67.5オス達の会話
「トワコ、寝た?」
「ああ」
「明日も体調悪いかもしれませんし薬用意しておきますね」
「じゃ、俺らもババ抜きで勝負しようぜ。アルファ、トランプ!」
「勝ったら明日の世話役な。ちょっと待ってろ、先に片付けてくる」
「……。お前らは始祖の能力についてどう思う」
「は? いきなりなに?」
「いいから答えろクソガキ」
「いい加減名前覚えてくれねぇかなぁ、呼ばれたくねぇけど。どう思うって普通に考えて危ないだろ」
「シャルルに同じく私もそう思います。数秒だけとは言え、獣人を意のままに操れるなんて知られたらトワコ嬢の取り合いになること間違いありません」
「俺もそう思う。特に北の王は欲しがると思うぜ」
「西大陸も南大陸も野心に溢れた国が多いからな。世界を巻き込むことになるのは目に見えて解る」
「始祖だってことも、その能力のことも知られたらまずいよなぁ…。こんなに可愛い子が激強能力持ってるだなんて信じらんねー! 今日の寝顔も可愛いっ」
「見るな」
「抱き寄せんな」
「あまり大きな声を出さないで下さい。しかしトワコ嬢がそのことに気づいていないのが危険ですね…」
「お花畑の世界から来たからな、仕方ない」
「俺らが気を付ければいいだけだって。ほら、カード配るぞ」
「つかさー、トワコが泣いたのって今回が初めてじゃね?」
「泣きそうなときはあったが…そうだな。レグルスも見たことありませんよね?」
「…まぁ」
「なにその含みある言い方」
「うるさい黙れ」
「色々我慢してたのが溢れちゃったのかなー…。俺らそんなに頼りないってこと?」
「うっ…。それを言われると心苦しくなるな…」
「アルファいっつもトワコに迷惑かけてるもんな。世話もまともにできねぇし」
「ど、どうしても緊張するんだ…」
「トワコ嬢に泣かれたとき、生まれて初めて頭が真っ白になった…」
「俺も。あー……でもさ、帰れないって言ってたじゃん? そっちに意識向いてて内心かなり喜んでたんだよなぁ」
「「「……」」」
「トワコ前にも帰りたいって言ってたし、多分帰れる方法があったら帰ってたと思う…。だから帰れないってわかってホッとしたっていうか…すっげぇ嬉しかった」
「それはまぁそうだが…」
「トワコさんには絶対言えないよな」
「あとさー、八つ当たりしてごめんなさいって謝るトワコも可愛かったよな。涙流して本音言ってただけなのに八つ当たりだって!」
「レグルスを殴ってごめんなさいって言ってましたね」
「ああ。殴ってるつもりだったらしい」
「可愛いよなー! 他のメスなんか血が出るまで殴ったり、踏みつけたりするのにさぁ! 因みにセトの姉はどうしてた?」
「一度だけ違反者の首を落としてたな。それ以外の軽い罰なら鞭打ち、食事なし、牢屋行き、他のオスによる制裁があったはず」
「アッハハ! トワコには絶対無理だ!」
「トワコさんは優しいから…。そ、そういうところが見てて癒されるけど…!」
「俺としてはそれぐらいの気の強さはあってほしいがな」
「無理でしょー。俺と王様が言い争ってるだけで焦って止めようとするぐらいだぜ。焦ってるトワコも超絶可愛いし、もっと困らせたくなるけど嫌われたくないしなー。あと罰則作っても絶対ぇできねぇ」
「困らせるのはどうかと思うが、そのままどうぞお好きに。その分私に頼って甘えてきてくれるので問題ない」
「うわ、でたよセトのムッツリ」
「これのどこがムッツリだ。そもそも私はムッツリではない」
「服のセンスで解るっつーの。アルファはそのままでいてくれよな。お前までトワコに慣れたら減る」
「へ、減るってなんだよ…」
「色々」
「ハッ。弱者はいつも大変そうだな」
「うっぜー。英雄だからって調子乗ってられんのも今のうちだぞ。あ、クソ。ババきちまった」
「言ってろ。クソガキにやられるほど俺は弱くない」
「すっかり忘れてたけどさ、ディティ本山に行ったらトワコの言ってた用事が終わったってことだよな」
「まぁそういうことになるだろう。それが?」
「いや、あの花の匂いで発情したときあったじゃん。そのときに用事が終わったら交尾してもいいって言ってたの思い出してさ」
「そッ…!」
