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88.ディティ本山④

生理期間中、穏やかな日常を送っていた。

屋敷から出れないのは残念だけど、午前中は身体を動かす四人を見学しつつ私も身体を鍛える。

お昼はセトさんとアルファさんと一緒にご飯を作って、午後からはシャルルさんと本を読みながらお昼寝をしたりして過ごす。

夕食も一緒にご飯を作って、五人揃って他愛もない会話をしつつレグと一緒に寝る。

その間にシャルルさんとレグのスキンシップがどんどん激しくなっていった。

キスはもちろんだけど、くすぐったいから止めてと言う場所を触ったり、たまに焦らすように中途半端で終わらせたり…。

今までにないスキンシップはただひたすらに困惑するだけだった。

そんなことがありつつもあっという間に一週間が過ぎ、生理は終わったけどまだ血の匂いがするからあと二日は屋敷で大人しくしなくちゃいけない。


「あ、あの…。何事でしょうか…」


今日は朝からレグもいるし、また四人で戦うのかなと思って地下に行く準備をしようとしたらシャルルさんに手を握られ、談話室にあったソファに座らされた。

左右にはセトさんとアルファさん。目の前にはシャルルさんとレグ。

いつもより少し真剣な顔をした四人にただならぬ気配を感じて縮こまる。

だってシャルルさんとレグが隣同士で座るなんてありえないもんっ。座る位置だって左右はシャルルさんとレグで、目の前にセトさんとアルファさんが常なのに何で今日は逆なの!?

何かとんでもないことをしてしまった? それともルルヴァの件?

緊張を解そうと深呼吸をしてレグを見るけど、無表情で感情が読めない…。ああ…シャルルさんも無表情だ…。


「レグ…?」

「明後日には大聖堂に入ることになっている」

「え? あ、そうですね。オヴェールさんのおかげで参拝客が入る前に見させてもらえるんですよね?」

「ああ。そこで何をするつもりだ」


……そう言えば詳しい事情を説明していなかった。

神様と対話できるって聖書の原本には書かれてたけど本当にできるかな…。不安になってきた。

そしてこれを伝えていいものやら…。

いきなり「神様と対話してきます」って言っても信じてくれるかな。

いや、そもそも始祖像に祈りを捧げて神様と対話ってのもおかしくない? 普通こういうときは神様の像に祈りを捧げて対話でしょ? 何で始祖像なの?


「言えないことか?」

「あ、いやっ。言っていいのかどうか悩んでて…。ただ祈りを捧げるだけ、かな…?」

「それで何があるんだ」

「えっと……ごめんなさい。今はまだ言えないです」

「危ないことか?」

「それはないです」


多分。

と付け加えそうになったのを耐える。じゃないと「危険だから駄目だ」って言われるかもしれないからね。

心配かけたくないけどこれだけは譲れない。あとで怒られることになっても絶対に神様と対話したい!


「トワコがどうしてもやりたいことって始祖像に祈りを捧げること?」

「そう、ですね…。多分そうなると思います」


祈りを捧げて神様と対話するが正解だけど、それは言わずにシャルルさんの言葉に頷く。

すると目の前に二人の目が少しばかり細くなった。


「じゃあそれが終わったら交尾できるよね?」


あ、まずい。

そう思ったときには遅く、ニッコリと笑顔を作って例の約束を再確認してくる。

あの日……私が発情した日に言ったらしいあの言葉…!

神様の対話できるってことで、どんな質問をしようとばかり考えていたから忘れてた!

対話が終わったら交尾しないといけない…。だって私がわざわざ口にして約束してしまったんだから!

でもだからって全員揃ってる状態で言わないでほしい!


「あ、うぅ…」

「え、もしかして嘘だったの?」

「ち、違うよシャルルさん…! ちょっと恥ずかしくて…」

「照れてるトワコも可愛いけどさ、でも俺たちにとっても大事なことなんだよ」

「大事、ですか…? え、なにが…?」


恥ずかしくてまともにシャルルさんの顔が見れないっ…。

シャルルさんどころかレグも、左右に座ってる二人の顔も見れない。無理!


