この争いは始まりです
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この場を借りてお礼申し上げます。
Twitterは『東堂燈@小説家になろう』(@pureze0807)の名前ででやっております。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
第二学生寮の真裏、第三学生寮に麗奈が帰ったのは常識的に考えて十歳の少女が出歩く時間ではない午前二時だった。
「今日はいつになく遅いのね」
「ご、ごめんなさい」
麗奈はこんな遅い時間でもニコニコと笑って出迎えてくれる寮母のおばさんに頭を下げた。
「いいのよ。それより、麗奈ちゃん宛に雇い主様から荷物が届いているわよ」
「みなづきさまから?」
寮母のおばさんは「ちょっと待ってて」と麗奈に告げ第三学生寮の玄関前にある寮母室から丁寧な包装が施された小さすぎず大きすぎない中くらいの箱を持って戻ってきた。
「ありがとうございます。しつれいします」
麗奈は箱を受け取り、パタパタと自分の部屋に戻った。
包み紙を外すと中には手紙の入った封筒と木箱が入っていた。
麗奈は封筒を開けて中に入っていた手紙を一読した。
「うそ……」
手紙を読み眠気が全て吹っ飛ぶ程驚愕した麗奈は雑ではあるが上品に木箱の蓋を開けた。
麗奈の手から封筒が滑り落ちた。
封筒から二枚のナイトチップが落ちた。
モノクローム地底基地
「よっと」
黒や灰色の姿をした戦士が多いモノクロームの中で希少な白い姿をした戦士ホースポーンは採石場でなんとも言えない最期を迎えてしまったルークズの代わりに黒光りしている岩をモノクローム地底基地の倉庫に置いた。
「ルー‼︎」
「よう、元気か?」
モノクロームという組織の仲間であるはずのルークズにホースポーンは槍と銃が合わされたような武器を向けられた。
「ルー、ルルルーク‼︎」
「おいおい、仲間を呼ぶなよ。ただ挨拶しただけだろ」
一体のルークズの一声でどこからともなくルークズが現れホースポーンを囲み武器を向けた。
「何の騒ぎ?」
倉庫の出入り口が大袈裟な音と共に開き真っ黒で大きなドレスを身にまとった女性が入って来た。
「ルーク」
「白いモノクローム、貴方がホースポーンかしら? 私を呼び捨てなんて礼儀がなってないようね」
ルークと呼ばれたその女性はドレスの中からか黒い鞭を取り出しホースポーンに向けて振った。
それと同時にルークズたちもホースポーンに向けて一斉射撃を行った。
「手応えありね」
火薬くさい煙の中で光の粒が光った。
「あら? 手加減したつもりだったのだけど倒してしまったかしら?」
「この程度の攻撃で倒れるならモノクロームを敵に回したりしねぇよ」
「確かに倒したはずよ」
「倒されたのはあんたの作ったルークズだ」
「あの一瞬でルークズを盾に⁉︎ 奴と同じく卑劣な戦い方を」
「どうする? 戦って俺を捕らえモノクローム様に献上でもするか?」
「そうね、そうさせて頂こうかしら」
「テンション上がってきた。最初からフルスロットルで行くぜ」
「報告致します。モノクローム地底基地倉庫にて反逆者ホースポーンとルークが戦闘を開始致しました」
「『(ホースポーン、我々モノクロームにとってイレギュラーな存在だな)』」
地底基地とは遠く離れた闇の中、ルークと同じ顔の女性と男の声と女の声が複数重なったような声がモノクローム地底基地倉庫に取り付けられた監視カメラの映像を鑑賞していた。