「びゃ!」
「ああ、言ってたな」
「あれって発情するのも本当だけど、自白効果もあったよな」
「そ…そうだな…。そういう目的でも使われてる…」
「どっちにしろ判断能力の低下を促す作用がある」
「ってことはあの時トワコが言ってたことって全部本音ってことだよな!?」
「…」
「ひゃああ! や、止めろよシャルル…!」
「トワコに好きって言われたことはあるけど、キスしたいとかハグしたいとかって言われたの初めてだからさー! ああ、ようやく俺を受け入れてくれたんだって思ったら………マジでさっさと交尾したい…! 交尾して俺の匂いつけたい…ッ。俺のだって安心したい!」
「用事が終わるまで我慢だな」
「さっさと終わらせようぜー…」
「……因みに、誰が一番最初に…するんですか…?」
「俺でしょ」
「俺だ」
「は?」
「あ?」
「俺は無理…」
「俺が最初の番だから俺に決まってんだろ!」
「クソガキが相手だとトワコに負担かかるだろうが」
「はぁああ!? どう考えてもお前との体格差のほうが負担だろうがッ」
「うー…」
「トワコ、どうしたの? お腹痛む?」
「喉乾きましたか?」
「まだ朝じゃないぞ」
「……トイレ…」
「抱えてあげようか?」
「だいじょうぶぅ…」
「ほ、本当に大丈夫ですか? 俺ついて行きますよ」
「んー…」
「だから静かにしろって言ったんですよ」
「悪い…」
「こいつがうるさいせいだ」
「また俺のせいにしやがって…。あーやめやめ! 起こしたくないし違う話しようぜ」
「トワコさん、フラフラしてますけど本当に大丈夫ですか?」
「うーん…。おやすみ…」
「ゆっくり休め」
「うん…」
「ぽやぽやトワコも可愛いなぁ! 起きたと同時にお世話したいのにやらせてくれないのが残念すぎる…」
「寝起きの顔を見られるのが嫌と言ってたな。トワコ嬢は綺麗好きだから仕方ないが、私も残念だ」
「気にしなくていいのに。にしても始祖ってこんなに寝るもん? 大体八時間ぐらい寝てない?」
「平均はそれぐらいだが、疲労が多いともっと寝ている。見た目は俺らと変わらないが中の仕組みが違うんだろう」
「…ディティ本山に行けば始祖について色々知れるよな」
「どうだろう」
「トワコさんもディティ本山に何かあると思ってるから行きたがってるし、そうなんじゃないか?」
「そう思ったらできるだけ早く行きたいよな」
「ルルヴァを捕まえてからだ。あと偵察も忘れるな」
「うっせぇ、解ってるっつーの。でもちょっとの薬とかお香だっけ? あれを間違えるとすぐ体調壊すじゃん? 間違えるの怖くね? 早く始祖について知りたいんだが」
「それは私も思っていた。できるだけ体調を崩すことなく、薬も飲ませないのが一番かもしれない」
「健やかであってほしい…」
「健やかって言い方なんだよ。トワコの父親か」
「そ、そんなたいそうなものじゃない。ただ元気で、いつも笑っててくれたらそれで…。た、たまに俺に微笑んでくれたらそれで幸せなんだ」
「アルファの言う通り」
「とか言ってムッツリ軍人はそんなトワコにすぐ興奮して抜いてる癖に」
「な、何故それを!?」
「は? お前マジで抜いてんの?」
「…ッ貴様!」
「いっで!! おいタカ族の握力で頭掴むな!」
「お、俺はまだ抜いてないからな!」
「聞いてねぇよ! つか別に怒ることじゃねぇだろ! 健全なオスだったらみんなそうしてんじゃん!」
「貴様を殺してトワコ嬢から罰を受けるッ…!」
「淫らな?」
「クソガキ…! 殺すッ!」
「うるさい黙れ。殺すなら外でしろ。トワコが汚れる」
「これだから堅物軍人のムッツリって言われんだよ。普通だって言ってんだろ。俺だってほぼ毎日トワコで抜いてんのに何でそんなに怒ってんだよ」
「貴様が余計なことを言うからだろう!」
「駄犬」
「はぁ…。おい二人ともいい加減にしろって。トワコさんが起きるだろ」
「よーしアルファ、そのままそいつの首根っこ掴んでろ!」
「離せアルファ!」
「んんー…!」
「おい」
「「……」」
「れぐー…?」
「どうした」
「…ぎゅーしてー…」
「ああ」
「あいあとぉ…」
「マジで羨ましすぎて殺したいんだけど」
