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第15話 「死線を越えて」

ギィィン――!


ダークゴブリンナイトの剣が振り下ろされ、床石が粉砕された。

衝撃で身体が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「ぐっ……!」

肺の中の空気が抜け、視界が一瞬、白くかすんだ。


(速い……! 重い……! これ、本当にG級ボスか!?)


フォルが咆哮し、体を膨らませる。

その威圧感にゴブリンナイトが一瞬だけひるむ。

だが次の瞬間には黒い剣閃が振るわれ、フォルは弾き飛ばされて床を転がった。


「フォルッ!」


小さな体で必死に踏ん張るが、明らかに分が悪い。

D級相当――それは“格下”であるはずの俺たちにとって、まさしく“死線”だった。


(……死線を越えろ、か)

掲示板で読んだ言葉が脳裏をよぎる。

なら――やるしかない。


「……未来は、俺が掴む!」


俺は短剣を構え、【運操作】を発動した。

未来のイメージを、強引にねじ曲げる。

「攻撃をかわす」「致命傷を避ける」「一瞬の隙を作る」――

無数の可能性から、わずかな“生存”の糸を引き寄せる。


カァンッ!

振り下ろされた剣を紙一重で避け、反撃に短剣を突き出す。

刃はかすめる程度だが、確かに血を引いた。


「きゅるるっ!」


フォルが立ち上がり、口を大きく開いた。

微かな光の粒子――まだ未完成の【竜炎の息吹】。

それでも吐き出された閃光はゴブリンナイトの目を焼き、一瞬だけ動きを止める。


(今だ!)


俺は全身の力を振り絞り、短剣を握り直す。

運を引き寄せろ――致命の一撃を、俺に。


「おおおおおっ!!」


渾身の突き。

黒い鎧の胸部に吸い込まれるように刃が走り――

バキィッ! と甲冑が砕け、心臓を貫いた。


「ギィアアアアアアアッ!!」


ダークゴブリンナイトは断末魔を上げ、黒い霧を散らして崩れ落ちる。


……終わった。


短剣を握る手が震えている。

全身が汗と血にまみれ、足が震えて立つのがやっとだ。


フォルが俺の足元に寄り添い、小さく「きゅる」と鳴いた。

その体温がじんわりと伝わり、緊張の糸が切れる。


「ははっ……死ぬかと思った」


思わず笑いが漏れる。

これが“死線”を越えたということなのか。


その時――

ポケットの中のライセンスカードが、微かに光を放った。


(……今の戦いで、何かが変わった?)


確信はあった。

だが今は、ただ立っているのが精一杯だ。


「帰ろう、フォル」

「きゅるっ」


俺は仲間と共に歩き出した。

新宿G級ダンジョンのボス部屋を後にして――

次の未来を掴むために。

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