ここまでは序章ではありません
夏休み最終週、桜将学園の敷地内は渋滞が起こるほどの帰省ラッシュを迎えていた。
「おいおい、本当にこれが学校か?」
「話には聞いていましたが驚くべき光景ですね」
長期休暇の帰省ラッシュを初めて見る博学さんと白馬は桜将学園夏の風物詩の一つとも言われている渋滞に驚愕していた。
「空も見てみろ」
俺が空を指差すと二人は空を見上げて再び驚愕した。
「空まで渋滞してやがる」
「これがあと6日も続くのですね」
博学さんの言う通りこの渋滞は夏休み最終日まで一度も途切れる事なく続く。その為、渋滞の最後尾にもなると六日間を耐え忍ぶために金にモノを言わせたキャンピングトレーラーがズラリと並んでいる。
恐らく空も3日は渋滞しているはずだから、しばらく直接太陽の光に当たることはしばらく無いだろう。
「この状態だと少し困りものですね」
博学さんはノートパソコンの画面位の大きさのナイトフォンを取り出し何かの計算を始めた。
「勇気様、白馬様よく聞いてください。この渋滞で桜将学園周辺の磁気が僅かに変化しています。テレビやラジオ、携帯の使用に関しては全く問題の無いレベルの変化ですが、ナイトフォンでの転送の様な精密を極めるものには危険なレベルの変化です」
「つまり、この期間中にモノクロームが現れたら」
「ここからの転送は不可能と考えて良いでしょう」
「良いこと聞いたのう」
偶然にも桜将学園に戻って来ていた麗奈ことクイーンは不敵な笑みと共に闇に消えた。
モノクローム地底基地に戻ったクイーンは即座に耳にした話をビショップにそれはそれは楽しそうに語った。
「つまり、人類殲滅のチャンスという事ね?」
「考え方が姑息じゃのう」
「あら? 人間の話を盗み聞きした上にその情報を私に教えたのはどちらのお姉様だったかしら?」
「妾は出撃不可能となった奴らがどの様にして妾たちを止めるのか興味があるだけじゃ」
「結局、同じことじゃない。まぁ、既に準備は出来ているけれど」
ビショップの後ろに隠れていたモノクロームがビショップの『出撃命令』を示す手の動きを確認して出撃した。
「また、アイスビショップか?」
「えぇ、今回の作戦には彼が必要不可欠だと前回の戦いで知ったから」
「あれを、始めたか」
クイーンはとても楽しそうに笑った。
渋滞による磁気の変動により転送は不可能であるという話をしてから数時間後。
博学さんのラボで避暑をしていると、鳴らないで欲しいと望んでいたモノクローム出現のアラームが鳴った。
「磁気の変動により若干の誤差がありますがモノクロームの出現位置は桜将学園内で間違いありません」
「ここ以外には迎えない状態だったんだ。ラッキーだと思うことにしよう」
「兄ちゃんの言う通りだな」
「行くぞ、白馬」
ラボを出ようとすると、博学さんが「待ってください」と俺たちを引き止めた。
「何だ? 早く行かねぇと被害が……」
「転送は出来ませんが、代わりにこちらを使って下さい。時間短縮にはなるはずです」
乗り物に関する知識は疎いから車種の特定は出来ないが、博学さんが俺たちの前に持ってきたのは赤と白2台のバイクだった。
「もしもの為に極秘裏に開発していた『レッドホース2015』と『ホワイトホース2015』です」
博学さんには珍しく嬉々として説明していた。
「長山家、香ヶ崎家の協力もあり、免許が無くても公道を走れます」
「つまり、俺や朔弥でも法的に認められているって訳だな?」
「そういうことになります」
「それじゃあ、ありがたく使わせてもらうぜ」
俺と白馬はそれぞれ『レッドホース2015』と『ホワイトホース2015』に跨がりモノクロームの出現位置に急いだ。
「博学、貴様面白い物を作ったようじゃのう。これは面白い物を見せて貰った礼じゃ。受け取れ」
天高く勇気たちを眺めていたクイーンは『レッドホース2015』と『ホワイトホース2015』そして、長期休暇を利用し南国に出掛けている朔弥専用に作られラボの地下に眠る『ブルーホース2015』に向けて白いモノクロチップを一枚ずつ投げ込んだ。
「うぉ〜‼︎ 速ぇ‼︎」
「そんなに叫んでいると舌を噛むぞ」
「大丈夫だって」
『レッドホース2015』と『ホワイトホース2015』のスペックに驚きながら俺たちはモノクロームの出現位置周辺にやって来た。
「「ナイトチェンジ」」
姿は見えないがいつ現れても対処出来るように俺たちは変身を済ませた。
「私に対しての対策をした様ですが、私の姿が見えなけれ意味がない」
数日前に聞いた覚えのある声が聞こえ、30度以上はあったであろう気温が氷点下まで下がった。
「隙だらけです」
声と共に四方八方から雪玉が飛んで来た。
「やべっ」
俺に背中を預けていた白馬がそんな声を漏らして攻撃を回避する為に伏せた事に気が付いたが、気付いた時には雪玉が全弾俺に命中していた。
「兄ちゃん‼︎ 悪い、またやっちまった」
「大丈夫、一瞬でも注意を怠っていた俺が悪い」
罪悪感を感じている白馬を兄としてなだめ、見えないモノクロームに備えた。
しかし、
「申し訳無い。ビショップ様の命令とはいえ神聖なる戦いの場で不意打ちなどという姑息な真似を」
モノクロームはあっさりと現れ、その上不意打ちに対する謝罪も告げた。
それよりも俺が気になったのは、
「お前、この間倒したはず」
「いえ、私は貴方達とは初対面でございます。確かに名前や姿形は先日倒されてしまったアイスビショップと同じですが、彼はこの黒いボディに若干赤色が混ざっていました。私は若干青色が混ざっています。よって別人もとい別モノクロームなのです」
アイスビショップ(別個体)の事細かな説明に俺たちはうっかり聞き入っていた。
「無駄話はこの辺にして、戦闘を始めましょう。前回の彼の戦いはビショップ様から聞いておりますゆえ、同じ手は効かないと思っていただけますか?」
「なぁ、兄ちゃん。俺、こいつも苦手だ」
「奇遇だな、俺もだ」
「「それじゃあ」」
俺たちは息を揃えて武器を取り出した。
「ナイティングダブルスラッシュですか? ルークズが隠れて撮影した映像で一度拝見しているので効きませんよ」
「それなら」
「アレンジを加えるまでのこと」
俺と白馬はバイクに乗って勢いをつけながら互いの剣に刃を重ねた。
「対策を、対策を練らなければ」
「「ナイティングダブルホースラッシュ」」
「予想外の攻撃に対しての対策を怠りましたか。でも良いでしょう。私はビショップ様に頼まれた命令は済ませました。レッドナイト、ホワイトナイト、そして今はいないブルーナイトにも言っておくと良い。モノクロームの理想卿を作り上げる為の序章はまだ始まっていない。ここからが序章なのだと。モノクローム様に栄光あれ‼︎」
アイスビショップは静かに光の粒となって消えた。
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
本編では夏休み最終週に突入しましたが皆さんはどのような夏を過ごしたのでしょうか?
私は恐らくずっと家で執筆していると思います(この後書きは7月初旬に書いています)。
先週、今週と朔弥が全く登場していないので少しだけ補足説明させていただくと、水無月さんの所に戻りました。
最後に出てきた時も旅行先から直接来ていましたからね。
次回ですが、麗奈を失った朔弥の心情を書けたらと思っています。
東堂燈




