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3 決着

 

 グルダーニ第二段階は、放電現象を走らせ、妖気を全身から発すると大きく鳴動した。

 神殿内部を震わせる程だった。

 僕達は万能薬を使い、資源を回復させながら、グルダーニの変化を見ていた。

 臓物のような存在から、ゴツゴツした外骨格の装甲が展開した。

 所々が鱗のようなもので覆われ、全身が脂でぬれたような光沢を帯び、おもに黒と赤の配色に彩られている。

 球体のような本体から、女性の腕のような手が数本生える。

 中央の顔が腫瘍のように盛り上がり、首を持つ完全な頭部と化すと数本の巨大な角が天を貫くように伸びた。

 さらに左右テンプル部から角が生え、触手と共に巨大な皮膜状の羽を大きく広げる。

 本体部が切り裂かれたように横に割れ、びっしりと牙に覆われた大きな口のような孔が開いていく。

 脚部を担う大小さまざまな触手の仮足が、さらに増え、木の根のように波打ち蠢いている。

 触手とは別に硬い表皮に覆われた巨大な二股の尾が出現し、波打たせると、最後にグルダーニ神は瞳をカッと開いた。

 瞳は毒々しく赤い光を放っている。 

 さらなる変貌を遂げ、グルダーニ神はついに最終形態をついに表した。

 おぞましい姿に、僕は思わず身震いした。

「第三段階……やはり、攻撃形態か」

 クロムの予感は的中していた。

 グルダーニ神は口を開いていた。

 熱線のブレス攻撃と思った瞬間、光の球体が形成されていく。

 魔法触媒だった。

 魔法触媒のブレス……!!

 しかも、放たれたのは<量子重力崩壊>だった。

 クロムはアブソリュートディフェンスを展開した。

 神殿内に重力崩壊の嵐が吹き荒れる。

 シークレット魔法の威力を身を持って体感するハメになるとは、思いもしなかった。

 メンバーの何人かは死亡し、大惨事と化している。

 戦闘一発目からこんな攻撃を仕掛けてくるとは、とんでもないエネミーだった。

 ミナは聖皇の司祭杖を振るい、パーティー全体へ回復魔法を掛けた。

 生命力が元に戻っていくが、それに比例して絶望感が増していく。

「……シークレット魔法のブレスだと!?」

 クロムも回復魔法を施しながら、信じられないというようだった。

 基本ブレス攻撃の為、魔法使用時のような溜めが無い。

 しかも、活動に制限を課せられることは無いのだ。

 エネミーバランスはメチャクチャだ。この敵は強すぎる。

 数々の特殊攻撃を操り、シークレット魔法まで操るなど、明らかにやりすぎだった。

 運営側の悪意そのものだ。

 カリバーン同様、サルマン=グルダーニももしかしたらAI制御ではないのか。

 攻撃を読まれているような気分だった。

 効果が薄れた為、ミナが<福音ゴスペル>による常時回復をパーティー間に施す。

「……まずいな」

 クロムは呟いた。

「……蘇生魔法は魔力を食う。このままじゃ、回復もままなくなるぞ」

「小人数で戦える相手じゃありません。とりあえず生き返らせましょう」

 僕の言葉通り、ミナを筆頭として回復役が蘇生魔法で死亡したキャラを復活させ、体制を整えると、メンバーを突撃陣営の配置に敷き、グルダーニへ向っていった。

 前衛の魔導剣師が魔法剣を繰り出す中、エネミーほどの大きさがある顔に、クロムはディメンジョンブレードを仕掛けていた。

 グルダーニの顔に、次元断層の刃の斬線が刻まれた。

 グルダーニは首を振りながら、赤い眼でクロムを睨む。

 僕はその瞳に知性の揺らめきを見ていた。

 やはり、このエネミーはAI型なのかもしれない。

「……第二段階と同様、段三段階も顔の部分のアーマークラスが低いようだな」

 クロムはあくまでも冷静だった。

「<量子重力崩壊>をあの顔に叩き込めれば……」

「……ミナみたいな芸当はわたしには無理ね」

 アユミールは即座に否定する。 

「……でも、やってみるわ」

「わたしも<対消滅>を仕掛けてみます……!」

 ミナも言う。

「ジン君、君はどうする……?」

 クロムが僕に尋ねてきた。

「マキシマムソニックブレードの重複配合攻撃を……。さっき、両性具有神の聖剣で仕掛けたら、思っていた以上にダメージを与えられました。この剣の攻撃は今の形態でも有効だと思います」