「モノクローム様、どう致しましょう?」
「『(こちらはルーク殿に任せ、ビショップ殿はポーン殿に『第四作戦』を実行するよう報告せよ)』」
「仰せのままに」
「『(>>975氏『第四作戦』が失敗したらどうなさるおつもりで?)』」
「『(無論『第五作戦』を行う)』」
「『(それではモノクロームの二の舞ではありませんか‼︎)』」
「『(>>084殿、落ち着け。『第四作戦』に出撃する奴は『アドリブ』が効く男だ)』」
「『(そうでした。レッドナイトを倒すという我らの野望も今日で果たされますなwww)』」
その後しばらくモノクロームの独り言は続いた。
「ハンマーヘッドポーン」
「待ちわびたヨー」
呼ばれてやって来たのはハンマーヘッドポーンと呼ばれるハンマーのような頭と腕意外はシャークポーンにとてもよく似た姿の灰色のモノクロームだった。
「作戦の内容はわかっていますね?」
「イェー、もちろんだぜ。街中に埋まってる化石の採取だろ?」
「よろしくお願いします」
「オーケーオーケー、パパッとやって帰ってくるぜ」
「行ってらっしゃい」
「行ってくるぜ」
「オーウー」
基地を出ようとしたハンマーヘッドポーンはビショップに頭を掴まれた。
「ハンマーヘッドポーン、貴方の使命は?」
「オーイエー、表向きは化石の採取本当の目的はレッドナイトを倒すだろ?」
「その通り。モノクローム様は一刻も早くレッドナイトを倒すよう望んでおられます」
「兄さんだって負けたとはいえレッドナイトを倒しただろ? ならヨユーだぜ」
「あれは最初から決まっていたシナリオ。貴方の使命は本来貴方が負けるシナリオを貴方が勝つシナリオに書き換える事。そのために私は貴方を調整しました。」
「オーケー、ビショップ様の顔に泥を塗らないようにレッドナイトの首を持って帰ってくるぜ」
「楽しみにしています」
「麗奈ちゃん、白騎さんに何の用事だろうね」
「あぁ、何の用だろうな」
俺は朔弥の目を見ずに朔弥の言葉を復唱していた。
「どうしたの?」
「何が?」
「なんか、ソワソワしてる」
「そんなことない」
そんなことある。前回の変身前に朔弥にキスされた俺は一時的にパワーアップしたもののその代償として恥ずかしさから朔弥を直視出来なくなった。
「さ、朔弥はよく平気な顔をしていられるよな」
「何のこと?」
「ふ、普通はいきなりあんな事しないだろ」
「だから何のこと?」
「さくやさんがゆうきさまにちゅーしたことじゃないですか?」
朔弥のメイド麗奈ちゃんは俺の部屋に入ってくるなりそう言った。
「あ、ごめんなさい。はくがくくんがわすれものをしたのでそれをとりにきただけです。どうぞつづけてください。これ、かりていきますね」
麗奈ちゃんはお見合いの雰囲気を楽しむ母親の様な顔で俺たちを見つめレッドナイトグッズの置かれた棚から『ナイトシューター』という銃型のおもちゃを持ってそそくさと部屋を出て行った。
「いいわすれていました。ここはわかいおふたりにまかせてわたしはでていきますね」
戻ってきてドヤ顔でそう言った麗奈ちゃんを見送った俺と朔弥は声を合わせて叫んだ、
「一番若いのは麗奈ちゃんだろ‼︎」
と。
「ねぇ、さっき麗奈ちゃんの言ってたちゅーの事って……この間の?」
「それ以外に俺が朔弥からキスされたことなんかないだろ」
横目で朔弥の顔を見ると朔弥はとても申し訳なさそうな顔をしていた。
「あのさ、」
「いや、謝るな‼︎」
「? 謝る?何を?」
「えっ?」
えっ?
