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15.王都②

「通すわけないだろう」

「さっさと帰れ。ここに近づくな」


マリッジリングの存在は無視できない。

何をどう願えばつがいになってしまうのか…。それが解っていれば気を付けることができる。

私はつがいを作るつもりはない。元の世界に戻るんだ!

と意気込んで来たものの、屋敷には門番らしき人がいてキッパリと断られた。


「聞きたいことがあるだけだ。つがいになる気など一切ない」

「そう言って迫る奴がいるから俺らがいるんだ。帰れ!」

「メスに興味ねぇんだよ」

「そもそもここはタカ族しか入れん。それにお前クロヒョウ族だろ。下見の為じゃないのか?」

「くだんねぇこと言ってんじゃねぇよ。黙って通せ」


シャルルさんに交渉は向かないな。

仕方ない。まだここに来て五分も経っていないけど最終手段だ。

シャルルさんは嫌がっていたけど、効果はあるって渋々ながら教えてくれた奥義!


「あの…」

「「メス!?」」

「お願いします、少しお話したいんです。中へ入れてくれませんか?」


私がメスということを明かす。

貴重なうえにメスに甘いオスばかりだからきっと私が正体を明かせば融通してくれる。らしい。

半信半疑だったけど、目の前で固まってる二人を見て少しばかり希望が生まれた。


「え、王都でこんなメス見たことあるか?」

「いや…。と言うかここまで可愛いメスは王都で見たことない…。セティ様はお美しいけどこの子は……」

「お願いします。どうか中へ入れてください」


うう…ぶりっ子みたいでやだなぁ…。

私は可愛くないよ、普通ですよ。


「き、君っ。つがいは? つがいはいる!?」

「え?」

「俺のつがいになってくれるならセティ様に「俺がつがいだよ。近寄るな、切り落とすぞ」

「何番目でもいい! 俺のメスになってくれ!」

「いやいや俺のほうがいいって! 誰よりも優しくするって約束するからさ!」

「あ、あの…。それは考えさせて貰ってもいいですか? 先に…すみません、セティ様にお会いしたいんですけど…」

「任せて、俺が聞いて来てあげる!」

「おい待て! 俺が聞いてくるからいつもみたいに寝てろ!」


口喧嘩をしながら二人揃って屋敷へと走って行く。


「すごい…私相手でもあんな態度になるなんて…」

「トワコは自分の魅力が本当に解らないの?」

「えー…。確かにちょっと皆とは顔付きが違うけど、普通だと思いますよ」

「純粋なんだか鈍感なんだか…。謙遜するのもいいけど本当に気を付けてね。警戒心をなくすのはダメだよ」

「はい、解ってます」


メスが少ないから私でも可愛く見えるんだろう。

まぁ陰口叩かれるよりはマシだからいっか。でも誘拐とかはされたくないので気を付けよう!


「あ、戻って来た」

「すみません、ダメでした…」

「ごめんね。ちょっと機嫌が悪いのもあって取り付く島もなかったよ…」

「で、でも明日になったら良くなるかもしれないし、また明日来てくれる?」

「あー…。シャルルさん、大丈夫ですか?」

「まぁ…仕方ないよね。仕方ないけど、この子に近づくな」

「本当にごめん。あ、名前教えて貰っていい?」

「お前らが知る必要ねぇよ。帰ろう」

「は、はい。では、また明日来ます。ありがとうございました」


肩を引き寄せられ、屋敷から離れる。

後ろのほうでは何やら叫んでいたけど、二人同時に叫んでいるから何を言ってるのか解らず苦笑しかできなかった。


「残念でしたね」

「別の手を考えるか…忍び込むしかねぇな…」

「それは犯罪だから止めましょう。それより時間余っちゃいましたね」

「じゃあ商店街を見て回ろうか。あの村より美味しいものがたくさんあるよ」

「いいですね!」







「やばいぐらい可愛かったな…。小さかったしウサギ族か? 色も白いし細いし…」

「なんか不思議な匂いもしたよな。可愛らしい声だったしもっと聞きたかったー!」

「おいそれより明日の門番当番誰だよ。変わってもらおうぜ!」

「だな! 明日は名前聞いて少しでもあの子のこと知れたら―――あ、お疲れ様です。セト様」

「お疲れ様です。セティ様がお待ちですよ」


永遠子達が立ち去ったあとも門番の二人は永遠子のことで盛り上がっていた。

王都にいる女性に比べ、小さくて可愛らしい顔立ちを持つ不思議なメス。

メスは気難しい性格なのが一般的なのに彼女だけは柔らかく、穏やかだった。

要望を通さなかったら殴られるか、暴言を吐かれるのが普通なのに彼女だけは逆に申し訳なさそうな顔でお礼を言って帰って行った。

その真新しい行動と顔付きに一瞬で心奪われ、目を閉じて何度も何度も永遠子の顔を思い出す。

そこへ空から大きな鷹が降り立ち、青年へと変化する。

門番に「セト」と呼ばれた青年の右目には黒い眼帯。

精悍な顔付きで怠けていた二人を睨みつけると彼らは申し訳なさそうに頭を下げ、姿勢を正した。


「先程誰か来ていたようだが、姉上に客か?」

「客と言えばいいのか…。セティ様とお話したいと…」

「……」


何かを隠している素振りを見せる二人を怪訝そうに見るも、彼らはそれ以上喋らなかった。

軍人らしく尋問しようと口を開いた瞬間、嗅いだことのある匂いが鼻をかすめて目を見開く。


「おいっ、さっきの二人はクロヒョウのオスとメスか!?」

「えっ!?」

「どこに行くと言ってた!?」

「い、いえそこまでは…」

「いや、今から追いかければっ…!」

「いけませんセト様! セティ様がかなりご立腹ですよ!」

「…ックソ!」


永遠子達が歩いて行った方向に走り出そうとするも門番の言葉でとどまり、焦った様子で乱暴に玄関を開け、屋敷の主であり姉がいる部屋へと向かう。


「もうっ、遅すぎるのよ! いくら右目を失ったからっておつかいぐらい前みたいに早くしなさい!」

「そんなに早くお求めなら私ではなくつがいにやらせばいいではありませんか」

「リハビリに付き合ってあげてるんでしょ! 何よ、姉の優しさも解らないなんて酷い弟だわ」

「はぁ…。もういいですか、私は用事があるので失礼します」

「ご褒美としてお茶を淹れてあげるわ。身体にいいお茶が手に入ったのよ」

「結構です」

「可愛くない弟ねぇ…! 少しは姉の言葉に素直に頷けないの!?」

「姉上、私は急いでいるので失礼します」

「何よ! 姉心が解らない弟なんて知らないわっ」


部屋にはセトによく似た背の高い美女と複数のオス。

プリプリと怒って見せるも、セトは眉間に皺を寄せてあからさまな溜息を吐く。

そんな態度の弟に姉、セティがさらに怒るもセトは止まることなく再び外へと向かう。


「貴様ら、あのメスを見たよな」

「え…ええ、まぁ…」

「可愛らしいメスですよね。セト様ご存じだったんですね」

「忘れろ」

「「はい?」」

「あの子の記憶を消せ、命令だ」

「「ッハイ!」」


鋭い眼光で殺気を飛ばしその場から飛び去った。

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