62.ゼメルへ②
「うわー…すっごい景色…!」
温泉街を出発して中間地点のレベベ街で食料を調達し、その一週間後には目的地の歓楽街ゼメルに到着した。
とは言ってももう少し先なのだが。
ゼメルの正面には連なる山脈の絨毯のように大量の花が咲き乱れていた。
紫色の見たことのない花の絨毯。統一された美しさに思わず感嘆の声が漏れる。
その光景を一望できる場所でそれを見下ろして眺めていると、シャルルさんが一つの山を指す。
「あれがゼメルだよ。あの山の中に街が入ってるんだ」
私の目では確認できないけど、連なる山脈の一つにゼメルに入れる門があるらしい。
ゼメルに入るにはこの花畑の中を通らないといけない。
そんなの最高にいいじゃん。もっと近くで見たいし、花畑を歩きたい!
今にも走り出しそうな私をレグが腕を掴んで引き留める。
「ひ、一人では行かないですよ…?」
「当たり前だ。それよりこれをつけろ」
「…ヴェール?」
大きくて武骨な手に似合わない白いヴェールを見せられる。
不思議に思いつつ受け取ってつけると少しだけ視界が悪くなった。
せ、せっかくな綺麗な景色が…!
「レグ、これじゃあ綺麗な景色が台無しだよ」
「ダメだ。中に入るまでつけろ」
「トワコ嬢。あの花の匂いは嗅いだらいけません」
「え…? な、なんで? 毒があるとか?」
「えっと…あれは……」
「ムッツリなんだから説明できないだろ。トワコ、あの花は強制的に発情させる匂いを出すんだよ」
「うえっ!?」
「マリッジリングがあれば多少は大丈夫なんだけど、トワコは他のメスとは違うでしょ? だから少しでも防ぐためにそれが必要なんだ」
「そうなんですね…」
「そ、それと…あの街に向かう番のいないオスが多いので顔は隠しておいたほうが…!」
「マリッジリングがないオスはどうなるんですか?」
「発情してるだろうね」
「な、なんでそんな危険?な花があんなに…?」
「発情させて意識と理性を低下させ、街の利益に繋げるためだ」
露骨だ。露骨すぎる…! でも合理的。
変に納得しながらヴェールが取れないようしっかりと頭に装着。
アルファさんの話では野良も多く出るって話だし、久しぶりにメスだってことを隠さないと!
綺麗な景色なのにそんな効果があるとは…。もったいないなぁ。
「ヴェールがあれば本当に大丈夫ですか?」
「はい。それは感染予防のために縫われた特別なヴェールですので取らない限り大丈夫です」
「マリッジリングでも防げるんですよね?」
「自分の意思で嗅ぐことができるんだよ。俺は別に発情してくれても構わないけどね」
「気を引き締めます!」
「ちぇー」
これも妊娠同様、自分の意思で調整できるらしい。
改めて思うけどマリッジリングって魔法道具みたいですごい便利だ…。
どういう原理なのか知りたい。説明されても多分理解できそうにないけどね。
再度ヴェールを確認して花畑に続く道を踏みしめた。
✿
「私の足が遅いせいでごめんなさい…」
「気にしないでよ」
約一週間も歩き続けているせいでいくら休んでも完全回復せず、日に日に歩くペースが遅くなっていた。
ゼメルまであと少しのところなのに疲労と足の痛みで野宿になってしまい、就寝スペースと夕食の準備に取り掛かってる四人に謝る。
いつもなら抱えて運んでもらうのだけど、それだとメスだとバレる可能性が高いので限界まで頑張った。でもダメだった…!
