有体無心
二人の少年少女の物語です
心を大切に、体を大切に。
そんな気持ちを込めて書きました。これを見て生きてくださる方、大切なんだなぁと思ってくださる方が増えると嬉しいです
ユウタは階段を上がっていた。
これで三度目だ。
ユウタは屋上のフェンスをこえた。
また助けられた。誰だろう。
落ちるまではいいもののすぐに誰かが助けに来る。
救急車の音なんて聞き慣れていた。
迷惑をかけてばっかだ。ユウタの心は半分以上消えていってしまった。
どんな方法でも心が消えるだけで体が残る。
ユウタにとってそれはいつものことだった。
学校ではいじめられお父さんとお母さんが喧嘩して離婚。
不運な人生だとユウタは毎日のように思っていた。
そんなユウタに一人だけ手を差し伸べてくれる人がいた。
幼馴染のリナだ。
ユウタはリナがいるから今も生きているのだ。
リナはユウタにとって生きがいだった。
そんなある日のことだいつものように中学に行く途中悲鳴が聞こえた。
ナイフを持った男がこちらに走ってきた。
ユウタとリナは逃げた。あとちょっとでリナが殺される。
そんな時にユウタは飛び出しリナに言った
「ありがとう、ごめんね。俺のために◯◯◯」
リナはユウタを背に泣きながら逃げていった。
登校中咥えていたパンを落とし泣きながら逃げた。
ユウタの最後の言葉。それがなんなのかも知らずに。
リナにとってのユウタは生きがいだった。
ユウタと同じ様に。
そのユウタが刺された。リナは屋上へ行った。ユウタと同じ場所に行けるように。
通り魔なんかに刺されるか!そんな思いでリナはフェンスをこえ死のうとした。
その時耳元でユウタの声が聞こえた。「生きて」
リナは泣いた。ナイフの男はいなかった。マンションの上では警察がいて犯人が捕まっている。
ここはどこ?と戸惑っていると目の前に刺されたはずのユウタがいた。
リナは嬉しくて泣いた。
「生きて」
ユウタが言った。
言われると同時に押し戻される様にリナは目を開いた。
周りにはよくわからない紐がついていて頭が少し痛かった。
ナイフの跡もあった。
病院だ。リナは思った。
先生が入ってきてこう言った。
「手術成功だよ」
リナの目には涙が溢れていた。
「ユウタ…」
先生は顔を下に向け言った。
「今お亡くなりにのなられました」
リナは涙を流した。
ユウタが死んでしまったからだ。
リナは窓を見てこう言った。
「ありがとう」
ユウタの心はリナの中に残っていた。
「ユウタは生きられた」先生はそう言っていた。
リナはユウタの少しの命で生きられることができたのだ。
数十年後…
「リナ先生」
リナは医者になり数多くの人を救った。
今でもユウタの心はリナの中にある。リナは信じていた