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13.放浪の旅⑨

なんの影響か全然解らないけど、一緒にこの世界に来たキャリーケースは魔法のケースでした。

と言うのも、使用したものをケースに戻すと最初の状態に戻るというもの。全然気が付かなかった!

この世界のものを入れてもその効力は発揮しないので量産とか、節約とかはできないけどこれが滅茶苦茶便利!

そう、消耗品がなくならないのだ! これでずっとシャンプーとかナプキンとか使いたい放題!

売らなくてよかった…。これだけは絶対に手放せない!


「トワコ、王都が見えてきたよ」

「わー…」


それに気づいたのは生理中のナプキンがいつまで経ってもなくならなかったから。

シャンプーや歯磨き粉じゃすぐ気が付かないけど、ナプキンだけはすぐにわかるからね。

感動しつつ大人しく村で生理が終わるのを待ち、村から王都まで私の足で十日…いや、二週間かけてようやく到着した。

今回もシャルルさんに助けて貰ったり、迷惑かけたりしたけど。

丘から見下ろす王都はとてつもなく広くて、まるで映画のような街並みと景色に疲労困憊だった身体から元気が湧いてくる。

村とは違い、高い城壁に絵本で見るような豪華そうなお城。城壁外の周りにもいくつかの集落らしきものがあり、小麦畑が海のように広がっていた。


「すごいですね…」

「気に入った?」

「最高の景色です!」

「よかった。もうちょっとだけど頑張れる?」

「はいっ」


もうひと踏ん張りだ、頑張ろう!

唯一持つことが許された小さな鞄を背負い直し、先を歩くシャルルさんの後を追いかける。

城門に近づくにつれ、人が増えて行く。

新しく買ったフードで顔隠しは完璧。香水もつけた。あとつがいがいないってバレないように手袋だってしてる。

王都にはメスが多く、村よりレア度は低いらしいけど極力目立ちたくないので気を付けなくては。


「そう言えば王都にはメスは何十人ぐらいいるんですか?」

「僕が前に来たときは三百ぐらいだったはず」

「……メスを集めてるのに?」

「それだけ貴重なんだよ」

「世界の人口が崩れないんですか?」

「さぁ? 僕は始祖じゃないから解らないよ、ごめんね」

「因みにオスは?」

「さすがに王都は解らないかな」


なんでこんな世界なんだろう…。

メスが少な過ぎたら絶滅しちゃうよ? 逆もそうだけど…。

どういう原理で人口を保ってるかも解らない。


「色んな種族がいますね」

「王都には大体の種族が揃っているよ。僕以外に目移りしないでね?」

「ちゃんとシャルルさんの隣にいますね」


この二週間でシャルルさんの扱いにも多少慣れた。

彼のこう言う発言は冗談として捉えることにし、軽く流す。うん、これが一番。


「すごい並んでる…」

「ここからは喋らないように」

「はい」


中に入る為に城門に向かうと有名店もビックリなぐらいたくさんの人が並んでいた。

列に動きはあるものの、ちょっとしんどいかな…。喋れないのも精神的に辛い。


「(まぁ約束は守るけどね。それにしても大きな城壁だなー…。地球じゃあこんな建造物見れないかも…)」

「おー、シャルルじゃん」

「トワコ、耳も塞いでて」

「わ、わかりました」


目新しい景色を眺めていると、軽快な笑い声とともに数人の男性に囲まれた。

シャルルさんって割と顔広いよね。ギルド仲間なのかな。


「お前が王都に来るってことはでっけぇ仕事でも貰ったかぁ?」

「もらってない。体調悪いから話しかけてくんな」

「久しぶりに会ったってのに相変わらず冷てぇなぁ!」

「毛色通り暗い奴だよ、まったく。俺らみたいに楽しく笑って生きようぜぇ」

「結構」

「で、その連れは誰だ?」

「人魚族だからあまり触れるな」

「ほー、そりゃあ珍しいな。坊主、陸に憧れて家出してきたんか?」

「触るな近づくな。こいつは報酬なんだ」

「へいへい」

「あぁ、ついでに聞きたいことがある。タカの女王の屋敷はどこだ?」

「なんだシャルル! お前とうとうメスに興味出たのか!」

「そりゃあ傑作だ! しかも高嶺の花に惚れるとはな!」

「まぁ解るぜ。タカの女王は王都でも指折りの美女だからな。だが、知ってるだろ。タカ族しかつがいにしないって」

「そうそう! さっさと諦めたほうが身のためだぜぇ」

「何でもいい。屋敷の場所は?」

「可哀想に…。城の北側だ。少し小高い丘に屋敷があるだろ。そこだ」

「そうか。ほら、離れろ。人魚族にお前らの臭いはきつすぎる」

「ちっ。つまんねぇな」

「万が一にでもタカの女王のご尊顔を拝めたら感想聞かせてくれよー」


シャルルさんは相変わらず私以外にはドライだ。

ツンツンした態度を見ると「猫だなぁ」なんて安直な感想が出て来て、声に出さないよう笑ってしまった。

仲間を追い払い、屈んで私の顔を覗き込むシャルルさん。

私にとってはこの優しい顔のほうが普通に思える。


「立ってばかりで疲れるよね。抱えてあげたいけどさすがに目立つし…」


大丈夫ですよ。と親指を立てると苦笑いをして軽く頭を撫でられる。

あの人達のおかげで多少の時間は潰せたし、行列の動きも悪くない。


「すぐ宿屋に向かって休もう。タカの女王には明日か明後日でもいいよね」

「はい」

「しー。可愛い声出さないで」


さらにフードを引っ張り、身体を寄せて周囲を警戒する。

周囲の人たちは暑さや待たされる時間にイライラしていて誰も私たちを気にしていない。

王都では何事も起こりませんよーに!

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