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一方その頃……

戦闘を書いている方が楽なような気がする今日この頃……。

 足元の魔方陣の光が強くなるにつれて赤鬼が暴れる音が遠ざかっていく。目の前では零夜が赤鬼の攻撃を捌き魔方陣から遠ざかっていっている。白須は目元の涙を拭き取り先ほど零夜にお願いされた援護をすることにした。


「皆、零夜君の援護を! このままじゃあ彼が返れなくなっちゃう!」


 白須の悲痛に満ちた声が皆に耳に入りすぐに援護を放とうとする者が出た。中にはまだ渋る者がいたが、零夜の戦いを見た後ではそれこそ人数が少なくなっていた。


「「「全ての力の源よ、広大なる大地の母よ、大地を怪我スフと届きものを束縛せよ! 地縛」」」

「レイ君! 早くこっちに来て! あと一秒!」


 生徒数人から放たれた地魔法の束縛が赤鬼の強靭な脚を拘束し身動きを封じた。それに合わせて白須が零夜に急ぐように声をかける。零夜は弾かれた様に魔方陣の中へ入り白須に笑顔を向けた。


 レイヤが着くと同時に魔方陣の輝きが一気に増し皆を包んだ。全ての音が消え、此処へ来た時と同じ現象が生徒と騎士団全員に起こった。




 光が徐々に収まり視界がクリアになるとここにいる全員が目を開け、ここが先ほどの半壊した部屋ではなく元の宝箱が設置された部屋だとわかるとのろのろと座り込んでしまった。


 皆が方全体で息をし顔に疲労を浮かべているが、笑みが浮かんでいる。これで、地上に帰ることが出来る、と。だが、そこへ一つの悲報が知らされた。


「あ、あれ? 零夜君は? 零夜君はどこにいるの? 転移に間に合っていたよね? どこ? どこにいるの、零夜くーん」


 白須はボケたかのようにそれだけを繰り返し、近くの岩陰や女子生徒のスカートの中、女子生徒のローブの中、いろんな場所を探し始めた。次第に顔が悲しみと困惑に歪み始めた。それを見た全員が、零夜がいないことに気が付き探し始めるが、どこを探しても、どう呼んでも、彼の姿は現れなかった。


「ヒック、ヒッ、ヒッ、スン……レイ君、どこにいるの? 早く出てきてよぉ。意地悪だよぉ。早く私の前にその姿を見せてよぉ」

「優香……」

「か、香澄ちゃん! レイ君が居ないよぉ! 私達を驚かそうとしているの?」


 白須以外の人は皆零夜がここにいないことが分かると、あの部屋に取り残されたのだと理解したが、白須はそれが信じられずずっと彼の名を呼び続けている。誰もがそんな白須に声をかけることが出来ない中涼風が声をかけるが、やはり何と言っていいのか迷ってしまったようだ。


 白須自身も零夜がいないから取り残されたとわかってはいる。わかってはいるが、本能がそれを否定し続けているのだ。最愛であり、長年の思いが成就し、約束をした相手が最悪な場所に取り残されたとは考えたくないだろう。


「そ、そうだ! もう一度、魔方陣を……」

「いや、それは無理だ。我々にはあの魔法陣を起動する魔力がない。回復するまで待ってもいいが……レイヤが、死んでいる可能性が高いだろう」


 白須が名案だと皆に魔方陣の起動を、と呼びかけたがロイ団長がそれを否定した。生徒の中にもそれで納得する者や気付く者、当たり前だという顔をする者、今まではいなかった彼を悲しむ者、それとは逆に黒い笑みを浮かべる者がいる。


「死んでない! レイ君は死んでない! 死なない! 約束したの! 何があっても死なないって! 這いずってでも帰ってくるって言ったもん! ヒック」


 白須はその場に座り込み大泣きを始めて彼が死なない、死ぬわけがない、絶対に帰ってくると言い続けている。誰もがその姿を見て顔を背けてしまう。


これで白須が零夜のことが好きなのを理解した者が出てくるだろう。その中にはお似合いだと思う者や反発はあれどどこかで納得する者がいるが、やはり白須は学園の女神であったため嫉妬する者や敵意を抱く者がいる。中には殺意を抱く者までいる始末だ。


