69.旅の道中にて①
私が彼らを求めているとバレて以来、シャルルさんとレグは隙あればキスしてくるようになった。
シャルルさんは私に抱き着いたり、膝枕してきたりととにかく甘える仕草が増え、軽いキスから深いキスまで様々な方法でスキンシップをとってくる。
レグは常に私を膝の上に乗せたがり、軽いキスはせず激しいキスをして私を誘惑してくるし身体も触ってくる。さすがにこれは止めてほしいとお願いした。不服そうだったけど。
この二人に比べて残りの二人は大人しい部類に入るけど、セトさんは隣に寄り添って色んな場所にキスをしてくる頻度があがり、逆に私からキスを求める熱い眼差しを向ける。なので私からキスをすると普段とは思えないほど激しく求められ、何度も呼吸困難に陥った。
アルファさんはようやく最近悲鳴をあげなくなって、手も繋げるようになった。キスはまだできないので私から頬にキスをしたりすると尻尾を出して喜び、強く抱き締める。そのあと謝るのまでがルーティンとなっている。
番らしく彼らに応えてあげれるし、求められるのも嬉しい。
ただそのせいで最近ではキスだけじゃ物足りなくなってしまっている自分もいる。
交尾…エッチしたいかと言われたら興味はあるけど、多分怖くて拒絶してしまう。
でもキスされるたびに熱が…欲が溜まっていく。
ようするにムラムラしてしまう…! しょうがないよね、私だってもう大人なんだから!
と言い聞かせるも、それを解消しようにもできないのが現在の大きな悩み。
「明日にはカカント国からリーデル国に入国できます」
「ここは通り過ぎるんでしたっけ」
「はい。リーデルは小国ですので一週間も走れば目的地のハイオットニー国です」
オヴェールさんの街から馬車で移動して一週間。旅も順調に進み、ようやく次の国へと行ける。
リーデル国は特に目新しいものもないので寄り道することなく目的地へと急ぐ。
馬車近くの焚火を囲い、夕食を食べながら次の国についてセトさんから色んなことを聞いた。
リーデル国は確かに目新しいものはないけど、上質な布を生産しているらしい。
寄り道しないって言われたけど、首都に行って私の服や下着、それから食料を買い込む予定だ。
そう、今まで服は買ってきたけど下着は買っていなかった…。
今の下着で十分だったし、何よりこの世界の下着はとても刺激的なものばかりで着るのに抵抗があるからだ。
だけど最近胸が苦しくなってきたし、ゴムも伸びてきた。胸が大きくなったんだと思うけど嬉しい反面ちょっと複雑だ…。
こんな女性店員がいない世界でどうやって下着を買うのか…。下着だけはちゃんと測ってサイズにあったものを買いたいのに!
「はぁ…」
「お口に合いませんでしたか?」
「あ、違いますっ。ちょっと別のことを考えてて…」
「なになに? 何か質問があるなら答えるよ」
「いや質問じゃないんですけど…」
なんとなくレグを見るとジッと私を見つめていたので慌てて目を背ける。
服のときみたいに絶対についてくるよね…。さすがに試着室まではついてこないと思うけど、下着となるとついて来てほしくないなぁ…。
そうは言っても彼らから離れないと約束しているし、私もできるだけ離れたくない。
「レグ…」
「なんだ」
「あの………なんでもない…」
「ハッキリ言え」
「街についたら言う…」
「…。下着を買う際もついて行くぞ」
「何でわかるのよ…」
「お前はすぐ顔に出るからな」
「可愛い下着選んであげるね」
「下着だけは私に選ばせて…」
彼らに選んでもらったらどんなエッチな下着を持ってくるかわからない!
露出の多い服はまだ許せる。似合ってないと思うけど、彼らが喜んでくれるし他のメスに比べたら全然少ないほうだから。
でも下着だけは! 下着だけは色々意識しちゃうからいやだ!
「トワコさん、少しジッとしてて下さい」
「え?」
どうやって断ろうか…。どうやってあの王様を説得しようか頭を抱えていると突然アルファさんが立ちあがって近くの草かげに向かって歩き出す。
もしかして魔獣かな?
「トワコさん、ウサギですよ」
「わー、可愛いですね」
「肉がうまいので明日の昼飯にしましょうか」
「た、食べないです、いらないです!」
数分もしないうちに戻ってきたアルファさんの手には茶色の兎。
暴れる様子もなく鼻をひくひくさせて可愛らしかったが、アルファさんは嬉しそうに短剣を取り出して殺そうとするので慌てて止めた。
「トワコ嬢、ウサギ肉は美味しいですよ」
「まだ食料もあるし大丈夫です! こんなに可愛いのに殺すなんて…」
アルファさんの腕を掴んで止めた際、兎から手を離したのでキャッチ。
よっぽどアルファさんが怖かったのか固まったようで腕の中で震えている兎の頭を撫でてあげる。
食料は十分にあるし、ウサギ肉にも興味がない。
だけど四人は残念そうな表情を浮かべていた。
地球でもこの四人の種族は兎食べるもんね…。でもダメ!
