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ウィザード・ブレード・オンライン ナーヴァス・クロニクル  作者: net-works
第八章 エクストラステージ<異次元世界>
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3 愚者の誘惑

 

 アイテム喪失により、アユミールがモチベーションをすっかり失ってしまった為、今日の戦いは早々に切り上げた。

 地上に出て、次の打ち合わせをして解散しようとしていた所に、「久しぶりだねえ」と突然声をかけられた。

 エンデとフェリア姫だった。GMが何故こんな所に居るのか、疑問だった。

「何のようだ……?」

 クロムは尋ねた。「いや、いや君たちの活躍ぶりは僕の耳にも入っている」

 エンデはどこか馴れ馴れしい口調だった。

 カリバーンの件に関して、運営側に僕は不信感を覚えていた。

 ソウル・アーカイバ計画の件もある。

「今日は、君たちにいい話を持ってきたんだ」

 エンデは上から物を言うような感じだった。

「君達プレイヤーを公式プロプレイヤーとしてこちらで認定したい。で、今後はパーティーを解消し、君達同士でゲームクリアを競ってもらいたいんだ」

 エンデの突然の申し出に僕は面食らった。

「その代わり、君達に限り賞金を二千万に引き上げる」

「……大盤振る舞いだな」

 クロムが揶揄するように言う。

「この国において本来消費活動でしかなかったゲームが、新たなスポーツ的競技としてのスキームにもなる。プレイヤーから羨望も集めるだろうし、ゲーム文化発展の為に、ぜひ君たちには協力を頂きたいのだが……」

 エンデの話はもっともに聞こえた。まだまだ日本はプロゲーマーは日陰の存在である。

 隣の韓国などはプロゲーマーのメッカだ。

「正直、運営側としては、君たちは抜きんでいるからね」

「俺達がナーヴァスだからか……?」」

 クロムの発言に、エンデは鼻で笑う。

「……よく知っているね。でも、そう思ってくれてかまわない」

「ここで拒否したら、どうなるんですか?」

 僕はたまらず質問した。

「……別にどうも」

 エンデは答えた。

「だろうな……海外から賞金目当てでプロゲーマーも数多く参加している。それに俺達は不正行為をしているわけじゃない。我々ナーヴァスの能力がチートに等しいというのなら、言いがかりもいいところだ。第一、運営側はアイテム出現に制限をかけていた。そちらの方がよっぽど問題だ。我々にこんなことを言ってくる暇があったら、闇アイテムの排除とコンプリーターの捕獲に努力するべきじゃないのか……?」

 クロムの言葉にエンデは反論してこなかった。

「僕も仲間である人達と争いたくありません。僕はこのゲームを純粋に楽しんでいる。他者と競うことが目的じゃない」

 僕もエンデに噛み付く。

「そうよ、何をいまさら……」

 アユミールが僕の意見に同意した。

「正式プレイヤーになれば、優勝賞金とは別に、月々の報酬はもちろんさ契約金を支払う準備も出来ているが……」

「それでも嫌だといったら……?」

 僕は突っぱねる。警戒心が勝っていた。

「せっかく仲良くプレイしてるんだからいいじゃないですか。かき乱すようなこと言うの止めてください」

 ミナもはっきりと拒否の意を見せた。

「君は芸能人志望のようだね……?」

 エンデの言葉に、ミナは「えっ」と聞き返す。

「よければ、宣伝部を通して、事務所を紹介してもいい。なんらなこのゲームのイメージキャラクターにこちらから推薦しようか」

 ミナに動揺が走る。エンデの誘いは、ミナを揺さぶるには十分すぎたものだった。

 エンデはクロムの方を見る。

「君は……広告代理店勤務らしいね。仕事を回してあげてもいいよ」

「……魅力的な話だな」

「わ、わたしは……?」

 アユミールが自分を指差しながら訪ねた。

「……そうだな。彼女共々優良企業のイメージガールなんてどうだ?」

 エンデの言葉に、アユミールは舞い上がる。

 日本最大の広告代理店ならば、彼女達をねじ込むのは簡単かもしれない。

 パーティーの結束が急速に崩れていくのを僕は感じていた。

 エンデは今度は僕の方に眼を移す。

「……もちろん、君にも何かいい特典を与えよう」

 エンデの申し出に、僕は何も答えなかった。

 いつしかフェリア姫が僕をじっと見ていた。何故か、その視線が痛かった。

「……長いものには巻かれろ、というだろう……? いい答えを期待しているよ」

 僕達を懐柔しようとしているのはミエミエだった。

 にも関わらず、皆一様に振り切れなかった。

「カリバーンの件は口止めしなくていいのか……?」

 クロムの言葉に、エンデは眼を細める。

「……ああ、忘れていた。でも、君たちはそれを吹聴するような方々では無いだろう?」

「謝罪は無いのか……?」

「演出だよ、演出。ゲームじゃよくある話だ。君たちも楽しかっただろう……?」

 悪びれないエンデの態度に、僕は不快感で一杯になっていた。

 その場を去るエンデとフェリアからミナに目を移すと、エンデの申し出にかなり心を動かされているようだった。

 そのことに僕は少なからずショックを覚えた。

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