02 もう一つのプロローグ
ふう……
「今回の検査も陰性か……。」
「言った筈だぞ?あれの遺伝はXYにしか起こらないって……。」
「……だが、あれの遺伝がXXにも起こりうるという事は、理論上あり得る……だろ?」
「……理論上は、だ。実際に起こった例は存在しない。」
とある大学の研究室、そこで俺は友人の学者とそんな会話をしていた。
友人は、
「……とにかく、今回は陰性だったんだ。お前は心配しすぎなんだよ……。」
と言った。
──俺の名前は雪代零士、今は警視庁公安部特殊事件対策部隊に所属している。……まあ、部隊が動くことは稀で、やる事と言ったら訓練くらいだ(まあ深夜位まで訓練だが……。)。
……昔の仕事はウェアウルフハンター、この手で何人ものウェアウルフを──殺した。
彼らの事は今でも頭から離れない。少なくとも俺が殺してきたウェアウルフ達は──満月の時のウェアウルフを除いて──すごい、いい奴らだった。
人を殺そうなんて考えもしない、優しくて、俺なんかじゃ到底足元にも及ばない程に……人望もあった。
ウェアウルフと言う種族には遺伝子が深く関係している。簡単に言うとある特定の遺伝子が満月に異常に反応を起こし、遺伝子の持ち主をあの化け物の姿へと変えるのだ。そしてその遺伝子は後天的に目覚める事が多い。……つまり、前回の満月ではウェアウルフにならなかった人間が、今回の満月で突然化け物と化し、人を襲う……なんて事もあり得るのだ。
当然政府はウェアウルフ抹殺と並行して国民の遺伝子検査を行い、ウェアウルフの遺伝子が無いかを徹底的に調べあげた。
結果、現在はその遺伝子も絶え、ウェアウルフは絶滅した。
……まあ、目覚める前のウェアウルフの遺伝子は検査では分からない事もあったようで、現在もウェアウルフ遺伝子の検査は続けられているが……。
──「……さてと、早く帰ってたまには美香と飯を食わないとなぁ……。」
研究室から出た俺は、そんな独り言を呟きながら家路を急ぐ。
美香と言うのは同居人の大森美香の事で、ある事情で俺と暮らしている。
その時、急に携帯に着信が入った。
──チッ、仕事だ……。
……折角今日は早く家に帰って、美香とのんびり出来ると思ったのになぁ……。
そう思いながら俺は電話に出る。
──……しかしこの時俺は、ちゃんと予定通り帰っていれば良かったのだ。帰っていれば、あんな事には……ならなかったのに……。
次回予告。
初の獣化描写を書く予定です!
以上!