19.王都⑥
「え、もう九回も出産してるんですか!? 凄いですね!」
「発情期を迎えてから十五年は経つしこれぐらい普通よ」
「それでも凄いですね…。もしかして今年も?」
「今年は休みよ。産みすぎると私自身が死んじゃうわ」
「それもそうですよね。因みにお子さんは?」
「番が面倒を見てるわよ。この屋敷から少し離れた場所でね」
「セティさんがお世話しないんですか?」
「メスならするわ。でもオスの子供はオスが面倒を見るのよ。強い子に育てるためには父親に預けるのが一番だもの」
夕食をご一緒して、一緒にお風呂に入って、眠くなるまで月光を浴びながら今日最後のお喋りを楽しんでいた。
セティさんとの会話はすごく楽しかった。
知らないこともたくさん知れたけど、似たような共通点もあればまったく理解できない常識の連続に驚いてばかり。
未だに慣れないなぁ、この世界は。
「因みに私は二人のメスを産んだわ」
「え、すごい!」
「そうでしょう? その子達も発情期を迎えたからこの街で番を持って暮らしてるのよ」
「……お子さんの年齢って聞いてもいいですか?」
「えーっと、そうねぇ…。十五と十四だったかしら」
「セティさんは?」
「私は二十九よ」
「………発情期って何歳から始まるんでしょうか…」
「大体十二から十六の間には始まるわ。体格がよければすぐにでも子供を作れるわよ」
「体格かー…」
「私の子達は十二で発情してすぐ子作りしていたわ」
凄い世界だー…。私の中にある倫理観がどんどん崩れていく…。十二歳で子作りって日本じゃありえない。
と言うか二十九歳で九回も出産ってどういう計算?
あ、違う。忘れてたけど彼女は私とは似てるけど違う生き物だ。
人間と違って妊娠期間が短いらしいし一年に一回発情して妊娠、出産できる。休み期間を設けるらしいから…こんなものなのかな?
「トワコは何歳? 私の子供達より年下なのは解るけどしっかりしてるし…」
「十八歳です」
「……嘘でしょ。また私を騙してるんでしょ!」
「嘘じゃないです。そんな幼く見えますか?」
「ええ。じゃあもう発情期を迎えているのよね?」
「そ、そうですね」
「……」
「あの、なんでしょうか…?」
「それ以上大きくならないわよね?」
「身長ですか? そうですね」
「…愚弟との交尾は大変そうだけど、それはトワコが頑張りなさい? ただ痛い場合は蹴とばしてやるといいわ」
「なッ!? な、なにをいきなり…!」
「もう何でトワコはこの話をすると恥ずかしがるの? 大事なことじゃない!」
「そうなんですけどね…! ちょっと言葉にできない羞恥心が生まれてしまって…」
「ほんっと貴方って変わってるわね。べ、別に変って意味じゃないから勘違いしないでよ!」
「はい、大丈夫です」
「でもね、恥ずかしがってちゃ駄目よ。子供を作る為には必要だけど、それ以上に交尾はメスの美しさに磨きがかかるんだから必要なことなのよ!」
「…と言うことは毎日…?」
「当たり前じゃない。今晩はトワコがいるからしないけど、毎日してるわ」
「そ、そしたら子供ができるんじゃ…。今年はお休みだって言ってましたよね?」
「発情期じゃないから大丈夫よ。それに発情期前にしっかり身体を慣らしておきたいもの。出産するときも多少は楽になるのよ」
そうだ。発情期があるんだ…!
ああダメ…。恥ずかしいし話を変えよう…。
「話は変わりますけど、番を解消したりすることはできますか?」
「解消? 始祖に誓ったんだからできないわよ」
「そっかー。じゃあ選ぶときはちゃんと吟味しないといけませんね」
「……私の大嫌いなメスは飽きた番を遠くの山に捨てたりしてるわ」
「え!? そ、そんなことしていいんですか…?」
「よくないわよ。罰則があるけどオスに罪を押し付けて逃げるから意味をなしてない。だからあのメス嫌いなのよね」
「誰ですか?」
「ライオン族のアリーシャ。南に屋敷を構えてるから近づかないことね」
「解りました、よぉく覚えておきます」
「そうよ、トワコは絶対に近づいたらダメ! あのメスほんっと性格が悪いから貴方みたいな可愛い子が行ったら嫉妬で殺されちゃうわ! 私も何度命を狙われたか…」
「命を!? 大丈夫だったんですか!?」
「私達タカ一族が地上を這う種族に負けると思って? 怪我はしたけど大丈夫よ」
戦争や小競り合いがあるという話は聞いたし、メスを巡っての決闘があることも知っていたけどメス同士の争いがあるとは思っていなかった…。
だってオスはたくさんいるんだし選びたい放題じゃん!
