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転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜  作者: 夏野みず
第二の難関 不在の夫に代わり領地を守る賢妻

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軍事費の監査と「効率的な兵站システム」の導入

 王弟公爵が、辺境伯領の教育分野への介入に失敗すると、彼らは最後の望みを託し、辺境伯領の最も聖域である「軍事費」をターゲットにした。辺境伯領は、常に隣国からの侵攻の脅威に晒されており、軍事費は莫大だ。王都の貴族は、この軍事費に必ず「不明朗な会計」があるはずだと確信していた。


 王都の慣習では、軍事費は「機密」の名の下に曖昧な形で計上され、貴族たちが私腹を肥やすための温床となっていた。王弟公爵は、私が辺境伯の不在を良いことに、軍事費を横領しているという濡れ衣を着せ、私を辺境伯代理の地位から引きずり下ろそうと画策した。


 王都から派遣されたのは、軍事費の監査に特化した、老練で疑り深い監察官、ヴィクター伯爵だった。


 ヴィクター伯爵は、辺境伯邸に到着するなり、開口一番、挑戦的な態度で私に言い放った。


「辺境伯夫人。軍事費は王国の安全に関わる重要機密です。辺境伯不在の中、貴女がこの莫大な費用を管理していることに、王都は強い懸念を抱いております。特に、この度の軍事訓練の費用が、前年の同時期と比較して、驚くほど『低く』抑えられている点について、詳しく説明していただかねばなりません。軍事費を削減したということは、辺境伯領の防衛力が低下しているのではないか」


 彼の指摘は、一見、筋が通っているように見えた。軍事費の削減は、確かに防衛力の低下を意味しうる。王都の貴族は、軍事費は高いほど良い、という固定観念に囚われていた。


 しかし、私が軍事費を削減できたのは、前世の知識による「効率的な兵站システム」を導入したからだった。兵站とは、軍隊の食料や武器、弾薬の補給、輸送、そして兵士の管理の全てを指す。この兵站の非効率性こそが、この時代の軍事費を高騰させている最大の原因だった。


 私は、ヴィクター伯爵の挑戦を受け、軍事顧問の騎士たちと共に、彼を辺境伯領の軍の倉庫へと案内した。


「ヴィクター伯爵。ご心配いただき、ありがとうございます。ですが、ご安心ください。軍事費の削減は、辺境伯領の防衛力の低下ではなく、辺境伯領の軍事的な合理性の向上の証です」


 私は、軍の倉庫内で、私が導入した二つの革新的な兵站システムを彼に示した。


「ジャストインタイム補給」の導入: これまでの辺境伯領の軍は、王都の軍と同じく、大量の兵器や食料を倉庫に「過剰に」備蓄し、それが腐敗したり、錆びついたりすることで、莫大な無駄が生じていた。私は、必要最小限の物資を、必要な時に、必要な量だけ補給する「ジャストインタイム」の概念を導入した。これは、私が導入した「可視化帳簿」による正確な在庫管理が、初めて可能にしたことだった。


「地産地消の兵糧確保」: 兵糧を王都の商会に頼らず、私が経済改革で確立した、辺境伯領内の農家と契約し、新鮮で安価な豆類や芋類を中心とした食料を、定期的に安定して供給するシステムを構築した。これにより、王都の商会に払っていた高額な輸送費と手数料が、全て辺境伯領内に留まることになった。


「伯爵。この倉庫を見てください。前年比で在庫量は大幅に減りましたが、これは無駄な在庫が減っただけであり、必要な物資は、私の正確な帳簿管理によって、常に確保されています。そして、この兵糧は、全て辺境伯領内で採れたもので、王都の商会を介していません。輸送費が大幅に削減されたのは、そのためです。物資を腐らせる無駄な費用が減り、輸送費という中間マージンが消滅した。これが、軍事費削減の真の理由です」


 ヴィクター伯爵は、倉庫の整然とした管理状態と、軍の兵糧が、全て領内の農家と公正な価格で契約されたものだという記録を見て、驚きを隠せなかった。軍事費を削減しながら、防衛力を低下させるどころか、むしろ兵站を安定させ、領民の利益にも貢献しているという、私の合理的な統治は、彼の常識を完全に覆した。


「そ、そんな、軍事費を削減しながら、防衛力を維持するなど……王都では考えられん」


「王都の貴族は、曖昧な軍事費計上を悪用し、私腹を肥やします。だから、軍事費は常に高騰するのです。しかし、マクナル様とわたくしは違います。軍事費は、一銭たりとも無駄にしない。この厳格な合理性こそが、辺境伯領の真の防衛力です。軍事費を削減した分、兵士たちの給料と、彼らの家族への補助を増やしました。彼らの士気は、前年よりも遥かに高いです」


 私は、兵士たちの士気という「無形の財産」も、軍事力の一部であることを、彼に証明した。


 ヴィクター伯爵は、私が提示した完璧な会計帳簿と、軍の兵站の驚くべき効率性を前に、私に不正があったという報告を、王弟公爵にすることは不可能だと悟った。むしろ、彼は、辺境伯領のこの合理的な兵站システムを、王都の軍事部門に導入すべきではないか、という疑念すら抱き始めていた。


 彼が王都へ戻る際、私は最後に、意味深な言葉を彼に送った。


「伯爵。王都の貴族が、軍事費の曖昧な計上を利用して私腹を肥やしていることは、わたくしも存じております。わたくしが導入したこの兵站システムを、王都の軍に導入すれば、王国の軍事費は、現在の半分以下に抑えられるでしょう。この事実を、どうか王弟公爵様と、財務大臣にお伝えください」


 私の言葉は、王弟公爵と財務大臣の、軍事費からの不当な利益という「既得権益」を脅かす、明確な挑戦状となった。私の目的は、彼らの陰謀を打ち砕くだけでなく、王都の腐敗した経済構造そのものを、辺境の合理性で変革することだった。

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