01 プロローグ 悲劇への始まり
しんさーくーですっ!
「……これで、終わり、か……。」
雲一つ無い晴天の空、俺はそう呟く。
ふと、視界に一人の少女が写る。
「……ごめん。」
少女はそう言って顔を伏せる。その頭には垂れた犬耳がある。
「……俺こそ、助けられなくて……すまなかったな。」
その直後──二発目の銃声がなった。
──話は、3年前に遡る。
2048 ウェアウルフ、と呼ばれる人間の亜種の存在を確認。
2050 日本国政府はウェアウルフにはかなりの危険性があるとしてウェアウルフが凶暴化する満月時に外界と隔離する事を決定。
2051 ウェアウルフが爆発的に増加。人間の被害が相次ぎ、世界人口の10パーセントが10年で減少する。
2056 ウェアウルフ絶滅計画が国際連合安全保障理事会により可決される。
同年 ウェアウルフの殲滅が開始される。
2062 日本国にて最後のウェアウルフと思われる個体の死亡を確認。ウェアウルフ、絶滅。
──そして、2077年。
「……と、言う訳で人類とウェアウルフの戦いは幕を閉じた訳だ。それで、何か質問は?」
──……つまんない授業。
ぼんやりと世界史の教科書を眺めながら、私はそう思った。
「……そうだ、ここテストに出るから、覚えとけよ?」
日本史の先生がそう言うと、クラスメイトの一部は「えー。」と不満そうな声をあげる。そして授業終了を告げるチャイム。
起立、礼、それから心無い先生への、「ありがとうございました。」
──……これで今日全ての授業は終了。
さっさと身支度を整える。とにかく早く帰りたい。
「おーい。美香ァ!」
そう声をかけてきたのはクラスメイトの二階堂明。
「……なに?」
私がそう返事をすると、二階堂はヘラヘラ笑いながら、
「これからさぁ、カラオケとか、どうよ?」
と言ってきた。それに対し私は、
「ごめん。チャラい男嫌いなの。
とりあえず髪の毛黒色にしてその馴れ馴れしい喋り方を止めて、あと馴れ馴れしく名前で呼ばないでくれない?あんたみたいなチャラ男、大っ嫌いなのよ。」
と言い、さっさと教室を出る。
二階堂は私の事をよくストーカーしてくるし、何より馴れ馴れしいし、私が一番嫌いなタイプだ。
あ、そういえば自己紹介忘れてた。
私の名前は大森美香、高校一年生で友達とカラオケをするのが大好き(ただしあんなクソチャラ男とだけは死んでも行きたくない。)であとは普通の女子高生です。
……あ、後は両親がいないって事が普通じゃないかな?
なんでも、産まれてすぐに両親と死別したらしい。
──まあでも、そのお陰で私を育ててくれているあの人に出会う事が出来たから、結果オーライかな?
家に帰る。あの人は仕事で今日も帰りは遅い。まあ夕ご飯が出来る八時位には帰ってきてくれるし……まあいいや。
自分の部屋に入るとすぐ制服を脱いで部屋着に着替えてベッドに横になる。
ちょっと眠くなってきた……夕飯の下ごしらえは学校に行く前にしといたし、7時くらいまで寝ていてもいいよね……。
──そしてそのまま私は夢の中へと意識を沈めていった……。