「それには同意する」
「レ、レグルスは凄いな。何であんなに普通でいられるんだ?」
「お前がヘタレなだけだろ」
「いい加減慣れたどうだ。アルファの悲鳴を聞くたびトワコ嬢も困ってるぞ」
「わ、解ってるんだけど…! 解ってるんだけどあの顔とあの声で名前呼ばれるとどうしても嬉しくて恥ずかしくて…。どうしたらいいかわかんないんだよぉ…!」
「めちゃくちゃ解るぜ、アルファ。一気に幸せになるよな! なんかもうずっと俺だけ見ててくんねぇかなーって」
「そのトワコさんが他のオス見ると相手を殺したくなる…。触れないように手を切り落として、近づかないように足を切り落として…。ああ、トワコさんを見ないように目もくり抜いて、耳も…。あと鼻も駄目だよな…うん。そ、それでも不安だから許されるなら部屋に閉じ込めていたい…」
「……普段のアルファでは考えられないぐらい過激派だな。トワコ嬢には言わないほうがいい」
「えッ!? そ、そうかな…。そ…そうだよな、トワコさんが驚いちゃうよな…! 戦場育ちだからついガサツなこと言ってしまった。トワコさんには言わないでくれ」
「ガサツですむか? まぁ前半はどうかと思うけど、後半には同意。さっさと用事終わらせて安心できる住処に行こうぜ」
「安心して住める場所となれば…。やはり王国? 姉上も喜ぶしレグルスの権威もそこそこ使えるでしょう」
「王国が一番だがトワコの意見次第だな。海が好きならハイオットニーでもいい。温泉も気に入ってるしトワコに任せる」
「あとどんな家に住みたいかなー。お金もっと稼いでたほうがいいよな」
「手持ちのお金も少なくなるばかりだから次の街や村で稼ぐか?」
「レグルスはまだありますよね」
「問題ない。屋敷ぐらい買える」
「たくさん贅沢させてあげたいし、色々買ってあげたいから次の街で金稼ごうぜ」
「だな。俺とシャルルで稼いでくるから任せてくれ」
「は? セトと王様は?」
「これでもまだ軍人なので冒険者ギルドは登録できない」
「必要ない」
「うわ、そうだった…。よし、俺いっちばん!」
「私は二番」
「あー…レグルス、俺もあがった」
「たかがゲームで世話役を決めるなんて馬鹿らしい」
「お前負けるとそういうよな。でも決まりだから明日は俺とセトメインな!」
「俺はその手伝いだな、任せてくれ」
「もう寝ますか?」
「いや、眠くない。本でも読むから好きにしろ」
「最近ずっと読んでるよな。なに読んでんだ?」
「各国のメスの扱い方について」
「おまっ、いつの間に!」
「時間の使い方を知らないお前が悪い」
「いちいち嫌味うぜー! だからトワコと一緒に寝ても意識飛ばないのか!」
「それは関係ない。主に交尾についてだ」
「…俺もそれ読みたい」
「レグルス、いつの間に…」
「すげーな…。俺読めない…」
「お前らは少しでも読んで耐性つけておけ。この間トワコが発情したとき役に立たなかっただろ。それと隣部屋のメスの鳴き声聞いて動けなくなるのもどうかと思う」
「…それは…申し訳ない…」
「悪い…」
「トワコの耳が鈍感でよかったな。てかさー、不思議なんだけど何で花畑で発情したんだ? ヴェールをとってたとは言え、マリッジリングがあれば防げるだろ?」
「知らん。始祖だからそれが適応してなかったかもしれないし、そもそもトワコ自身が自分の意思で吸いたい、発情したいと思ってたから防がなかったかもしれない」
「え、やっぱりトワコって俺と交尾したかったってこと?」
「シャルル。……もしかしてだが、ストレスで弱っていたから甘えたいとかで無意識に吸ったかもしれない。アルファの加護を使えばより敏感になって吸えるだろう」
「そんなまさか…。トワコさんは交尾の話とか苦手だし、キ、キスも照れるからできないだろ」
「可愛くてあんな色っぽいトワコが見れたからどうでもいいよ。めちゃくちゃ気持ちよかったし、可愛かったからマジで交尾したかったなー」
「殺すぞクソガキ」
「俺が一番だからいいんだよっ」
「何回目ですか、口喧嘩は止めて下さい」
「いつもあんな感じで甘えてくれたらいいんだけど、まぁトワコには無理か。今のままでも十分可愛いけど」
