彼方、職人になる?
やっぱりPCのが文章サクサク浮かびますね…
一晩経っても二晩経っても、レジストアイテムは創れず彼方は途方にくれた。………ということは一切なく、寧ろ開き直って商店街の一角にある酒場で毎晩毎晩飲んでは愚痴り、その繰り返しだった。酔うと女尊男卑がより激しく、度々男性客と喧嘩していた。何故か彼方のお目付け役と住民から認識されてしまったシュエラには、苦情が多数寄せられたのであった。
「で、いい加減にしたらどうだ。」
「………でもアイリスの野菜を諦めたくないんだ。」
「ふむ。オリジナルスキルにはオリジナルスキルであったか。」
「そうそう。でも無効化のオリジナルスキルをもってる逸材なんて滅多にいない。」
「………無効化、であれば種類は問わないのだな?」
「ん?も、もしかして、誰か知ってるとか!?」
「……………・・ついてこい。」
シュエラの後を追っていくと、商店街や住宅街と大分離れた場所にやってきた。その場所は先日拘留された牢があった警備隊の詰所だった。しかし案内されたのは、彼方が入った鉄製の簡易牢ではなかった。詰所の奥に地下へ続く魔法陣があり、どうやら転移するようだ。ジェットコースターに乗ったかのような感覚を一瞬味わうと、魔力の香りが強い場所へでた。暗い牢の迷路のような複雑な通路をシュエラは迷いない足取りで突き進む。そうしてある牢の前に着くと、シュエラは牢を開き中へ入っていく。2人が中に入ると、牢はガチャンと音を立てて閉まった。オートロックな牢屋、と驚く彼方を置いて暗闇の中をシュエラは進む。
「………お望みの相手はコイツしかいない。時間はやるから交渉するんだな。私は入口に待機していよう。」
「んー?だあれ?」
「え!?」
目の前にいた囚人は、見知った相手であった。そう、シュエラと知り合うきっかけにもなった男娼である。嫌悪感が溢れてくる相手ではあるが、シュエラが紹介したとおり無効系統のオリジナルスキルを持っているのは事実だった。男娼である彼が永く捕まらなかったのは、精力吸引の体質だけでなく種族的な無効化スキルがあったからだ。正確には隔世遺伝のオリジナルスキルであるが、様々な魔法やスキル攻撃を無効化する強力な力である。
「僕は協力なんてしないよ。……・・タダじゃねぇー」
「キャラ違くね?」
「それはお互い様でしょ。あんなの本性な訳ないし。大体この牢屋の中じゃ、能力を半分以下に封じられてるしね。」
「ふーん?」
「じゃあ帰ってくれる?それとも口でして欲しい?………冗談だって。そういう行為をとろうものなら電流が走るからね。全くやんなちゃうよ、こんな首輪までされちゃってさー」
「………むー、じゃあさ、こういうのはどうよ?」
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2日後、彼方は再びアイリスと対面していた。アイリスの手には、紅色と赤褐色が混ざり合ったような色合いのペンダントがあった。そう、ついにレジストアイテムが完成したのだ。
「して、本当にレジストするのであろうな?」
オリジナルスキル≪魔王の微笑み≫が発動しました
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫が発動しました
オリジナルスキル≪魔王の微笑み≫は発動待機中です
オリジナルスキル≪魔王の微笑み≫は、レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫を上位スキルと認識しました
オリジナルスキル≪魔王の微笑み≫は発動できません
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫は、発動対象を解析中です
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫は、装備者の遺伝子解析中です
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫は、変性遺伝子を発見しました
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫は、変性遺伝子を修復します
レジストアイテムスキル≪無に帰す波動≫は、変性遺伝子≪オークの欲望≫をレジストしました
レジストアイテムは予想外の反応を起こした。問題の≪魔王の微笑み≫をレジストするだけでなく、ドワーフの遺伝子に組み込まれた異分子であるオークの要素までレジストしたのだ。結果なにが起きたかとうと、アイリスはエルフと祖は同じという伝聞偽りない美貌を生まれて初めて手にしたのだった。想定外の結果にアイリスは多大に感謝し無償で提供という破格の契約を結んでくれることになった。
後にアイリスが手にしたレジストアイテムがドワーフの集落で話題となり、彼方の元へドワーフ娘が殺到したのは笑い話である。