 不用意に考えなしの言葉を掛けると白須の心は崩壊してしまうだろう。涼風もロイ団長もそこが分かっているから声をかけることが出来ないでいた。そこへこんな事態を引き起こした馬鹿が声をかけた。


「優香。零夜はもう無理だ。彼のことは諦めるんだ。僕が傍にいる。僕なら彼よりも強いからいなくなることはない。絶対の傍にいると誓う。だから……」

「うるさい! 無理? 遊馬君は何を言っているの? レイ君が死ぬわけない! うんん、死なない! 絶対に私の元に帰ってくる! いえ、助けが来るのを待ってる!」


 カッコよく髪を掻き上げながら白須を気遣ったように言うが、ズボンはびちゃびちゃに濡れ下からは異臭を放っている格好で言われてもきもいだけである。さらに、そのせいで周りから距離を置かれ、掛けた言葉は白須に言うべき言葉ではなかった。


 本当に惚れている女性をものにしたいのであれば、今のような言動をするべきではなかっただろう。


 これが目の前で取り残されたのなら錯乱することはそれほどなかったかもしれないが、今回は魔方陣の上に乗っていたのにもかかわらず零夜の姿がないことに犯人以外は不思議でしょうがないのだ。そのためシラスはいつまで経っても現実を直視することが出来ないでいた。


 犯人である遊馬達以外がオロオロとする中、涼風が白須へと近づき優しく声をかけた。


「優香……。私も彼は死なないと思うわ。あちらの世界でイジメられていてもめげず、こちらで弱くなっても最後まで諦めなかった彼だから……。それに、まだ彼が死んだとわかったわけじゃないわ」

「……え?」

「彼なら赤鬼から逃げきれるわ。もしかしたら倒しちゃっているかも。私はそんな気がするの。もし倒していればあの部屋は魔物が出て来ないでしょうから寝て待っているのではないかしら。だから彼を信頼して、私達は急いで魔力を回復させることに専念しましょう」

「スズカゼの言うとおりだ。俺も彼なら何かやってくれそうな気がする。言い方は悪くなるが今はあの場所に戻れないのだから、早く行きたければしっかりと休んで魔力を早く回復させるんだ。レイヤが死んだと決まったわけではないからな」


 ロイ団長も白須へと近づき優しく厳しい言い方で諭す。それを聞いた遊馬達五人は顔を憎々しげに歪め、自らが嵌めてここにいない絶望的状況となっている零夜に醜い感情をぶつける。最早、人としてどうかと思う。


「皆には悪いがここで二、三時間ほど休憩する。本当ならここから――」


 ロイ団長がそう言って皆に指示を与えていると背後で魔方陣の解析をしていた魔法師が奇声を上げて報告をする。


「団長! 大変です! ま、魔方陣が、しょ、消滅しました!」

「なにーっ!? どういうことだ! まさか、傷でも付けたのか!」

「い、いえ、観察していたところ自然に消滅したように見えました! 恐らく……あちらの魔方陣が壊れたのではないかと……」

「――っ!? ……わかった」


 言い難そうに眼を左右に動かしながら伝える魔法師に、ロイ団長は息を飲み一言労いを込めた返事をした。報告を聞いていた白須はまだ理解できていないのか固まっているが、理解が始まると発狂してしまうだろう。すぐにロイ団長は白須の元へ行き、肩をガシッと掴んで揺すりながら告げる。


「魔方陣が消えたからなんだというんだッ! 彼が死ぬわけじゃないッ! 彼ならきっと赤鬼を倒し、生還してくれるッ! 俺達は少しでも強くなり、彼の元へ行けばいいのだッ! 迷宮には食べられるものも大量にあるッ! 十分生きていられる可能性が高い! だから今できることをするんだッ! シラス、お前が諦めてどうするッ!」

「そうよ、優香。彼が生きていることを信じているのなら多少遠回りになっても信じなさい。彼との約束もあるのでしょう? 彼が約束を破ると思う? 優しく、他人思いで、大切な幼馴染との約束を」


