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この見学は平穏ではありません

 四月から濃密な出来事が起きていた前期が終了し、二学期制の桜将学園では十月から後期が始まった。

 そして今日は後期が始まって最初となる行事である校外学習の日。俺と朔弥はもちろん、桜将学園に転入してこれが初めての行事となる勇気は前日から俺たち以上に興奮していた。

「兄ちゃん、姉ちゃんそれに黄金院も楽しみだな」

「白馬さんそんなにもロボット工場を見学するのが楽しみでいらっしゃるのですか?」

 見学先である黄金院財閥所有のロボット研究所に向かう車内でも白馬は興奮を抑えられずにいた。

「桜将学園の校外学習の見学先になるとは流石だな、黄金院財閥は」

「そうでもないですよ。長山家だって研究所の一つや二つ……そういえば、校内にラボだって持っているじゃないですか」

「まぁ、そう言えなくもないが」

 俺の左腕に着けられたナイトチェンジャーを俺に送り付けてきて以来、父さんの話を全く聞かないがあの人は元気にしているのだろうか?

「さて、着いたみたいですよ。もう他の学年の見学者の方も集まっているみたいですね」

 先に降りた黄金院に続き俺、朔弥、白馬の順で桜将学園所有のリムジンを降りた。






 数時間前

「校外学習、人間からモノクロームに戻る唯一の心残りじゃな」

 黒白麗奈としてブルーナイトこと香ヶ崎朔弥のメイドをしていたクイーンは麗奈だった時の荷物を整理している際に見つけた校外学習の資料を見て落胆していた。

「確か、妾がいた時には既に計画は確定していたはず。もしかしたら」

「もしかしたら、どうなさいました? クイーン姉さま」

 クイーンは後ろから聞こえた声に驚き咄嗟に持っていたプリントを握り潰した。

「今その手で握りつぶした物は?」

「な、何でもない。それよりも妾は少し留守にするが構わぬな?」

「はい、構いませんよ」

「うむ、では出掛けてくる」

 クイーンは闇を呼び出し、その闇の中に飛び込んだ。その際にクイーンはビショップを上手く誤魔化すことが出来た安心感から持っていたプリントを落としてしまった。

「これは、桜将学園の校外学習? まさか姉さまはこれに?」

 先ほどのクイーンの様子が気になったビショップはルークズを呼び寄せた。

「クイーン姉さまの後を追いなさい。くれぐれも姉さまには気付かれぬよう慎重に。ついでに私のモノクロチップも持って行きなさい。物に付ければ勝手にモノクロームに変化します」

「ルー」

 ルークズは言語ではなかったが「了解しました」と返しビショップが呼び出した闇の中に飛び込んで行った。






「おぉ、すげぇ」

 黄金院財閥の所有する研究所に足を踏み入れた白馬は人間のようにごく普通に研究所内を歩き回るロボットに驚いていた。そんな中、俺と朔弥は別の事に驚いていた。

「勇気あれって」

「朔弥も気付いていたか」

 小さい子供のようにロボットに夢中になっている白馬は全く気付いていないみたいだが、その十数メートル後ろには、夏休みに俺たちを裏切る形でモノクロームの幹部であることを明かした麗奈ちゃんことクイーンがいた。

「悪い黄金院さん、俺と朔弥は少しここを離れるから白馬の事は頼む」

「もしかして、モノクロームですか? それなら白馬さんも一緒に行った方が」

 俺が小声でそう言うと黄金院さんは慣れた口調でそう返した。

「いや、モノクロームじゃなくてちょっと、な?」

「うん、ちょっとだけだから」

 俺と朔弥が手を合わせてそうお願いすると黄金院さんは何を勘違いしたのか顔を赤くした。

「そうですね。お二人は『恋人』ですものね。分かりました白馬さんの事はお任せ下さい」

 完全に勘違いしていたが、事情が事情なので突っ込まずに俺と朔弥はクイーンの所に向かった。

「クイーン、なぜお前がここにいる?」

「まさか、モノクロームの新しい作戦とか?」

 俺と朔弥は示し合わせた訳でもないのに麗奈ちゃんの両脇を見事に固めて、他の生徒や研究所の職員には見つからないようにクイーンにもしもの為に持って来ていたナイトブラスターの銃口を突き付けた。

