嵐の前は騒がしくありません
わたしは暗く、冷たく閉鎖された檻の中にいた。
ここに連れてこられた経緯は覚えていないが、はっきりと言えるのはわたしをこの場に連れてきたのがモノクロームだという事。そして、日を追うごとにモノクロームたちの行動に焦りが見え始めている事。
そんなある日の事、
「ルー」
モノクロームと言う組織に所属するルークズと呼ばれている戦闘兵がわたしの檻の鍵を開きわたしに檻から出てくるように指示した。
普段檻を見回りに来るモノクロームよりもガタイの良いそのモノクロームはわたしをある部屋へと導いた。
「『(ご苦労だった)』」
ルークズに導かれわたしが入ったその部屋には何十種類もの言語が寄せ集まった球体が浮かびそこから老若男女どれとも取れる重なり合う声を発していた。
「ルー」
低い声でその球体に敬意を払うルークズは粒子に変わり球体に吸収された。
「『(やあ、長山家当主殿。初めましてではないね?)』」
「気付いていたのか」
「『(君は私と言う一つの存在の中で唯一欠けた存在だからね)』」
「『レッドナイトを確実に倒す方法を考える会』それがお前で、そして『モノクローム』と呼ばれる存在なのだろう?」
球体は一つ一つ異なる笑い方をして答えた。
「『(その通り、私こそモノクロームそのものでありレッドナイトを確実に倒す方法を考える会と呼ばれていた人間たちの記憶が一つに統括されたもの)』」
「お前の目的はなんだ? そして俺を連れ去った意味は?」
「『(モノクロームの目的はただ一つ、人類を殲滅してモノクロームが支配する世界を創ること。君をここに呼んだ理由は……)』」
一瞬の沈黙はとても長くそして不穏な空気を醸し出していた。
「『(私から唯一欠けた君の身体を乗っ取り幽閉された最強のモノクロームと私たちが一つになる為だ)』」
「!?」
球体だった文字列は解けてわたしの身体の中に流れ込んできた。
知るはずのない喜びにあふれた記憶、我を失いそうな怒りの記憶、声を失いそうになる哀しい記憶、全てがどうでもよくなる楽しい記憶いくつもの記憶にわたしの存在は埋め尽くされてしまった。
「『(あとは、最強の身体を手に入れるのみ)』」
私は、私の求める身体を手にするため地下に幽閉されている最強のモノクロームのもとに向かった。
「なんじゃと?」
ビショップの言った言葉にクイーンは驚きを隠せなかった。
「モノクローム様の姿も見えませんので恐らくモノクローム様が自ら」
「遅かれ早かれこうなるであろうとは思っていた。ビショップ妾たちも最後の作戦で殲滅を図るぞ」
「そうですね。では、これを使いましょうか」
ビショップは何十枚ものモノクロチップを取り出した。しかし、そのモノクロチップは常日頃使う真っ黒な物ではなく僅かに白が混ざった灰色だった。
『緊急速報をお伝えします。現在地球に未確認飛行物体が迫って来ていると先ほど宇宙開発機構MAXAが緊急記者会見を開き発表しました。現在各国ではこの未確認飛行物体への対処を考察しているとのことです』
「馬鹿馬鹿しいな」
白馬は少しばかり信じがたいニュースに呆れているようだった。そんな中、博学さんが真剣な面持ちで言った。
「そうとも言えないですよ」
キーボードを静かに叩いた博学さんは白馬が馬鹿馬鹿しいと言った未確認飛行物体を捉えた人工衛星の画像をモニターに表示した。
「これって」
「人型の宇宙人?」
「いえ、違います」
その正体をわかっているかのようにそう否定したのは博学さんではなく歩だった。
「これは、チェスモノクローム。私たちモノクロームの幹部五人のモノクロチップ五枚を使って作り出した最強にして最悪のモノクロームです」
この間ビショップが言っていたモノクロチップの残りは幹部の核となっているモノクロチップを含めて残り八枚で俺の知る限り残っている幹部はビショップとクイーン。そして、未だにその姿を現していないキングで一枚ずつ計三枚のモノクロチップが消費されている。という事は、
「最後のモノクロチップ五枚がチェスモノクロームに」
