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18.王都⑤

「じゃあ貴方はサル族ね」

「そうかもしれませんね」


シャルルさんと宿屋に戻り、お泊りセットを持って屋敷へと戻る。

屋敷に戻るとセトさんが再度出迎えてくれて日当たりのいいお部屋に案内された。

既にセティさんと彼女のつがい数名が私を待っていて、セトさんに美味しいお茶とお菓子を準備していた椅子にエスコートされる。

改めて今日お泊りさせてもらうお礼と、私損ねたお土産を手渡しセティ様と様々な話をした。


「サル族も月に一度血が出るって聞いたことがあるわ」

「他の種族にはないんですね」

「そうよ。でもサル族はトワコみたいに可愛くなかったわ。白くもないしもうちょっと太ってた。と言うか貴方が細すぎるのよ! そんな細かったら子供が産めないわ! サルツ、もっとお菓子を持って来て頂戴! それと夕食はお肉を大量に用意して!」

「セティ様、そんなに食べれないので大丈夫ですよ」

「ダメよ! メスである私達は子供を産まないといけないのよ!? きちんと役割りは果たすべきだわ!」

「そ、そうですね。でも食べれないのに準備してもらっても料理人さんに失礼ですし…」

「気にしなくていいわよ。それが彼らの役割りだもの。それと、様なんてつけなくていいわ」

「ではセティさんと」

「ふん。この私がここまで許すのは貴方だけよ、光栄に思いなさい」

「ありがとうございます」


まだ少ししか過ごしてないけど彼女がどんな人か解った。

口調はツンツンしてるけど根は真面目で優しい人。ようするにツンデレ。


「詳しくは知らないからこれ以上のことは言えないけど、これで少しは記憶の手がかりになるかしら?」

「そうですね。今度猿族の人と会ってお話しようと思います」

「ただ気をつけなさい。サル族は狡猾で下品な者が多いのよ」

「そうなんですね」

「悪知恵が働くのよ。城にいるサル族も優秀とは聞くけどいい噂は聞かないわ。メスを王都に連れて来ることになったのもあの始祖返りのサル族の提案だもの」

「へー…」

「そのせいで人口は増えたけど、その分他国との争いも増えたわ。あの王も王よ! 愚弟だけじゃなくタカ族を軽率に使用して…!」

「お、落ち着いてください。せっかくの綺麗な顔が台無しですよ」

「トワコに言われても嫌味にしか聞こえないわっ。何よその愛らしい顔!」


何に怒られてるんだろう…。

怒ってるのに「可愛い!」「横顔は綺麗よ!」と言われても、笑うことしかできない。

面白い人だなぁ、セティさん。


「毛だって滑らかだし…。なんの薬剤を使ってるの?」

「あ、お風呂入るときに私が使ってるシャンプーをあげます」

「しゃんぷー?」

「あ、薬剤のことです。量が少ないのであまりお渡しできませんが…」

「へぇ、楽しみね。使わせてもらうわ。で、他に聞きたいことは?」

「そうですねぇ…。一番聞きたかったことは聞けましたし…。情勢ぐらいかな」

「情勢? メスなのにそんなこと気にしてどうするの?」

「危険な場所に行かないようにしたいですし…」

「あぁ、旅をしてるって言ってたわね。メスなのに物好きね…。それより早くつがいを作って子供を産むべきじゃなくて?」

つがいを作る気は…」

「あら、トワコは理想が高いのかしら? まぁ気持ちは解るわ。私は見目も強さも両方兼ね備えてるオスとしかつがいになりたくないもの」

「確かにセティさんのつがいは皆さん格好いいですよね」


チラリと少し離れた場所で待機しているセティさんのつがいは皆イケメンだ。筋肉も素晴らしい。

日本で見たら絶対に見惚れていただろう。


「そうでしょう? 自慢のつがいなの」

「因みに何人いるんですか?」

「そうねぇ…。十三人かしら」

「そ、そんなに多くて大変じゃないですか…?」

「身を守る為には少ないぐらいよ」

「でもほら、こ、こ…交尾の順番とかで喧嘩したり…」

「だから月に一度決闘をさせてるわ。そこで一番強いオスと交尾するの。他のところも大体そうしてるわ。産むなら強い血を引いた子じゃないと意味ないからね」

「じゃあ十三人とつがいになる必要は……ああ、警備も兼ねてるんですね」

「そう。それに私のお世話もね」

「なるほど」

「だからトワコも早くつがいを作りなさい! 今はまだ隠してるけどいつかバレたら大変なことになるわよ! こんな可愛い子、きっとあの王はトワコを攫いに来るに違いないわ!」