「久しぶりじゃな。勇気さんに朔弥さん」

「今は再会を喜べるような間柄じゃないだろ? こっちはいつでもトリガーを引けるぞ」

「物騒じゃのう。妾は黒白麗奈という桜将学園生徒の一人としてただ単純にこの校外学習に参加しているだけじゃと言うに」

「モノクロームとは関係ないって事?」

「もちろんじゃ。モノクロームを呼び出すつもりもない」

 俺も朔弥も会話の最中に展示してある資料や歩き回っているロボットを見て目を輝かせているクイーンが嘘を吐いているようにはとても思えなくなりナイトブラスターを仕舞った。

「二人の物わかりが良くて助かる。そのついでに一つお願いがあるのじゃが、妾は黒白麗奈として参加しているゆえ、妾の事は前のように麗奈と呼んでくれぬか? 無論この見学が終わるまでじゃが」

「わかった。その代わり、もし不審な動きをしたら即座に倒す」

「良いじゃろう。出来る物ならやってみるが良い」

 クイーンではなく麗奈ちゃんは昔のような笑顔でそう言った。

「麗奈ちゃん、流石にその口調は不自然だから直した方が良いと思うよ」

「お断りじゃ」

 麗奈ちゃんはそう言うとすたすたと自分のクラスメイトの所へ歩いて行ってしまった。

「俺たちも戻るか」

「そうだね」

 白馬と黄金院さんに合流した俺たちはモノクロームを呼び出すつもりはないと言っていたが念のため麗奈ちゃんを気にしながら研究所を見て回った。

「最後になりますが、こちらが当研究所で現在開発を進めている対モノクローム用戦闘特化型ヒューマノイドロボット『アンチモノクローム』通称AMです」

「これはお父様が勇気さんたちのモノクロームと戦っている姿を見て世界各国で作られている対モノクローム用戦闘特化型ヒューマノイドロボット技術を取り入れたロボットらしいですよ」