「でも甘えるトワコさんは新鮮でよかったな…!」
「ほとんど悲鳴あげてたお前がなに言ってんだよ。つか覚えてんの?」
「も、勿論だ!」
「押し倒したこと俺忘れてねぇぞ」
「ぐっ…。理性が飛んだのは反省してる…」
「気持ちは解るがな」
「腰抜かしていた癖に何を偉そうに」
「レグルスッ」
「え、なに。腰抜かしちゃってたの? そうだよな、ムッツリには過激だったよな! あんときのトワコはめちゃくちゃ可愛かったし、積極的だったし、潤んだ目で求められたらそうなっちゃうよな!」
「黙れ」
「っで!」
「おい止めろって。またトワコさんが起きるだろ」
「あーもう最悪! 何回鷲掴みにしたら気がすむんだよ!」
「お前の頭を潰すまでだ」
「こっわ! トワコに嫌われてしまえ」
「お前こそ本能の赴くままトワコ嬢に迫るのは止めろ。困ってるだろ」
「お前ができないからって僻むんじゃねぇーよ! 俺、次の街の情報集めてくる。ここにいたらムッツリに殺される」
「貴様が余計なことばかり言うからだろうがッ…!」
「あー、じゃあ俺も行く。ディティ本山の情報も聞いとこう」
「だな。じゃ、トワコよろしくー。手ぇ出すなよ」
「早く消えろ」
「怖い怖い」
「もー、止めろよ…。シャルルも学習しろって」
「……別にあのガキの肩を持つわけじゃないが、耐性はつけとけよ」
「解ってますよっ…! どうして貴方達二人はそう平然としてられるんですか…」
「番を求めて何が悪い」
「そうですけど…」
「……。こいつに出会うまで人生なんてどうでもよかった。突然変異のこの力を恐れるくせに頼ってくる貴族連中が反吐が出るぐらい嫌いだった。いいように使われた挙句、邪魔になると思った兄弟に殺されかけるのも腹が立って仕方なかった。それを私利私欲のために利用してくる父親にも」
「ああ、数年前に兄弟殺ししてましたっけ。珍しいことではありませんがいい気分にはなれませんね」
「それすらも解らなかった。怖がって近づいてこなかったのに英雄と呼ばれ始めると手の平を返して擦り寄ってくるメスも嫌いだ。どんなメスにも特別な感情を持ったことがない。どれも同じに見えたのにトワコだけは違った。始祖だから最初は惹かれたが、欲しいと思ったのはトワコの中身を知ってからだ」
「解りますよ。一目惚れであっても彼女の性格を知るとそれ以上の愛が生まれるんですよね」
「だから欲しい。どうでもいい人生に意味をもたらしてくれたトワコが欲しい。だから求める」
「まぁ…。頑張って訓練します」
「そうしてくれ。使いものにならない番はトワコに必要ない」
「そうですね、精進します」
「シャルルはさ、何であんな積極的にトワコさんに触れるんだ? こ、交尾もしたいってよく言えるな…」
「だってトワコのこと好きだし?」
「それだけか?」
「……誰にも必要とされてない、価値がないと思ってた俺に生きる意味を与えてくれたんだ。ゴミを見るような目で見てくる奴しか見たことなかったけど、トワコは俺を求めてくれた…。俺に助けてって言ったんだ。必要とされるってこんなにも嬉しいんだなぁって…」
「お前も色々大変だったんだな…」
「戦場に捨てられるか、駒として使われるかなんてこの世界じゃ普通だろ」
「普通かもしれないが大変なのは変わりない。俺には仲間がいたがお前は独りで……」
「おい、気持ち悪ぃよ! 同情すんな」
「あ、ああ…。すまない。……でもそれであってもあんなに積極的にはなれないぞ?」
「あー…だから不安なんだよ。必要とされなくなった瞬間、捨てられるんじゃないかって。俺、捨てられたらマジで死ぬ自信しかない」
「それは俺もだ」
「だから番になりたかったし、番になったら交尾して子供産んで俺から逃げられなくなってほしい。それとトワコって押しに弱いからそのうちコロッと許可出そうじゃん」
「あまりトワコさんを困らせるなよ…」
「あと交尾って一人でするより気持ちいいらしいぜ。普通にそれが気になる」
「びゃぁ!」
「うるせぇ。もういいだろ、さっさと仕事終わらせようぜ。あ、そういう耐性つけるためにこいつらと関係もったら?」
「も、もつわけないだろう! そんなのトワコさんに失礼だ!」
「チッ」




