージ量が大きい気がする。
採取は宝箱が多く念願の装備品をいくつか手に入れた。僕は『闘争の腕当て』という浅黒い緑色の皮に銀色の突起が付いている小手だ。後はソフィーの『蒼月の杖』という先端が月の形をしている青色の杖だ。他にもローブだったり、靴だったり装備品を揃えることに成功した。
そして、第六十層現在、ソフィーは一人で魔人の『骨骸の暗黒騎士・ランドリッツァ』と言って個体名は『奇骨のグリム』という。グリムは漆黒の重鎧から靄の様に噴き出す闇を纏い金色の剣を携えた騎士だ。中の人物は既に骸と化していて執念の末、アンデットとして生き残った魔物だ。元の名前はリビングアーマーと呼ばれる首なしデュラハンの親戚のような魔物だ。
『カ、カ、カ、カ、カ。そんな攻撃では我を倒すことは出来んぞ!』
顎の骨の音がカタカタと笑い声を上げ、心の底から震え上がるような悍ましい声が鎧の中から響いて聞こえた。
「舐めないで。想像魔法……『転輪の炎玉』」
両手を前に突き出してそう言うとグリムの下に一気に五芒星とその端に丸い魔法陣が構築され、丸い魔法陣から火球が出て回転し始め一つの輪と化すと急激に縮んで爆発を起こした。グリムは爆炎の中から煙を上げながら飛び出し斬撃を放つ。
『ヌウゥゥン、『死への誘い(デットリィ・エンド)』』
金色の剣に闇を纏い両手で持って上段切りを放つ。ソフィーはそれを風魔法で高速で躱し、同時に土魔法を放つ。
「大地の怒りよ、地に眠る者達の刃よ、女神に憤怒を! 『大地の猛死針』」
グリムの下から魔法陣が浮かび上がり、地面が怒り出したかのように天に向かって巨大な針が何度も突き出し戻される。
『ヌウゥゥンンアァァァァッ』
グリムは剣を高速で振うことで針の猛攻を無傷でやり過ごすが、その間にソフィーの魔法が完成する。
「地を這う混沌、天を掛ける亡者、煉獄の時は来たり、その身を以て償いを……『死隕石』」
天から極大の赤い魔法陣が出来上がり、そこからグリムに向かってソフィーが手を下すと同時に、赤く黒いオーラを纏った隕石が降り注いだ。グリムは唸りながら剣を肩に担ぐように構え暗黒のオーラを体いっぱいに噴き出し始めた。
『オオオオォォォォ、黒き闇は全てを飲み込む、神に背きこの剣技、その目にとくと焼き付けよ! 『暗黒剣・ダークリィエッジ』」
唱え終ると噴き出したオーラ全部が剣に圧縮され金色から漆黒の剣へと変貌し、隕石に向けて飛び上がると剣をやや右上段に構え雄叫びを上げながら斬り伏せた。
ズガガガガガァァァァァァン
隕石とグリムが鬩ぎ合いピシリと音を立てながら隕石が破壊されて大爆発を起こす。グリムはその場に焦げながら落下し、空中で受け身を取って着地したがその後によろけて片足を付いた。
『カ、カ、カ、カ.……見事だ、小娘よ。我もここまでのようだ。最期に主の名前を教えてくれぬか』
グリムの鎧の隙間から砂が零れ始めていた。恐らく骨が砂になっている。全闇のオーラを使った一撃と高温の熱にやられて骨が炭化したのだろう。
「私はソフィー。先代魔王ソフィー・ア・バラン・ラ・ドルチェ・ガドボルグラン」
そういうとグリムの鎧の中から軽快な笑い声が響きだした。
『カカカカカカカカ……。我は魔王殿と戦っていたのか。最期の戦、強者とやれて満足! この出会い、感謝する……』
そのままガシャンと音を立てて鎧だけが残った。グリムのステータスは平均2900ほどとソフィーなら勝てるとわかっていたが、やはり心配なものは心配だ。その剣に振れてしまったらいくら耐久度が高かろうが斬られてしまいそうだったのだから。この世界では耐久度が高ければ、鈍ら剣では傷すらつけられない。