 ロイ団長は白須の消えかけた心に火を灯し、涼風はその灯を大きく燃え上がらせる。焦点が合わなくなっていた目の焦点が合い、活力が少しだけ戻ってきたように見える。


「……わかった……。私……レイ君のことを信じる。だから、私に力を貸して。レイ君を助けに行きたい。だから、香澄ちゃん、皆、ロイさん、騎士団の皆さん、私に力を貸してください。お願いします」


 シラスは皆に頭を下げて零夜の救出を頼むが反応は芳しい。やはり先ほどの戦闘が尾を引いているのだろう。そんな中涼風とロイ団長を筆頭とした騎士団全員がその声に反応する。


「ええ、ええ! 私も手伝うわ。彼とは私の趣味友達だから。こちらの世界に来て話が合う人は彼しかいないもの。失うわけにはいかないわ」

「ああ、俺も付いて行こう。お前達のように劇的に強くは為れないが戦闘技能だけなら国一番だ。任せてくれ」

「俺達も手伝いますよ! あいつは俺達にいろんなことを教えてくれましたから! 王城で聞いた人物とは全く違います!」

「私達もですよ。彼は魔法が使えないって言ってたけど、知識は十分に役立ったわ。異世界の知識とこちらの知識を合わせて使うなんてよく勉強しないとできないことよ」


 それに当てられた何人かの生徒が賛成する。その中には嫌そうな顔をして賛成する者がいた。そいつらの名はこの現状を作った犯人の遊馬を筆頭とする五人だ。もう恐怖で押し潰されそうだが白須の隣でかっこいいところを見せ、惚れさせてヤル、という目的のために無理をしているのだ。


 零夜を置き去りにした結果がこれならまだ足りないが、零夜がこれを見れば顔に笑みを浮かべていただろう。


 ロイ団長はみんなの意志を知ると次の指示を出す。


「今から三十層へ戻り地上へと帰る! 疲れていると思うが出来るだけ早く彼を救出しに行かなくてはならないのは分かるだろう! 見捨てろなどとふざけたことをいう奴はいないな! 彼がいなければみんな死んでいたのだからな! 恩を返せとは言わないが、彼の強さを見たのなら生き残っている可能性がある! 魔方陣が消滅したのがいい証拠だろう! レイヤ自身が壊した可能性もあるが、赤鬼がレイヤを帰らせないように壊した可能性もある!」


 ロイ団長の言葉に嫌な顔をする生徒が多いが、涼風や天宝治を筆頭とするおよそ十人と騎士団の人が頷く。だが、これに賛成できない者が悪いわけではない。再びあの赤鬼と対峙するとなると生半可な勇気では立ち向かえないだろう。既に戦闘自体に心が折れている者がいるだろう。戦力が減り、それでも助けに行くとなればどれだけの時間が掛かることか。


「皆は今できることをするんだ! お前達が出来ることは休んで成長することただ一つ! 今は地上に向けてこれ以上誰も欠けることなく帰り付け! ――アスマ、それからテンホウジ。これから先は任せた。俺達は背後を護る」


 ロイ団長の指示と今後の目標が決まったことで気持ちが上へ向き、二人の船頭の元地上へと帰路に立った。




 地図を持った者が道を指示しつつそれを囲むようにオーバーキル並みのダメージを与えて魔物を殲滅していく。魔力は徐々に回復しているが、体力と精神的な疲れが溜りロイ団長がどうするか考えていると丁度三十層に辿り着くことが出来た。


 一度絶望を知り暗い空洞の中で連戦を繰り返すと思った以上に体力を消耗させていたが何とか魔方陣まで辿り着き、一人一人が押し合いながら魔方陣に入って行く。


「や、やっと帰ってきた!」

「か、帰れ、帰れ、た……」

「早く休みたい」


 生徒達は次々に安堵した気持ちを掃き出し、その場に崩れていく。前方で戦っていた前衛組はさらに消耗が激しかったようで、喋る気力もないようだ。


 その状況を見た迷宮の係員がすぐに駆けつけ生徒達の治療にあたる。ロイ団長が現れたことで事情を聞くことになり、ひとまず休憩所で休むこととなった。


「――では、三十五層の隠し部屋にある宝箱を開けないように通達します。それから、救出の件ですがこちらで出すには少々実力が足りません。ですから、物資の援助のみとなりました。申し訳ありません。そして、国からはレイヤ殿が生きている確率は低いだろう。だからといって焦って死なれては困る。助け出してほしいが切り捨てる覚悟もしていてほしい。とのことです」