口から発せられた言葉と心で思っていた言葉が完全に一致した。
「あれはさ、挨拶だよ。『あ・い・さ・つ』戦いに行く勇気に「気をつけて行って来てね」みたいな。もしかして「大好きだよ。チュッ」みたいな想像してたの? 」
朔弥の口からポンポン出てくる言葉が耳に入る度に俺の顔が紅潮していくのがわかった。
恥ずかしさから来るものではなく俺をバカにしているとしか思えない朔弥に対する怒りでの紅潮だと信じたい。
「そんなに恥ずかしかったんだ。私もだよ」
乙女チックにそう言う朔弥だが、その表情はやけにニヤついていて乙女ともお嬢様とも言い難かった。
お互いにただでさえ少ない話題が尽きた俺たちは二人でベッドに一画足りない川の字になって寝転がりテレビをの電源を入れた。
「ダサっ。勇気、チャンネル変えて」
「はいよ」
数日前に朔弥のお母様、香ヶ崎水無月さんが着ていたような服を着ていた女優にそう言い放った朔弥と同じ感想を抱きながら学園のある地域で五年だか十年だか連続で年間視聴率ランキング一位を獲得しているらしいテレビ局にチャンネルを合わせた。
「うわぁ、スイーツだ」
丁度スイーツ特集をしていたらしく声だけでなく表情も乙女になった朔弥の声が聞こえたが俺の視線はチャンネルを合わせる直前にポケットの中で震えたナイトフォンに向けられていた。
「美味しそう。勇気、今度一緒に食べに行こうよ」
「あぁ、今度一緒にな。悪いけど留守番しててくれ。出掛けてくる」
お出掛けなんて言葉に含まれる用事では無かったがその言葉が適切だったかを考えるよりも先に俺の身体はいつもの光に包まれて俺の訪れたことがない土地へ転送された。
「っと、なんだよここ」
建ち並ぶ二十階建て以上のビルから大きな都市である事はわかった。
ただ、俺の目の前に広がるのは繁栄した世界ではなくビルが文字通り崩れスーツを着た男女が光に包まれ現れた俺に見向きもせず悲鳴を上げて俺の前を通り過ぎて行く地獄のような世界だった。
「どこだ?どこだ?化石はどこだ?どこだ?どこだ?赤騎士どこだ?」
ハンマーヘッドに似たモノクローム、ハンマーヘッドポーンがルークズと共に若干愉快な歌を口ずさみながらハンマーのような形に変形した手でビルを崩して歩いていた。
「待ちやがれ」
自分で言っていて毎度思うことなのだが、俺はどうしてモノクロームの前に出るたびにオリジナルのレッドナイトと同じ台詞を言ってしまうのだろう。
「ようやく現れたかヨー、レッドナイト。俺の名は……言わなくてもわかるよな?」
「……ハンマーヘッドポーンだよな?」
「その通りだヨー。さぁ、早く変身して俺と戦え‼︎」
違和感を一切感じないその言葉に違和感と不安を感じつつ俺はナイトチェンジャーにナイトチップを装填し、叫んだ。
「ナイトチェンジ」
『コード承認』
その電子音声後、僅か0.008秒の間に俺の身体を中心にアーマースーツを形成する粒子がナイトチェンジャーから溢れ出しナイトチェンジャーが装着されている左手首から順番に左手、体、右手、両足、最後に頭部とアーマースーツが装着された。
「赤き騎士、レッドナイト」
決め台詞が決まると赤く輝くナイトフォトンがアーマースーツを駆け巡った。
「俺はスッポーンたちとは違うゼー‼︎」
「誰だろうと、倒してみせる。来い‼︎『ナイトブレイド』」
俺の声に反応し俺の前にナイトブレイドが形成され、俺はナイトブレイドを右手に掴んだ。
「いざ、参る」
「ルー‼︎」
「ルー‼︎」
「ルー‼︎」
ハンマーヘッドポーンに立ち向かう前にルークズがいつものように俺を囲んだ。
「いつも通りかと思っているだろうが俺たちモノクロームも相手に行動を見破られる程甘くはないゼー」
ハンマーヘッドポーンが無駄に軽快な口調でそう言うと『レッドナイト』過去53話の放送と俺が戦った三、四回の戦闘で打撃戦のみを行ってきたルークズが槍と銃が一つになった武器を何処からともなく取り出した。
