第22話 「幼竜の吐息」
依頼掲示板の前に立ち、いつもの依頼書を手に取った。
【依頼内容】
新宿G級ダンジョン 下層ゴブリン討伐
・目標:ゴブリン10体以上の討伐証明(耳を回収)
・報酬:10,000円
ルーティンのような依頼だが、フォルとの連携を磨く場としてはちょうどいい。
肩に乗る幼竜に視線を向けると、今日はいつもより少し元気がありそうに見えた。
「フォル、行くぞ」
「きゅるっ!」
新宿G級ダンジョン。
湿気を帯びた石造りの通路は相変わらず薄暗いが、俺たちはもう慣れつつあった。
「ぎゃぎゃっ!」
早速ゴブリンの群れが現れる。
三体同時に襲い掛かってきたが、短剣を抜いて前に出た俺に、フォルが並ぶように飛び降りた。
「きゅるぅ!」
その瞬間――フォルの口元から、かすかに赤い火花が散った。
「……っ!?」
一瞬の出来事だった。
小さな火花が飛び出し、先頭のゴブリンの顔をかすめて焼き焦がす。
奴は目を押さえて悶絶し、俺はその隙に短剣を突き立てた。
「今の……炎か?」
フォル自身も驚いたように自分の口を見つめていた。
だが次の瞬間には、残るゴブリンたちに鋭い視線を向け、翼を広げて威嚇の声をあげた。
「きゅるあぁっ!」
火花は二度目には出なかったが、ゴブリンたちは怯み、その間に俺が仕留めることができた。
息を整えながら、戦場に残ったゴブリンの耳を切り取る。
フォルは俺の横に戻り、誇らしげに胸を張っていた。
「……やっぱり、黒の魔核の影響か」
数日前の出来事を思い出す。
あの夜、フォルが魔核の光を吸い込んでから、鼓動が強くなった気がしていた。
そして今日――ついに小さな炎を生み出した。
「フォル、お前……これからもっと強くなるんだな」
「きゅるっ!」
俺の声に応えるように、幼竜は小さく鳴いた。
その目は、まるで未来を見据えるように輝いていた。
(黒の魔核……やっぱり売るなんてありえない)
フォルの成長のために、この石はきっと必要になる。
そう確信した俺は、耳の入ったポーチを握りしめ、次の戦いに備えて歩き出した。