「そ、そうですね。ちょっと考えます」

「愚弟とかオススメするわ。右目を失ってしまったのは残念だけど、ああ見えて王国軍の空軍隊長なのよ」

「……凄い、人ですね…?」

「そうよ! 愚弟は愛想はないけど実力だけはタカ族の中でもズバ抜けているわ。それに今までメスに興味がなかったのにトワコには優しいし。そうだわ、それがいい! 私もトワコのことは嫌いじゃないし家族になりましょう! タカ族じゃないのは残念だけど特別に許してあげるわ!」


キラキラとした笑顔で語るセティさんはとても美しい。

美しい顔でそんな提案をしないでもらいたい…。

セトさんが嫌いってわけじゃないけどつがいを持つつもりはないし、私には元の世界に戻るという目標がある。情が湧いてしまうと別れるのが寂しくなるし…。


「いや、セトさんの話も聞いてみないと…。無理強いはよくありませんよ」

「愚弟! 近くにいるんでしょ!」

「セティさぁん」


ダメだ。一度火がつくと止まらない。

何度も「愚弟!」と叫ぶと眉間にしわを寄せたセトさんが入って来て、やる気のない声で「はい」と返事をした。


「愚弟、トワコとつがいになりなさい!」

「なッ!」

「セティさん、落ち着いてください。セトさん、気にしないでいいですよ」

「なによ! トワコの身の安全を考えたら愚弟をつがいにするべきだわ! 耐久面では確かに他の種族に負けるけど、私達には空がある。戦うのも大事だけど逃げるのも戦略の一つよ! 選択肢を増やすのも大事なの!」

「そうですね、私もそう思います。でもセトさんの気持ちもありますし…」


なんでお見合いの場になってるの。

恥ずかしいし、いたたまれないから止めてもらいたいのにセティさんは私の話を全く聞いてくれない。

教室で公開告白を受けているみたいだ…。


「愚弟の気持ちは解ってるのよ!」

「お、落ち着いてくださいってセティさん!」


とうとう立ち上がってビシッ!と指を差す。

それを見た、セトさんの隣にいたつがいの男性が顔を赤くしていたが、それ以上にセトさんの顔が真っ赤に染まっていた。

うわあああああこの場から逃げたいいいい!!

あんな顔されたらさすがにわかるじゃん! なんて断ればいいの! どうしよう、シャルルさんを呼ぶ? いや余計ヤバい! ついこの間ハイエナのグラドさんの件もあったから今度こそ何かする…!

あああ…そうだ、グラドさんの件もあった…。しばらく平和だから忘れてたけど彼が合流したらもっとカオスなことになるのに、そこにセトさんを巻き込むのはまずい!

間に立つであろう私を想像して血の気が引いていく。


「トワコ嬢」

「は、はい…ッ!」

「……わ、私は君のことを……っすまない! こんな場でいきなり求愛されても困るだろう! また今度正式に申し込ませてもらいます!」

「あ、ちょっと待ちなさい!」


とうとうリンゴのように赤く染まったセトさんは部屋から飛び出して行った。

セティさんが何度も呼んでも戻って来ることはなく、プリプリしたまま椅子へと戻る。

告白されてないけど告白された…。こっちまで恥ずかしくなってしまったじゃないか…!

シャルルさんにもグラドさんにも「好きだ」とは言われたけど、セトさんの誠実な性格なのもあって余計に恥ずかしい。

あれはシャルルさんのときみたいに軽く流せないかな…。そもそもこういう経験値ないし私には無理だ。どうしよう…。


「ほんっと肝心なところで役に立たないんだから。でも強いのは保障するわ」

「あはは…」

「他につがい候補はいないの? あ、クロヒョウ族がいるって言ってたわね」

「そうですね。候補ではないんですけど…」

「ふーん…クロヒョウ族ねぇ。よくあんな種族と一緒にいられるわね」

「あんな?」

「クロヒョウ族はヒョウ族の変異種族よ。ヒョウ族の為に汚い仕事をしてるって有名だわ」

「そう…なんですか…。でも優しいですよ」

「まぁトワコがいいならいいわ。でも気をつけなさい。いつ裏切るか解らないのがこの世界の常識よ。特にそう言う仕事をしている種族は警戒するに越したことはないわ。それに真っ黒で見た目も悪いわ」

「え? あ、そうなんですね…」

「ッ違うわよ! トワコの毛は綺麗よ! そんな顔しないで頂戴! わ、悪かったから…」

「ふふっ、大丈夫です。わかってます」

「なっ…! トワコ、私を騙したわね! 純粋無垢な顔をして騙すなんて酷いわ!」


綺麗なだけじゃなく、可愛い人なんだなセティさんは。

真っ赤になった顔がセトさんとそっくりで笑うと、さらに真っ赤にさせて「もう知らないわ!」とそっぽを向かれた。


「すみません、セティさん。どうかお許しください」

「………泊まったあともまた遊びに来てくれるなら許すわ」

「はい、もちろんです。まだまだ聞きたいことはありますし、助けてもらう予定です」

「仕方ないから助けてあげるわ…」


やっぱり女子同士のお喋りは楽しいや。

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