痛む足を揉んで癒してくれるシャルルさんは言葉通り気にしてないようで、楽しそうにマッサージを続けている。
他の三人も気にしていないけど申し訳ない気持ちでいっぱいになる…。
本当だったら既に到着してゆっくり休めたのになぁ。
「どちらにせよ夕方からは入れないので野宿になってました。門の前にはたくさんのオスが野宿してるので寧ろよかったです」
「そうなんですね。ならちょっと安心…」
「むさ苦しい奴らがトワコに群がって来るとか気持ち悪すぎる。街の前で争いごとして目つけられるのも嫌だしね」
「理性を失った奴らも多いからな。ともかく今日はしっかり休め。どうせ明日は街に興奮して歩き回るだろう」
「ふふっ、多分そうなると思います。でも離れないよう気を付けますね」
「あそこじゃ手繋げないしほんっとーに気を付けてね!」
「はい」
例えメスだとバレたとしても問題ないけど、何が起こるか解らない。
細心の注意を払いつつセトさんが用意してくれたスープを食べる。
温泉街でも美味しいものたくさん食べたけど、セトさんの料理もやっぱり美味しい。野宿であっても美味しくて温かいものが食べれるなんて贅沢だよね。
簡易的に建てられたテントもあったかいし、クッションや布団もある。キャンプみたいで楽しい。
「ふわぁ…」
「トワコ眠い?」
「うん…。やっぱり体力の限界だったみたいです…」
温かいご飯で胃袋から温まると次第に眠気に襲われる。
欠伸をする私から空の食器を受け取り、声をかけてきたシャルルさんに返答をするとレグに担がれてテントに運ばれる。
「レグも寝るの…? 今日はまだ早いよ」
「俺が添い寝したいんだ。気にするな」
野宿のときは必ずレグと一緒に寝る。他の三人も文句は言わない。
私も安心だし、温かいから一緒に寝てくれるのは嬉しいけど今日はいつも寝る時間よりかなり早い。
獣人は人間より睡眠時間が短い。だからこんなに早く横になっても寝れないのに…。
「安心して休め」
「うん、おやすみ…」
寝床まで連れて行ってもらい、ヴェールを外して横になるとさらに強い眠気に襲われる。
布団の上からレグの外套をかけられ、じんわりと広がる温かさを感じながらレグの鼓動を子守歌にする。
「(そう言えば温泉街を出てからキスもスキンシップもほとんどしなくなったな…)」
デートをして親睦が深まったはずなのに五人になるとお互い牽制しているのかどうなのか解らないけど不用意に触ってこなくなった。
前までそれが普通だったし、そうしてほしかったのに今は少し寂しいと感じてしまう。
本音は皆とキスしたい。でもそう言える度胸もない。
そんなことを考えているうちに意識は遠のいていった。
「トワコ寝た?」
「うるさい」
「やっぱり疲れてたんだなぁ。足震えてたし背負ってあげたかった」
「うるさいと言ってるだろ」
「というか王様さ。トワコと一緒に寝て大丈夫? 一緒に寝ると気持ちよくて寝入っちゃわない?」
「お前らと一緒にするな」
「でもトワコの胸柔らかいし、いい匂いするしぐっすり寝れるじゃん? なぁセト」
「そうだな。あまり深く眠らないうえに短時間しか必要としないがトワコ嬢と一緒に寝るといくらでも寝れる気がする」
「緊張して寝れないと思ってたのにいつの間にか俺も寝てた…。やっぱりレグルスみたいな英雄となると俺らとは違うんだな」
「アルファは番犬だろ。ちゃんと仕事しろっつーの」
「それは本当に悪いと思ってる…」
「仕事もできん奴は番を解消するに限るな」
「そーそー。ディティ本山に行けば番解消できるらしいし」
「そ、それだけは勘弁してくれ…!」
「シャルル、アルファで遊ぶな。レグルスも一度言ったことを違えようとしないで下さい」
「シャルルはトワコと付き合いが長いし、一緒に旅してきたんだろ? どうしてたんだ?」
「その時のトワコは警戒心強かったし一緒に寝てなかったよ。それに一人だったから周囲も警戒しないといけねぇもん」