「……近接戦闘は危険すぎるぞ」

「二人の攻撃が済んだら仕掛けます。そこまで無謀じゃないので……」

 クロムがアブソリュートディフェンスを、ミナは<対消滅>を、そしてアユミールがシークレット魔法の準備に入る。

 グルダーニから<震空波>という特殊攻撃が周囲にほとばしる。

 僕達は散り散りにに吹き飛ばされた。

 シークレット魔法のブレスほど出ないにしろ、この攻撃も広範囲でダメージが大きい。

 パーティーのフォーメーションは完全に崩れていた。

アユミールは魔法触媒を頭上で完成すると、そのまま移動した。

 魔法の仕掛けやすいポイントまで動くと、魔法触媒を射出した。

 アユミールの放った魔法触媒は頭部を大きく外した。

 アユミールは舌打ちする。

 やはりミナより精度は落ちる。

 無理も無かった。使用したのはシークレット魔法だ。赤の魔導書により成功率が高められているとはいえ、強力な魔法を狙った箇所に当てるなど、ほぼ不可能に等しい。

 局地的な重力崩壊は、グルダーニにダメージを与えたが、思ったほどではなかった。

 今度はミナが魔法を仕掛ける。

 <対消滅>の魔法触媒を、顔にヒットさせていた。 

 グルダーニの頭部を中心に、対消滅の魔法現象が広がっていく。

 やはり頭部を中心とした攻撃は効果的だった。

 魔法現象が鎮まったのを見計らって、僕はマキシマムソニックブレードの重複攻撃をグルダーニの本体へ仕掛けた。

 両性具有神の聖剣の連続直接攻撃はやはり効果が大きかった。

 魔法剣の効果が終わると、僕を振り除けるように、触手がしなり、襲い掛かる。

 触手に吹っ飛ばされながら僕は、アユミールがもう次の魔法に移っていたのが確認できた。

 グルダーニ本体の巨大口腔部を花弁のように開いた。

 この期に及んで、また新たな特殊攻撃を繰り出すつもりだ。

 小さな牙が生えそろった口腔内を前に、アユミールはとっさに聖皇の肖像盾を構える。

 単体型の特殊攻撃だった。

 生命力が削られることは無く、代わりに失ったのは魔力資源だった。

 リソース・ドレイン――資源を吸収するグルダーニの特殊攻撃だった。

 この期に及んでこんないやらしくも、恐ろしい攻撃を仕掛けてくるなど……!?

