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第5話 「報告と宝珠」

「ブラックスライム……討伐完了です」


ギルドの受付に魔石と一緒に黒光りする宝珠を差し出す。

栗髪の受付嬢――リナの目が見開かれた。


「ブ、ブラックスライム!? あなた、G級登録したばかりですよね!?」


周囲にいた冒険者たちもどよめく。

酒を飲んでいた中年の戦士が立ち上がり、口を大きく開けた。


「おいおい、ブラックスライムだと? あれはD級以上の依頼だろうが!」


「昨日登録したばっかのガキが倒せるわけねぇだろ!」


「魔石はともかく……その宝珠、見たことねぇぞ」


あっという間に人だかりができ、視線が突き刺さる。

冷やかし、驚き、そして――嫉妬。


(……まぁ、こうなるよな)


リナは慌てて書類をめくり、声を落とす。


「し、証拠の魔石は本物です。討伐記録に間違いはありません……! ですが、その宝珠は――」


宝珠を持ち上げ、光に透かす。

内部で紫の粒子がゆらめき、不気味に輝いている。


「……鑑定不能、です」


「は?」


俺だけじゃなく、周囲の冒険者たちも息を呑んだ。

鑑定魔法を使える職員がさらに呼ばれ、再度確認する。

だが、結果は同じ。


「鑑定スキルが弾かれる……これは、ただのレアドロップじゃない」


リナの声は震えていた。


「ギルド規約に従い、正体不明のアイテムは一時的に保管……」


そう言いかけた時だった。


「ちょっと待て!」

粗野な声が響く。

先ほど騒いでいた中年戦士が、俺を指差した。


「おい坊主! そんなもん、どうやって手に入れた? 本当にてめぇが倒したのか? 他の奴の獲物を横取りしたんじゃねぇだろうな!」


「そうだそうだ! 運良く死体を見つけただけかもな!」

「鑑定不能なんて怪しいぜ!」


次々に浴びせられる疑いの声。

俺の胸にチクリと刺さる。


(……運操作は隠しておくべきだ。だけど、このままじゃ……)


リナが慌てて割って入る。

「し、静粛に! 討伐証明の魔石は確かに彼が持ち帰ったものです! 疑うのは不当です!」


だが空気は収まらない。

むしろ熱を帯びていく。


俺は宝珠を見つめ、強く握りしめた。

内部の紫光が、まるでこちらに語りかけているように脈打つ。


(……やっぱり、ただの戦利品じゃないな)


そう直感した。



結局その場は、宝珠は「ギルド保管扱い」として預けることになった。

だが背を向けて歩き出す俺に、無数の視線が突き刺さる。

羨望、妬み、警戒――すべてが混ざった濁流のような眼差し。


(冒険者になって、たった二日でこの騒ぎか……)


胸の奥で、再びざわめきが広がっていく。

けれど不思議と、それは恐怖よりも高揚に近かった。


「俺の【運操作】……これから、もっと騒ぎを起こしそうだな」

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