「野生とは思えないほどフワフワで可愛い。大人しいしペットとして飼いたいなぁ」
実家は父親が猫アレルギー、母親が犬アレルギーで飼えなかった。
でもペットを飼うのは夢だったから大人しく膝の上に座っている兎を見て癒される。
兎だけじゃない。犬も飼いたいし猫ちゃんも飼いたい。動物に囲まれて暮らしたい。
今も動物に囲まれてるけど、一応「獣人」だからね。
たまに獣姿になって癒しをもらってるけど、やっぱり小型の動物ならではの可愛さには勝てない。
「は? こんな非常食を飼ったところで役に立たないよ?」
「非常食じゃなくてペットとしてです。そう言えばこの世界にはペットっているんですか?」
「一応いることはいますが極少数かと…」
「そうなんですか? 犬も猫ももちろん兎も可愛いのに…」
「ト、トワコさんは犬のほうが好きですか…!?」
「可愛いですよね! 寄り添って甘えてくれる仕草とか最高です」
「……っ俺だってそれぐらいできますよ!」
「あ、兎が!」
兎に負けず劣らずプルプル震え、狼の姿になって近づいてくると大人しかった兎は私の膝を蹴って平原へと逃げていった。
もうちょっと触りたかったのに…。
「キューン…」
「……まぁいいか。アルファさんも可愛いですよ。大型犬みたいで最高です」
狼の姿で額を太ももに擦り付けてくるので頭を撫でると口を少し開けて目を閉じる。
「そうだ、今度ブラッシングしていいですか? やってみたかったんですよね」
「トワコっ、そんな奴より俺の毛づくろいしてよ!」
「でもシャルルさん…黒豹は毛短いし…」
「アルファだけズルい!」
「わ、わかりました。やりますから!」
「ならブラシも次の街で買うか」
「……レグも?」
「番は平等に。だろ?」
セトさんも見ると期待している目をしていたので頷くことしかできなかった。
四人のブラッシングはさすがに大変でしょ…。いやでもこれも番としてのコミュニケーションだ。
一度にはできないから日を分けてからにしよう…。
無意識に撫で続けていたアルファさんに目を落とすと気持ちよさそうに目を瞑って、太ももの上に顎を乗せていた。
うん、やっぱり犬は可愛い。シャルルさんとレグも大きな猫だと思えば…うん、可愛い。でも鷹のブラッシングってどうやるんだろう…。
「専用のブラシとかあるんですかね?」
「あるよ。そういうお店だってあるし、そこに行けば買える」
「じゃあ街についたらそこにも行きましょうか。……因みに私もマッサージ「許すわけないだろう」
「俺がいつでもマッサージしてあげるよ」
「そういうのはプロにお願いしたいのに…」
「俺もうまいと思うけど?」
確かにシャルルさんのマッサージもうまい。
歩いて旅をしてたときはよく揉んでもらってたし、それで翌日には回復していた。
でもなぁ…そういうお店があるなら全身を揉んでほしいじゃん? 絶対に無理だって解ってるけど一度ぐらい体験してみたい。
きっと頼めばシャルルさんならやってくれるんだろうけど……うん、またゲスいことを考えてしまった…!
もー…欲求不満か? 欲求不満なのか!?
あっちの世界にいたときも生理前とかにムラムラしたことはあるけど! でもここ最近本当におかしい。ずっとしてる。
一度ぐらいスッキリさせたほうがいいんだろうけど、一人になる機会なんてないんだよね…。いや一人になったとしても彼らは耳も鼻もいいから絶対にバレる。それだけは避けたい!