「大変だったんだな」
「そのせいで色々ヘマしちまったけど」
「ならお前もついでに番解消してこい」
「俺がいなかったらトワコと出会えなかったくせに偉そうにすんな」
「実際俺は強いし偉い」
「元王様で今はただの貴族だろ」
「まだ軍には所属しているから無法者のお前よりマシだ」
「うげっ、マジかよ。ってことはセトも?」
「身元はあったほうがいいと姉上に言われたからな」
「マジかよ。アルファ、お前はただの平民だよな」
「ん? おお、間違いない。父親も普通の平民だったはずだ」
「母親は?」
「さぁ?」
「まぁ母親のこと詳しく知らないよな。俺も見たことねぇや」
「そう言えば元貴族だって言ってたっけ。どっちが貴族なんだ?」
「知らねぇけど多分両方っぽい。詳しく調べたわけじゃねぇけど…っつかさっきから風強すぎねぇ!?」
「トワコさんは大丈夫?」
「問題ない」
「レグルス、暇なら本でも持ってきましょうか?」
「…そうだな。暖炉代わりにしながら読むとしよう」
「トワコ嬢を暖炉呼ばわりするのは止めて下さい」
「俺ちょっと周辺と街調べてくるわ。アルファも行くぞ」
「ああ、行こう」
「では私は周辺の警戒をして来ます。レグルス、何かあったら呼んで下さい」
「解った。問題起こすなよ、クソガキ」
「俺のことクソガキって言うの止めろって言ってんだろ!」
「いいから行け」
「あーもうほんっとこの王様嫌い!」
「まぁまぁ落ち着けシャルル。そうだ、トワコさんと作ったクッキーでも食べるか?」
「食う!」
「だからクソガキだって言ってるんだ。―――おい、どうした?」
心地いい声とともに、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。
夢か現実か解らないふわふわとした感覚が気持ちよくて目を開けると、レグが首を傾げて私を見つめてくる。
なんだろう。頭がうまく回らない。
でも感じたことのない高揚感と徐々に早くなる鼓動に息が荒くなっていく。
「レグ…?」
「ああ、風が強くて起きたか」
「……レグー」
「どうしたトワコ」
大好きで愛しい番が目の前にいる。
風のせいで起きたのかと勘違いしたレグは自分に引き寄せ、温めてようとしてくるのでそれに応えるよう抱きしめ返すとレグの鼓動が少し強まった。
気持ちいい。レグの匂いも体温もその気遣いも。
嬉しいという気持ちがすぐにいっぱいになって抱きしめる力を強めると困惑するかのように名前を呼ぶ。
名前を呼ばれるだけで嬉しい。もっと呼んでほしい。もっと強く抱き締めてほしい。もっともっと…!
「レグ、ちゅーしてぇ…」
「は? おいトワコ」
「今日も昨日も…街を出てからちゅーしてないぃ…。なんでぇ…?」
「……あの花のせいか…」
溜息を吐いて引き離そうとされ心が痛んだ。
離れてほしくない。いっぱい触ってほしい。キスしてほしい。キスしたい。触ってほしい。嫌だ嫌だ嫌だ!
「おいッ」
「ちゅー」
レグの真似をするように唇を重ね、口を開けてほしいと舐めるとゆっくりと開けてくれる。
大きな口の中には鋭い牙。怖いはずなのにそれが可愛く見えてペロリと舐めると少し痛かった。
でもその痛みさえ気持ちよくて逃げようとするレグの両頬を掴んで自分の舌を入れてみる。
どうしたいいかなんて解らない。ただ夢中にレグの舌を舐め続けると下手くそと言わんばかりに絡んできた。
気持ちいい。ずっとキスしていたい…。もっと欲しい。もっと強い刺激が欲しい…!
「んんっ…! レグ…れぐぅ…! もっと触って…気持ちいいの欲しいぃ…」
「もう駄目だ」
「やだぁ! だって苦しいもんっ…。気持ちいいのが欲しいのになんでぇ…?」
「ああクソッ! こんなとこじゃなきゃとっくに叶えてやってる。おいセトッ、戻って来い!」
ああ可愛い。私の番が困ってる。格好いいのに可愛くて食べたくなる。
困らせたい。理性と本能の間で抗ってるレグをもっともっと困らせたい!