 魔力資源が空になったアユミールに、グルダーニの巨大な人の腕が襲い掛かる。

 打撃攻撃はクリティカルヒットと化した。

 聖皇の肖像盾の加護も空しく、アユミールは宙を舞い、即死していた。

 グルダーニは物理攻撃一つをとっても強力すぎた。

「アユミールさん……!!」

 ミナが即座に、蘇生魔法を施す。

 アユミールが息を吹き返し、直ちに蘇ると、アユミールは万能薬を出現させ、魔力資源を回復させた。

「……大丈夫ですか?」

 ミナがアユミールに駆け寄る。

 アユミールの顔は何かの決意に満ちていた。

「ミナ、次は生き返さなくていいから」

 アユミールは極めて冷静に言う。

「でも!?」

「……前にも言ったでしょ? 魔力を無駄遣いするなって」

「…………」

「わたしの万能薬はこれで品切れだから……あんたはいつも通り補助魔法と回復魔法で、ジン君のサポートに専念すること。もう、わたしに構わないでね。……約束よ」

 アユミールは睨むようにグルダーニを見る。

 グルダーニは再びブレスを吐こうと口を開けていた。

 魔法触媒のブレスだった。

「魔力が尽きるまで、シークレット魔法を使いまくってやる……!!」

 そう言うとアユミールはすぐ様、シークレット魔法の準備に入った。

 Oの字に開けたグルダーニの口の前に魔法触媒が生み出されていく。

 アユミールとグルダーニはの魔法触媒はほぼ同時に放たれた。

 漫画のように魔法同士が互いに相殺されることは無い。

 それぞれの魔法触媒は、それぞれの陣営に投下されると、重力場の嵐を引き起こし、二つがぶつかり合い、吹き荒れる。

 量子重力崩壊のブレスで、再び何人かメンバーが散っていた。特に回復役系のキャラは生命力が低く、かなりの数を減らしていた。その中にヘスペリアとエリテュリアも含まれていた。