「強化しているのはレッドナイトだけではないんだヨー」
流石にフィクションでもノンフィクションでもそれだけはお約束なのかルークズはハンマーヘッドポーンの話が終わってから攻撃を開始した。
互角とは言えないが武器を手にしたルークズはいつもより強く感じられた。
「ルー、ルルルルー‼︎」
三体のルークズの攻撃がナイトブレイドに響いた。
心なしかルークズの士気が上がっている気がする。
「ルークズにこれほど手こずっているようジャー、ポーン様どころか裏切り者のホースポーンにも歯が立たないゼー」
「ホースポーンってのが誰だか存じ上げないが、あまり俺を甘く見るなよ」
押し寄せてくるルークズをナイトブレイドの一振りで光の粒に変え、俺はナイトチェンジャーに装填されているナイトチップを変えた。
『チップ確認 桂馬』
赤いナイトフォトンが消え、アーマースーツに緑に輝く粒子が駆け巡り緑のナイトフォトンへと変わった。
「風を司る赤き騎士、レッドナイト」
「シャークポーンの速さを上回った姿カー。これは分が悪そうダー」
「逃げるつもりか?」
「逃げるなんてとんでもなーい。ここはルークズに任せ俺は次の戦闘の為に戦略的撤退するヨー」
初耳だと言いたげなルークズたちを残しハンマーヘッドポーンは戦略的撤退をしていった。
「帰りたいなら帰っても良いけど?」
ルークズは武器を脇に抱え、タイムを示すTの字を手で表現すると残っていたルークズ全員で緊急の話し合いを開始した。
「ルー‼︎」
話し合いの間ナイトブレイドを振っていると一体のルークズが威勢よく叫んだ。
「戦うのか?」
「ルー」
威勢よく叫んだルークズがルークズを代表して頷いた。
敵の前でナイトブレイドを振って油断していたのだから不意打ちでもしておけばそれなりの成果を得ることが出来ただろうにそのような卑劣な戦い方をしない辺りルークズも漢なのだろう。
「まだ、桂馬には慣れてないからな。ルークズ、一局付き合えよ」
ルークズが真剣な表情……を思わせる武器の構えを見せたところで俺は地面を蹴りルークズの背後に回り込んだ。
「ルー?」
「後ろ、後ろ」
俺の言葉が聞こえようやく俺の気配を察知したルークズは武器で俺の身体を貫いた。
「悪い、残像だ」
俺の残像を貫いたルークズは光の粒に変わった。
「ルー、ルー、ルーーー」
光の粒となったルークズを見て近距離では勝てないと思ったのか武器を槍としての持ち方から銃としての持ち方に変えたルークズは一斉に発砲を開始した。
「ルルッ?」
「やったか?」と聞き取れるルークズの声を爆煙の中で聞きながらナイトブレイドで煙を消し去った。
俺の足元には飛んできた鉛弾が全て真っ二つになって落ちていた。
「ルー‼︎」
ここまで勝利が見えない勝負だと心が折れてしまいそうなものだがそれでもルークズはひたすら俺を倒しに向かってきた。
「対局、終了」
ルークズとルークズの持っていた武器や発射され見事に全て真っ二つになった鉛弾が光の粒に変わったのを見送って俺は変身を解き、自室へと戻った。
「痛てて。まだ本気じゃないにしろ幹部様に傷を負わせられるようじゃ俺もまだまだだな」
空とも地とも海ともわからぬ空間でホースポーンは呟いた。
「まぁ、今回は収獲があったから良しとするか」
ホースポーンの手にはルークのモノクロチップが五枚握られていた。
今週も最大文字数を更新しております。
今回の話は『始動』という事で色んな事が同時に始動し話は盛り上がりを見せているのではないでしょうか?(そう感じられていなければ私の文才が未熟だという事でお許しください)
次回は敵が最低でも一体倒されます(確定)。
最後に感想や評価お待ちしております。