レグの色んな顔が見たい。好き。大好き。触りたい。キスしたい。―――キス以上のことがしたい。
「どうしま……トワコ嬢?」
「睡眠薬出せ!」
「は?」
「セトさんだー! セトさんちゅーしてぇ」
いつの間にか両腕を掴まれ拘束されていた。
キスしたいのにさせてくれず寂しくなったけどテントに入って来たセトさんに嬉しさがまた溢れ、加護を使ってレグを振り解く。
レグとは違う身体付き。でも安心するのは変わらないたくましい身体。
飛びついたのにセトさんは倒れることなく抱き締めてくれた。
好き。優しい。大好き。可愛い。
真っ赤になったセトさんに語彙力のない感想だけが脳内を巡り、返事をする前に自分からキスをすると尻餅をついた。
少し唇を離してどんな表情か確認すると、想像通り顔を真っ赤にしていた。
「セトさん可愛い…。ちゅーしよぉ!」
「トワッ、え、いや…! な、なんですかこれ!」
「花の匂いに当てられたらしい。おい、離れろ」
「レグはイヤっ。ちゅーしてくれないのやだ! セトさんはしてくれるよね? ね、いつもみたいにたくさんキスして…。いっぱい触ってほしいな」
「う、っぐ…!」
「おいセト。止めるのが先だ。こいつの本望じゃないのは解ってるだろ!」
「す、すみません…。力が抜けて…!」
「だからあのクソガキに遊ばれんだ。トワコ、セトから離れろ」
「やぁだぁ! セトさんとちゅーするー! セトさん、したくないの? 私いっぱいしてほしいのに…」
「そんなことはッ! で、ですが今は…その…」
「じゃあ触っていい?」
「レ、レグルスッ!」
「おいたが過ぎるぞトワコ」
セトさんがしてくれるみたいに額、目元、眼帯、唇とキスをしているとレグに持ち上げられ引き離された。
「セトさんかぁいい…。レグがキスしてくれるの…?」
「今日はもう大人しく寝ろ。セト、早く睡眠薬持って来い」
「す、すぐに…」
「レグとちゅーして、セトさんに触ってもらってぇ…。レグゥ…好きぃ…。大好き、ずっと一緒にいたい…」
「はぁ…。できれば発情していない状態で言ってほしいものだ」
「ちゅー気持ちいいの。いっぱい欲しい。レグ、お願い。好きなの…気持ちいいのほしぃ…ダメ…?」
「お…ッ前が恥ずかしいとか言って拒絶するしそれ以上したら怖がるから控えてやってるんだろうが…!」
抱き締める力が増して悲鳴が漏れるとすぐに力を弱めてくれる。
でも何でだろう。痛みが気持ちいいなんて初めてだ…。
「んっ…。んっふふ…! ちゅー気持ちいいねぇ…」
「レグルスすみません。遅くなりました!」
「少量にしとけよ」
「解ってます。トワコ嬢、これを飲んで下さい」
黄色の錠剤と水が目の前に出される。
睡眠薬なんて必要ないのに何で飲まないといけないんだろう。
そんなことより皆とキスしたい。触りたいし触ってほしい…。
それに二人にしかキスしてない。番は平等なのにダメだよね!
「トワコ嬢…?」
「いらない。シャルルさんとアルファさんは?」
「呼ぶな」
「シャルルさーん! アルファさーん!」
「おいッ!」
「いけませんトワコ嬢!」
「ふふふ、ちゃんと二人にもチューしてあげるね」
平等にね、平等に。
抱っこされてるからレグにもセトさんにもすぐキスができる。
触れるだけじゃ足りない。舐めたい。舐められたい。
背中がゾクゾクするような深いキスがしたい。キスされながら身体を触ってほしい。
レグは怒りつつもちゃんと舌を絡めてくれるし、セトさんも薬を飲ませようと説得しつつキスはしてくれる。
嬉しいなぁ。幸せだ…。
そう感じているのに、満たされるそばから次が欲しくなる。
「トワコッ、どうしたの!?」
「呼びましたか!?」
「……あ? お前ら何してんの…?」
「ひゃああ!」
「シャルルさん、ちゅーしたいの。レグ、降ろして」
「駄目に決まってるだろ」
「す、すまないシャルル…。トワコ嬢が花の匂いで……」
「…風が強かったせいで? まぁいいや。トワコが望むならいっくらでもキスしてあげる。おい、トワコを離せよ」
「本人の意思じゃないだろ」
「じゃあなんでお前らはキスしてんだよ。おまけに発情しきってんじゃん。トワコの要望に応えなかったらここまで発情しないって知ってるだろ」
「シャルルさん、いっぱいちゅーしてぇ! 気持ちいいのほしぃ!」
「うん、いいよ!」
やっぱりシャルルさんは私の味方だ!