「お疲れ様。魔力は持ちそう?」
僕はボックスから魔力回復の水を取り出してソフィーに訊ねた。ソフィーは普通にしているがちょっと気丈に頑張るところがあるから様子をしっかり見ないといけない。
「うん、大丈夫。前よりだいぶ増えたから」
ソフィーは杖を仕舞いながらそう答えた。汗が少し浮いているところを見ると少し気丈にしているのだろうが大丈夫そうだ。僕は少し熱い漆黒の鎧をボックスの中に入れて骨を土の中に埋めて供養した。
「それじゃあ、少し休んで次の階層に行こうか」
「うん」
僕とソフィーは食事を摂りながらお互いの過去話や世界の違いなどの談笑をして過ごした。
三十分後。僕達は再び迷宮の下へと進んでいた。ここからは再び洞窟型に戻り、罠を発見しなくてはならなくなった。この辺りの罠は剣山や落とし穴、毒ガス、毒矢、モンスターハウス等即死レベルが数段階上がっている。さすがの僕でもこの辺りの敵をソフィーを護りながら戦うのは骨が折れる。
この辺りの魔物のステータスは平均2000~2500ほどだ。急所を打ち抜けば確実に殺せるが、いくら力があっても腕や脚に当たれば即死は無理だし、反撃されてしまう。そのあたりがゲームと違うところだ。ゲームならどこに当たってもダメージはダメージでHPを減らす。
「レイヤは本当に弱かった? 信じられない」
ソフィーが隣でそう言った。
「うん、まあそうだろうね。僕はこの世界に召喚されたときは本当に弱かったよ。前のソフィーでも殴られたら終わりだったね。それほど弱かった」
だって平均70ってどうよ。ここにそれでいたら瞬殺じゃあ済まないよ。
「赤鬼と戦っている最中によく解っていないんだけど覚悟と名乗りを行ったら力が湧いたし、職業にも就けた。多分僕の称号にある試練というのがそれなんだろうね」
「試練?」
「そ。多分、何かを乗り切るとか、覚悟を決めるとかじゃないかな? 状況的に見てね。まあ、僕が試練を受ける意味がよく理解できないんだけどね」
そう、僕が四十人ほどいる中で試練を受ける意味が分からない。偶々というのも理解できるが、元から苛められていて、何かを習っていて、誰かから恨まれているのだから、これを偶然で終わらせるのはちょっと、ね。
そのまま歩を進めて行き、今日の所は六十五層でやめることにした。現在のステータスはこれだ。
雲林院零夜 男 人族 レベル:172 経験値:18625498
職業:武道家
筋力:10260
魔力:18920
体力:9820
耐久:8640
魔耐:8290
精神:10270
敏捷:15730
魔法属性:無
技能:魔力操作≪制御、圧縮、放出、拡散、遠隔操作≫、雲林院無心流、気功術、気配察知、気配遮断、危険察知、魔力感知≪索敵、空間把握≫魔力遮断、威圧≪殺気≫、速読、先読み、鬼金剛力、鬼豪腕、鬼豪脚、硬質化≪全身≫、鉄爪、鬼火、水刃、水走、風刃、縮地≪瞬光≫空歩≪空停≫夜目≪心眼≫家事、全耐性、全属性耐性、物理耐性、自己回復≪体力、魔力、高速≫限界突破、模倣、ボックス、鑑定、隠蔽、言語理解
称号:異世界人、覚醒者、無職だった男、雲林院無心流継承者、武道の達人、武道の極み、無の使い手、魔人殺し、ネームド殺し、試練を受けし者、試練を合格せし者、魔物を喰いし者、指導者、ソフィーの師匠
ソフィー・ア・バラン・ラ・ドルチェ・ガドボルグラン レベル:194 経験値:20428463
職業:魔王 種別:魔王種
筋力:4580
魔力:11280
体力:3920