 係りの重役に人はロイ団長に頭を下げて言った。この場には着替えた遊馬と白須、涼風、ロイ団長の四人がいる。向かい合っている人は迷宮管理を任された国の管理側の人間で、先ほどまで国に通信魔道具でロイ団長が話したことを伝えて返事を貰っていたのだ。


 国は建前上優しい言葉を掛けているが、本当は零夜のことなどどうでもいいと思っている。彼の強さを目のあたりにしていない国の重役と国王は、報告を嘘だとは言わないが誇張されていると取ったのだ。

 零夜の日頃を見ているとそうかなるのかもしれないが、王城の中で囁かれている零夜の噂も影響しているのだ。


 国のほとんどの者が弱い者が死んでよかった、役に立てて死ねたのだからいいだろう、あいつは勇者ではなかったのだ、などと言いたい放題言っている。

 ロイ団長はそれに気が付いているが何も言うことが出来ない。


「いや、物資の援助をしてくれるだけでも有難い。階層はおよそ五十層だからな。未踏破もいいところに来いとは言えんよ。仲間であり、勇者であり、皆の命の恩人の救出だ。こちらでどうにかすると国にも伝えてくれ。あと、副団長にも一時団長の権限を委譲すると伝えておいてくれ。頼む」

「はい、確かにお伝えします」


 係員はそう言ってまた通信室へ向かった。


「三日後にもう一度迷宮に入り力を付けようと思う。だが、今回の件で心が折れた者や戦えない者がいるだろう。だから、三日後は戦える者だけを連れて行く。無理な者を連れて行こうとは思わないから安心させておいてくれ。あと、行かない者は国へ帰ることとなるだろう。一応国に帰っても訓練だけは怠るなと言い含めてくれ。いつ魔族や魔物が攻めてくるかわからないからな」

「わかりました。皆にしっかりと伝えます」


 遊馬はそう言って皆の元へ行った。白須と涼風も部屋を出て行こうとするとロイ団長に止められた。


「シラスとスズカゼ、ちょっといいか」

「何ですか?」

「はい、何でしょうか」

「アスマとトマ達四人は前からあんな感じだったのか? トマ達ならまだわかるがアスマのあの変わりようは未だに信じれなくてな」


 ロイ団長は苦虫を噛み潰したような顔で涼風に訊く。


「戸間君達四人はいつもレイ君をイジメていたけど、遊馬君はそんなことなかった気がする」

「多少は似たようなところがあったと思いますが、ここまでではなかったはずです。こちらに来て急に変わったと思います」

「そうか……。アスマも力に溺れているということか……」

「あ、香澄ちゃんに言ったけどレイ君に遊馬君には気を付けろと言われていました」


 白須は昨日の夜の出来事を涼風にしっかりと伝えていたようだ。最初は涼風も意味が分かっていなかったようだが、今ならある程度理解できているだろう。あの狂気じみた顔と何も考えていない自分が正しいという言動が脳裏から離れないのだ。


「レイヤはアスマが奇行に走ることを知っていたのか」

「いえ、知らなかったと思います。ただ、レイ君が言うには私と一緒にいると自分のことを凄い目で睨んでくるって言っていました。だから近いうちに何か仕掛けてくるはずだ、とも言っていました」

「レイヤは本当に凄いな。では、レイヤが転移できなかったのはアスマが、いや、遊馬達が関わっているというのか……」


 ロイ団長は零夜の準備の良さに感嘆した声を漏らす。そこへ白須がさらに言う。


「あと、レイ君から聞いたのですが私と遊馬君が付き合っているという噂が広がっているそうなんです。あらぬ噂もいいところなんですけど」

「そうなのか? 俺は零夜と付き合っているものだと思っていたが……」

「え? えぇ~、そう見えますか? まだなんですけど、一応答えてくれました。はっ、そ、それで何ですけど、零夜君に何かを仕掛けた後は私に何かしてくる可能性が高いと言っていました。だから、それを予防するために香澄ちゃんや騎士団の人から離れないようにって言われました」

