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第11話 「小さな成長、大きな一歩」

森でのゴブリン討伐を終えた俺とフォルは、ギルドへ戻る道を歩いていた。

夜の帳が落ちかけ、街の灯りがぽつぽつと輝き始めている。


「……ふぅ」

思わずため息が漏れる。

全身が汗で張り付き、筋肉がひりつくように痛む。

でも、ただ疲れただけじゃない。

体の奥で、何かが確かに“動き始めた”気がしていた。


フォルは俺の肩にちょこんと乗り、満足そうに目を細めている。

戦いの最中、彼女は小さな体で俺を庇い、時に圧を放って敵を怯ませてくれた。

あの瞬間の連携感覚は、言葉じゃ表せないほど鮮烈だった。


(ステータス上は何も変わってない。でも……俺は、強くなった)


そう思えた。

剣を振るい、血を流し、命を賭けた。

その経験は、数値やランクなんかよりもずっと重い。



ギルドに戻ると、依頼掲示板の前で騒いでいた冒険者たちの視線がこちらに向く。

俺が手にした袋の中には、討伐証明となるゴブリンの魔石が収められている。


受付のリナが駆け寄ってきた。

「篠崎さん! お帰りなさい。……その袋は?」


「依頼のゴブリン討伐、終わりました」

袋を差し出すと、リナは目を丸くしながら中を確認した。


「……本当に。全部、討伐済み……!」


その声に、周囲がざわめいた。

「G級で、もうゴブリンを?」「しかも一人でか?」

驚きと、ほんの少しの嫉妬が混じった視線が突き刺さる。


俺は苦笑いしながら肩をすくめた。

「一人じゃないさ。こいつと一緒だ」


そう言って肩のフォルを撫でると、彼女は「くぅ」と小さく鳴いて胸を張った。

周囲の冒険者たちは一瞬どよめき、次いで笑いが広がる。

「マスコットかよ」「ペット連れで討伐成功? すげえな」


誰もフォルの正体を知らない。

幼生体とはいえドラゴンだなんて気付く者はいなかった。


リナは安堵の息を吐き、微笑む。

「無事でよかった……! これが報酬です。本当にお疲れ様でした」


袋を受け取りながら、俺は心の中で呟いた。


(数値じゃ見えないけど、俺は一歩前に進めた。フォルと一緒なら、もっと遠くまで行ける)


ギルドを出る頃には、夜空に星が瞬いていた。

その輝きはまるで、俺たちの未来を照らすように見えた。


「……次は、もう少し死線に近い依頼を探さないとな」

フォルが「きゅる」と応える。


俺はその声を背に受けながら、強く歩き出した。

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