第1話 「スキル発現」
初投稿ですので、温かい目でお読みください。
五十年前。
突如として地球の各地に「ダンジョン」が現れた。
黒い瘴気をまとった巨大な亀裂、地下深くへと続く迷宮。
その内部では、異形の魔物が生まれ、蠢き、そして人類に牙を剥いた。
もしダンジョンを放置すれば、やがて内部から魔物が溢れ出し、街を蹂躙する
――人々はそれを「スタンピード」と呼んだ。
だが絶望だけではなかった。
ダンジョンの発生と同時に、十八歳以上の人類に「スキル」と呼ばれる異能が芽生えたのだ。
炎を操る者、剣術を極める者、回復の力を持つ者……
戦う術を持った彼らは冒険者と呼ばれ、魔物に対抗する唯一の希望となった。
そして現在――世界がファンタジーと現実の境界を失ってから、ちょうど五十年。
◇
「今日で十八歳か……」
鏡に映る自分の顔を眺めながら、俺――篠崎 蓮は小さく息を吐いた。
十八歳。それはこの時代、誰にとっても特別な年齢だった。
なぜなら、この瞬間に初めて「スキル」が発現するからだ。
「正直、不安だよな……」
スキルは人によって千差万別。
戦闘に役立つ攻撃系もあれば、支援や生活向けのものもある。
まれに全く使えない「ハズレスキル」だって存在する。
冒険者として生きるか、ただの一般人として生きるか
――それを決めるのは、この一瞬だ。
胸が高鳴る。緊張と期待と恐怖が混じり合う中、頭の奥に鋭い光が差し込んだ。
――《スキルが発現しました》
脳裏に、確かに声が響く。
同時に、文字が視界の中に浮かび上がった。
《取得スキル:運操作》
「……は?」
一瞬、耳を疑った。
運操作。
なんだそれは。戦闘系でも補助系でもない、聞いたことのないスキル。
まるでゲームの裏パラメータをいじるような名前だ。
さらに詳細が表示される。
――《効果:あらゆる「運」を操作可能》
――《成功確率、遭遇率、ドロップ率……運に関する全ての事象に干渉できる》
「……ちょ、ちょっと待て。これ、やばくないか?」
思わず声が漏れた。
剣も魔法も使えない。だが「運」を操る?
それはつまり――
どんな攻撃も当たり、どんな攻撃も避けられるということじゃないのか?
宝箱の中身を最高レアに。
致命的な事故を回避。
出会う敵を最小限に、もしくは最大限に。
あらゆる場面で「勝利」を引き寄せられる。
――これは、チートだ。
手が震える。心臓が早鐘を打つ。
スキルの力を理解した瞬間、俺の人生が大きく変わる未来がはっきりと見えた。
「よし……やってやる」
冒険者として名を刻むのか、それとも世界を揺るがす存在となるのか。
その答えはまだ分からない。だが一つだけ確かなことがあった。
――俺は最強の「運」を手に入れた。
こうして、篠崎 蓮の冒険は幕を開ける。