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3 親友との約束

 放課後、久しぶりに和也と一緒に帰っていた。

 学校近くのファーストフード店に入り、最近の近況を報告していた。

「競争相手とプレイすんのか?」

 コーヒーを口にしながら、和也が尋ねてきた。

「……うん。まあ、メンバー間でいろいろ話し合ったんだけど、結局申し出を受けることにした」

 僕はシェイクを啜りながら言う。

 黄昏の騎士団と僕達の選抜チームで、インサニティー・ロードと近々戦う予定である。

 異世界へ踏み込む為の資格を得る為には、どの道避けられない相手だった。

 カリバーンの魔法剣の情報を提供してもらう特典もある。

 向こうが約束を守ればの話だが……。

「なんか相手に上手く乗せられただけじゃねえのか……?」

「……まあね」

 和也の言葉に、僕は苦笑する。

「……本気マジでゲームクリア目指してんだな」

「でも、まあ、未奈に約束しちゃったからね」

 半分は未奈のためだ。

 でも、もう半分は自分の為でもある。

 引き下がれない自分がそこにいた。

 和也はチキンナゲットを頬張ると、「で、いつコクるんだ?」と僕に尋ねてきた。

 不意打ちともいえる和也の言葉に、僕は「えっ」と思わず聞き返した。

「好きなんだろ、未奈ちゃんのこと」

「……まあ」

 僕は曖昧に答える。否定できなかった。

「本気だったらできんだろ。告んねえとお前ぜってえ後悔するぞ」

「……だって、彼女は芸能人志望だし」

 僕は急にしり込みするようなことを言う。

「カンケーねーよ」

 和也はいつもよりも強い口調で、凄みすらあった。

 いつものどこかチャラチャラしたキャラではなく、真剣マジそのものだった。

「……考えてもみろよ、お前。もし彼女がデビューしたらますますチャンス無くなんぞ。芸能界はお前よりずっとカッコイイ奴らが一杯いんだからよ」

 和也の指摘に、僕は頭を殴られた思いだった。

 確かにそうだった。こんなことに気が着かない自分は間抜け以外の何者でもない。

「……それにこのままの関係続けると、お前ら友達で終わっちまうぞ」

 和也の言うとおりだった。

 これではいつまでもプレイヤー仲間で、次の段階に進めない。

 それとも、僕自身がもっと踏み込むべきなのだろうか。

 一緒にいられるだけでで満足していたはずなのに、気持ちを抑えられない自分がそこにいた。

「そうなる前に、告れよ。自分の気持ちちゃんと伝えろよ」

 僕はすぐに返答できなかった。

「……何迷ってんだよ。お前の為に言ってんだぞ」

 まるで不甲斐ない自分を怒る様に、和也は言う。

「まあ、フラレんのが怖いかも知れねえけど、別にいいだろ……? 元々失うものなんて何にも無いんだからさ」

「他人事だと思って……」

「他人事じゃねえよ、お前だから言ってんだぞ。こんなキャラじゃないこと恥ずかしくて他の奴に言えるかよ。……ホント後悔するぞ、マジで……!」

 和也の真摯な言葉に、僕は必死に言葉を捜した。

 和也の思いを笑って誤魔化したら、和也との友達関係を破壊しかねないような気がした。

 和也の言うとおりいつか、思いを伝えなければならないのかもしれない。

 未奈との関係をゲームだけで終わらせたくは無かった。

「……ゲームのケリがついたら」

 僕は搾り出すように言う。

「もう少しでケリがつくんだ。だから――」

 和也は僕をまっすぐに見ると、「……ゼッテエだな?」と尋ねてきた。

 僕は真剣に頷いた。

「約束しろよ」

 僕はもう一度力強く頷いた。

 和也はようやく微笑むと、応援するように僕の肩を掴んで揺さぶった。

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