「まず順番ね。これはトワコが決めてよ」

「わ、わかった…! わかりましたっ」

「あと回数だけど、トワコの体力考えて十回ぐらいにしとこうってなったんだけどこれも大丈夫そう?」

「…………じゅ…?」


十回……え、なにが…?


「あ、もちろんトワコがイった回数ね」

「やっ、止めてッ!」


ドストレートは止めて! 本当に無理! 羞恥心で死ねる!

何でこの人たちは恥ずかしくないの!? あ、いやセトさんとアルファさんは照れ臭そうにしてるけど!

ううん、元からシャルルさんはこんな感じだったしレグもそうだ。

でも改めて具体的な話と回数を言われると聞きたくない! 恥ずかしい!

しかも十回もイけと!? 無理に決まってるじゃん!


「いやだった? じゃあ俺らが出した回数にしようか? うーん…少ないからもうちょっと増やしていい?」

「……すくない……? え? 意味わかんない…」

「トワコが恥ずかしがるから言わなかったけど、普通はその倍以上ヤってるよ? 始祖は違うの?」

「…一回が……普通だと思う……?」

「アッハハ! 無理だよ無理むり!」

「私こそ無理だよ…。そんな何回も……その…ほんっと無理っ…!」

「うーん、最初はまぁそうだとしても俺頑張るからさ!」

「いい…ほんとにいいです…! じゃないと死んじゃうっ…」

「死なせないから安心して」

「でも……ほんとに無理なんです…! 体力とかそういう問題じゃなくて…。始祖は一回とか二回ぐらいで十分なんです…っ」


そっちの知識は疎いけど、十回は異常な数字だとさすがの私でもわかる!

もちろん、十回もイけた試しなんてない。

恥ずかしさと具体的な数字を出された恐怖に顔から血の気が引いていくのがわかる。


「えー…。でも俺らからしたら少ないんだよ…? 痛い思いも辛い思いもさせないしちょっとだけ譲歩できない…?」


小首を傾げておねだりをしてくるシャルルさん。

私基準から考えたら多すぎるのかもしれないけど、彼らからしたらかなり少ないほうだと言う。

そんなことを言われると譲歩してあげたいと思うけど……思うんだけどやっぱり十回は無理だと思う!


「トワコ。最初につがいらしいことはできないと言って俺らはそれを納得してつがいになったよな」

「え? あ、うん…」

「だが交尾していいと言ったのはお前だろう」

「そ、そうなんだけど…」

「諦めていたのに許可が下りたんだ。我慢していた反動分を求めて何が悪い」

「そうは言ってもね、レグ…」

「たった十回程度ならトワコが壊れることはない。怖がる必要もない」

「うう…。無理だって…」

「俺らこれまでずっと我慢してきたんだよ? 少しぐらいご褒美くれない?」

「シャルルさん…」

「ああ、そうだ。かなり前に残していたアレを使わせてもらおうか」

「あれ?」

「何でも言うこと聞くと言っただろう」

「………っあ!」

「なら交尾は十回だな」

「そ、それは卑怯だよ!」

「卑怯? どこが? 正当な理由で正当な権利を行使しているだけだ。まさかこれすらも反故するのか?」

「こっ、交尾はするけど回数が問題だって言ってるじゃないですか!」

「そんな怖がらないでよトワコ。大丈夫、絶対に気持ちよくしてあげるから!」

「やだもう恥ずかしいからそんなこと言わないで!」

「あ…ごめんね…。交尾するって言われて嬉しくて色々勉強したし、ようやく本当のつがいになれるんだって思ったらつい…。でもそうだね、やっぱりトワコが大事だからトワコの気持ちを尊重するよ。な、王様」

「はー…。そうだな、一回でもお前と交尾できるなら俺らは我慢しよう。最初に比べて随分譲歩してくれたのはトワコだからな。ああ、もちろんやっぱり交尾はできないと言われても俺らは従おう」

「そうは言ってないよ! な、なんでそんな極端な…」

「じゃあちゃんと俺らと交尾してくれる?」

「そ、それは……約束したし…。私も嫌じゃないけど…っ。は、恥ずかしいからみんなとあまりこういう話はしたくないの!」

「でも話しておかないとトワコに無理させちゃうよ? ほら、回数の認識もこんなに差異があったし」

「だからって…!」

「ならば回数は決めず、トワコが気絶するか「止めろ」と言うまでにしよう」

「ああ、そうだね。わざわざ回数決めるよりそっちのほうがよかったな。それでいい?」

「わかったっ。わかったからもうこの話はこれでおしまい!」


交尾回数の認識の違いにこんなに齟齬があるなんて…!