 回復処置を受けながら、アユミールは再度シークレット魔法に入る。

 頭上で作り上げた魔法触媒は、第二段階形態で使用した<核力消失>だった。

 振り下ろされるグルダーニの触手を寸での所でかわし、アユミールは魔法を放った。

 グルダーニの触手を含めた本体全てに、<核力消失>の魔力現象のエフェクトが起こっていた。

 粒子状と化すエフェクトが続くが、中々決め手にならない。

 徐々にエフェクト現象自体も薄れていく。

 終には、グルダーニはシークレット魔法に耐え切り、ダメージにすら至らなかった。

「……うっそ!! レジストしちゃったの!?」

 アユミールに隙ができていた。

 魔法を使用した直後の、次の攻撃に移る為の無防備な状態を見計らったように、グルダーニのクリティカルヒットが炸裂した。

 アユミールの瞳から光が消えた。

 アユミールは再び死亡すると、その姿を消した。

 アユミールの再度の離脱に、ミナも蘇生魔法を使用することは無かった。

 回復役のメンバーはアイグレーとミナしかおらず、死んだメンバーを生き返らせることは、もはやできない。

 そこまで魔力資源が回せない所まで来ていた。

 リソース・ドレインという特殊攻撃がさらに拍車をかける。

 資源を使い切ってしまえば、魔法やジョブスキルは使用できなくなり、グルダーニとまともに戦うことすらできなくなる。

 アイグレーが攻撃強化魔法を掛け終わると、僕はフィロソフィーブレードマキシマムソニックブレードと、ディメンジョンブレードを配合する。

 僕の決め技フェイヴァリット・ホールドなりつつある、ディメンジョンブレードの連続攻撃を放っていた。

 怒りに身を任せ、剣を振るう。

 攻撃回数は十回に達していた。

 手ごたえはあったが、まだ足りなかった。

 大ダメージを与えたが、斃すめでには至らない。

 反撃するようにグルダーニは<カオティック・ウエーブ>を放つ。。

 強力な精神攻撃にキャラたちが次々と行動不能になる。

 グルダーニは無数の触手や腕を振るい、行動不能になったキャラ一人一人始末していく。

 元々回復担当が少ない以上、主要メンバー以外に回復魔法を掛ける余裕はもはや残されていなかった。

 生き残っているのは、僕、ミナ、アイグレー、クロム、そしてクロムの魔導剣師の四人になっていた。

「あと少しのはずだ」

 クロムが搾り出すように言った。

「……向こうの無傷ではない。もう消耗戦になっている。耐え切れれば、俺達の勝ちだ」

 クロムの言葉に、僕は自分に言い聞かせるように頷く。そう願いたかった。

 萎えそうになる気力を奮い起こすと、グルダーニの全身から波動が放たれる。

 <デモン・ムーヴ>だった。

 僕達に施されていた特殊効果が掻き消える。

 怯むことなく、クロムはディメンジョンブレードを仕掛けた。

 さらにクロムの魔導剣師がプレッシャーブレードで後に続く。

 魔導剣師が仕掛け終わった時、グルダーニの触手が身体に巻きつくと、本体の口へ放り込んだ。

 捕食攻撃による即死――その瞬間、クロムにラグが起こっていた。

 マルチプレイアタックの欠点――操っているキャラが死亡すると、行動が一瞬遅れてしまう。 

 クロムの隙を突いたように、グルダーニは本体の口を開く。

 リソース・ドレインだった。

 クロムの魔力資源を全て吸い尽くすと、グルダーニは大きな手を開き、振り下ろす。

 攻撃を叩きつけられたクロムも一瞬にしてゲームオーバーになった。

 仲間が次々と死んでいく。

 ゲームバランスの関係がそうさせるのか、グルダーニは明らかに主要プレイヤーに狙いを定めている。

 僕達に巨大な腕が伸びる。

 アイグレーが僕とミナの前に立ち、僕達の盾となった。

 攻撃をまともにくらい、アイグレーも戦闘不能になった。

 AI達も散っていき、いつしか前衛の僕と後衛のミナだけになっていた。

 僕達は追い詰められていた。僕の資源残量も底を着きかけていた。

 フィロソフィーブレードもせいぜい後一発が限度だった。

 万能薬もすでに使い果たしている。

 僕はミナの顔を見る。ミナは恐怖を浮かべているどころか、まだ戦意を失っていないようだ。

「……攻撃がループしていると思わない?」

「えっ?」

 ミナの言葉に、僕は聞き返す。

「リソースドレインの使用後に物理攻撃、そしてシークレット魔法のブレスが来てる……」

 僕は思い出す。確かにそうだった。

「もしかして、グルダーニもシークレット魔法のブレスを使用する際、多大な魔力を消費しているのかも……」

「特殊攻撃の資源は、リソースドレインで補っているのか……?」

 ミナは頷く。資源に支配されているのはグルダーニも同じだった。 

 ミナが突然、僕に万能薬を振り掛ける。 

 フィロソフィーブレードを使用する為の資源がMAX値まで回復する。

「……ミナ」

 僕はミナを見る。

「魔導司祭でよかった」

「えっ」

「ジン君を攻撃でも回復でも援護できるから。不人気で不遇の職業だって言われるけど、そんなことなかった……」

 ミナは強化魔法を僕に掛けると、さらに回復魔法を掛ける。

「最後の万能薬、ジン君に渡しておく」

 ミナはアイテムを突然僕に手渡した。

「アユミールさんの言う通り、回復役に努めるけど、最後が来たら攻撃魔法を一発放つから。それだけは許してね」

「……何言ってるんだ!?」

 僕は思わず怒ってしまった。

「来る……!」

 ミナの言葉通り、グルダーニの触手の仮足をうごめかしながら、近づいてきた。

