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初体験

1作目が行き詰まっているので書き始めたコメディー(の予定)です。完結させてから投稿する予定を変更して、投稿しちゃいます(汗)

 目が覚めたら知らない天井だった。天井、というか剥き出しの岩みたいだ。夢かな、と思い二度寝してみる。なんてこったい眠気がこない。もう一度目を開けてみる。天井は白い、なんてことない土色だ。


「だぁ~!…おっかしーな、どこだよココ?」


 辺りを見渡す。寝ているのはフカフカのダブルベッド。どっかの高級ホテルにありそうな肌触りの良さそうな枕にフカフカの羽毛布団。ゴツい岩剥き出しの天井と壁にミスマッチ。本棚には何故か漫画。俺が好きな少年漫画から少女漫画、青年漫画にエロ本まである。おっと、これは秘蔵の無修正本が、何で此処にあるんだか。


「ふむ、家具はともかく、私物は俺の物だな。っつ―ことは誘拐、…はないなぁ。寝てる間に引越し?…オカンならやりそう。つまり此処は新居?イェーイ!

………って、違うだろ俺!」


 1人でツッコんで、落ち込む男。この物語の主人公である田中 彼方。下から読んでもタナカカナタ、上から読んでもタナカカナタ、今春からピッチピッチの大学1年生だ。


「さ―てと、部屋をでてみるか~何がでるかな?何がでるかな?何が…

………Oh my god!」


 寝室から扉1枚でてみると、見たこともない広いリビング。呆然としていると、目の前でくす玉が割れ、何やらでかでかと書かれており、その内容に奇声をあげる彼方。


「おめでとう、異世界トリップぅぅぅぅぅぅぅ~!」


 ウィーーーン

 シュー

 ポタッ

 ウィーーーン


 彼方が驚いて叫んでいると、天井から何やら機械でできた腕のようなものが伸び、足元に手紙と分厚い本が落とされた。機械は自動で元に戻った。


「なんだよこれ―?」


 理不尽な展開に内心腹を立てながらも、興味津々に手紙を開く。そこにはこんな事が書かれていたそうな。


 田中彼方様


 この手紙を読んでいる、という事は無事異世界トリップされたようですね。誠におめでとうございます。

 私、株式会社トリッパーの異世界トリップ推進委員会 日本支局長の神崎と申します。

 先日は、忙しい登校の時間にアンケートに答えて頂き、ありがとうございました。真摯な回答をして頂いた方の中から、厳選なる抽選を経て、田中様が今年度トリッパー3名の枠に当選致しました。アンケートに当選は商品発送をもってお知らせ、という事に同意されていたため、トリップ発生をもってお知らせ致しました。

 突然の事象に困惑されているかもしれません。ですが御安心下さい。チュートリアルも必要と思いまして、基本操作のマニュアルも手紙と同封致します。 是非、素敵なダンジョンを完成させ、日本にお帰りになる日を社員一同お待ちしております。

 では、お元気で。




「Nooooooo―!なんてこったい!バカバカバカバカ!俺ってバカ―!あの日の俺ってバカ―!アホ―!トンマ―!」


 手紙を読みながら彼方は振り返る。そう、先月の卒業式の登校風景を。

 いつも遅刻ギリギリで、パンをくわえてダッシュするのが日課だった彼は、卒業式ぐらいは早く行こうと朝早く起きた。だが慣れない事をしたせいか、早すぎたため、ちんたらと遠回りして登校したのだった。普段走り抜ける通学路には、スーツ姿の美男美女が街頭アンケートを呼びかけていた。卒業式だからか、と全く疑問に思わなかった。それに同級生たちも、美男美女に釣られてアンケートに答えていた。流れに乗ってじゃあ俺も、と美女の胸元がよく見えるポジションを確保して、アンケートに答えた覚えがある。アンケートの商品云々の一文なんて、覚えてない。ただアレは揉みがいがあるイイ乳だなぁ、と思ったのをよく覚えている。


「…てかさ、ダンジョンって何さ?」


 田中彼方の長所は、落ちてもすぐ持ち直す所だ。散々過去の己を悔やんでいたが、早速順応しはじめている。流石は、バカナタといった所だろうか。


「これがチュートリアル?」


 彼方は手紙と一緒にでてきた本を手にとって読みだした。


 はじめまして、初心者トリッパーの皆さん。この本を読んで、活用すれば貴方も素敵なダンジョンメイカー5級を取得!

 まずは、この本に貴方の体液をつけて、チュートリアルの生物を呼び出しみましょう。貴方のイメージに合わせて人型から動物・妖精・魔物など、様々な形態の執事を呼び出せます。

 さぁ、早速やってみましょう!



「ダンジョンメイカー5級って何だよ一体。

ま―とりあえず、呼び出してみるか!何なら、あんなイメージやこんなイメージもいいかも!グフフフフ!」


 ボンッ


 大きな破裂音と共に現れたのは、猫耳の獣人。彼方好みの低身長・巨乳・スレンダーな女性だ。


「はじめまして、御主人さま?」

「キター―――!キタキタキター――――――!ネコミミ万歳!巨乳万歳!」

「ご、御主人様?」

「うぉっほん!…俺のことは御主人様じゃなくて、カナタンと呼ぶように。」

「カ、カナタン?」

「くぅ――――!くる!イイ!もう幸せ!」

「…あの、私の名前をつけて下さらないと2時間以内に消滅してしまうのですが。」

「ふむ、名前か。

…名前はミネア。通称み―ちゃんだ!普段はみーちゃんと呼ぶんで、よろしく!」

「よ、よろしくお願いします。」


 ミネアにリビングの使い方を手取り足取り教わり、萌えで満たされ、彼方はトリップ初日を終えたのだった。

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