王都の「情報の壁」の解体と新内閣の設立
マクナル様が摂政に就任されたことで、わたくしは辺境伯邸にいながらにして、王国の最高権力の中枢に直接的な影響力を持つことになりました。
彼が王都で政務を統括し、わたくしが辺境から戦略を供給するという、私たちの理想的な協力体制が確立したのです。
しかし、王都の中央行政には、まだ私たちの改革を妨げる大きな障害が残されていました。
それは、貴族たちが長年築き上げてきた、情報の透明性を拒む分厚い「情報の壁」でした。
王都の行政は複雑に絡み合った部署に分断されていました。それぞれの部署が情報を独占し、隠蔽することで、自分たちの既得権益を守っていたのです。
特に、王都の行政官僚たちは、新しい合理的なシステムを受け入れることを拒否し、故意に仕事の速度を落としていたのです。彼らの抵抗は受動的で陰湿なものでした。
わたくしは、この情報の壁を解体し、行政の機能を完全に再起動させるための計画を立てました。これは、単なる組織改革ではなく、王都の行政官僚たちの権力の源泉を奪う、静かなる革命でした。
わたくしの計画は、「情報の集中管理」と「新内閣制度の導入」の二段階で構成されていました。
まず、一つ目の「情報の集中管理」です。
マクナル様には、すべての主要な行政文書と財政報告を、辺境伯領で採用している形式、すなわち「可視化されたデータ」で提出することを、全行政機関に強制していただきました。
辺境でわたくしが育成した、最も優秀でデータ処理に長けた女性官僚たちを、王都の中央行政監査部門に派遣しました。
彼女たちの任務は、王都の官僚たちが提出した曖昧な文書を全て回収し、わたくしの基準に則った「統一データ」へと変換することでした。
王都の官僚たちは、この情報開示の要求に対し、激しく抵抗したと、摂政であるマクナル様から報告がありました。
彼らは「伝統的な機密性を侵害する」と主張しましたが、辺境伯は彼らの主張を一切聞き入れませんでした。
「君たちの伝統的な機密性が、王国を財政破綻に追い込んだのだ。これからは、透明性と効率性が、王国の新たな伝統となる」と、彼、摂政は毅然とした態度で行政官僚たちを黙らせたそうです。
次に、二つ目の「新内閣制度の導入」です。
王都の行政機構はあまりにも非効率で、意思決定が遅すぎました。そこでわたくしは、現在の曖昧な評議会を解体し、権限と責任を明確にした新しい「内閣」を設立することを提案しました。
この新内閣の構成員は、血筋や階級ではなく、実務能力と合理的な思考に基づき選出されなければなりません。わたくしの目標は、辺境の合理性を中央政界に定着させることです。
わたくしは、マクナル様に対して、財務、軍事、産業の三つの主要なポストに、辺境伯領でわたくしに仕え、実績を上げた、信頼できる女性官僚を推薦しました。
彼ら貴族社会が最も軽視する女性を、王国の行政の核に据えるという、大胆な人事です。
愛しい夫であるマクナル様は、この人事を躊躇なく実行に移してくれました。
彼は、自分の権力を強化するのではなく、わたくしの知性と能力を最大限に活用するために、最も合理的な人材を登用することを常に優先してくれました。わたくしにとって、彼のこの公正な態度は、何よりも頼もしいものです。
新内閣の設立と、統一された情報管理システムの導入により、王都の中央行政は劇的に変化しました。
これまで数ヶ月かかっていた行政手続きが、数週間で完了するようになり、財政の無駄遣いや、予算の不正な流用が瞬時に可視化されるようになりました。
王都の古い貴族たちは、もはや情報を隠すことも、行政の遅延を利用して私腹を肥やすこともできなくなりました。
彼らの権力の源泉であった「情報の壁」は、わたくしの知性と、マクナル様の実行力によって完全に崩壊したのです。
わたくしは、辺境伯邸の書斎から、王都の行政の効率化を示すデータグラフを眺めながら、静かな達成感を覚えました。王国の心臓部は今、わたくしの設計した通りに、力強く脈動し始めたのです。