 ミナは<対消滅>の魔法詠唱に入っていた。

 僕はミナのフォローに入る。

 発動時間を考慮し、僕はあえてディメンジョンブレードの単発攻撃を仕掛けた。

 次元の刃が顔に走り、グルダーニの動きが止まる。

 顔面の攻撃はグルダーニの攻撃の手が一瞬止まることからも、はやり有効のようだ。

 僕の援護に機を得たミナの魔法触媒がグルダーニの頭部を捕らえていた。

 魔法触媒が広がり、予想外の大ダメージを与えていた。

 終わったと思った瞬間、グルダーニは本体部の口を大きく開けていた。

 リソースドレインだった。

 ミナは僕を押し退け、かばうと、リソース・ドレインをまともに喰らう。

 魔力資源を全て失ったミナの身体に触手が巻きつき、グルダーニ本体の口の中に吸い込まれる。

 僕はステータスを確認する。

 ミナのステータスは、死亡をあらわす赤いテキスト表示に変っていた。

 もう、僕一人だけだった。

 グルダーニから<震空波>の波状攻撃が放たれる。

 吹き飛ばされ、床を転がり、グルダーニと間にかなり距離が開いていた。

 生命力を多大に失い、僕自身の気力も付きかけていた。

 はっきり言って、心が折れかけていた。

 その時、目の前に人影が出現した。

 サルマンだった。

 サルマンは幽体のような青白い姿で、僕を見下ろしている。

「……その程度か、ナーヴァスは?」

 サルマンが僕に尋ねてきた。

「……何?」

 僕は苛立ったように聞き返す。

「その程度なのかと訊いているのさ」

 サルマンがこの期に及んでこんなことを何故尋ねてきてるのか理解できなかった。

「君達ナーヴァスは、人の新たなる進化形態を担う新人類になるかもしれない。それは社会的文明的発展を促すものでなければ、たんなる異端児アウトサイダーと同じだ」

 サルマンにいつもの軽薄さは無かった。

 言葉は重みに満ちている。

「我々AIが守るに足るべき存在なのか……? 我々AIを、いや人を正しき道へ導く存在なのか……?」

「……知るか!」

「錬金術は技術的追求を目的とする物質面のみならず、思想や哲学、魂など精神面の両者を高める為の実践手段でもあった……君は高い道徳性や規範、他者への思いやり、そして倫理観を持ちえる、社会を正しい方向へ導く存在なのか……?」

「……だから、知るか!!」

 僕は思わずサルマンに剣を浴びせた。サルマンの幽体が消失する。

 最後の万能薬を使用しながら、僕はサルマンそしてグルダーニに対し無性に腹が立っていた。

 いや、サルマンやグルダーニだけではない。

 運営会社の体質

 コンプリーター

 AI達の身勝手さ

 数々のトラブル

 ゲームへの不満や怒りが一気に噴出する。

 僕はディメンジョンブレードの重複配合を行なう。

 グルダーニも口を大きく開く。

 僕は魔法剣を叩きつけるように、クルダーニ頭部の口を真横に切り裂く。

 ブレスを使用しようとする寸前に与えた空間断層の二重攻撃が、ブレスをキャンセル状態へ持ち込んだ。

 キャンセルが起こり攻撃をミスっても、資源は消費される。

 それは僕達もエネミーも同じだった。

 次の攻撃は読めていた。

 ――グルダーニはリソース・ドレイン使用後、直接攻撃を仕掛けてくる。

 僕の方が一歩早かった。

 本体の巨大な口が開いた時、再び魔法剣が走る。

 僕が仕掛けたのは、ディメンジョンブレード――の単発攻撃だった。

 資源消費コストの低い攻撃は、当然発動スピードも速い。

 リソースドレインもキャンセルになっていた。

 再び攻撃がキャンセルになるとグルダーニの攻撃は触手攻撃のみで、特殊攻撃を仕掛けてこない。

 僕は物理攻撃を避ける。

 ミナの読み通り、やはり攻撃がループしている。

 グルダーニとの駆け引きに勝っていた。

 攻撃ルーチンが実行されず、グルダーニに乱れが生じていた。

 僕は攻撃を回避しながら、フィロソフィー・ブレードを発動し、マキシマムソニックブレードとディメンジョンブレードを配合する。

 鞭のように振るわれる触手をかわし、さらに腕の物理攻撃を避けきる。

 いつしか僕の中で怒りが湧き起こっていた。

 怒りが連鎖反応を起こし、次々と脳神経ネットワークが誘爆引火していくような感覚だった。

 一度火のついた神経伝達は、僕に爆発的な力を与えた。

 僕はフィロソフィーブレードを放った。

 クルダーニの頭部に狙いを絞り込み、空間断層の刃を滑空させる。

 まだまだいける――剣を繰り出しながら、根拠のない確信が芽生えていた。

 神経活動が際限なく加速していく。

 ミナが僕に最後に施した攻撃強化魔法の後押しを受けて、カウンターストップの連続攻撃が放たれる。

 多方向からの一三回のディメンジョンブレード連続攻撃――異次元の邪神を次元の刃が切り裂いていく。

 触手を切り裂き、腕を断ち、顔へ容赦なく空間断層の刃を浴びせていく。

 越境した――そう思った瞬間、マキシマムソニックブレードとディメンジョンブレードの配合攻撃は上限回数一二回を超え、一三回へ至っていた。

 僕は最後の次元の刃をグルダーニの顔面の中央線に走らせ、断ち切った。

 グルダーニが断末魔の声を上げ、発光すると、消え去っていく。

 今度こそ、完全に邪神グルダーニを打ち負かしていた。

 ラスボスが放つ光に飲み込まれながら、僕は意識を失った。

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