第13話 「慣れと成長」
新宿G級ダンジョン。
初めてのゴブリン討伐から数日――俺は繰り返し依頼を受け、同じダンジョンの下層に通い続けていた。
【依頼内容】
新宿G級ダンジョン 下層ゴブリン討伐
目標:ゴブリン10体以上の討伐証明(耳の回収)
報酬:10000円
◇
「よし……フォル、行くぞ!」
肩に乗ったフォルが「キュッ」と短く鳴き、俺の気合に応える。
光を帯びた鱗が揺れ、すぐそばに現れたゴブリンがその存在だけで怯む。
(やっぱり【龍威】が効いてるな)
俺はナイフを構え、怯んだゴブリンに一気に踏み込んだ。
初めてここに来たときよりも、体が動く。
ゴブリンの棍棒を紙一重で避け、脇腹に斬撃を叩き込む。
「っしゃあ!」
ドサリと倒れるゴブリン。
俺はすぐに耳を切り取って袋に放り込む。
横でフォルが小さな顎を開き、光の粒を放った。
【龍威】に押されて怯んだもう一体のゴブリンに命中し、そいつもたまらず倒れ込む。
「ありがとな、フォル」
「キュルル」
◇
そんな日々を三度、四度と繰り返した。
ゴブリン討伐の依頼をこなし、耳を提出し、報酬を受け取る。
「篠崎さん、今日もお疲れさまです。今回も目標数達成ですね」
受付嬢のリナが微笑んでくれる。
「ありがとうございます」
受け取った封筒には、いつもと同じ1万円札。
安定した報酬。
少しずつだけど、財布に現金が増えていく。
(生活の足しになるし、なにより……身体が慣れてきたな)
◇
再びダンジョンの暗い通路を進む。
最初のころは一体現れるだけで焦っていたのに、今では二体、三体に囲まれても落ち着いて対処できる。
フォルの威圧で数を減らし、俺が仕留める。
それだけの連携が、もう自然にできるようになっていた。
「……いいペースだな」
袋の中は討伐証明でいっぱいだ。
初日と比べて、自分でも成長を実感する。
◇
その夜。
自宅に戻り、ベッドの上で報酬を数えながら、眠るフォルを眺める。
(……そろそろかもしれないな)
繰り返しのゴブリン討伐。
日々の戦いの中で、俺は確かに強くなった。
恐怖を制御し、戦い方を覚え、フォルと呼吸を合わせられるようになった。
「次は……ボスだ」
ダンジョンの最深部。
新宿G級ダンジョンをクリアするための、本当の試練。
そこに待つのは、ただのゴブリンじゃない。
俺は拳を握りしめ、眠るフォルの頭を優しく撫でた。
小さな寝息が規則正しく響く。
「一緒に行こうな、フォル」
静かな決意が胸に灯る。
そして、次なる挑戦の朝を待った。