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第7話 「契約」

紫光の奔流がギルドの保管庫を包み、俺は思わず息を飲んだ。

鉄格子はねじ曲がり、床は震え、冒険者たちは次々に後退する。


「やばいぞ、爆発する!」

「魔物化だ、逃げろ!」


誰もが恐怖に駆られる中、俺だけは視線を外せなかった。

――宝珠が、俺を呼んでいる。


パリンッ。


宝珠が音もなく砕け、光の粒が宙に舞う。

そこから現れたのは――掌ほどの小さなドラゴンだった。


白銀の鱗は淡く輝き、翼は透き通るように薄い。

大きな紫の瞳がこちらを見て、柔らかく鳴く。


「……キュイッ!」


周囲がざわつく。

「ドラゴン……? なんでこんな小さい……」

「いや、でもあの気配……尋常じゃねぇ……」


冒険者たちは畏怖に震えるが、俺の耳には別の声が響いていた。


『……やっと……会えた。』


心に直接、幼い声が流れ込んでくる。

(……今、喋ったのか?)

思わず呟くと、ドラゴンは嬉しそうに翼をぱたつかせた。


『私の名は……フォルトゥナ。運命を繋ぐ竜の子。』


(フォルトゥナ……?)

ステータスウィンドウを開くと、確かにそこに名前が刻まれていた。


――【フォルトゥナ(幼生)】


だが次の瞬間、心の声がはしゃいだように響いた。


『でもね! 長いから……“フォル”って呼んで!』


(……は?)

俺が戸惑うと、幼竜は「キュイッ!」と鳴いて、俺の肩にちょこんと乗る。


周囲の冒険者たちは息を呑んでいた。

「なんで……あの竜、あの新人に懐いてる……?」

「おい、今なんか……意思疎通してなかったか?」


だが彼らにはドラゴンの鳴き声しか聞こえない。

俺とフォルだけが、言葉を交わせている。


「……わかったよ。フォル」

(そう呼んでやるよ)


『やったぁ!』

フォルは子供のように無邪気に翼をばたつかせた。


その瞬間――胸の奥に熱が走り、脳裏に声が響く。


【新スキル〈ドラゴンテイム〉が付与されました】


「……スキルが……増えた?」


フォルが俺に擦り寄ると同時に、熱は心地よい温もりへと変わった。

ただの魔物じゃない。

俺とフォルは、確かに契約を結んだのだ。


「キュイイ……」

幼竜は甘えるように鳴き、俺の胸元で丸くなる。


(運命を司る竜と、運を操る俺。……偶然じゃないな)


ギルド中が呆然とする中、俺は小さな竜――フォルと共に新たな一歩を踏み出した。

それが、世界を揺るがす契約の始まりになるとも知らずに。

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