耐久:4020
魔耐:9210
精神:10750
敏捷:5860
魔法属性:火、水、風、土、闇
技能:魔化≪魔王化、魔闘術、能力上昇、魔力消費激減、魔方陣不要、魔力吸収≫自己再生≪体力、魔力≫並列思考、合成魔法、想像魔法、全属性耐性、魔力感知
称号:元魔王、魔族から追放されし者、魔導の極み、零夜の弟子、魔人殺し、ネームド殺し
グリムを倒したことでソフィーにも魔人殺しとネームド殺しの称号がやっぱりついた。ステータスも順調の伸び上位魔族でも二人なら簡単に倒せるとのこと。
ここで魔族の順位について教えよう。魔族は大きく分けて六つに階位に分かれている。下から下位魔族(平均700以下)、中位魔族(平均1500)、上位魔族(平均3000)、爵位持ち魔族(平均5000)、番号持ち魔族(平均7000)、魔王(平均9000)らしく、今代の魔王は平均12000ほどらしい。僕といい勝負が出来るぐらいだ。もっと強くならないといけないな。
次に魔王についてだが、魔王というのは魔族の頂点のことを指す。よって国は一つしかなく、首都をバラクリーザというらしい。その魔王だが、攻撃手段は斧らしく物理特化の魔王で、魔法はほとんど威嚇程度にしか使えないみたいだ。それでも筋力が15000あるようで誰も逆らえず、耐久と魔耐が12000以上あるようだ。
聞いた話では魔人や魔物を産み出しているとのことだが、これは本当のことらしい。特に魔王は人族を滅ぼす推進派のトップらしく無理をしてでも魔物を産み出しているようだ。魔物生産のデメリットは魔力が減るだけではなく、生み出される魔物がランダムなため強力なものを産み出すと魔力が足りなくなり生命力を取り出されるらしい。因みにソフィーは出来ないようだ。まあ、魔王種は人間みたいなものだから無理だろうね。
魔王種は現在ソフィーを入れて三人しかいないそうだ。それほどまでに生まれにくい種類の魔族なのだろう。まあ、魔化や想像魔法が使える者が何人もいれば人族はすでに滅ぶか、神々の願いを達成しているな。
朝起きて朝食をいつものように作っていると、ふと思いついた。
「どうしたの?」
「いや、もしかしたらソフィーも肉を食べられるかもしれない」
「え!? 本当!?」
ソフィーは僕を押し倒して胸倉を掴むと上下に激しく降りだした。頭がガンガンと地面に打ち付けられるが、耐久度のおかげでたんこぶ一つ出来なかったからよかった。
「ソフィー落ち着いて。話すから」
「あ、ごめん。で、その方法は……」
はぁー。肉を食べたいのは分かるけどもう少し大人しくしてほしい。まあ、一か月以上肉を食べなければそうなると思うから言いはしないけど……。
「まず確認するけど、ソフィーたちが魔物の肉を食べられないのは僕と違って適性が無ではないから」
「聞いたからわかる。魔力が毒で、レイヤは相性がいいから美味」
「そう、ならその毒である魔力を僕の技能である魔力操作と魔力拡散で取り除けば……」
「私でも食べ……れる?」
「多分だけどね。魔力さえ取り除けばただの肉となると思う。ただ、魔力が消すことが出来るかも、消した後にどうなるかもわからないから、あまり期待しないでいて」
「うん、期待する」
ソフィーはあまり表情豊かな方じゃないけど、今回だけは滅茶苦茶喜びに頬を緩ませて目をキラキラさせていたなぁ。期待もされるようだし頑張るしかないか。だけど、本当に魔力を消したらどうなるかわからない。迷宮の魔物は魔力から出来ているのだからね。