「それは昨日部屋に帰って来てから言っていたことね。私もここまでするとは思っていなかったわ。はぁー、精々この前のようにイジメるぐらいだとばかり」


 白須は惚気ながら答え、涼風は想像以上に気を付けないといけないと嘆息する。ロイ団長は驚きと納得したという顔で頷き、白須の擁護をするためにこれからどうするか考えている。


「……とりあえず、まだアスマが何か仕掛けてくると決まったわけじゃない。だが、仕掛けないとも限らないわけだから、部屋は今のままでいいだろうがシラスの身が安全、若しくはレイヤが帰ってくるまで一緒にいてやれ。迷宮探索も無理に来なくていいが来るだろうな。それに合わせてあの五人も……」

「来るでしょうね」

「では、騎士を二人付ける。涼風も回復職の白須を護るという名目で傍にいてやれ。休憩時やそのほかの時間帯も騎士に監視を頼むが、涼風も一緒にいてやってくれ。あと、お前も気を付けるんだぞ」

「はい、わかっています」


 二人は会話を止めて白須の容体を確認するとロイ団長は部屋から出て、涼風は近くの椅子に座って白須が起きるのをじっと待つことになった。




 遊馬は皆にロイ団長の言葉を伝えるとあの四人を呼び出し、今後のことを話し合うことにしたようだ。


「まあ、いろいろと拙いことにもなったが何とかあいつを殺すことが出来た。上出来だろう」


 四人の顔は疲労が見え、若干青褪めている気がする。もう迷宮に挑めないかもしれないが、遊馬の言葉を聞いて計画が順調に進んでいることを理解すると引き攣りながら笑みを浮かべた。


「そ、そうだな、あとは誰が白須を落すか勝負だ」

「あ、ああ、邪魔なあいつはいないんだ。後はゆっくりやっていけばいい」

「は、はは、ゆっくりやっていて俺に負けたら意味ねぇぜ……」

「ふ、ふふふ、ふふふふふ、ヤル、ヤッテやる」


 四人の顔に気色悪い笑みが浮かび上がり、涎が口の端から垂れている。もうほとんど自制が出来なくなり始めているのだろう。こんな姿を涼風達が見たら零夜から昨日の夜忠告を貰っておいてよかったと心の底から思うだろう。


「まあ、落ち着け。俺達には良い方向へ進んだが、俺達の好感度は下がっているんだぞ。そこを注意してこれから動かなくてはならない」


 遊馬は真面目な顔になって四人に注意をする。


「あと、迷宮には挑んだ方がいい」

「は!? 何でだよ! あいつがいないんだからここでゆっくりしてぇよ」

「だが、お前も賛成していただろう? 今更やめるのか? 俺が優香をとってもいいのか? それに、罪をお前達になすり付けてもいいんだぞ?」


 遊馬は黒い笑みを浮かべて四人を脅迫する。四人はブルリと体を震わせると冷汗を額から場がした。


「お前ら、本当にそれでいいのか? 恐らく、優香は迷宮に挑むぞ。そこで、しっかりと護れば……」

「おお! わかった。俺も迷宮にもう一度挑戦しよう」

「名目はあいつの救出だな」

「ああ。だが、本当は白須を嵌めて助ける」

「うひょー! オラ、ムラムラしてきたぞ!」


 一人壊れている奴がいるが皆壊れているためどうでもいいだろう。全員が壊れるまで時間の無駄であり。零夜がもし目の前に現れたら穴という穴から異臭の放つ(ぶつ)を排出して完全に壊れるだろう。


「それじゃあ、まず強くならなくちゃな。俺があいつに負けているとは思わないが、叩き潰せるとは思っていない。今度こそぐちゃぐちゃのミンチにしてやる」


 四人は再び気色悪い笑みを浮かべると涎を拭いてそれぞれの部屋へ帰っていった。


次は十五時に投稿します。

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