でも私の考えが甘かった…。そうだ、嫉妬という感情を忘れてた…。
セティさんは長い指で髪の毛をかきあげ、不適に笑う。はー…絵になるなぁ。
「それにしてもこの薬剤凄いわね。ね、これ分けて貰えないかしら」
「構いませんよ。でもあまり量がなくて…」
「少しでいいわ。一週間に一回の楽しみにしたいの!」
「解りました」
キャリーケース内に戻せば元に戻るからいくらでもあげれるんだけど、頻繁にあげるのも怪しまれるよね。
サラサラになった髪の毛を嬉しそうに触るセティさんは可愛らしい。
笑顔を見ながらお茶を飲み干すと突然「あっ!」と声をあげて近くのテーブルへと向かう。
テーブルにはたくさんの手紙が置かれており、そこから一枚の手紙を持って戻ってくる。
「丁度いい時期に来たわね、トワコ」
「ちょうどいいとは?」
「一週間後、第一陸軍が戻って来るの」
「はぁ」
「アリーシャのことで思い出したわ! ふふっ!」
「あの、話が全く解らないんですけど…」
「あのね、アリーシャって第一陸軍の隊長が好きなのにフラれ続けてるの! メスの誘いを断るオスなんてありえないんだけど、その時のアリーシャの顔がほんっと面白くて…!」
それは珍しいことを聞いた。メスの誘いを断る人なんているんだ。
あ、でもシャルルさんみたいに興味ない人もいるもんね。
「でも可哀想よね。あんなに強いのにアリーシャの目があるから番作れないし。ま、レグルス様もメスに興味なさそうだからいいけど」
「アリーシャさんの想い人はレグルス様と言うんですね」
「そうそう。今の王の息子よ」
「王子様でしたか」
「オウジサマ?」
「王様の息子だから次期王様ですよね?」
「まさか! 王が亡くなったら次の王を決める為の決闘が始まるわ。その勝者が次の王よ」
「あー……世襲制じゃないんですね」
「王はそうね。国のトップに立つんだから一番強い人じゃないと。世襲制を採用しているのは田舎にある村や集落ぐらいよ」
「勉強になります」
「じゃあこれも教えてあげる」
「何でしょうか」
「アリーシャってすっごくブスなの」
「セティさん…悪口はよくありませんよ…」
「アハハ! ごめんね、トワコ。でもね、私の二の舞にならないようにその可愛い顔は隠してたほうがいいわ」
「そのつもりです。メスだからって色んな人に言い寄られても困りますし…」
「トワコは押せばなんとかなりそうな雰囲気があるもの、仕方ないわ」
「少しだけセティさんを見習います」
んー…。でも別にシャルルさんにわがまま言うことはないしなー…。いやもう言ってるや。旅がしたいとか、お泊りしたいとか…。
言い寄って来る人がいたらセティさんを見習ってキッパリ断ろう。うん、大事なことだよね。迷惑をかけないためにも私自身頑張らないと!
「それは嬉しいけど、多分トワコが私の真似をしても無駄だと思うわよ」
「え、ダメですか?」
「トワコが威張っても虚勢にしか見えないもの。ただ可愛いだけだわ」
「……」
「だからね、その可愛さを武器にするの」
「武器に?」
「お願いしたらいいのよ。可愛くお願いしたら言うことを聞くわ」
要はぶりっ子になれと…。精神的にくるんですよ、その技。
「策略の一つとして覚えておきます」
「そうよ。メスだって賢く図太く生きないとね! さ、そろそろ寝るわよ」
「え、一緒に寝るんですか?」
「なによ、嫌なわけ?」
「いやじゃないですけど…」
「じゃあ問題ないわ」
「ちょっと、何で裸になるんですか!」
「裸のほうがあったかいじゃない。トワコも早く裸になりなさい」
「い、いや私は…」
「早く!」
「きゃあああ!」
強制的に服を剥がされ、そのままベッドに連れ込まれる。
こんな展開になるとは思ってなかった! え、食べられる!?
「トワコの肌綺麗ね…。何を食べたらこんな綺麗になれるの?」
「ひゃあ! ちょ、ちょっとそんな触らないでください…」
「少しぐらいいいじゃない! 胸は小ぶりだけど綺麗な形だし…」
「止めてください! も、もう早く寝ましょう! 明日秘訣を教えますから!」
「本当? なら大人しく寝るわ。おやすみなさい、トワコ」
「おやすみなさい!」