レグから無理やり降りるとすぐに抱き締めてくれて、いっぱいキスしてくれた。
キスされながら耳や首を触られると自分でも聞いたことのない声が漏れた気がする。
気持ちいいことしか考えられない。触られる場所全てが気持ちいい。身体が震えてもっと強い快感を得ようと一生懸命に舌を絡めて欲を求める。
「ふわぁ…」
「かっわいい! このまま交尾していい?」
「……気持ちいいならしたい」
「気持ちよくして「クソガキ、調子に乗るなよ」―――邪魔すんなって言ってんだろ…!」
「二人ともトワコ嬢を挟んで喧嘩はしないで下さい。トワコ嬢、お願いですからこれを飲んで下さい…!」
「アルファさんにもちゅーしないと!」
「おおおお俺はいいですぅ! や、やめてください…。こっち来ないでくだっ、ください!」
「逃げたら嫌いになるよ」
「や、やぁ…! 無理ですぅ…! セ、セト助けてくれ!」
「お前らばっかキスして俺がするのはダメって横暴にも程があるだろうが!」
「花の匂いに当てられて理性を失ったトワコを襲って楽しいか? それともクロヒョウ族は理性より本能が強い種族なのか? それなら駒として扱われる理由も納得だな」
「自分のこと棚上げして言う台詞じゃねぇし!」
「ここで暴れないで下さいっ!」
「アルファさんにもキスしてあげる」
こんなに格好いいのにセトさんみたいに可愛い。ううん、セトさんとは違う感じの可愛さ。
耳も尻尾も出てさらに可愛さが増す。
フワフワの可愛い耳を口に含んで甘噛みすると聞いたことのない悲鳴が聞こえて、口の中でぷるぷると震えるのが伝わる。
食べたいぐらい可愛いって本当だったんだ。
「アルファさん可愛いねぇ…。ちゅーしたい。してもいいよね。可愛いもんね」
「ひっ、ひ、っひぃ! 可愛い…可愛すぎて死ぬ…! 俺なにもしてないのに死んじゃう…!? 耳気持ちいい…!」
「ちゅーしたら触ってぇ…。気持ちよくなりたいの。だから…ね、アルファさん?」
アルファさんと初めてのキス。
唇が触れた瞬間、すぐに抱き締められ舌を軽く噛んだり、唇を舐められたりして乱暴に求められた。
「発情するな駄犬」
「ぎゃ!」
「あー…レグ、邪魔しな―――んぐ…!」
眠くなるほどの気持ち良さに流されていると強い衝撃とともにアルファさんが後ろに倒れた。
犯人に文句を言おうと上を見上げるとレグの口で塞がれ、何かが喉を通る。
ゴクリと音を立てて胃袋に届く。
「なに…?」
「トワコー、俺とチューしよー!」
「うんっ、する! 気持ちいいの欲しい!」
「うんうん。俺も気持ちいいの好きだからいっぱいしようね」
与えられる気持ち良さを堪能していると、次第に瞼が重たくなってくる。
嫌だ。寝たくない。もっとキスしたい。もっと触られて……交尾がしたい…!
お腹の奥が疼く。こんなに感じたことがない。物足りない。さっきまでキスが気持ち良かったのにもう足りない。
「トワコ、キスするの好きか?」
「気持ちいい…うん、好きぃ…。…いっぱいハグしたい…。キスもしたい…」
「とろとろになってるトワコ可愛いすぎだろ。腰も揺れてるしマジやばい」
「でも嫌がるだろ」
「嫌じゃない…。シャルルさん、ちゅー足りないよぉ…!」
「……もういいよな? 俺結構頑張ってんだけど」
「駄目に決まってるだろ。じゃあキスしていいんだな?」
「うん、いいよ…。恥ずかしいけど嬉しい……しゃる、るさん…ねむい…」
「くそ…。じゃあキスしててあげるから寝ていいよ。気持ちいいまま寝ようか」
「うぅん…」
「じゃあ交尾は?」
「交尾…えっちは怖い……。けど用事が終わったら…した…い…」
「そうか、解った。お前は覚えてないだろうが俺らが覚えておいてやるからもう寝ろ」
「……う、ん…」
快楽に溺れた私は再び意識を手放した。




