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第8話 「史上初のドラゴンテイマー」

ギルドの大広間。

紫光が収まり、漂っていた魔力の嵐が消えると――場の全員が凍り付いていた。


俺の腕の中に収まっているのは、一匹の小さな竜。

掌に乗るほどのサイズだが、全身の鱗は金色に輝き、宝石のような瞳がこちらを見上げてくる。


(……かわいい)


一見すれば愛らしい小動物。

だが冒険者たちの顔には恐怖が浮かんでいた。


「……あれ、本当に……ドラゴンか?」

「間違いねえ……! 気配が普通の魔物とは別格だ」

「おい冗談だろ、テイムなんて……」


ざわめきが広がる。

その中で、ギルドマスターと呼ばれる男が前に出てきた。

灰色の髭をたくわえ、鎧をまとった巨漢――歴戦の冒険者の気配をまとっている。


「――少年。お前、今の現象を説明できるか?」


鋭い眼光が突き刺さる。

嘘や誤魔化しは通用しない……そんな気迫だ。


俺はごくりと唾を飲み込み、正直に答えた。


「……宝珠に触れた瞬間、俺のスキル欄に新しいスキルが追加されました。【ドラゴンテイム】です」


「ドラゴン……テイム……だと……?」


場が一斉にどよめく。

テイムスキルを持つ冒険者は珍しくない。

だが、それはせいぜい狼や魔獣クラス。

ドラゴンを従えるなど、誰もが「ありえない」と思ってきた。


「そんなバカな話が――」

「でも見ろよ! あの竜、完全に従属してる……」

「こ、国家レベルの事件だぞ……」


冒険者たちの視線が一斉に俺に注がれる。

羨望と、嫉妬と、恐怖。

さっきまでの新人扱いとは一変、空気が重く張り詰める。


(……なるほど。これが“史上初”ってことか)


すると、腕の中の小竜――フォルが小さく鳴いた。


「……キュゥ」


その瞬間、不思議と緊張が和らぐ。

フォルは小さな頭をすり寄せてきて、俺の胸の中で丸くなった。


【……だいじょうぶ。ボクはキミの“なかま”だから】


(……テレパシー?)


声は俺にしか聞こえていないらしい。

周囲はただ「鳴き声」としか認識していない。


「……っ!」

胸の奥が熱くなる。

怖がられる存在じゃない。

フォルは――俺の仲間だ。


「ギルドマスター」


俺は顔を上げた。


「俺はこの竜と、正式に契約しました。こいつは“敵”じゃありません」


しばしの沈黙の後、マスターは重々しくうなずいた。


「……よかろう。ただしギルドとしては、この件を上層部に報告せざるを得ん。お前とその竜は注目を浴びることになるぞ」


「……覚悟してます」


こうして俺とフォルは、ギルドから正式に“契約存在”として認められた。



その日の夕方。

ギルドを出るとき、冒険者たちの視線が突き刺さった。


「くそっ……あんなガキがドラゴンを……」

「羨ましいどころじゃねえ……化け物か」

「でもよ、あの竜……ちょっとかわいくね?」


羨望と嫉妬と、微妙な声。

けれど俺の心は不思議と静かだった。

胸の中のフォルが、ちょこんと頭を上げ、俺だけに笑いかけているように見えたからだ。


(……絶対に守る。俺の“仲間”だから)


その決意と共に、俺の冒険は新たな局面へ踏み出した。

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