台の上に一塊のジャガーの肉を置き、両手を上に話して翳す。目を瞑って魔力感知でまず肉の魔力を感知する。こうすることでどのくらい魔力を消したか知るためだ。
「よし、やるね。『魔力操作』……『魔力拡散』……」
まず魔力操作で肉の周りの魔力を無くす。そこだけ魔力をなくすことで、魔力が戻らないようにする。まあ、戻らないかもしれないが。次に魔力拡散でゆっくりとジャガー肉が内包する魔力を外へ出していく。出た魔力は魔力操作でなくしていく。
「あ、魔力なくなる」
ソフィーも魔力感知で魔力が消えて言っているのを確認しているようだ。次第に魔力感知で感じる魔力が減り、十分ほど経つと表面上の魔力はほぼ感知できなくなったので、とりあえず魔法を使うのをやめる。魔力は元に戻らないようだし、肉も小さくなっていない。触っても違和感がないから普通の肉だな。
次に肉を風刃で切り、中に魔力が残っているのか確認する。
「……中にはまだ魔力が残ってるね。今度からこま切れでやってみよう」
僕は肉を一口大に切るともう一度同じように魔力を取り除いていく。数が多い炒めちょっと時間が掛かったが数分で取り除くことに成功した。後は簡単に焼いて調理してみようと思う。
「で、焼いた物がこれなんだけど。ソフィー、食べてみる? 僕が食べてみて魔力の味がしなかったから大丈夫だと思うけど……」
「うん、食べる。……あ~ん」
え!? それすんの!? っていうか、この世界にもその文化があったのか。そっちの方に驚きだよ。ま、まあ、こんな可愛い子にこんなことが出来るのならしないわけがないけど。餌付けみたいな気もしないでもない。
「はい、あ、あ~ん」
「(パク。もぐもぐ)」
僕が菜箸でお決まりのセリフを言いながらソフィーの口へ運ぶと、口を肉に近づけてパクリと食べた。モキュモキュと口を動かしているが、無表情に近いのでよくわからない。まあ、口から出さないということはまあ成功だということだろう。
「どうだった?」
「……(ゴクン)おいしい。凄く」
「そうか! これからはちょっと手間になるけどソフィーも肉を食べられるよ」
「……(ニコニコ)」
僕は料理を台の上に置くと無意識のうちにソフィーの頭を撫でてしまったが、ソフィーは気持ちよさそうにしているからよかったのだろう。
ソフィーの身長は僕と同じ百六十弱だ。ソフィーも僕と同じで身長が低いのを気にしていると言っていたけど、僕はソフィーにも負けそうで悲しいのだけど。まあ、同じ気持ちだから同志に合えたっていう感じかな。
その後は六三層で手に入れた天然のサラサラ油を使って唐揚げと魚のフライ、野菜サラダ、魔力水のジュースを作った。ジュース以外は魔力を取り除いたのでソフィーもおいしく食べれたと言っていた。
「レイヤ」
僕が食器を洗っているとソフィーが声をかけてきた。僕は中断させてソフィーの方を見る。
「何?」
「私も料理手伝う」
「え? ソフィーは料理できたの?」
「うんん、したことない。でも、手伝いたい」
ソフィーは真剣な表情で僕に申告する。したことないっていうけど僕はその気持ちがうれしいし、手伝ってくれるのなら指示通りにしてくれれば大丈夫だろう。それに失敗しないように注意しておけばいい。
「わかった。今度から簡単な料理はソフィーにも手伝ってもらうね。でも、指示はしっかり聞いてね」
「わかった。頑張る」
今日は境にソフィーが料理を覚え始めた。僕の指導の下着々と覚えていくが、毎回何かをやらかしているとここに記しておこう。
技能欄視にくいですね。何か見やすくする方法はないでしょうか?
一つずつずらすのもどうかと思うので……。