「兄ちゃん、俺たちの活躍って結構知られているみたいだな」

「あぁ、そうだな」

 確かにすばらしいと思えるロボットではあるが、倒すべきモノクロームの幹部であるクイーンがこれを見ているのが残念でならない。

「これで妾たちを倒せると良いが」

 こっそりと近づいて来た麗奈は俺にしか聞こえない小さな声でそう言ってこっそりと戻って行った。

「一歩間違えば戦争に使われそうなロボットが完成する前にモノクロームは絶対に倒す」

「うん、そうだね」

「兄ちゃんの言う通りだ」

 挑発してきた麗奈ちゃんに返したつもりだったのだが、朔弥と白馬が賛同してきた。

「それではホールに戻りましょう」

「ルー」

 ルークズの声が聞こえて後ろを振り向いたが気のせいだったのか、そこには何者の姿も無かった。

「皆様、本日は当研究所にお越しいただき」

 今日一日研究所を案内してくれた研究所職員の挨拶が終わろうとした瞬間、研究所の奥から大きな爆発音が聞こえた。

「皆様落ち着いてください」

 このような事態になれ過ぎているせいか桜将学園の生徒は一瞬騒めいただけで冷静になっていた。

 数十秒後、二度目の爆発が起きた。そして、最後に見学したAMが開発されていた部屋の方から何かがやって来た。

「あれって」

 AM開発の関係者なのだろう俺たちを案内してくれた職員はやって来たそれを見てその正体に気付いた。最初に気付いたのは俺と麗奈だったが。

「勇気さん、最初に言っておくが妾は全く関係ないぞ」

「ずっと観察していたから分かっている。それに、誰よりも麗奈ちゃんがモノクロームの出現に驚いていたからな」

「顔に出したつもりは無かったのじゃが、バレておったのか」

「麗奈ちゃんには悪いけど俺たちの役目は果たさせてもらうよ」

 俺と麗奈ちゃんが話している間に朔弥と白馬は生徒やここで働く研究員の避難を指示していた。

 安全が確保できたところで俺はナイトチェンジャーにナイトチップを装填して叫んだ。

「ナイトチェンジ」

『コード承認』

「赤き騎士、レッドナイト」

「妾が作っていないとなるとビショップの仕業みたいじゃ。奴の気配を感じなかったという事はルークズにでも頼んだのじゃろうな。しかも、あろうことかAMに使いよって」

「全く、ただでさえ壊さないように手加減するのは難しいっていうのに、研究所の方にも気を回すのは大変なんだが」

 どうにかならないかと思い聞こえるように大きな声で愚痴りながら麗奈ちゃんを見るとあきれ顔でクイーンの姿になっていた。

「妾を見逃してくれた借りを返すだけじゃからな」

 麗奈ちゃんはそう言いながら闇の防御壁を研究所の内側に張り巡らせた。

「これで物が壊れることはないはずじゃ」

「貸しを作った覚えはないけど感謝する。ありがとな」

「ふん」

 麗奈ちゃんは恥ずかしがりながら姿を消した。

「ワタシハアンチモノクロームビショップ、ターゲットヲレッドナイトにセッテイ。コウゲキヲカイシスル」

「アンチモノクロームって言っているのに俺を攻撃するとかおかしいだろ」

 モノクロームと化しているから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが。

「エネルギージュウテンヒャクパーセント、AM砲ハッシャ」

「マジか! ナイトブレイド」

 初っ端から百パーセントの威力で放たれたAM砲とやらを俺はナイトブレイドで斬った。

「レッドナイトヘノダメージゼロ。コウゲキホウホウヲヘンコウ」

「壊す訳にはいかないし、どうすれば良いんだ?」

 考えている間にAMビショップは軽快な機械音を鳴らして俺に突っ込んできた。

「AMナックル」

「よっと」

 AMビショップの攻撃はナイトブレイドを持っていない左手で簡単に防ぐことが出来た。

「AMバスター」

 AMビショップの胸部が開き、そこから放たれた十数発もの小型ミサイルが至近距離で俺を襲った。

「ターゲットニメイチュウ。ツギノコウゲキヲカイシシマス」

「手荒な真似になるが壊さないから心配しないでくれ」

『チップ確認 桂馬』

 ナイトフォトンから発せられる緑の光を残して、俺はAMビショップの背後に回り込んだ。

「ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト、ターゲットロスト」

『standby 3,2,1』

「ナイトヒールブラスト」

 同じ言葉を繰り返すAMビショップに対し俺は香車ナイトチップを装填したナイトブラスターで癒しの攻撃を放った。

「キノウテイシ、キノウテイシ」

 AMビショップが対モノクローム用戦闘特化型ヒューマノイドロボット『アンチモノクローム』に戻り動きが停止すると研究所を保護していた闇の防御壁は消えた。

「対局終了」

 変身を解き周りを見渡したが大慌てでAMを回収しに来た研究者がぺこぺこと頭を下げて俺に礼をしてくる光景が見えるだけで麗奈ちゃんの姿は見えなかった。


「皆様には誠にご迷惑をおかけいたしました。お詫びと言いますかお土産と言いますか、皆様には当研究所で製造された小型ロボットをお持ち帰りいただければと思います。本日は当研究所にお越しくださいまして誠にありがとうございました」

 全員が出て行ったのを見計らい俺は、

「見学の途中で体調崩して帰っちゃった子がいるのでその子の分もいただけますか?」

 という嘘を吐き小型ロボットをもう一台受け取った。

「勇気、もう行くよ」

「悪いけど先に帰っていてくれないか? 俺はナイトフォンを使って帰るから」

「兄ちゃん、もしかしてまだモノクロームが……」

 俺の一連の行動を見ていた朔弥は俺の気持ちを察してくれたようで行きに乗って来たリムジンの運転手に車を出すよう促した。

 白馬は車が動いても何かを言っているようだったが後の事は朔弥に任せても問題は無いだろう。

「麗奈ちゃん、まだ居るんだろう?」

 返事は無かったがモノクロームが現れた時に感じる独特な雰囲気を感じた。

「お土産、ここに置いておくからな」

 今度も返事を聞くことは出来なかったが、俺は『麗奈ちゃん用』に貰って来たお土産を地面に置いて桜将学園へ転移した。


「お人好しが。しかし、こんな所にお土産を放置しておくのも気が引ける。これは研究所の人間が可哀想じゃから妾が引き取るだけじゃからな。勘違いするでないぞ。別に欲しかったわけではないのじゃからな」

 既に居なくなった勇気さんに言い訳するようにそう言った妾は言葉に反し、お土産の入った袋を胸に抱えて闇を通って基地に戻った。

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

今回の本編はいつもと異なる形で書かせていただきました。

もしよろしければ、どちらが読みやすいかコメントして頂ければと思います。


今回の話は先週のあらすじ通りになったのではないでしょうか?

久しぶりの登場となる黄金院さんや勇気たちとの絡みは久しぶりになるクイーンの登場書いていて楽しかったですし、クイーンは口調こそ違うものの初期の雰囲気を思い出せると思います。


次回ですが、登場してからメインを張るような出番がないアレが活躍する予定です。


最後になりますが、感想やコメントを随時お待ちしております。

Twitterのフォローもよろしければお願いします。

それではまた次回お会いしましょう。


東堂燈

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