はぁ…。キス、控えたほうがいいのかな…。でも好きだしな…。
「トワコ?」
「……マッサージは大丈夫です。馬車で疲れてもないですしね」
「まぁまぁ、一度ぐらい体験してみてよ。マッサージに欠かせないオイルも買ってるしどう?」
「オイル?」
「血行がよくなって温かくなるよ。水浴び終わったらしてあげる。気持ちよく寝れるよ」
「…じゃあお願いしようかな」
「任せてよ。アルファ、トワコの水浴び手伝ってこいよ」
冬前であってもお風呂だけは欠かせない。
お風呂セットを取り出してアルファさんと近くの川辺に向かう。
この世界の川や湖はどこも綺麗だよね。
お風呂セットの中から沸騰石が入った布袋を取り出し、上流にセット。
すぐに熱湯が下流へと流れ、ちょうどいい温度のところに座って服を脱ぐ。
「これ本当に便利ですよね。ちょっと前までは水でもよかったんですけど、さすがに寒くてどうしようかと思ってたんです」
「そ、そうですか…! 温泉街でいい買い物しましたね…」
「はい。見たことのない便利道具ばかりでした」
後ろを向いて見張っているアルファさんと世間話をしながらできるだけ手早く身体と頭を洗う。
慣れたとは言え、周りに何もない中で裸になるのはやっぱり恥ずかしい。
アルファさんが見張ってくれるし、彼は絶対にこっちを見ないので安心だけど。
「よし。お待たせしました、アルファさん。大丈夫です」
「は、はい! ここは寒いので早く焚火に戻りましょう」
いつもの野宿だったら何かあってもすぐに動ける服に着替えていたけど、今回は馬車のおかげでパジャマで寝れる。
やっぱり寝るときはパジャマだよね。こっちのほうが睡眠の質が良くてしっかり寝れる気がする。
真っ暗闇の中、アルファさんと手を繋いで足早にみんながいる場所に戻ると、シャルルさんが桶を用意して待っていた。
言われた通りの場所に座るとセトさんがまだ濡れている頭を温風器で乾かしてくれて、シャルルさんは桶にお湯を張ってオイルを手に馴染ませる。
「なんか本格的ですね…」
「俺がプロにも負けないってとこ見てほしいからね。お湯は熱くない?」
「大丈夫です」
「オイルはちょっと冷たいけど我慢できる?」
「はい、お願いします」
足先はお湯につけたまま、冷たいオイルがふくらはぎを覆う。
絶妙な力加減で揉んでくれるその手つきはプロと言っても過言じゃない。
オイルの滑りもよく、次第に足全体がポカポカになって気持ちいい…。
「どう、トワコ。気持ちいい?」
「はー…最高に気持ちいいです。っふ…ちょっとそこはくすぐったいです」
「あ、ごめんね。じゃあ今度は足の裏いい?」
「はい」
再びオイルを足して足の指やその間に塗ってさっきより弱い力で揉まれる。
ツボらしきポイントを押されるとちょっと痛かったけど、気持ちよかった。
「ふふっ…! あはは、シャルルさん、そこくすぐったいです…」
「足の裏敏感だね。ダメだよ、逃げないで」
「アハハ! ダメですって、ほんとにくすぐったいんです! ふふっ!」
「くすぐったいってのは気持ちいいってことだからダーメ。もっともっと気持ちよくなってよ」
「ひゃぁ! あはっ、あははは!」
「シャルル、いい加減にしておけ」
「まぁいいから」
止めてと言っても止めてくれないシャルルさん。
気持ちいいけどくすぐったくて逃げようとするのにオイルのせいでうまく逃げれず、捕まって一番くすぐったい場所を揉んで、触って、爪で引っかかれ…。
次第におかしな気分になっていく。
「んっ…ふ…! や、やめて…ふふっ…」
「気持ちよさそうな声出てるよ」
「き、気持ちいぃけど…! んんっ…ちょ、ちょっともういいかなって…」
触られるたびに足がビクビクと跳ねる。
こ、これダメだ…。おかしくなる…!
くすぐったいのを堪えるため俯くといつの間にか内股になっていて急に恥ずかしくなった。
マッサージしてくれてるのにまた欲情してたっ…。
「もういい! 止めてシャルルさん!」
「残念。拭いてあげるからから待ってね」
「自分で拭くから大丈夫っ。私もう寝ますね」
これ以上触られると変なこと言いそうになる。
横に置いてあったタオルで適当に足を拭いて馬車へと向かう。
ああもう本当にどうしたんだろう、私の身体!
キスしかしてないのにこんなに欲情するものなの? 彼氏なんていなかったからわからないよ…!
「……でも気持ちよかったな…」
触られた箇所を自分で触っても何も感じないのに、好きな人に触られるとあんなにも気持ちいいんだ…。
シャルルさんだけだったら…もしかしたら続きを望んでいたかもしれない。
「寝よう。夜だからおかしな気分になるんだ」
布団を取り出してクッションに顔を埋めて無理やり目を閉じる。
じんじんと熱を帯びる足を擦り合わせるとお腹の奥が少しだけ疼いた。
✿
「あー、可愛かった。新しいネタもゲットできたしスッキリしてこよー」
「シャルル…。お前あのオイルに何が入ってる」
「あの花の成分が入った特製オイル。また発情したトワコが見たくてこの歓楽街で買ったんだよね」
「それは…大丈夫なのか?」
「あれぐらいなら感度あがる程度だって」
「そういうのよくないと思うぞ…」
「でも可愛い顔見れただろ? 感謝してほしいぐらいだ」
「そ、そうだけど…! トワコさん困ってたし」
「ほんっとトワコの発情した顔最高に可愛い! なんかキスするだけで感度あがってってるしあともうちょっとかなー…」
「嫌われても知らないぞ」
「トワコは優しいから嫌うかよ。それに王様が止めなかったってことは大丈夫ってことだろ?」
「お前の手でってのは不快だが問題ない」
「トワコ嬢可哀想に…」
「って言いながらずっと見てた癖に」
「ず、ずっとじゃない!」
「トワコ、開けるぞ」
「今日は一人で寝たいからダメ!」
「そうか」
「わー! ダメだって言ってるじゃないですか!」
「いくら馬車の中でも一人は危険だ。ああ、お前ら。トワコが出て来るまで絶対に開けるなよ」
「レグルス…駄目ですよ」
「ふっざけんなクソライオン! 絶対に手ぇ出すなよ!」
「さすがレグルスだな。いいとこばっかもっていく」




