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16.王都③

「このマントはどう? 軽くて少し暖かいよ」

「いいですね。でも今のマントでも十分ですよ。短い間ですが愛着も湧いちゃってるし…」

「それならいいけど…。本当はもっと綺麗な服を着せて、宝石で着飾って僕だけしか入れない部屋に閉じ込めたいんだけど…。それはさすがに難しいからね」

「はは…。監禁は止めてください…」

「いつか落ち着ける場所ができたら一度ぐらい体験してみない? お世話は僕に任せて」

「考えておきますね」


鷹の女王こと、セティさんの屋敷から商店街へやって来た二人は買い物を楽しんでいた。

たくさんの人が商店街に押しかけ、そのおかげで永遠子の存在が薄れる。

それでも永遠子にオスが群がるのを避けるため、相変わらずフードを深く被り、小声で会話をしながら観光を楽しんでいた。


「……」

「シャルルさん?」

「気に入ったものあった? ゆっくり眺めていいよ」

「ありがとうございます。ちょっと眺めてますね」


覚えのある匂いにシャルルの警戒心が強まる。

周囲を監察するが怪しい人物はいない。

しかし空を見た瞬間、会いたくなかったオスと目が合い、永遠子に聞こえないよう舌打ちをした。

屋敷から飛び立ったセトは空から二人を探し、持ち前の視力を生かして商店街で二人を見つけた。

地面に降りると同時に人の姿へと変わり、シャルルの横に並ぶ。視線だけは彼女に向けていた。


「よぉ、生きてやがったか」

「貴様に用はない」

「ここでトワコに話しかけるなよ。ここでトワコの存在がバレたら厄介だ」

「…。私はただあの子に用があるだけだ」

「下心バレバレなんだよ。俺が聞いてやるからさっさと消えろ」


いつかの森で一戦交えた知り合いに警戒が高まる。

早く消えるよう牽制するもその場から去ろうとしないセトに次第に殺意が増していく。

やはり殺しておくのが正解だったか。と心で後悔しつつ、いつでも殺せるよう隠し持っている武器に意識を向ける。

だけど相手は軍人。しかもここはシャルルが得意とする森の中でも夜でもない。それ以上の警戒心と隙のなさに両者身動きがとれない。


「右目だけじゃアンバランスだろ。左目も潰してトワコを一生見られないようにしてやるよ」

「……。姉の屋敷には何しに来た」

「最悪かよ。お前には関係ねぇ」

「用があるなら私が話を通してやろう」

「結構。さっさと消えろ、人攫い」

「そう言うお前は裏ギルドで有名な奴のようだな」

「人の経歴調べやがって…」

「お前が傍にいるほうが危険ではないのか」

「はぁ? トワコは俺のつがいだ。つがいを傷つける馬鹿がどこにいるんだよ」

「金さえ貰えば汚いこともするお前が言っても説得力がないな」

「殺すぞ、今度こそ」

「殺してみろ。次は負けん」


ピリピリと高まる殺意に周囲も何事かとザワつき始める。

そんな中、永遠子だけは気づかず宝石が散らばったアクセサリーを楽しそうに眺めていた。

しかし回りの様子に気付いて振り返る。

バチリとセトと視線が合った瞬間、彼は口元に笑みを浮かべ、そしてシャルルに鳩尾を殴られてその場にしゃがみこんだ。


「シャ、シャルルさん…!?」

「行こうかトワコ。ここは変な空気だ」

「え、いや。今……。それに見たことあるような…」

「気のせいじゃない?」

「ッおい!」

「よ、呼ばれてますよ」

「うっぜー…。夜中に時計塔の上だ。さ、行こうか」


言うだけ言って永遠子の肩を掴み、人ごみへと消えて行った。





「で、トワコに用って何」

「それは彼女に直接伝える」


昼間の約束通り、王都の広場にある時計塔の上に姿を現したシャルルとセト。

王都の夜は静寂ではない。

いつまでも賑やかで明るいのにここだけは空気が冷え切っていた。


「俺がお前をトワコに近づけるわけねぇだろ」

「私は彼女に助けられたからその借りを返したいだけだ」

「いや、無理があるだろ」

「タカ族は借りを必ず返す種族だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「はぁ…。やだやだ、ハイエナだけじゃなくタカもかよ…。トワコはほんと魅力的なメスだよなぁ。俺のつがいなのに」

「マリッジリングはないようだが?」

「おまけに知識も豊富だから誤魔化すのも嘘つくのも面倒臭い。まぁいいや。トワコがお前の姉と話がしたいんだと。それでいいから借りを返してくれ」

「話はした。明日また屋敷へ来てくれ」

「軍人様は仕事が早くて助かるねぇ。わかった、朝一で向かう。お前は来るなよ」

「私がいなければ話せるわけがないだろう」


豹と鷹の鋭い視線が交わる。

まだ言いたりない。お互いがお互いを消したいと胸の奥がザワつく。


「裏ギルドNO,1と言われる暗殺者なんていくらでも捕まえる理由ができそうだな」

「捕まえてみろ。トワコは優しいから泣いて捕まえたお前らが嫌いになるだろうよ」

「…」

「反論してこないってことはやっぱりトワコのつがい狙ってんじゃねぇか。やっぱ殺しておけばよかった…。まぁいいや、俺らが王都にいる間は寝込みには気をつけろよ。なんたって俺は裏ギルドNO,1の暗殺者様だからな」

「貴様こそあまり私を見くびらないほうがいい。右目を失ったからと言って腕が落ちたわけではない」

「じゃ、そろそろトワコの可愛い寝顔が見たいし帰るわ」

「ッつがいでない分際で一緒の部屋で寝ているのか!」

「羨ましそうな顔するなって。これも愛しい俺のメスを守る為だから。明日はよろしくしたくないけどよろしくな」


言うだけ言って黒豹の姿になり、時計塔から降りて行く。

残されたセトは顔を真っ赤にさせ、口を金魚のように動かしていた。

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