恥ずかしいことは恥ずかしいし、できれば個人個人で話したかった内容だけどなんとかなったかな…?

恥ずかしくて最後のほうは勢いで色んなこと言ってしまったような気がするけど、とりあえず十回は免れそうかな?

気絶するまでって言葉はちょっと引っかかるけど、その前に止めてって言えばいいんだし大丈夫だよね。


「……」


シャルルさんとレグが隣に並ぶだけでも珍しいのに、交尾に関することも二人揃って同じ意見だった…。

怪しいと思うけど、なにが怪しいかまではわからない。

な、なんか怖いなぁ…。私、変なこと言ってないよね?

熱くなった顔を手で仰ぎながら横目でセトさんを見上げると、なんとも言えない表情で二人を見て小さく溜息を吐いていた。

………やばい、多分なんかやらかした…! もうなに言ったか覚えてないよ…。

だからってわざわざセトさんに聞きたくない…。ああ…どうしよう、交尾したくないよぅ…!


「じゃあ決まったことだし朝の運動行こうか!」

「はぁ…。ちょっと着替えてきます…」

「あ、俺がついて行きますね…!」

「お願いします、アルファさん…。はぁ…」


ただ交尾について話をしただけなのに朝から疲労感が半端ない…。

二人は気になるけどそれを聞くのも怖いので身体を動かして全てを忘れよう! 気持ちを切り替えよう!


「……本当に二人は性格が悪い」

「横やり入れなかったムッツリが何を」

「シャルルの甘えとレグルスの圧に負かされて困っている顔は見たくありませんでした。もっと穏便に話をまとめると言っただろう」

「穏便だったじゃん。回数無制限でいっぱいできるとか最高だよなー!」

「本来は五回とか言ってませんでしたか?」

「まぁあいつの体力的にもそれぐらいが妥当だと思うが、このガキが勝手に盛っただけだ」

「ああいうのは多めに言って、それから目的の回数に下げるのがいいんだよ。照れて混乱してるトワコのおかげでそれ以上の結果になったけど! あと認めたくないけどナイスアシスト入れてくれるじゃん、王様」

「五回も十回もふざけてるからな。発情してない状態での交尾する発言の言質もとったし十分だ」

「ですがトワコ嬢は確実に勘違い…いや楽観的に考えてますよ」

「そこがトワコのいいとこだよなぁ。気絶させなかったらいいだけだし、止めろって言われる前に口塞げばいいだけなのに気づかないなんて…はーもーほんっと純粋無垢で可愛い!」

「またそうやってトワコ嬢の優しさに付け込んで…」

「素直に感謝してほしいねぇ? タカ族だって五回なんて足りない癖に」

「それは……そう、だが…。それでも真摯にお願いすればいいではないか」

「止めなかったお前も同罪だよ。なぁ王様?」

「そうだな。だが番犬は気をつけろよ。理性を失ってトワコを壊す可能性が高い」

「……私から伝えておきます」

「最近耳とか首とか触ってるから感度もよくなってきてるし…マジで楽しみ! そこも感謝しとけよな!」

「ほんっとに性格が悪い」

「ともかくトワコの用事を無事終わらせるぞ」

「ついでにさっさとあのサルとアザラシも片付けて、なんの憂いなしに交尾したいもんな。チーター族との連携も大丈夫そ?」

「問題ない。使える戦力を集めつつ探させている。傭兵団を使えないのは惜しいがあのメスもこちらに向かっている」

「デーバたち相当やられたからなぁ…。まぁ十分な働きしてくれたけど」

「十分戦力を削いでくれた」

「今度会ったらお礼を言っておきましょう」

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