23.王都⑩
「あら、相変わらず派手な恰好ねタカ族のおば様」
「そう言う貴方はご自身の体型をよく見たら? そのブヨブヨにたるんだお腹、私だったら絶望して死んじゃうわ」
「出産後だからよ。それにうちの番はみんな優秀で、私に食べてほしくてたまらないの。その愛に応えるのがメスの務めでしょう?」
「出産前とお変わりなくてよ? 貴方の屋敷に鏡はないの? その優秀な番達は私が思う優秀とは大分違うようね」
お、女の闘いこわー!
メス専用の観客席に辿り着くと、少し太った女性がこちらへと歩いて来た。
すぐにセティさんが立ち塞がり、ドストレートな暴言のキャッチボールを始める…。
いやなんか…こう…。もっと遠回しな言い方するかと思ったら直接的な暴言でビックリした…。
私だったら絶対に言い返せない。無理無理、怖い。
私たちが座る観客席の下に用意された、番専用席にいるであろうシャルルさんに助けを求めようと離れると、セティさんの喧嘩相手…アリーシャさんが私に近づいて来た。
「なにこれ。おば様に友達なんていないと思ってたけど?」
「まさかっ。貴方みたいな性悪女じゃないんだから」
「私には必要ないから作ってないだけよ。それにおば様とは違って草食種族とは仲良くしているわ」
「草食種族としか仲良く…いえ、見下せないものね。噂以上に性格も見た目が悪くて反吐が出そうだわ。それより私の友達から離れてくれるかしら。その脂がついた手で汚されたらたまったもんじゃない」
やめてー! 私を挟んでボクシングしないでー!
バチバチと火花を散らす二人だったが、数秒睨んだあとは顔を背けて離れて行った。
「ほんっと下品で不衛生だわ。トワコ、腕は大丈夫かしら?」
「はい。ちょっと痛みますが大丈夫です」
「あれがアリーシャよ。ブスでしょ?」
「声が大きいですよ…」
そりゃあセティさんに比べたらだけど、割と普通だと思うな。ただちょっと太ましいだけで…。
ただなぁ…。
「ブスなのもあるけど、あの性格がいっちばん嫌いなの!」
そう言って番席を覗き込んで指差す。
そこには先程までここにいたアリーシャさんがいて、自身の番に何か言っている。
何を言っているのか聞き取れないけど番のオスはペコペコと謝っているように見えた。
回りにいる同じ番のオスは笑い、時々小突く。
なんか嫌な光景だ。虐めてるように見える…。
前にもこんな光景を見て「これが普通だ」と教えてもらったけど…。やっぱり私は好きじゃない。
「あそこはね、わざとランクを作って下位の番を全員で虐めてるのよ」
「うわー…」
「嫌なら強くなるしかないわ。その考え自体は素敵だと思うけど、それは上昇志向があり野心に溢れたオスだけにしか通用しない」
「そうですね」
「あのオスにそれがあるように見える?」
他の番に比べて線が細く、争い事が苦手そうな温和なオスに見えた。
「まさか…」
「そうよ。弱い子を番に迎えて、ああやって虐めてるの。だから私はあのメスが大嫌い!」
誇り高い鷹の女王様らしい考えだ。
うん、でも私も嫌いかも。
「番って解消できないんですよね…」
「そうね。死ぬかしか解消はできないわ」
「逃げたりはしないんですか?」
「無理よ。マリッジリングがあればなんとなくどこにいるか解るし番の役割を放棄したものは殺される。法律でも決まってるわ」
「そうなんですね……勉強になります」
「ほらもうあんな汚いの見なくていいわ。座って待ちましょう」
「はい」
最後に虐められていた男性を見ると亀のように丸まって皆から蹴られ、それを見てアリーシャさんは楽しそうに笑っていた。
ほんと…胸糞悪い…。でも私じゃなんともできないし…。
「うわ!」
「な、なんだ!?」
「いってー! 誰だよ!」
席に戻ろうと視線を外した瞬間、虐めていた男性達がその場に尻餅をついたり、頭を抑えたりと様々な反応をしていた。
「どうしたのトワコ」
「えっと…」
なんとなくシャルルさんを探すと彼らの近くにいた。
私の視線の気が付くと作った笑顔を見せられたので、思わず笑ってしまった。
「トワコ?」
「何でもないです。今行きます」
こういう優しいところ、好きだなぁ。