「チェスモノクロームはその力の強さから幹部でも倒すことは出来ず基地の奥深くに幽閉し機能を停止させることが精一杯でした」
「つまり、過去最強のモノクロームって事?」
「最強だろうと最弱だろうと来たものは倒す。それに俺たちにはまだ切り札が残っている。だろ? 博学さん」
博学さんは溜めていた重苦しいものを吐き出すかのようにため息を吐くとクスリと笑った。
「気付かれていらっしゃったのですね」
博学さんが隠すように懐に仕舞っていた物はモノクロームに対抗しうる最後にして最強のナイトチップ『王将ナイトチップ』だった。
「プログラムが複雑なので調整に時間が掛かっていましたがのんびりしている暇はなさそうなので早急に完成させます」
いつも頼もしい博学さんはいつも以上に頼もしく見えた。
「勇気さん、私と桂馬もいざとなったら戦います。絶対に人間を護りましょう」
「歩さま」
「歩、桂馬、ありがとう」
歩と桂馬の目には正義の闘志がメラメラと燃えていた。
それを見た俺は、死んでも戦い続けると決意を決めて、ラボにいる朔弥、白馬、白騎、歩、桂馬最強の仲間五人に告げた。
「まずは、地球に向かってくるチェスモノクロームを食い止めよう」
「勇気様、レッドナイトの装備では宇宙での活動は不可能です」
「大丈夫、絶対に上手く行く。だから、主人である俺を信じてくれ白騎」
「勇気、様」
初めて名前で呼んだことで驚いている白騎に笑顔を向け俺は気持ちを引き締めた。
「朔弥、白馬、最後まで着いて来てくれるか?」
「当たり前でしょ。何のためにこの力を手にしたと思っているの?」
朔弥はスタートダッシュこそ遅かったが、俺に追いつき俺を追い越し、先導してくれている。
「兄ちゃん、着いて行くのは当たり前だぜ」
白馬はスタート位置こそ違ったが、同じ正義の意思を持つライバルであり仲間であり。そして、俺のたった一人の弟だ。
「「「ナイトチェンジ」」」
もう数えきれないほど言った変身コードを告げ俺たちはモノクロームを倒す騎士へと変わった。
「レッドホース ユニゾン」
初めてのコードを告げるとレッドホースが自走してやって来てレッドナイトを宇宙へと導くアーマーに変形した。
「勇気様、この力は?」
「レッドホースが秘めた力を俺に囁いた気がしてな。俺も今に至るまで半信半疑だった」
「俺たちも出来るのか?」
「多分な」
俺に続いて朔弥と白馬もコードを告げた。
「ブルーホース ユニゾン」
「ホワイトホース ユニゾン」
レッドホースと同じように自走して二人の所に現れた二台のホースはそれぞれ俺のアーマーとは異なる形に変形した。
「勇気さんは刀、朔弥さんは銃、白馬は剣、それぞれの特徴に応じた変形をしたみたいですね」
「あぁ、初めてなのにしっくり来るぜ」
「宇宙までひとっ跳び行ってくる」
「ご武運を」
「無理だけはしないでください」
「白馬、負けないで」
「おう、任せろ」
「留守の間、地球はお願いね」
うっかりラボの中でアーマーを着てしまった俺たちの為に白騎はラボの天井を開いてくれた。
「待っていろ、チェスモノクローム」
俺たち三人の騎士は三色の光の粒を放出して人類が長い時間をかけて突破した大気圏を軽々と突破した。
「行ったようじゃな」
「それじゃあ、私たちも作戦を始めましょう」
騎士たちが留守にしている地球はビショップとクイーンにより闇に包まれた。
『……宇宙開発機構MAXAによりますと未確認飛行物体が地球に飛来するまで、残り二時間とのことです』
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
今回の話から物語が終わりに向かい進み始めました。
最終回まではまだまだ話は続きますがもう少しお付き合い頂ければと思います。
私個人の経過時間が前回の後書きから1週間以上経っている為後書きが下手になっている気がするので(元々得意ではありませんが)次回の話について、
次回は宇宙に飛び出して過去最強のモノクロームとの戦闘回です。
次回以降は長かったり短かったり文字数が安定しない事が多いですが(今までも安定はしていませんでしたが)もう少しお付き合いください。
東堂燈




